2010年8月21日 (土) 掲載

◎エコカー補助金、来月末まで/販売店 対応に苦慮

 自動車の国内販売低迷の打開策としてエコカー減税とともに2009年4月に導入されたエコカー補助金制度が、今年の9月末で期限を迎える。道南地域のディーラーも駆け込み需要を見越した販売促進に力を入れている。その一方で、当初予算総額に達した場合には期限前でも打ち切りとなる可能性のある同補助金の扱いに頭を悩ませている。

 同補助金は一定の燃費基準などを満たした車を購入する際、登録から13年以上の車から買い替える場合は25万円(軽自動車は12万5000円)、13年未満は10万円(同5万円)支給される。ただし前車両を廃車にすることが条件となる。

 函館運輸支局によると同補助金などが導入された2009年4月から10年3月までの同支局管内(渡島・桧山)の新車登録台数(軽自動車を除く)は1万1028台で、前年同期の9886台から1142台増加し、導入効果がはっきりと表れている。延長後の10年4月から6月までをみても3238台と昨年同期を765台も上回り、補助金制度の浸透をうかがわせる。  同補助金は当初、昨年4月から今年3月末までの予定だったが、同9月末まで半年間の延長が決定。ただし予算総額の5837億円に達した場合は、その時点で打ち切りとなる。また、補助金の交付は新車登録日が基準となるため、納車に時間のかかる人気機種の場合、現時点ですでに受けられないケースも出てきている。

 今週末に新型車発表会と合わせて補助金対象車のフェアを予定している函館日産(函館市石川町)でも、チラシの「補助金9月末日終了」の文字の下に「9月末日前でも予算枠がなくなり次第終了」と明記している。同店では「補助金を受けるつもりで購入したお客様に迷惑をかけてしまうことが一番の心配。確実に補助金を受けてもらうために、納車の早い車種を取りそろえてはいるが…」と複雑な表情。

 これらの対応策として、登録段階で補助金が打ち切られた場合、メーカー側が費用を負担しようという動きが広がり始めている。また、自動車関連産業を抱える愛知県安城市のように、10月以降も市による「環境対応車購入支援事業」によって、事実上エコカー補助金を継続する意向を示している自治体も。

 販売側のもう一つの心配は、駆け込み需要の反動による消費の落ち込み。函館中央三菱自動車販売(北斗市清水川142)では「今回はあくまでも補助金のみの終了であって、エコカー減税については12年まで継続されることを理解してほしい」と訴える。同減税は一定の燃費基準を満たした車の重量税と取得税を減免する措置で、補助金と異なり現在所有している車の登録年数などは関係しない。同店では「国からの補助金がなくなることで、今後は各メーカーやディーラーがどれだけサービスできるかが勝負になる。環境にも財布にも優しい車をじっくり時間をかけて選んでもらいたい」と話している。(小川俊之)


◎残暑厳しいですが…秋物商戦スタート

 函館市内は今月に入り蒸し暑い日が続くが、市内のデパートや家電量販店などは秋冬商戦がスタートした。一方で需要が続く夏物商品への対応にも追われ、天気をにらみながら残暑での商機もうかがっている。

 棒二森屋(若松町)はお盆を過ぎたあたりから衣料品の各売り場でカーディガンやジャケットなど秋物の衣類を全面的に陳列。「秋の婦人服逸品会」と称して特選セールをスタート。服飾雑貨類の売り場でもバッグやシューズなど秋物が並び、先手を打つ構え。婦人服の担当者は「まずは常連客をターゲットに新しい商品を売り込んでいきたい」と話す。

 テ―オーデパート(梁川町)も例年通り25日をめどに衣料品の衣替えをする。本格的に需要が出てくるのは9月中旬とみているが、暖房機器の販売も含めて、先行販売する。担当者は「どんなに暑くても例年通り秋物の早期販売をしていく。商戦が本格化する前にお得意様などに秋物の衣類を売り込んでいきたい」としている。ただ、暑さはまだ続くとみられ、「春物の在庫を安く売ったり、夏・秋にも対応できるようインナーの付いた服も並べていきたい」と語る。

 丸井今井函館店(本町)も23日ごろから秋物衣料品を売り出していく考えだが、暑さが続くとみて夏物にも当面、対応していく。同店は「夏物は好調だったが、その分、秋物への影響が気に掛かる」としている。

 この暑さでエアコンや扇風機の売れ行きが好調だった家電量販店でも、数は少ないが暖房機器が店頭に並び始めた。コジマNEW函館(亀田町)はエアコンなど冷房機器の入荷が追いつかず、ほとんどが2週間以上待つ状況。このため同店の幹部は「暖房機器の陳列はPRの段階」と話す。寒くなった時点で暖房機器が本格的に売れ出すため、「需要が高まる時期を見定め、製品をそろえていきたい」。

 ケーズデンキ函館本店(美原)も同様の対応をしていて、「ストーブの修理、買い替えのニーズを掘り起こしていきたい」としている。(鈴木 潤)



◎企画「ACTION!北海道新幹線」/第2部・函館のいまD沿線3市町 異なる反応

 

新幹線開業に伴い、JR北海道から経営が分離される、江差線の五稜郭―木古内間(37.8キロ)。旅客の代替輸送において第3セクターで運行か、全面バス転換か、それとも鉄道・バスの折衷かが焦点となっている。

 道と函館市、北斗市、木古内町でつくる道南地域並行在来線対策協議会が5月に示したのは@全区間3セク鉄道による運行A五稜郭―上磯間は3セクで運行し、上磯―木古内間は減便した上で減った分をバス会社が運行BAと同形態で、減便分を3セクが運行C五稜郭―上磯間は鉄道で運行し、上磯―木古内間はバス転換D全区間バス転換―の5案。

 08年の収支予測調査を基に分析した結果、五稜郭―上磯間で1日1721人が利用するのに対し、上磯―木古内間は同469人と、上磯駅を境に輸送密度が異なるとして検討された案で、30年間の累積赤字額は全区間鉄道で105億3000万円、全区間バス転換の場合で15億9000万円と試算。とりわけ3セク運行の場合、JRからの譲渡資産の減額や人件費支援、3セク会社への民間出資などの収支改善策を見積もっても、30年間の赤字額はいずれも100億円を超える。

 この路線をめぐる沿線3市町の反応はそれぞれ異なる。同区間のうち全体の約6割を占める北斗市は「定時性、安定性を考えれば最も優れている」(高谷寿峰市長)と鉄路維持の姿勢を強める。市議会も市と歩調を合わせ、国に対して地方負担の軽減に向けた財政支援策を早期に講じるよう求め、地元の国会議員への要望書を提出する構え。16、17日には高谷市長、小泉征男市議会議長が函館、木古内を訪れて賛同を呼び掛けたが、その反応は分かれた。

 函館市は行政、議会とも「国の支援がなかったら鉄路存続は不可能に近いが、対策協議会での結論が出ていない中では…」(吉田崇仁議長)と慎重姿勢を崩さない。市内を走る路線が2キロと短い一方、人口比率や財政規模で2市町を圧倒的に上回るだけに、多額の負担を強いられるのでは―と懸念する向きが強い。

 木古内町の大森伊佐緒町長は「現状維持が望ましいが、最悪の事態を考えるとバス転換も議論せざるを得ない」。協議会で示された5案がいずれも道と沿線自治体の合計負担額で、現段階で各市町の負担割合が示されていないため、「財源問題を先送りしていては議論ができない。厄介な問題こそ正面から向き合わなくては」と、北斗の提案に理解を示している。

 先行する本州でも、国からの財政支援をどう得るかで自治体は苦悩をにじませる。青森県の「青い森鉄道」(八戸―目時間25・9`)は、線路などのインフラ施設を県が保有し、第3セクターが借り受けて運行する「上下分離方式」で運営を続ける。新青森延伸により営業キロは青森駅までの121・9`に延びるが、県はその場合、青い森鉄道への繰入金(赤字)が年間16億円に上ると試算した。

 県並行在来線対策室によると、県に支払われる線路使用料の割合はJR貨物6、青い森鉄道4。同室は「重量の大きい貨物列車が走る分、路線の維持管理費が増えている。実態に見合った使用料を国に求めているのだが」と話す。  協議会が方向性を示すのは2012年3月。自治体の中には「沿線自治体同士がいがみあう状況は望ましくない。もっとイニシアチブを取ってほしい」(函館市の小柏忠久副市長)と、道の積極的な関与を求める声も強く出ている。(千葉卓陽)



◎海水浴場 今夏にぎわう

 連日厳しい暑さが続いている今夏の函館。函館海洋気象台によると、今年は3年ぶりに気温30度以上の真夏日を記録し、20日現在で真夏日は7日間となっている。そんな陽気に誘われ、夏休み中の市内の海水浴場は連日大勢の市民でにぎわい、近年減少傾向だった利用者数が増加に転じた。

 湯川を筆頭に函館市内の海水浴場は年間5万人近く集客することも珍しくなかったが、近年は少子化や生活スタイルの変化などが影響して、利用者が減少傾向にあった。改行 今年の市内の海水浴場は7月17日にオープンした湯川海水浴場(根崎町4番地先)と、同24日から開放した入舟町前浜海水浴場(入舟町22番地先)。湯川は今週末までの開放期間で、入舟は17日で今期の営業を終えた。

 開設以来最短となる全37日開放の湯川は、19日現在で3万2993人が来場。40日間だった昨年の3万339人を突破した。1日平均でも昨年の759人に対し、今年は970人と大きく上回っている。また開放期間が40日台だった過去3年の総利用者数と比べても最多となった。

 市教委スポーツ振興課は「オープン期間が短い中でこれだけ利用が伸びたのは驚いた。気温の高さもあったが湯川の場合、幼児でも砂浜で安全に遊べるほか、隣接する熱帯植物園の水の広場の利用者との相乗効果もあったのでは」と分析する。

 水質評価でAAランクを誇る入舟も昨年の1681人から1841人と利用者が増加した。同課は「この週末で今年最後の開放となる。厳しい残暑は海水浴場で楽しんで」としている。(山田孝人)


◎中央病院が児童虐待防止委員会を設置

 函館中央病院(函館市本町33、橋本友幸院長)はこのほど、院内児童虐待防止委員会を立ち上げた。児童虐待への対応と早期発見を目的とした専門的な院内組織で、26日にも1回目の会合を開く。同病院は「病院として当事者の支援につなげていきたい」としている。

 同病院は新生児特定集中治療室(NICU)を持つ総合周産期母子医療センターとしての機能を持つ総合病院。数年前からの子育て支援にかかわる取り組みの中で児童虐待かかわる対応についても必要と認識し、今年6月から小児科医を中心に有志で虐待防止のプロジェクトチームを立ち上げ、正式な院内組織を目指し検討を重ねてきた。

 これまで、けがをした幼児、児童を診察した際に、児童虐待と疑われるケースがあった場合、医師の裁量で児童相談所など関係機関に通報していたが、病院として責任を持った対応をしていくため委員会を立ち上げた。

 同委員会は橋本院長を委員長、院内の総合周産期母子医療センターの木田毅センター長を副委員長とし、同病院の小児科や外科、産科などの専門医や看護師、事務職員14人で構成。今後、児童、幼児のけがの診療を通して虐待の疑いがある場合、対応を協議する検討委員会を開き、病院として判断する。今後、虐待の判断材料となる病院独自のチェックリストも作成し、虐待事例に対応するための資質を高めるため、委員の研修会も開く方針。

 委員会の立ち上げを推進してきた小児科の石倉亜矢子医師(40)は「院内連携を密にしてスピード感を持って対応していきたい。活動を通して子育てのしにくい状況を少しでも打開できれば」と話している。(鈴木 潤)