2010年9月10日 (金) 掲載

◎秋保さん青函連絡船洞爺丸のメニュー再現へ

 青函連絡船洞爺丸が沈没した昭和29(1954)年9月26日、同船にコックとして乗り組み生還した函館市の秋保栄さん(77)が、慰霊のため同船の食堂で提供していたメニューを再現する。沈没から56年目を迎える26日、遺体が運ばれた函館市大森町の慰霊堂で実行委が法要を行い、函館大妻高校生徒の協力を得て、同メニューを振る舞う食事会を開催。秋保さんは沈没時の貴重な体験を証言する。

 洞爺丸は台風15号(洞爺丸台風)により4隻の貨物船とともに沈没。約1400人の死者を出した海難事故は日本最悪とされる。約200人いた生存者は高齢化が進み、長年にわたり調理師や調理講師として活躍してきた秋保さんも、このほど表舞台から去ることを決めた。引退をきっかけに、「函館市民にすら忘れられていく存在」(秋保さん)と感じる洞爺丸沈没のことを、次の世代に伝えたいと考えた。

 秋保さんは山形県戸沢村の出身。19歳で鉄道弘済会船舶函館営業所で働き始め、系列ホテル勤務を経て青函連絡船の食堂調理員となった。沈没当日は別の連絡船大雪丸に乗る予定だったが、洞爺丸の人手が足りなくなったため、急きょ同船に乗り組むことに。船内に海水が入ってきた時のことを「船がかっぱがって、そりゃあ大変だった」と振り返る。

 法要は「青函連絡船洞爺丸他四隻沈没事故法要実行委員会」(発起人代表・池田延己函館大妻高校校長)が主催する。26日午前11時半から慰霊堂で、祭壇を前に犠牲者を弔い、同日午後1時からは同校で食事会を開催。当時食堂で出していたエビフライやビーフステーキ、ポークカツレツなど6品目を提供する。会食後、秋保さんが食事会の出席者を前に、当時の様子を伝える。法要は参加自由だが、会食は事前に招待した関係者のみに限定する。

 料理は、秋保さんが講師として何度も足を運んだ同校の生徒が調理する。9日、同校で再現のための講習会が行われ、当日調理を担当する食物健康科の3年生(38人)が参加した。秋保さんは「26日には供養の気持ちを込めて調理してほしい」と話し、エビフライとポークチャップの2品を伝授。「豚肉は、幅の広い方を左にして置いて」などと注意点を伝え、実際に調理した。

 秋保さんの「料理はよく見て、作って、食べることが重要」の言葉に従い、生徒全員が調理実習と試食をした。参加した榎麻理菜さんは「最初聞いた時は重大な役目なので大変だと思ったが、当日は気持ちを込めて料理を作りたい」と話していた。(小泉まや)



◎知内町の脇本町長が引退表明

 【知内】知内町の脇本哲也町長(75)は9日に開かれた町議会定例会で、来年2月の任期満了に伴う町長選に出馬せず、5期目の現任期限りで勇退することを表明した。脇本氏は「20年間で産業振興などの施策に方向性をつけることができた」と勇退の理由を語り、「やり残した課題や政策を次の人に引き継ぎたい」と述べた。脇本氏が引退を表明したことで今後、次期町長選に向けた動きが活発化しそうだ。

 脇本氏は定例会で「『公平、公正』を信念に、一般行政職を合わせると60年間やってきた。この町はどんな時代であっても不滅。政策や課題については、解決できなかったもの、途中のものもあるが、次の人にしっかりと引き継ぎたい」と述べた。

 また取材に対し、脇本氏は「産業振興や災害対策、福祉の充実など、町の施策に方向性を示すことができた。昨年には引退を決断していた」とし、「1次産業の担い手づくりや高齢者対策などは次の人にやってもらいたい」と語った。

 後継者については「胸の中に(後継者の)名前はあるが、まだ言えない。いずれ明らかにしたい」とした。一方で「(町長は)誰でもいいというわけではない。町政は継続していかなければならない」とも述べた。

 脇本氏は知内高校卒、1950年に町役場入りし、産業課長、総務課長を歴任。91年の町長選で初当選。5期20年にわたり町長を務めている。強いリーダーシップを発揮し1次産業の振興に力を入れ、ニラやカキを全国ブランドに押し上げた。北海道町村会副会長や渡島町村会長、全国半島振興市町村協議会会長などの要職に就いている。

 脇本氏は2期目以降4回連続で無投票当選。次期町長選は早ければ来年1月にも行われる見通しで、選挙戦となった場合、20年ぶりの投票となる。(松宮一郎)



◎フレンチレストラン「ブランヴェール」がサロン新設

 【七飯】フレンチレストラン「ブランヴェール」(大川6、田中秀幸代表)は、店舗敷地内に「サロン・ド・ブランヴェール」を新設した。7月にオープンしたばかりのサロンは、白を基調とした落ち着いた雰囲気で、料理教室の開催やサロンコンサートなど新たな試みを始めている。田中代表(42)は「くつろいでもらえる空間づくりを心がけた。今後、さまざまな形で活用していきたい」と話している。

 新設したサロンには、オープンキッチンを備えた。料理教室は、田中代表らが調理方法のアドバイスをしながら、料理する様子を見せるデモンストレーション形式。厳選された旬の食材を利用し、家庭でも気軽に再現できるレシピを公開している。

 また、男性限定の教室も開催し、料理を趣味とする人や経験のない人たちが集まり、好評を得た。田中代表は「フランス料理にこだわらず、家庭でアレンジできるレシピを提案していきたい。日々の家事で簡単にできるもの、男性向けには少し手の込んだ料理を紹介している」とする。

 新たな取り組みとして、サロンがオープンした7月末には、バイオリニストの大平まゆみさんを招いた。大平さんは、客席で演奏をしたり、来場者のリクエストにも気軽に応えていたという。今後、こうした機会を設け、音楽と料理を楽しめる空間として、活用していきたい考えだ。

 田中代表は「料理教室だけではなく、展示会場としてや料理人同士の交流、勉強の場としても活用し、さまざまなことを発信していきたい」としている。

 料理教室は、昼クラス午前10時から、夜クラス午後7時から。今後、15、16両日、10月6、7両日を予定。男性向けは10月14日午後7時から開催する。予約限定。問い合わせは同店TEL0138-66-3005。(今井正一)


◎エコカー補助金打ち切り、道南ディーラー悲喜こもごも

 自動車の国内販売低迷の打開策として政府が行ってきたエコカー補助金制度が、7日分で打ち切りになったことを受け、道南地域の各ディーラーは悲喜こもごもの様相をみせている。同制度は9月末まで行われる予定だったが、8月に入ってから駆け込み需要が加速し大幅な前倒しとなった。今後は補助金を当てにして新車購入を考えていた消費者の買い控えなども心配される。

 早期打ち切りを見越して、9月5日までの成約分については、車種によって10万円もしくは5万円の保証キャンペーンを展開していた北海道スバル神山(函館市中道2)では「キャンペーンを通じて補助金の期限が迫っていることを知った顧客も多く、期間中の成約数も大幅に増えた」と喜ぶ一方「今後は打ち切りの反動で販売数が落ち込むのが心配。継続中のエコカー減税などを活用してもらえれば」と話す。

 特別な保証措置などを取っていなかったトヨタカローラ函館(函館市昭和4)では「打ち切りの可能性があることは顧客に十分に説明していたので、現在のところ苦情などは受けていない」と話す。補助金制度については「販売アップにつながったのは確かだが、終了時期が不確定なことで戸惑いも多かった。今後は特別仕様車など魅力ある商品をそろえて販売数の維持に努めていきたい」と話している。(小川俊之)


◎12日に「映画『海炭市叙景』inバル街」

 函館市民が制作にかかわり、函館出身の作家・故佐藤泰志の原作を映画化した「海炭市叙景」の映画完成イベント「映画『海炭市叙景』inバル街〜映画完成までの歩み」が12日、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で開かれる。映画予告編が全国に先駆けて上映されるほか、出演者らによるフリートーク、メーキングDVDの放映も行われる。

 同映画は、北海道出身の熊切和嘉監督がメガホンを取り、函館をモデルにした架空の地方都市「海炭市」に生きる人々の生活を描いた。加瀬亮さん、小林薫さんら俳優陣のほか500人を超えるエキストラが参加し、市民参加型で作り上げており、11月27日の函館を皮切りに全国で公開される。

 12日には市民キャスト、スタッフによる制作の裏話が聞けるほか、映画館で流される予告編とは異なる5分間の特別予告編が放映される。また、ロケの様子を撮影したパネルも同日から1週間ほど同センターに展示される。

 同日は、バル街に参加するBAR SHARES、ビアバー山下など4店舗で映画製作の過程を追ったDVDを放映するほか、制作実行委スタッフがPR活動を展開する。政策実行委の菅原和博委員長は「当日は地域交流まちづくりセンターなどで前売り券の発売を開始する。ぜひ足を運んでほしい」と話していた。(黒田 寛)