2010年8月5日 (木) 掲載

◎市営熱帯植物園、「オオゴマダラ」羽化に再挑戦

 函館市営熱帯植物園(湯川町3)で7月下旬に羽化した日本最大のチョウ「オオゴマダラ」が3日から、姿が見られなくなり、関係者が幼虫の羽化に再チャレンジする。白黒の独特のまだら模様から「新聞蝶」とも呼ばれるオオゴマダラ。関係者は「ふわふわと優雅に舞うその美しさをもう一度、多くの市民に見てもらいたい」と張り切っている。

 オオゴマダラは沖縄県以南に生息。13―15センチにも達する羽の大きさのほか、さなぎが黄金色に輝くのも大きな特徴で、寿命は2―3カ月とされる。

 同植物園を管理・運営する函館エコロジークラブ(福西秀和理事長)のメンバーらが市民に珍しいチョウを観賞してもらおうと、2008年3月にトライしたのが始まり。そのときは生育環境が整わず羽化は失敗した。しかし今年までに、オオゴマダラの幼虫が好んで食べるキョウチクトウ科の「ホウライカガミ」と呼ばれる植物がすくすくと成長。「これなら生育できるのでは」と今年7月1日に沖縄県本部町の「琉宮城・蝶々園」から幼虫や卵などを取り寄せ、羽化に成功した。

 さなぎから返ったのは3羽。温室内を元気に飛ぶ様子は親子連れやカメラマンらの人気を集めたが、温室は40度超で、関係者によると風通しも悪い。さらには直射日光も災いし3日、1羽の死骸が見つかり、2羽も行方知れずとなった。

 同日、同植物園の管理責任者、坂井正治さん(72)が再度、幼虫を発注。温室ドームの上に遮光幕を張り巡らし、直射日光の軽減に着手した。幼虫が届き次第、年内の羽化を目指して大切に育てるという。

 坂井さんは「オオゴマダラを見たことがない人はたくさんいるはず。市民がチョウの大きさ、美しさに喜んでもらえるよう仲間と頑張りたい」と意気込んでいる。(長内 健)



◎相次ぐ登山遭難 知識、準備万全に

 今月に入り日高山系で相次いで起きた登山者の遭難事故について、道南の登山関係者は「山に対する知識不足、準備不足に起因している」と口をそろえる。道南では遭難事故は少ないとされているが、折からの登山ブームで愛好者は増加傾向にある。登山の知識、心構えの啓発など事故の再発防止に向けた取り組みが急がれる。

 2日はヌカビラ岳で登山ツアー客8人が疲労で動けなくなり道警に救出された。さらに2日から3日にかけて、幌尻岳では女性登山者4人が額平川を渡る途中、1人が下流に流され死亡、3人は救助された。

 特に、幌尻岳の事故について、北海道アウトドアガイドの資格者で、函館山楽クラブの丸岡進一会長(46)は「川を渡る際、ロープは必需品。登山愛好者の中では常識」とし、遭難者の準備不足や経験不足を指摘。「山と平地では天候の差があり、変化もめまぐるしい。直近の天気予報を確認し、無理な登山は避け、危険が伴う場合は中止、撤退することも大事」と語る。

 登山愛好者の中には、日本百名山の登山を楽しむ愛好者も多く、近年、旅行会社などが企画するツアー登山が増えている。函館山岳連盟の会長で、函館山岳会の野口邦夫会長(62)は「ツアー参加者の中には連れていってもらうという意識が先にある」と指摘する。同会では、個々の能力や経験に応じた山の登山を励行し、初心者を難所の山に同行させることはしない。野口会長は「登る山を事前にしっかり勉強し、自分の体力、経験を的確に判断して臨んでほしい」とアドバイスを送る。

 道警函館方面本部によると、昨年の道内の山岳事故は、10人が命を落としたトムラウシ山の遭難事故を含め49件(前年比13件増)で、遭難者の総数は100人(同61人増)に上った。道南の発生事故は狩場山(せたな町)で札幌の山岳会メンバーの女性が滑落で骨折した事故があった。

 同本部は登山計画書の提出を呼び掛ける。登山する日時、場所、登山ルート、装備品などを記載し、各警察署に提出するもので、提出は登山者の任意。昨年は遭難事故49件中、提出は14件と28%にとどまっている。

 同本部地域課は「事前の登山準備に対し助言ができ、万が一遭難しても迅速に対応できる。ぜひ提出してほしい」と訴える。

 渡島、桧山の関係市町や警察、消防などでつくる「南北海道山岳遭難防止対策協議会」は、毎年行っている夏・冬山に対応した救助訓練を今秋も実施する予定で、同協議会は「道南の山での遭難は極めて少ないが、危険性は計り知れない。登山者への注意喚起をこれからも続けていく」としている。



◎函水高の加我君、写真コンで大賞

 函館水産高校3年の加我匠吾君(18)の「長い道のり」と題した3枚の組み写真が、第21回人と海のフォトコンテスト「マリナーズ・アイ」展(全日本海員福祉センター主催)で大賞に輝いた。ハワイまで航海する乗船実習中、仲間の日常風景を自然体でとらえた作品で、応募があった約3000点の中から最高賞を受けた。

 同コンテストは、海で働く人たちや、海、船、港、海岸など、海を題材とした作品を募り、本年度は全国の898人から3009作品が寄せられた。これまで一般公募のコンテストに応募したことがなかったという加我君は、実習に持参した私物の小型デジタルカメラで見事大賞を獲得し、「そんなに自信はなかったのでびっくり」と驚く。

 加我君は高校入学後、写真部に入部。2年の時に、約1カ月半にわたる長期の乗船実習で、航海技術やマグロの操業などを学んだ。この実習で船内の仲間たちの様子などを写真に収めた。取りためた約300枚の中から3枚を選んだ。

 作品の1枚目は楽しい食事風景、2枚目は疲れて横になって休んでいる仲間、3枚目は実習している太平洋の位置を表す海図。「生徒の何げない日常を、物語性を持たせて表したかったので、3枚組みの作品にした」と加我君は言う。

 審査員からは「多感な青春時代のほろ苦さと大きな夢を持ってこれからの人生を乗り越えていこうとする青春群像が浮かび上がってくるようなさわやな作品」と評価を受けた。加我君は「写真はその瞬間の光景を残せるところが魅力。これからも写真を続けたい」と話している。(宮木佳奈美)


◎【インサイド】事業仕分け前半終了、厳しい指摘どう反映

 函館市版の事業仕分け「函館市事業レビュー」は前半部分が終わり、審議された7事業すべてで「改善すべき」、うち3事業は「一部廃止」の検討を求められる結果となった。“仕分け人”となった8人の審議委員からは主に事業の目的や成果、効率性の面で厳しい意見が相次ぎ、それに的確な答えを示せない担当部局の姿も目立った。評価内容を来年度予算にどう反映させるかは市側に委ねられるが、今回のレビューを単なるパフォーマンスで終わらせないための対応が不可欠だ。

 7月26―29日に行われた第1弾は、公用車の集中管理や健康づくり推進事業、恵山海浜公園維持管理費など10事業が対象となり、土木部所管分を除く7事業を審議。民間シンクタンク「構想日本」の方法をアレンジし、@1事業が必要か廃止かA行政と民間どちらがやるのかB市直営か民間委託かC現行通りか改善か―の4項目でチェックし、これに総合評価を下す手法を取った。

 結果、審議された7事業すべてで改善が必要とされ、「国際化施策推進費」「市民健康づくり推進事業」「犬による危害の防止対策費」の3事業は事業そのものを必要としつつ、一部は廃止を検討すべきとの結論が下された。

 一部廃止判定を受けた「国際化施策推進費」(本年度予算額1099万円)の審議内容をみると、ユジノサハリンスクなど海外5都市と結ぶ姉妹都市交流・友好交流都市提携への疑問の声が続出。行政にとっては“慣例”といえる市長や議長の訪問に対して「交流が必要なら親書の交換で足りる。今の経済・社会情勢では認められない」「派遣する人に偏りがある」などの意見のほか、市側が強調する「交流」の具体性についての質問も投げかけられた。

 民間委託、改善の判定が出た「恵山海浜公園維持推進費」の議論では、説明者が利用者数を提示して「多くの人々に利用されている」と理解を求めたが、物産館のレジカウントに5―10倍の補正をかけて算出した利用者数のずさんさが指摘された。説明者側は「正確ではない」と認め、委員の質問にしどろもどろになる場面も見られた。

 委員の指摘がすべて的確かという点では、客観的事実によらない直感的な内容も散見された。しかし、事業の一つひとつを「なぜ必要で、目的は何なのか」「どんな成果が認められるのか」という視点で見ていることは明らかだ。市行政改革課は「個別の事業もそうだが、役所全体の意識として考えていかなくてはならない」と語る。

 8月には今回積み残した3事業を含む17事業を審議する予定で、下された評価を市側が来年度予算にどう生かすかが焦点。ある委員は「市のパフォーマンスで終わらせたくない。だからこそ、こちらとしても厳しく言わざるを得ない」と鋭い視点で臨む構え。同課は「目的やコスト意識はどの事業にもつながるもの。意見をこれからの行政に、何らかの形で反映させなくては意味がない」とする。(千葉卓陽)


◎小学生らが「イカ墨染め」体験

 イカ墨インクを使って、オリジナルのTシャツやハンカチ作りに挑戦する講座「イカ墨で遊ぼう」(NPO法人どうなん「学び」サポートセンター主催)が4日、函館柏野小で開かれた。同校の児童ら15人が参加。函館市神山在住の版画家、平方亮三さんの手ほどきを受けながら、個性あふれる作品作りに挑戦した。

 地域特有の資源を活用し、市民に広い知識を身につけてもらおうと、イカ墨を使って作品作りに取り組んでいる平方さんに協力を依頼した。

 イカ墨染めの手順は、個々がデザインしたイメージを、透明な板からカッターナイフで切り抜き、それを布の上に置いて、上からイカ墨インクを押し付ける手法。普段、ナイフを使用する機会の少ない子どもたちは、最初はおっかなびっくりの様子。しかし、慣れてくると細かい作業もスムーズに進められるようになり、機関車や動物などの身近な物から、円や星型などを組み合わせた幾何学的な模様まで、多彩なデザインを自由に生み出していった。

 斉藤零生さん(柏野小4年)は「おばあちゃんの家のネコをデザインしてみた。思ったより難しくなくて、とても楽しかった」と笑顔を見せていた。平方さんは「子どもたちが器用なことに驚いた。これをきっかけに道具を使った作品作りに興味を持ってくれれば」と期待していた。(小川俊之)