2010年9月27日 (月) 掲載

◎漂着クジラ、希少種と判明

 函館市石崎町の砂浜に漂着したクジラの死骸(しがい)の解剖が26日、現地で行われ、調査の結果、世界的にも珍しいタイヘイヨウアカボウモドキと判明した。世界では十数頭が打ち上げられるなどして確認されており、日本では2例目。南の海に生息するクジラで、今後、分布域の見直しが迫られそうだ。

 調査は北大大学院の松石隆准教授が代表を務める「ストランディングネットワーク北海道(SNH)」が主体で実施。国立科学博物館(東京)から漂着鯨類研究の第一人者、山田格さんら研究員と北大鯨類研究会の学生が加わった。

 松石准教授らによると、クジラは「歯クジラのアカボウクジラ科」で体長6・19メートルの雌。頭部のほか、体色や体形などから種を特定した。インド洋や太平洋に分布し、ハワイ沖では数百頭が生息するが、「それでも世界的に生息数は少なく、生態も不明」(松石准教授)という。

 このクジラは2002年に見つかった鹿児島県が分布域の北限、東限とされていた。今回の発見で松石准教授は「なぜ函館に漂着したかは分からないが、今後分布域の見直しが必要になるのは確か」と話す。

 この日は午前8時半ごろから外部形体の測定や写真撮影などを行い、全身を解体。全身の骨格のほか、肉片や臓器などを取り出し、病変や汚染物質の有無などを調べた。目立った病変はないが、妊娠の形跡が見られたという。国立科学博物館の研究員、田島木綿子さんは死因について「流産や死産の可能性もある」と推測。山田さんは「人間ならおばあさんぐらいの年齢。衰弱して海をさまよっていたのでは」と話す。

 骨格は27日以降、国立科学博物館へ送り、臓器などは同大や愛媛大、日本鯨類研究所など国内の研究機関に送付し、詳細を調べる。希少種としての生態や死因などを明らかにし、保全対策などに役立てる考え。

 8年前、鹿児島に漂着したクジラを解剖した山田さんは「当時見つかった全身は死後1週間以上が経過し状態が悪かったが、今回は全身をくまなく調査できそう。一例一例データを積み重ね、この個体の生態が明らかになれば」と期待。松石准教授は「本当に驚いているが、我々専門家が現場で解剖、調査できて良かった。このクジラが死んでいたのは残念だが、今後の研究に役立てられることを思えば不幸中の幸い。クジラへの供養にもなるのでは」と話している。(長内 健)



◎洞爺丸台風慰霊法要、犠牲者の冥福祈る

 【北斗】1954年9月26日に発生した洞爺丸台風事故の犠牲者をしのぶ慰霊法要が26日、北斗市七重浜の「台風海難者慰霊碑」前で開かれた。全国各地から遺族ら約70人が参列し、犠牲者の冥福を祈った。

 洞爺丸台風事故では、青函連絡船「洞爺丸」と4隻の貨物船の合わせて5隻が台風15号による突風や高波で沈没し、乗客・乗員1430人が犠牲となった。慰霊碑は多くの遺体が漂着した七重浜の海岸に事故の翌年建立。現在は青函連絡船遺族会(渋谷武彦会長)と函館市仏教会(日比優道会長代理)が中心となり毎年法要を行っている。

 さわやかな秋晴れの下、僧侶が読経する中で参列者は順番に焼香。中には親子3代で手を合わせる姿も見られ、事故から半世紀を超える歴史の重みを感じさせた。

 続いて高校生の時に、洞爺丸の船員だった父を亡くした遺族会の富樫淳次副会長があいさつに立ち「毎年たくさんの遺族の方々が法要に参加してくれることは大変ありがたい。今後は次の世代にこの事故の記憶を伝えていくことが大切」と訴えた。

 3歳の時に母親と妹、叔母を一度に失った佐賀県在住の唐島佳仁さん(59)は、20年前に北海道に旅行した際に慰霊碑の存在を知り、それ以降毎年法要に参加している。唐島さんは「地元のみなさんが、毎年欠かさずに法要を行ってくれていることに心から感謝したい」と話していた。(小川俊之)

 



◎伊藤亜希子さんピアノリサイタル

 函館在住のピアニスト、伊藤亜希子さんのリサイタル(伊藤亜希子後援会主催)が26日、函館市芸術ホールで開催された。生誕200年を迎えたシューマンとショパンの作品を並べた個性的なプログラムを用意し、ピアノが持つ豊かな表現力を駆使したきめ細やかでありながらダイナミックな演奏を繰り広げた。

 函館出身の伊藤さんは、東京芸術大学大学院修士課程修了後、フランス留学を経て帰国。数多くのコンクールで活躍し、現在は函館を中心に国内外で活動している。後援会主催のリサイタルは1999年から2008年まで毎年行っており、今回は2年ぶり11回目。

 今回はともに1810年生まれで、ピアノのために数多くの名曲を残した2人の作曲家に焦点を当てた。シューマンを取り上げた第1部では、「子供の情景」を叙情性あふれる繊細なタッチで、「ピアノソナタ第2番」をスピード感あふれる切れ味の良さで再現。第2部ではショパンの大作「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」を、前半はしっとりと柔らかに、後半は鮮やかな技巧でスケール感たっぷりに響かせた。(小川俊之)


◎NPOまつり、多彩な催しにぎわう

 道南のNPO(民間非営利団体)や市民団体がジャンルを超えて集い、それぞれの活動をPRするイベント「第6回NPOまつり」(実行委主催)が26日、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町)で開かれ、大勢の市民らでにぎわった。

 福祉や環境保全、まちづくりなどさまざまな分野で活動するNPO法人などが活動内容を広く知ってもらい、団体同士の交流も深めようと、2005年からNPO関係者でつくる実行委が主催して毎年開催している。今年は函館市内を中心に活動する65団体が参加した。

 会場では各団体がブースを設け、取り組みをパネルなどで展示。子どもたちがクレープの製造から販売までを体験学習するブースのほか、11月から函館で先行上映が始まる映画「海炭市叙景」の予告編やメイキングビデオを上映するなど工夫を凝らして紹介した。

 このほか、食べ物の屋台や市民によるバンド演奏、函館の将来や団体の活動について自由に語り合う催しも人気を集めていた。クレープを販売していた函館中島小5年の村上純奈さんは「売るのは大変だけど、買った人が喜んでくれるとうれしくなる」と話していた。(森健太郎)


◎全国青年養蜂家のつどい、ニセアカシアなど植樹

 【乙部】蜂蜜(はちみつ)の里の森づくり—全国青年養蜂家のつどいが26日、乙部町栄浜の「北の魚つきの森」で開かれた。ミツバチとともに全国を旅する養蜂家による講演や、本道では重要な蜜源となるニセアカシアなどの記念植樹を通じてミツバチをはぐくむ豊かな森づくりの大切さを学んだ。

 乙部町、乙部町魚つきの森づくり協議会(中川眞一郎会長)、道養蜂協会成年部(水流俊彦部長)の共催。住民や養蜂関係者ら約200人が参加した。

 父親の代から60年以上にわたり栄浜地区で蜂蜜を採取している、広島県三好町の養蜂家、光源寺毅寿さんは「みんなの生活と蜂蜜」の演題で講演。光源寺さんは「ミツバチには蜂蜜の生産だけでなく、農作物の受粉を助ける大切な役割がある。ミツバチがいなければ野菜も種子も作ることができない」と力説。その上で「農家を支えるハチ不足を防ぐためにも森を大切にしてほしい。蜜源の森を育てている乙部の皆さんは全国で野菜を食べる人たちの力になっていることを誇りにしてほしい」と呼び掛けた。

 道立総合研究機構林業試験場(美唄市)の真坂一彦主査は、蜜源であるニセアカシアをめぐる現状を報告。明治時代に北米から本道に持ち込まれ、街路樹や治山事業などに活用されたニセアカシアを要注意外来生物として駆除する動きがある。真坂さんは「在来植物への影響はほとんどない。ミツバチは季節ごとに咲く花から蜜を採る。アカシアだけをなくしても他の花がない時期にはハチは餌を失う。ハチが居なければ他の植物も受粉ができず子孫を残せない」として、安易な排除に警鐘を鳴らした。

 同試験場の佐藤孝弘研究主幹も、道内の養蜂家を対象にしたアンケート結果から「養蜂家の8割が蜜源として利用しているニセアカシアが失われることを懸念している。蜜源となる森林が減る中でミツバチをはぐくむニセアカシアの重要性はむしろ増している」と訴えた。

 記念植樹では、町内の小中学生が若手養蜂家と手を携えて、大切な蜜源になるトチノキとニセアカシアの苗木500本を植えた。参加者は「たくさんの蜂蜜が採れる森に育ってほしい」との願いを込めて作業に汗を流した。(松浦 純)