2010年9月12日 (日) 掲載

◎17年ぶりどさんこ能力調査

 北海道和種馬保存協会道南支部(宮上博支部長)は11日、通称どさんこと呼ばれる北海道和種馬の駄載(ださい)能力調査を、函館市鉄山町の谷地山牧場で17年ぶりに行った。4頭のどさんこが隊列を組み、合計約500キロの荷物を背負い10キロの道のりを力強く進んだ。

 どさんこは、交通網が未発達だった時代の荷物の運搬役として活躍し、北海道開拓の原動力となった。中でも4頭から5頭で隊列を組み、1人の馬追いが操る「ダンヅケ」と呼ばれる技術は、一度に大量の荷物を運ぶことができるため重宝されたという。

 同支部では、基調な伝統技術を伝承しようと1993年に5頭の隊列2組による駄載力テストを実施。今回は17年ぶりに再び実施することになった。

 どさんこの隊列は、先頭から「サキ」「テモト」「ナカ」「ステウマ」の4頭で、それぞれに馬体重の3分の1程度のふすまが入った袋を背負わせた。隊列を操る馬追い役は、4頭のバランスを上手に取りながら片道2・5キロのコースを約1時間かけて2往復した。

 ゴール後は獣医師の宮上支部長が1頭ずつの脈拍をチェック。過酷な重労働にもかかわらず馬の脈拍はいずれも正常値内にあり、どさんこの忍耐力の強さをうかがわせた。

 宮上支部長は「今の函館の発展はどさんこの活躍があったからこそ。今後も災害時の緊急輸送など、どさんこが活用できる場はあるはず。今回の調査をきっかけに、伝統的な馬文化の周知に努めていきたい」と話していた。(小川俊之)



◎ラ・サール高の新寮が落成 完成祝う

 函館ラ・サール高校(フェルミン・マルチネス校長、生徒569人)の新高校寮(函館市日吉町1)の落成式が11日、同校で行われた。教職員や同窓会、PTAなどの関係者が完成を祝うとともに、学校のさらなる発展を願った。

 高校寮は建設から約40年が経過し、施設の老朽化が進んでいたことを受け、今年の開校50周年記念事業の一環として昨年5月から建設工事が進められた。新寮は鉄筋コンクリート造り5階建てで、延べ床面積8045平方メートル。総事業費は13億6500万円。定員450人で、全92室ある4人部屋のほか、2階には60人が生活できる大部屋を配置し、寮の歴史を継承した作りとなっている。

 午後5時からは寮正面に設置された銘板の除幕式が行われた。同校を運営する函館ラ・サール学園のアンドレ・ラベル理事長ら3人がテープカットを行い、在校生とともに緑色のシートを外すと、縦1・6メートル、横1・2メートルの銘板がお目見え。出席者が次々と記念撮影を行った。

 その後、ホテル法華クラブ函館に会場を移して落成式と祝賀会を行い、約60人が出席した。ラベル理事長は「保護者や同窓会の協力のおかげで立派な寮ができた。寮生には我が家のように、大切に使ってほしい」と話していた。(千葉卓陽)



◎函館と中国のつながり実感

 函館中華会館創立100周年記念シンポジウム(実行委主催)が11日、2日間の日程で始まった。11日は同会館(函館市大町1)で特別見学会が行われたほか、旧外国人居留地の散策会が開かれ、函館に残された中華社会の歴史をたどった。

 中華会館は三国志で有名な英雄「関羽」を祭る建物として1910年に完成。国内で唯一現存する清朝末期の建築物としても知られている。老朽化が進んでいるため、現在は夏場の一時期しか一般公開していない。今回は見学できる貴重な機会とあって、一般からも大勢が来場した。

 見学会では函館華僑総会理事の任道治さんが函館と中国との歴史的つながりを説明。1854年のペリー来航時に通訳補佐として広東出身の人羅森が随行し、のちに「日本日記」で当時の箱館について記していることなどを紹介した。函館市宮前町の加藤卓司さん(65)は「久しぶりに中華会館に入ったが、歴史的価値の高さを実感した」と話していた。

 この後、参加者はバスで中華山荘(函館市船見町23)に移動。はこだて外国人居留地研究会が完成させた「居留地マップ中国編」を使って散策を楽しんだ。

 12日は午前9時から函館市中央図書館(五稜郭町26)で中華会館に関する記念講演会や研究報告などが行われる。(小川俊之)


◎土笛づくりや鍋試食

 子どもたちに縄文文化に触れてもらい、将来的に遺跡の保存や活用に携わる人材育成を目指す「縄文文化体験ツアー」が11日、函館市南茅部地区などで行われた。参加者は遺跡の見学や当時の食材でつくった縄文鍋の試食などを通じて、地域に眠る古代のロマンに思いを巡らせた。

 渡島総合振興局と渡島教育局の主催。地元の中高生を対象に地域資源を磨き上げ、縄文遺跡の発掘や保存、活用にかかわる「縄文サポーター」を育てようと初めて企画した。この日は市内の中高生41人をはじめ、家族連れや一般の縄文ファンら約100人が参加した。

 参加者は南茅部公民館で粘土を使った縄文土笛づくりを体験した後、縄文時代から地元で採れたコンブやサケ、アサリ、山菜などが入った塩味の縄文鍋を試食。レプリカの縄文土器に熱々の石を入れて煮立たせる調理法が披露されると、参加者からは歓声が上がり、縄文の食文化を目と舌で堪能した。

 この後、参加者は大船遺跡(同市大船町)や森町の鷲ノ木遺跡を巡り、学芸員らから当時の生活様式などについて説明を受けた。参加した道教大附属函館中2年の田島朱莉さん(14)は「自分たちの祖先が家電とかもないのに工夫して生活していたことに驚いた。便利になった今だからこそ、物を大事に感謝して使おうと思った」と話していた。(森健太郎)


◎函館の「地域力」考える

 年老いても心豊かな暮らしができる「地域力」のあり方を考える「幸福(しあわせ)づくり考inはこだて」が11日、函館市高丘町の函館大学で開かれた。有識者のフォーラムと映画上映の2本立てで、市民が安心して暮らせる地域づくりを考えた。

 公益法人さわやか福祉財団(東京、堀田力理事長)が主催し、年2回のペースで開いている。函館での実施は初めてで、約110人が集まった。

 1部は「函館ふれあいトーク—ためされる地域力」と題してフォーラムを開催。初めに元NHK解説委員の村田幸子さんが講話し、「誰もがいずれ、必ず単身になる。“独り”を基本に安心して暮らせる仕組みづくりや、人と人とのつながりの再構築が大切」と訴えた。

 その後、西尾正範函館市長、函館市医師会病院の岡和田敦消化器科医長、箱館歴史散歩の会主宰の中尾仁彦さんが意見交換。西尾市長は「幸せというのは単なるモノではなく、心の充足感。皆がゆりかごの中に入れるような共同体を作っていくことがわたしの仕事」、岡和田さんは「高齢者は元気なうちに、家族の間で死についてしっかり話し合ってほしい」と述べた。中尾さんは「定年を迎えた時の生きがいづくりが大事。現役のうちから計画を立てた方がいい」と呼び掛けた。

 2部はドキュメンタリー映画「ただいま それぞれの居場所」を上映。介護の在り方を問う内容に、参加者がじっくりと見入っていた。(千葉卓陽)