2010年9月3日 (金) 掲載

◎函館出身の彫刻家 故・池田譲さんの遺作が室蘭市民美術館に設置

 函館市内で活躍した彫刻家で、七飯町の大沼トンネル南側付近にあるモニュメント「飛翔」などを手掛けた故・池田譲さん(享年55歳)の遺作が4日から、室蘭市民美術館前に設置される。池田さんの妻、みどりさん(59)が同美術館に作品を寄贈して常設が実現し、「多くの人に見てもらいたいと思い寄贈を決めた。手に触れるなどしながら作品に親しんでほしい」と話している。

 池田さんは2007年2月26日、肝臓がんで亡くなった。同美術館に常設される遺作は「作品0510」。亡くなる1年4カ月前の05年10月に全道展60周年記念展に出品した。高さ1.5メートル、幅40センチの石彫作品。中央に縦にわずかな隙間があり、2本の柱が寄り添うようにも見える。

 池田さんは室蘭市とも縁があり、2作品が市内に設置されている。同市や函館市内の知人の働きかけによって同美術館での常設が実現した。

 池田さんは1952年、函館市生まれ。69年から72年まで新宿美術研究所に在学中、石彫を始め、その後、故郷に戻り昭和石材に就職。81年ごろから全道展に作品を出品するようになり、同社に勤めながら創作活動を続けてきた。

 全道展への出品のほか、個展や仲間とともに彫刻三人展などを行い、作品を発表。函館市内には、五稜郭橋や市文学館、道立函館美術館などに作品が設置されている。

 みどりさんは「柔和な性格だけど、石に対しては強い意志があった。作品を見るたび、石に命を吹き込んでいたんだろうなと思う」と振り返る。

 3日、長年苦楽をともにした同社の吉田直人社長(62)が同美術館まで作品を運ぶ。「弟みたいな存在。芸術家だった」と吉田社長。ひたすらのみを打ちこんでいた池田さんの姿が今も思い浮かぶ。

 室蘭市民美術館の小原章嗣館長は「池田さんの作品は人を引き付ける温もり、やさしさがあり、きっと市民も共感してくれる」と話している。



◎イカ不漁 ふるさと小包発送延期 大衆魚なのに価格上昇

 今の時期、最盛期を迎えるはずの函館近海のスルメイカ漁が不振にあえいでいる。連日の暑さによる海水温の上昇が原因とみられ、津軽海峡に回遊するイカが激減。名物となっている生簀(いけす)イカのふるさと小包は発送を延期し、注文の受け付けを見合わせる事態となっている。市場での価格も高騰し、小売店や飲食店が頭を痛めるなど、多くの関係者が漁の回復を願っている。  ふるさと小包を扱う函館市漁協は、商品発送をスタートする予定だった1日に、発送の延期を決めた。注文済みの客に対して事情を説明し、今後の受け付けを水揚げ量が回復するまで見合わせる方針を固めた。窓口となっている市内の郵便局も注文客への電話連絡など対応に追われ、今後は文書を送って理解を求める意向。

 同小包は毎年、9月上旬から10月上旬の期間限定で実施し、8月下旬から予約を受け付ける。漁船の生簀から直接水揚げした生の活イカをチルド便で直送するもので、鮮度と味で好評を得ている。

 だが、今年は水温の上昇で、生簀イカが水揚げ前に死んでしまう事態が相次ぎ、同漁協は「多くの方に迷惑をかけることになるが、品質を落としてまでできない。絶対数が確保できるまで待ってほしい」とする。

 こうしたイカ漁の不漁は市内の経済活動にも影響。函館市水産物地方卸売市場(豊川町27)では現在、イカを昨年同期比62円高の1キロ327円で取り引き。イトーヨーカドー函館店(美原1)ではイカ3杯を398円で販売する。昨年と価格は変わらないが、「大きさは一回り小ぶり」(同店)という。コープさっぽろ湯川店(湯川町1)でも、イカ3杯を同様の価格で店頭に並べ、「大きさにもよるが、昨年は1杯100円ほどが相場だった。価格の上昇により消費者の動きも鈍くなっている」と指摘する。

 函館朝市で飲食店を営む函館朝市協同組合連合会の井上敏広理事長は「今年は例年に比べて仕入れ値が高い。だからといって販売価格を上げればお客さんは遠のく。観光客らもカニやウニに比べてイカには大衆魚のイメージがあるので、利益が出なくても売り手側が身を削るしかないのが現状」と頭を抱えている。(鈴木潤、黒田寛、森健太郎)



◎まだまだ暑い 9月初の連続真夏日

 2日の本道は日本の東海上にある高気圧に覆われ、暑い一日となった。函館海洋気象台によると、道南の最高気温は北斗31.3度、函館31.1度、松前30.4度、今金30.1度とそれぞれ真夏日を記録した。9月としては、松前と今金は初、函館は初の2日連続の真夏日となった。

 函館市青柳町の函館公園にある噴水広場では、子どもたちが水しぶきを上げて遊び、まるで夏休みのような光景。小学2年と3歳の男の子を持つ市内栄町の主婦(31)は「私と二男にとって家に居るのがつらい暑さ。長男も通学が大変。今年はこの公園に3人で10回は訪れたが。また来ることになるのでは」と連日の暑さにうんざりしていた。

 市内元町では、暑さで売れるはずのソフトクリーム店が苦戦の様子。「8月下旬から修学旅行の子どもたちが多くなったが、学校の指導で食べ歩きはできないらしい。人が多くても売れないですね」と嘆いていた。

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 同気象台によると、3日は台風7号から変わった熱帯低気圧が本道付近に接近し、同日夜から4日にかけて通過する見込み。急な強い雨や突風、落雷などに注意を呼び掛けている。(山崎純一)


◎函館ラ・サール高校グリークラブが初の全道大会出場

 8月に函館市芸術ホールで開かれた「第77回NHK全国学校音楽コンクール・道南地区大会」で函館ラ・サール高のグリークラブ(淵上裕司部長)が高等学校の部で金賞を受賞。9月11日に札幌市で開かれる全道大会への初出場を決めた。渕上部長(3年)は「夏休みを返上して練習を重ねた成果が結果となってうれしい。全道の舞台でも力いっぱい歌いたい」と意欲をみせている。

 同校では、寮生活を送る生徒が夏休み中に帰省し練習ができないため、8月下旬に行われる同大会にはこれまで出場していなかった。しかし、顧問を務める声楽家・島聖子さんの「大会を通じて貴重な経験を重ねてほしい」との思いで4年前から出場を開始。毎年、夏休み後半の1週間程度を、函館での合宿練習に費やして本番に挑んできた。

 最初の3年間はいずれも銅賞に終わったが、昨年は「これまでの積み重ねが実を結び、金賞を狙える実力がついた」と島顧問も振り返るように、大きな自信を持ってステージに上がるはずだった。

 ところが、大会前日に同校生徒に新型インフルエンザ患者が発生。同クラブ内に感染者はいなかったものの、出場を自粛することに。その悔しさを晴らすために臨んだ今年の舞台では、出場5校中の最高位である金賞を見事に射止めた。

 渕上部長は「みんなの力が一つになって金賞をつかむことができた」と話し、函館地区の代表として出場する全道大会では「男声合唱ならではの迫力と深みのある表現で、他校に負けないハーモニーを披露したい」と意気込んでいる。(小川俊之)


◎児童虐待89件 育児放棄が過去最多 函館市

 函館市要保護児童対策協議会と道函館児童相談所がまとめた2009年度の児童虐待状況によると、通告があった函館市内の虐待件数は、同協議会の受理分が前年度比12件増の89件と、大幅に増加。調査を始めた06年度以降の最多を更新した。一方で同児相の受理件数は、同5件減の89件に。市子ども未来室は「虐待に対する認識が深まり、積極的に通報されていることの表れ」と受け止める。

 同協議会が1日に函館市役所で行なわれ、報告された。報告によると、同協議会受理分は、77件だった前年度は上回ったが、伸び率は減少した。内容は、ネグレクト(育児放棄)が最も多い53件だった。次いで身体的虐待が26件、心理的虐待は10件で、性的虐待は報告がなかった。

 情報を得た経路は、市福祉事務所が21件と最も多く、以下は保育所15件、市立函館保健所12件、学校11件、家族・親戚10件など。主な虐待者は実母が最も多い64件で、このほかは実父や養父など。すべてに経過観察の対応がとられた。

 本年度は7月末現在で29件が報告されており、09年度同期比で7件少ない。しかし同室は「このところ通報が多くなっており、年度末には09年度を上回るだろう」と推測する。

 一方、同児相が受理した函館市分の内訳は、心理的虐待が最も多い47件で、身体的虐待は31件、ネグレクトは10件。性的虐待は1件だったが、同児相は「数は少ないが表出しているものが少ないと考えられる。深刻さが大きいので、掘り下げて対応する必要がある」との考えを示した。主な虐待者は実父と養父が74%を占め“父”に集中した。

 情報を得た経路は警察などが最多。近隣知人からの通告も相当数を占めたが、同児相は「『何かあったら行政に』という姿勢には問題を感じる」として、地域のつながりのなかでも状況を確認していくことの必要性を説いた。

 渡島・桧山管内から同児相への通告件数は、前年度比27件増の180件に。函館市に次いで多かったのは、北斗市の16件。このほか七飯町9件、木古内町7件、鹿部町と八雲、せたな町が5件など。(小泉まや)