2010年8月1日 (日) 掲載

◎初の週末、箱館奉行所人気 2965人が入館【函館】

 箱館奉行所は31日、一般公開が開始されて初めての週末を迎えた。この日の函館市内の最高気温は28度。五稜郭公園で行われたオープン記念イベントや同奉行所には、夏の陽気に誘われて大勢の市民や観光客が訪れ、活気に満ちあふれた。(山田孝人)

 五稜郭公園一の橋広場では奉行所開所を記念した「祝・復活市」が開かれた。祝いムードを盛り上げるもちまきや多彩なステージショーが行われたほか、軽食を販売する露店も出店。大勢の家族連れらが訪れ、楽しんだ。

 五稜郭地区のまちづくり団体「新都心五稜郭協議会」のやっぱり五稜郭プロジェクトの主催。オープニングセレモニーでは、西尾正範函館市長が「きょうは多くの道南の物産が会場に集まった。たくさん食べて、語り合って、遊んで、すばらしい復活祭にしよう」とあいさつ。続いて同協議会の中野豊会長らが壇上に立ち、景気よくもちまきをした。

 会場には同地区の飲食店が自慢の一品を安価で提供する露店や、その日道南で収穫したばかりのトマトやホウレンソウなどを生産者が直接販売する市「マルシェ」、往時の奉行所で薬として飲まれていたという「薬用珈琲」を振る舞うコーナーなど、道南の食や文化が一堂にそろった。このほかステージでは「函館子ども歌舞伎」による歌舞伎も披露され、祝いムードに花を添えた。

 七飯町から訪れた池田聡美さん(40)は「にぎやかなお祭りで楽しい。五稜郭に活気があると足を運びたくなる」と話していた。



◎尾根に主翼と胴体散乱 小型機墜落事故の原因究明始まる

 【木古内、知内、福島】中日本航空の小型飛行機(セスナ206式)が知内、福島両町の境界付近山中に墜落した事故で、国土交通省運輸安全委員会の航空事故調査官3人が31日、上空から現場を視察した。小松了調査官は「機体の部品が散乱する状況を肉眼で確認した。斜面の高いところ2カ所に主翼と思われる部分、下側には胴体部分があった」と話した。

 道警は同日、業務上過失致死容疑を視野に、上空や地上からの現場確認を進めた。道警によると、墜落現場は、福島町側の山中と判明。荒沢隆明木古内署長ら道警幹部が同日午前10時半ごろから、道警ヘリコプターで現場を視察した。知内町側の林道からは捜査員ら25人が入山し、30日の調査より範囲を広げて散乱する機体の状況を確認した。

 同署は、死亡した乗員2人を札幌市内の病院で司法解剖し、パイロットの秦功さん(46)=愛知県あま市=は外傷性ショック、カメラマンの古田昭二さん(60)=同県江南市=は脳挫傷だったと死因を特定。2人とも事故の衝撃により、ほぼ即死だったとみられる。

 一方、事故調査官3人は同日午前11時10分ごろから、道警ヘリで現場状況を確認。同日午後には、現地入りしている中日本航空社員3人から、同社の運航業務体制などを聴取した。事故調査官らは1日以降、道警の捜査員らとともに、陸上からの現場調査を実施する。

 報道陣の取材に対し小松調査官は、上空からでは斜面の状況や機体の侵入経路が分からないとし、「(現地入りし)部品の散乱状況、どこから地上に当たったかなどから、衝突または墜落した状況が分かると思う。機体の発動機(エンジン)があれば、正常だったかどうかが判断できるだろう」と述べ、「天候だけではなく、機体の不具合も含めて調査しなければならない」とした。



◎漁港から直送、朝食にイカが 「湯の川温泉旅館協同組合」16軒でサービス

 函館・湯の川温泉の宿泊客に地元特産の新鮮な活イカを朝食に提供するサービスが行われている。函館市漁協の協力でその日水揚げした朝イカを競りにかけずに漁港からホテルや旅館に直送し、「イカの街・函館」を売り込んでいる。

 函館湯の川温泉旅館協同組合(金道太朗理事長、22社加盟)が、道南沿岸のマイカ(スルメイカ)の漁期に合わせて1995年から毎年行っている。今年は昨年より6軒多い組合加盟の16軒が6月下旬からサービスを始めた。

 湯の川プリンスホテル渚亭(湯川町1)では、館内のレストランに専用コーナーを設け、板前がその場で手早くイカ刺しに。宿泊客限定で一人前800円で提供し、多い日では一施設で60人前が出る人気だ。

 7月29日朝には湯の川オンパクのメール会員らを対象に試食会が行われ、石崎広暁料理長が目の前でさばき方や食べ方を紹介。参加した市内日吉町の女性会社員(40)は「新鮮で甘みと歯ごたえが最高。みんなにお勧めしたい」と話していた。

 同漁協は「漁場が近い函館だからこそできる全国でも珍しい企画。漁協のPR効果も期待できる」とし、同旅館組合も「地元の方にも泊ってもらい、本物の味を堪能してほしい」としている。改行 対象店には「プレミアム朝イカ」と書かれたのぼりが玄関前やレストランなどに設置している。朝イカ朝食は漁期が終わる12月中旬ごろまで。(森健太郎)


◎【煙のゆくえ・3】道南自治体、対応分かれる 函館の現状に疑問の声

 函館市の場合―。市役所各階にある分煙機には、勤務時間にも数人から10人ほどの職員が集まる。分煙機が吸い切れない煙は廊下や階段伝いに拡散。たばこを吸わない人は、「市役所はいつもたばこのにおいがする」(職員や来庁者)とまゆをひそめる。

 神奈川県が4月に受動喫煙防止条例を制定するなど、全国の自治体が動き始めたが、道南の反応は鈍い。各市町とも健康増進法施行後、体育館や保健関係の施設を禁煙としたが、市役所や町役場などの対応は分かれる。

 道南の2市16町で2月以降、庁舎内を禁煙化したのは知内と八雲の2町のみ。以前から禁煙の七飯と福島、乙部を含めても、庁舎内禁煙は5町にすぎない。こうした町では喫煙者に一定の配慮をする場合も多く、2009年4月から庁舎内を全面禁煙とした福島は屋外に灰皿を置き「環境が良くなったと評判はよい」。先行する町からは、対策が進まない都市部に批判的な声も。ある町の50代の男性職員は「函館はあらゆる面で道南の中心。本来なら他の市町をリードすべき」と語った。

 “分煙”の形を取る函館など2市11町の状況は一様でない。個室を設けるのは長万部と上ノ国、奥尻、今金の4町。ほかは「財政負担が大きく困難」とし、廊下などに分煙機を置く。煙が拡散する現状に森町は「実態は良くない。遅くないうちに廃止したい」とするが先は見えない。

 函館の分煙機のリース・購入料は2000―10年の11年間で6500万円にも上り、金がかかることに変わりはない。個室喫煙所を利用する同市内の女性(55)は「吸わない人のためには個室にすべき」と市の消極的な姿勢を疑問視し、庁舎内部からも「そろそろ完全禁煙にしてもいいのでは」の声が複数。だが西尾正範市長は「トップダウンで意見を押し付けるわけにはいかない。職員皆の意見を聞いたうえでどうすべきか決める」と慎重な構えだ。

 鹿部のように「分煙機をなくす方向だが、職員や議員の理解を得られない」と対応に苦慮するケースも。05年に3町が合併したせたなは「以前の状況が異なるので対応は容易でない」と、合併町ならではの悩みがある。

 自治体が全面禁煙を打ち出せない背景には「たばこ税」の存在もある。08年度の函館の税収は約22億円で、市税の6.5%を占める「安定した貴重な自主財源」(財務部)だ。以前は「たばこ購入は町内で」と書いたライターを配布した町も少なくない。

 一方、税収より健康被害がもたらす医療費負担の方が大きいとの指摘もある。喫煙で他人の健康を脅かすことが許される時代ではもうない。函館市で保健師を務めた斉藤佐知子市議(民生常任委員長)は「せめて吸わない人に害が及ばない完全個室にすべき」と、煮え切らない市の姿勢に苦言を呈する。(小泉まや)


◎歴史散歩に活用して 近江幸雄さんが案内本出版

 函館市白鳥町の郷土史家、近江幸雄さん(73)が、文庫サイズの歴史案内本「絵で見る函館の歴史」を出版した。縄文時代から2004年の5市町村合併までの函館の歴史トピックス55項目を絵入りでまとめ、紹介している。近江さんは「本を片手に歴史散歩をしてもらえれば」と話している。

 近江さんは昨年11月、優れた郷土史研究者に贈られる神山茂賞を受賞。授賞式や祝賀パーティーで「青少年に郷土史を啓もうする活動も続けたい」と抱負を語り、出版の準備を進めてきた。

 「コシャマイン戦争」「ペリー艦隊入港」などの歴史トピックスを、1項目あたり見開き2ページで簡潔にまとめた。幕末から明治にかけて函館に住んだ「ブラキストン」は@貿易商で、動物の採集と分類を行いA津軽海峡を境に動物の分布が異なることを説きBそれをブラキストン・ラインといいC函館山山頂に記念碑がある―ことを紹介している。

 絵は市内の広告プロダクション「エージー」代表の内海治夫さん(63)が担当した。劇画調で人物や風景を描き、歴史の息吹が伝わる。内海さんも「絵からも郷土の歴史に関心を持ってもらえれば」と期待する。

 120ページ、定価840円。市内の文教堂書店、くまざわ書店などで扱っている。(高柳 謙)