2010年7月28日 (水) 掲載

◎箱館奉行所見学 児童ら興味津々 五稜郭林間学校

 夏休み中の小学生を対象とした函館市立五稜郭林間学校の参加児童が27日、オープン前の箱館奉行所を見学した。

 29日のオープンに向けた運営シミュレーションの一環で、林間学校に参加する5、6年生約130人が入館した。児童らは市教委関係者らに案内され、くぎ隠しや敷居、鴨居(かもい)などの意匠について教えてもらったほか、別の展示室では「45畳もある広い部屋を支えるため、太いはりを使っている」などと解説を受けた。

 函館深堀小5年の高橋宏太君(10)は「古い甕(かめ)とかがあって昔の建物みたいな感じだった。また見学に来たい」と話していた。

 林間学校は毎年夏休みに五稜郭公園で開催され、本年度は市内31小学校から3年生以上の児童300人が参加。24日に開校し、今年初めて朝会でラジオ体操の代わりに「いか踊り体操」を取り入れた。五稜郭公園でのレクリエーション活動や、四稜郭ファームでの収穫体験などを実施し、28日に閉校する。(宮木佳奈美)



◎道南でも安堵広がる 口蹄疫非常事態全面解除で

 宮崎県が27日、口蹄疫(こうていえき)の「非常事態宣言」を全面解除したことを受け、道南地域の関係者にも安ど感が広がっている。しかし、感染源が特定されておらず、観光シーズンの最盛期を迎えていることなどから、道は引き続き防疫対策を継続する方針。対策本部を設置している道南各市町も国や道の指針に従い対応する。

 道は27日付で、宮崎県の隣接3県(熊本、鹿児島、大分)の偶蹄類の移入制限を解除。宮崎県に対しての移入制限は継続する。事態は終息に向かうが、道は「今後、人や家畜の出入りが活発化されることが予想されることから引き続き防疫対策を強化する」(渡島総合振興局)と引き締める。

 道と同様、対策本部を立ち上げた道南の各市町も道と足並みをそろえて対応する。大沼地域を中心に乳牛・肉牛など1万頭を保有する七飯町は、5月21日から城岱牧場を通過する町道「城岱スカイライン」を封鎖しており、「道と連動してきた経緯があるので今後も同様の対応をしていきたい。終息時期によっては、今季はこのまま町道を閉鎖することもあり得る」(農林水産課)としている。

 市営牧場のあるきじひき高原への通過を一部通行止めとしている北斗市も「国、道の動向を見つつ、酪農・畜産農家の意向も踏まえながら解除する時期を決めたい」(農政課)、函館市も「道の基本方針を待ち対応したい」(市農政課)としている。

 七飯町酪農組合の小森久司組合長は「終息するまで安心はしていないが、非常事態宣言の1日も早い解除を望んでいた。今回を教訓に牧場に出入りする業者も含め防疫対策をしっかりしていきたい」と話している。



◎「最後の夏、有終の美を」南茅部高陸上部唯一の部員、張磨君

 南茅部高校(溜雅幸校長、生徒100人)陸上部の唯一の部員、張磨怜矢君(17)の熱い夏が始まった。8月の全道大会出場に向けた調整に余念がない。「高校生活最後は有終の美を飾りたい」と炎天下のグラウンドで汗を輝かせている。

 張磨君は高校3年間、陸上部に所属し、これまで各種大会に出場。冬場は雪のグラウンドを走りこみ、黙々と練習をこなし、全力で競技にぶつかってきた。生徒会長でもあり、文武両道を貫く。

 努力が報われ、今年6月の高体連で全道大会に出場を果たした。400メートルと400メートルハードルにエントリーしたが予選敗退。この大会で引退するつもりだったが「ただ悔しさだけが残って、もう一回チャンスが欲しかった」と、夏の国体道予選に出場することを決心した。

 夏場は勉学以外にコンブ漁で多忙を極める。毎日、午前3時に起きて、通学時間ぎりぎりまで近所のコンブ漁の手伝いに汗を流すという。

 陸上の練習は放課後、夏休み中はコンブの仕事の合間を縫い、グラウンドに駆けつける。

 坂下嘉章教諭と牛島義昌教諭が指導し、走法の確認を徹底する。「いまの走りは良かった。もう少し力みを抑えてみるともっと良くなるぞ」と熱い視線で張磨君の姿を見守る。

 全道大会の「国民体育大会陸上競技大会北海道選手選考会」は8月21、22の両日、帯広の森陸上競技場(帯広市)で開催。学校関係者は「一人でも頑張れば何事もできるという姿勢を、いつも後輩や同級生に示してくれている。最後の大会はいい結果を期待したい」、張磨君は「調整は順調。いつも通り、気持ちを落ち着かせて大会に臨みたい。高校生活最後の夏を充実させたい」と目を輝かせる。(田中陽介)



◎【煙のゆくえ・1】変わる認識 マナー徹底を

 たばこの煙に対する認識が大きく変化している。厚生労働省は2月25日に「受動喫煙防止対策について」という通知を都道府県に出した。「多数の人が利用する公共的な空間」で受動喫煙の防止を求める内容で、すべての公共施設や事務所、飲食店などが厳しい対応を迫られている。

 市立函館保健所は「罰則のない努力義務ではある」との立場だが「喫煙に対する見方が『生理現象』から『中毒』に変わる中で重く受け止めるべき」とする。同省が有効と考える対策は全面禁煙だ。その一方で「全面禁煙が極めて困難な場合」には、喫煙場所から煙が流れ出ないなどの対策をした上での分煙を認めている。

 5月26日には「職場における受動喫煙防止対策に関する検討委員会」(厚労省)が、職場での全面禁煙または喫煙室設置の義務付けが必要との報告書をまとめ、今後は労働安全衛生法の改正も予定している。現在の努力義務から、一酸化炭素などの有害物質を規制する「健康障害」に位置づける見通しだ。

 道南の各自治体は「すべての職場で現在よりきちんとした分煙や禁煙化を迫られるだろう」との認識を持つ。それは自治体だけに限らず、すべての職場や学校などにも当てはまる。

 同保健所の山田隆良所長は「吸うか吸わないかにかかわらず、皆が喫煙や分煙のあり方を考えなければならない時を迎えている。感情的にならずに議論すべき」とする。「喫煙はニコチン中毒だが合法。吸う人の自由は守りつつ、吸わない人の健康を守る近道は分煙」として、分煙徹底の必要性を強調する。

 函館市は昨年11月、喫煙に対する市職員へのアンケートを初めて実施。職員のうち半数の1472人から回答があった。完全分煙化や建物・敷地内での禁煙化を望む声は52・4%。現状で十分、または現状のままルールを徹底すべきとの意見は46・4%。職員の意識はほぼ二分した。だが、16・5%が、勤務時間内の職場の分煙・禁煙ルールについて「守られていない」と感じている実情も浮き彫りになった。

 市職員厚生課は「吸う人は自分たちの権利≠ニ考えている」とし、喫煙場所は確保すべきとの立場だ。ただ、同課は「喫煙者は吸わない人の気持ちになって考えてもらうことが必要。まずは悪いとされたマナーを改善すべき」とし、マナーの徹底と合わせて8月から禁煙したい職員を対象とした講座を開くという。

 禁煙や分煙の取り組みはどこに向かうのか。道南の自治体や民間事業者の現状、医師の声などから煙の行方を考える。(小泉まや)



◎市にレプリカ掛け軸寄贈 箱館奉行所復元促進期成会

 箱館奉行所復元促進期成会(高野洋蔵会長)は27日、29日に一般公開がスタートする同奉行所に展示するレプリカ掛け軸2幅を、函館市に寄贈した。同会の中野豊副会長らが市役所を訪れ、西尾正範市長に目録を手渡した。寄贈物は同奉行所内の大広間と表座敷に掛けられる。

 掛け軸は2代目の箱館奉行として同奉行所の移転を計画し、開港間もない箱館を治めた堀織部正利煕(ほりおりべのしょうとしひろ)が五稜郭築造に着手した、1857(安政4)年に書いたもの。

 もう1幅は、最後の箱館奉行として明治新政府に同奉行所を引き渡した杉浦兵庫頭誠(すぎうらひょうごのかみまこと)の書で、ニシン漁で栄える江差の浜の情景をつづっている。

 寄贈式で中野副会長は「建物が完成して五稜郭に“へそ”ができた。これからどう活用していくかが大事」と話した。西尾市長は「函館の文化発展に大きく寄与するものでありがたい。近代の歴史文化をどう表現していくかを考えなければ」と述べ、感謝状を贈呈した。(山田孝人)