2010年7月23日 (金) 掲載

◎警察官の似顔絵名札に【函館】楠本警部補、全中央署員分制作

 函館中央署は、来庁する市民に親しみを持ってもらおうと、全署員に似顔絵入りのネームプレートを導入した。イラストは、同署南茅部駐在所(函館市川汲町427)の楠本徑弘警部補(52)が担当。2カ月間かけて、全署員313人分を描き上げた。署員の間では「似ているだろ」などと話題になり、評判も上々のようだ。

 「小学生のころは漫画家になりたかった」と話す楠本警部補は、現在も趣味で精密なバイクの絵を描くこともある。道警では、長年刑事畑を中心に歩み、犯罪捜査で描いた犯人の似顔絵が逮捕に結びついたこともあるという。同駐在所には4月に着任。ネームプレート用のイラストは当初、所属する地域課員分を担当する予定だったが、画風を統一するため、全署員分を任された。同月中旬から6月中旬まで、勤務終了後にこつこつと描き上げたという。

 1人にかける時間はわずかに数分程度で、1日に50人分を描いた日もあった。300人を超える署員の大半は面識のない人ばかりだが、写真を見ながら、顔の輪郭と髪型の特徴をうまくとらえ、優しい印象となるようにした。楠本警部補は「証言を聞き、悪いことをしている時に見られた顔になる犯人の似顔絵とは違い、和やかな顔を心掛けた。この人はこう笑うだろうと想像して、口元を緩めるようにしました」と話す。

 完成したイラストは、ネームプレートに加工。同署のシンボルマークでもある五稜郭の中央に名字を入れて、ネックストラップ式のホルダーで署員が着用している。鳥井優二署長は「署員の士気や帰属意識を高めて、一体感を醸成する狙い。来庁した市民にも親しみを持ってもらえる」と話している。(今井正一)



◎遺愛女子高3年の吉田さん、TOEICで900点突破

 遺愛女子高3年の吉田美乃莉さん(17)が、5月30日に行われた英語能力試験TOEIC(トーイック)の公開テストで900点を取った。満点の990点に迫るハイスコアで、全受験者約12万人のうち上位3%余りに入る成績だ。吉田さんは「遠い目標だと思っていたけど、自分の英語力が証明され、自信がついた」と喜んでいる。(宮木佳奈美)

 TOEICは英語でのコミュニケーション能力を評価するテスト。企業などが採用や昇格、海外勤務の要件に、TOEICスコアを活用している。5月の試験は、11万8743人が受験。このうち895点以上を取った人はわずか3.6%だった。

 吉田さんは海外旅行などで英語に興味を持ち、中学3年時には高円宮杯中学英語弁論大会に出場するなど、中学時代から英語は得意。海外で通用する、より実用的な英語を習得しようと、昨年3カ月間、オーストラリアに留学した。留学先では積極的に現地の人とかかわりを持ち、聞き取り力を磨いた。帰国後もせっかく身についた聞き取り力を維持しようと、英会話のラジオや英語のニュースを録音して、音楽代わりに通学時に繰り返し聞いた。

 TOEICは父親の勧めで、自分の英語力を試してみようと受験。特別に試験対策はせず、毎日通学時に英会話を耳にするという地道な積み重ねが高得点につながった。TOEIC900点は海外勤務も可能とされるレベル。「世界で通用する英語でコミュニケーションを取るのが楽しい」と英語の魅力を語る吉田さん。医師として海外で活躍する夢に向かって前進を続けている。



◎コンパクトな街づくり明記 函館圏都市計画 見直し案固まる

 2011年度から20年度までの函館市や北斗市、七飯町のまちづくりの決定方針となる「函館圏都市計画 都市計画区域の整備、開発、及び保全の方針」(整開保)の見直し案が固まった。整開保では初めて、今後の人口減少や高齢化を推計で示し、これらを前提とした上でコンパクトなまちづくりを目指すと明記。市街化区域を今後拡大せず現状の中心市街地を充実させ、郊外への大規模集客施設の立地規制を図るとした。

 見直し案では、20年度の人口を国立社会保障・人口問題研究所の08年の調査を基に推定人口を推計。函館市の20年度の人口は、前回05年度の国勢調査時より約4万5000人少ない24万8600人に減少するとし、2市1町全体でも約4万人減の30万4000人とした。

 これらを基に人口減少や高齢化に対応するため、案では今後の方針を「コンパクトなまちづくり」と明確に示した。北斗市や七飯町は新幹線駅周辺の開発を盛り込んだ。

 大規模集客施設は本来建設可能な準工業地域に規制をかけ、これまで以上に立地の抑制を図る。また高齢化を見据えた施策として市電電停のバリアフリー化やバスを含めた低床車両導入を進める。

 市街化区域は適切な市街地規模を維持するため原状範囲を保ち、その中で住宅地や商業地、工業地を配置。JR函館駅前地区を対象とする現行の中心市街地活性化基本計画に、五稜郭・本町地区を加えて、空洞化が進む両市街地の活性化を目指す。今後10年の市街地整備対象は石川稜北・中央両地区、北海道新幹線新駅周辺とした。案は今月末にも道に提出し、来年3月に決定する予定。(山田孝人)



◎アイヌと和人、鎮魂の舞 志苔館跡で住民ら慰霊祭

 函館市志海苔町の国の史跡「志苔館(しのりだて)」跡で22日、かつて激しい戦いを繰り広げたアイヌと和人の慰霊祭が行われた。地元住民らが参列し、数百年前に命を落とした人々のめい福を祈った。

 志苔館は、南北朝時代に本州から流れてきた武士が築いたといわれる。1456年にアイヌが武装蜂起したコシャマインの乱によって57年に陥落し、その後再び和人が奪い返したが、1512年のアイヌの攻撃によって廃館となった。

 過去の歴史を記憶に留め、双方の犠牲者を追悼することで平和な世の中につなげていこうと、1970年に石崎地主海神社(函館市白石町)が志苔館跡横に、和人とアイヌの双方の慰霊碑を並べて建立。毎年7月22日に慰霊祭を行い、今回が41回目となる。

 この日は約30人が参加。雅楽の生演奏に合わせ、二人の巫女(みこ)による平和を願う「浦安の舞」が奉納され、参加者はしめやかな雰囲気の中で玉串拝礼を行った。この後「志苔館御神歌」と呼ばれる鎮魂の歌が斉唱され、参加者は平和の大切さをあらためて認識した。(小川俊之)



◎映画「海炭市叙景」テーマに朗読紀行

 函館朗読奉仕会(船矢美幸代表)の函館朗読紀行4「海炭市叙景〜佐藤泰志が描いた函館〜」が22日、市中央図書館(五稜郭町26)で開かれたた。約100人の市民が足を運び、独特の世界観で描かれた函館の人々や街の姿に触れた。

 函館出身の作家、佐藤泰志(1949―90年)の小説「海炭市叙景」は、市民有志により映画化が熱望され、作品化が決定。今年11月に函館で先行上映、12月からは全国60カ所での全国公開が決まっている。

 朗読会の初めに、同映画の菅原和博制作実行委員長が「映画・海炭市叙景ができるまで」と題して話し、実際に使われた台本などを使って映画制作秘話を明かした。

 朗読会では船矢代表ら約20人の会員が、物語の核となる登場人物の人間模様を情感たっぷりに読み上げた。冒頭の「まだ若い廃墟(はいきょ)」の章では、職を矢ってひっそりと身を寄せ合うように暮らす若いきょうだいの苦悩などを、声だけで表現し、観客の心をとらえていた。

 また、西堀滋樹制作実行委事務局長が「佐藤泰志と海炭市叙景の世界」と題して講演し、故人の人柄などを紹介していた。(小杉貴洋)