2010年8月31日 (火) 掲載

◎酷暑2010夏(上)/夏物商戦に好影響

 全国的に記録的な猛暑に見舞われたこの夏、道南地方も8月に入ると連日のように真夏日を記録。30日も木古内で33.2度となったのをはじめ松前で今季最高の31.4度、函館でも31.0度に達するなど厳しい残暑が続いている。この暑さは市民生活や商戦、経済活動などを直撃。ここでは2回に分けて、暑さがもたらした影響について振り返る。(鈴木 潤、小泉まや、長内健)

 ■天候

 今年の函館の真夏日は11日で(8月30日現在)、いずれも8月に記録。函館海洋気象台によると、現時点では1984年の13日、99年、78年の12日に続く4番目の多さ。8月に限ってみると、84年の12日に次ぐ2番目の記録となっている。

 今年の道南地方は太平洋高気圧に覆われ、南からの温かい空気が入るなどし、6月下旬から気温が平年よりも高めに推移。8月5日に函館で3年ぶりに真夏日を観測すると、翌6日には観測史上4番目となる33度となり、木古内町では観測史上1位となる33.4度を記録。8月に最高気温が25度を超える夏日は大雨に見舞われた12日以外、すべての日で記録している(30日現在)。

 ■海水浴場、プール

 函館市内の海水浴場の入場者は、37日間開設した湯川海水浴場(根崎町)は3万5794人、25日間開設した入舟町前浜海水浴場(入舟町)は1841人で、それぞれ前年度より増加した。特に湯川は過去3年間の利用者数を上回り、管理者は「暑い日が続き、涼を求めて午前中から多くの人が訪れた」という。

 屋内の函館市民プールも盛況で、佐藤康浩館長は「例年の2割増し程度の利用がある」とする。暑さに加えて、本年度から函館市内の中学生以下の利用が無料となったことが、さらに来館の後押しをしたと考えられる。特に混雑する土曜日などは、利用者同士が衝突するなどのアクシデントも複数発生した。

 市営熱帯植物園内(湯川3)でも子供が水遊びを楽しめる「水の広場」が連日盛況。特に学校の夏休み期間中は、多い時で1日1000人以上が入場し、担当者は「イモ洗い状態になることも」と話す。

 ■家電、量販店

 清涼飲料水や冷房機器などは例年にない売れ行きとなった。コープさっぽろでは、ミネラルウオーターやスポーツドリンクを中心に清涼飲料水の売り上げが前年同期比135%増、氷菓子は同150%増にも上ったという。函館本部は「酷暑のおかげ」手放しで喜ぶ。

 家電量販店でもエアコンや扇風機が飛ぶように売れ、在庫切れが多発。コジマNEW函館店(亀田本町55)は冷房機器の販売量が昨年の3倍ほどに上り、同店は「これだけ売れたのは2007年以来」とする。

 ■消費電力

 冷房需要の高まりで消費電力も軒並み増加。北海道電力によると、7月の道内の電力販売実績は前年同期比4.6%増の24億5079万キロワット時となり、2008年7月(24億2992万キロワット時)を上回って7月としての過去最大を更新した。

 北電の場合、販売電力量は暖房の使用がピークを迎える1月が最大で、夏場は8月の実績が一番高い。平年を上回る気温が続いているだけに同月として過去最高になる可能性は高いと見ている。


◎函館市の110歳以上、戸籍上1005人に

 所在不明の高齢者が全国で相次いでいる問題で、函館市は30日、戸籍がありながら住民登録がない110歳以上の所在不明者が、7月31日現在で1005人いることを明らかにした。最高齢は1861(文久元)年生まれの149歳の男性。主な原因として1934(昭和9)年の函館大火や、54(同29)年の洞爺丸沈没事故といった市特有の大規模災害などが想定される。年金の不正受給などの実害はないが、市は今後、函館地方法務局からの指示を得ながら、該当者の戸籍を削除する方針だ。

 西尾正範市長が30日の定例会見で明らかにした。

 市は先週、110歳以上で戸籍の付票に住民票がない人を対象に調査を実施し、1005人が判明。内訳は110―119歳が849人、120―129歳が133人、130―139歳が16人、140−149歳が7人だった。

 2007年3月から戸籍を電算化し、住民票がない戸籍も把握していたが、同部は「データの正確なセットアップが第一で、所在確認を並行して行うことは困難だった」としている。

 抹消されなかった原因として、函館大火や洞爺丸沈没事故などの際に、本籍や氏名が不明のまま死亡届が処理されたケースや、48年の墓地埋葬法の施行以前に死亡届が出されなかったケースなどを想定。これに加え「戦後の混乱期に樺太やロシアから引き揚げた際、新たに戸籍を作り直したケースも多いのでは」(須田正晴市民部長)という。

 函館地方法務局管内では、110歳以上の高齢者が所在不明となり生死が確認できない場合、自治体は法務局の許可を得た上で戸籍を削除できる。ただ、自治体が職権で削除する場合には「戸籍をさかのぼって、おい、めい程度まで調べて法務局に申請する必要がある」(同部)という。

 西尾市長は会見で「法務局と連絡を取り合いながら、慎重に対処したい」と述べた。(千葉卓陽)



◎大衆文化振興に寄与、ギリヤークさんに感謝状

 函館市は30日、函館出身の大道芸人ギリヤーク尼ケ崎さん(80)に、長年にわたる市内の公演において地域の大衆文化の振興と発展に寄与したとして感謝状を贈呈した。

 この日はギリヤークさんが市役所を訪れ、西尾正範市長が感謝状と記念品を手渡した。ギリヤークさんは「賞などを受けるほど自分の芸は立派でないと思っていたので、これからの励みになる。まだ8年間頑張り、88歳(米寿)の節目に迎える青空公演50周年を成功させたい」と決意を話していた。

 ギリヤークさんは西尾市長に自身の青空公演40年を記念し作成したDVDをプレゼント。「高齢にも関わらず元気ですね」と言葉を掛けられると、毎日行っているという柔軟体操を披露し「舞踊生活に引退はない。ひざは悪いが腰はしっかりしているので大丈夫」と答えた。

 約25年続いている7月の道内公演に続き、8月29日に開かれた「ざいだんフェスティバル」でも市民に鎮魂の舞を披露したギリヤークさん。「亡くなった人の気持ちになり、祈りを表現することは難しい。以前、アメリカで踊っているときに警備上でトラブルがあり、現地の人から『どんなに頑張ってもあなたは賞を受けることはない』と言われていたので、今日は本当にうれしい」と笑顔だった。(山崎純一)



◎函館市消防本部、救助技術大会で好成績

 京都市で27日に行われた「第39回全国消防救助技術大会」(全国消防協会主催)の2種目で上位入賞と好成績を収めた函館市消防本部(向平博吉消防長)の職員11人が30日、函館市役所を訪れ、西尾正範市長に大会結果を報告。「多くの応援と支えを励みに、みんなで頑張ることができた。この経験を今後の業務に生かしていきたい」とメンバーは決意を新たにした。

 大会には、全国各地の消防本部から選抜された約1000人が集い、函館市消防本部は引き揚げ救助とロープブリッジ救出に出場した。

 当日は40度近い炎天下に見舞われたが「市民からの激励に応えたい。いつもの訓練通りにやれば大丈夫。暑いけど頑張ろう」とメンバーは持ち前の集中力と団結力を発揮。引き揚げ救助は22チーム中トップの成績で、ロープブリッジ救出も28チーム中4番目と函館市内勢としては2種目ともに歴代最高の快挙を果たした。

 向平消防長は「見事なまでに正確で迅速な動きだった。日ごろの訓練の頑張りが最高の成績につながった」と西尾市長に報告。西尾市長は「朗報に市民が喜んでいる」とメンバーをねぎらい「栄誉なことで、みなさんの人生の記念にもなったはず。今回の経験を後輩に伝え、日々の任務にあたってもらいたい」と全員と握手を交わした。

 引き揚げ救助の古田真樹さん(23)は「訓練、大会当日と暑さが一番辛かったが、仲間と一緒に頑張ることができたことは自信になった」。ロープブリッジ救出の小原孝祐さん(24)は「大会後に会う人会う人に『おめでとう』と言ってもらえるのがうれしい。貴重な経験になった」と話していた。(田中陽介)

 全国出場者は次の通り。(敬称略)

 ◇引き揚げ救助▽五十嵐裕晶(指導者)竹内俊司、長岐優大、古田真樹、大橋諒、蒔苗多有磨(以上隊員)

 ◇ロープブリッジ救出▽渡会悟(指導者)畑山遼吾、荒木俊太郎、鳥羽賢郎、小原孝祐(以上隊員)


◎高齢者虐待防げ/函館市要援護対策ネットワーク協設立

 高齢者虐待防止に向けた情報共有や連携を図る「函館市要援護高齢者対策ネットワーク協議会」(会長・川越英雄市福祉部長)が30日、設立された。同日に函館市役所で開かれた設立総会では、函館市の高齢者虐待の実情や参加団体の活動報告が行われたほか、今後、高齢者支援対応の指針とする「函館市高齢者虐待対応マニュアル」を来年2月完成を目指して作成することなどが確認された。

 同協議会は国や道、警察、市、医療、福祉など15団体や機関で構成。高齢者虐待の通報に対し共通の対応マニュアルを作成して、市民や保健・医療・福祉関係者、介護サービス事業者が情報を共有し連携を強化する目的で設立。また市が高齢者の孤立対策として2008年度から実施する「高齢者見守りネットワーク事業」の連携協力体制を構築する狙いもある。

 会合では函館市の昨年度の虐待実態が示された。相談は43件で、そのうち市が虐待があったと認めた事例が25件に上ることが明らかになった。内訳では介護を行う家族による暴力が半数以上を占め、年金などの使い込みなどの経済的虐待、言葉の暴力など心理的虐待なども報告された。

 同協議会ではこうした実態を踏まえ、10月にも同マニュアルの原案を策定する考え。川越会長は「今後各団体の課題を持ち寄ることで、協議会の中で対応していきたい。またそれ以前に虐待が起きない街にするためにどうすればいいか。協議会や地域全体で議論していきたい」と述べた。(山田孝人)