2010年9月8日 (水) 掲載

◎ショパンコンクール本大会出場の岡田奏さん 函館市長訪問

 10月にポーランドで開かれる「第16回ショパン国際ピアノコンクール」本大会に出場する函館出身のピアニスト、岡田奏さん(19)が7日、函館市役所を表敬訪問し、西尾正範市長らと懇談した。岡田さんは「ステージでは心から楽しんで演奏したい」と約1カ月後に迫った本番に向けて抱負を語った。

 岡田さんは函館本通中を卒業後にパリ国立高等音楽院ピアノ科に入学、今年6月に同科最終学年を首席で卒業した。世界三大音楽コンクールの一つに数えられるショパンコンクールには4月に挑戦、DVDと書類審査、予備審査を見事通過し、本大会出場を決めた。14日に函館を出発し、28日にワルシャワ入りする。

 懇談には、岡田さんの父、照幸さんらも同席。毎日7時間ピアノの練習をしているという岡田さんは「パリのアパートにはピアノがないため、楽器がある学校で生活しているようなもの」と現地での生活習慣を紹介。プロを目指す世界の若手奏者81人が腕を競う本大会は、本選まで4つの審査がある難関だが、「素晴らしい審査員の前で演奏できて光栄。勝負というよりも、楽しんで臨みたい」と話した。

 西尾市長は「函館からオリンピック選手が出場するような偉大なこと。頑張ってほしい」とエールを送っていた。

 また、11日午後1時半から函館市芸術ホールで試演会を開く。「バラード第4番ヘ短調」や「幻想ポロネーズ」など本大会で演奏する曲を披露する。入場無料。(長内 健)



◎江差線経営分離の財政支援 函館市議会、国への要望書提出せずで一致

 JR江差線の五稜郭—木古内間(37・8キロ)が北海道新幹線開業時に経営分離される問題で、函館市議会は7日、北斗市が要請していた、国に財政支援策を求める要望書を提出しないことを確認した。道と沿線3市町でつくる、道南地域並行在来線対策協議会で議論が行われていることを重視しての判断で、鉄路維持を求める北斗とのスタンスの違いが浮き彫りとなった形だ。

 この問題をめぐっては、国が並行在来線を抱える自治体に対し、地方負担の軽減策について具体的内容を示していないことから、北斗市は8月に道内選出国会議員へ要望書を提出することで一致。函館市と木古内町に対して共同提出を呼び掛け、木古内町は賛同する意思を示したが、函館市は態度を保留していた。

 市議会は7日の本会議終了後に各派代表者会議を開き、北斗からの要請について協議。複数の関係者によると、協議会において道の方針が明確に示されていない中での要望書提出は困難とする意見で一致したという。札幌延伸に伴う函館駅—新函館駅の経営分離問題も抱える点から、特別委員会や協議会の設置を求める声も出た。出席者の1人は取材に対し「協議会の議論から先行して、要望書を出すことには抵抗がある」と話す。

 協議会では全区間鉄路維持の場合、30年間で105億円の累積赤字が出ると試算。市関係者は同路線が市内を走る距離が2キロと短い上、人口比率や財政規模の面から、鉄路を維持した場合に多額の財政負担を強いられる—との懸念もあり、別の出席者は「(国の財政支援で)赤字額が半分になったとしても、バス転換からは赤字額がかけ離れている」とする。(千葉卓陽)



◎来月8日にフードフェスタ 最終回は道南食材でコース料理

 道南食材を使った料理で地域の魅力をPRする「第5回はこだてフードフェスタ」(実行委主催)が10月8日、五島軒本店(函館市末広町4)で開かれる。2006年から毎年続いた「食の祭典」も今回が最終回で、今月23日には森町で家族連れらで参加できるプレイベントも企画している。

 同フェスタは地産地消や道南食材の知名度アップを目的に、道中小企業家同友会函館支部が中心となって企画。道南の農業者や食品製造業者、流通業者らでつくる実行委が2006年から5カ年計画で函館・近郊で開催し、昨年の第4回は初めて東京にも進出した。

 今回は函館短大付設調理師専門学校の下野茂校長らが考案したメニューを五島軒の佐々木政則総料理長がフランス料理のフルコースに仕立てる。函館近海の魚介類を使った前菜や、地元産のジャガイモのクリームスープをはじめ、八雲町熊石産のアワビの蒸し煮、道南産牛肉のポワレなど地元食材をふんだんに使ったメニューが並ぶ。

 食事前には函館で飲み歩きイベント「バル街」を企画したレストラン・バスクのオーナーシェフ深谷宏治さんのトークショーも。このほか、生産者や野菜ソムリエなど有識者4人の食に関する講演や、地場の農産品や加工品の直売コーナーもあり、入場無料で一般公開される。

 今月23日には、森町のグリーンピア大沼(赤井川)をメーン会場に、駒ケ岳の登山や収穫体験、大沼の水質調査の3コースに分かれた体験イベントも企画。地元産のカボチャを使ったアイスクリーム作りや地元産の肉や野菜、魚介類のバーベキューもセットで付く。

 小島節弥副実行委員長は「道南の豊富な食材の付加価値を高め、地域活性化につなげようと始まった試みも今回が集大成。多くの人に道南の食の魅力を知ってもらい、ブランド力向上につなげたい」とPR。「今後も形を変えて道南食材の底上げにつながるような取り組みは続けたい」としている。

 フードフェスタはトークショーと食事代込みで一人1万円。プレイベントは食事付きで参加費2500円(小学生未満無料)。申し込み、問い合わせは同支部TEL0138・51・8800。(森健太郎)


◎【企画・絆—お年寄りを見つめて(中)】函館市見守りネット

 函館市が2008年度からモデル事業として開始した「函館市高齢者見守りネットワーク事業」。国が「孤立死ゼロ」を目指して指針を定め、全国の自治体が関係団体と連携して同様の事業を実施している。函館市の場合、市社会福祉協議会や町会、在宅福祉委員会、地域包括支援センターなどと連携し、高齢者の見守り体制を構築している。

 業務の中核を担うのが、市から見守り業務の委託を受けた地域包括支援センターだ。同センターは地域の保健・医療・福祉の向上を総合的に推進する機関で、保健師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職が、地域で暮らす高齢者の@生活相談A介護保険サービスに関する助言B虐待などの防止C介護サービスの調整—を柱に活動している。

 見守りネットワークの実施で、この柱のほかに見守り業務が加わった。民生委員や、在宅福祉委員らと密に連携を取り、地域で暮らす高齢者の孤立を防ぐ。40代の女性社会福祉士は「孤立していることを本人の周囲が気づけるかが大事」と話す。

 しかし、対象となる高齢者から反発がなかったわけではない。「制度が始まって間もないころ、『何をしに来たのか』という疑問の声を投げかけられた」(30代の男性社会福祉士)こともあった。ある地区を担当する30代の男性社会福祉士は「連絡を受けて訪ねて行くと『誰から聞いたのか』と問い詰められるケースもあった」と振り返る。

 孤立を防ぐには、高齢者を公的介護サービスへとつなぐことも手段の1つだ。40代の男性社会福祉士は「介護保険サービスを受けることでヘルパーが自宅を定期的に訪問し、状況把握ができる」と利点を挙げる。

 一方で、見守りを拒む人がいるという課題もある。一人暮らしでも元気がある人、もしくは離れていても家族、知人などの支えがある人は安心できる。しかし、親子関係が断絶していたり、施設入所や公的サービスを受け入れない人の存在は支援をする立場にとって心配の種だ。

 40代の社会福祉士は「地域、行政だけでは限界がある」としたうえで「郵便局や新聞販売所といった民間が、訪問時に安否確認する取り組みが広がってくれれば」と期待を寄せる。しかし、現実には個人情報の観点などから実現が難しい。「もっと、ほかの機関と顔の見える関係が作れていれば」。高齢者を取り巻く課題を物語るように、女性社会福祉士がぽつりと漏らした。(黒田 寛)


◎前保育園 移転新築へ 幼保連携型認定こども園に

 【松前】函館大谷短大附属松前保育園を運営する学校法人函館大谷学園(福島憲成理事長)は、同園の園舎を移転新築させ、幼保連携型認定こども園とする計画を進めている。2012年4月からの利用を目指し、来年度中に着工する予定。また、松前町は新園舎完成に合わせ、町立朝日保育所を統合させる方針を固めた。13日に開会する町議会第3回定例会に園舎建設の関連予算を提案する。

 松前保育園は今年4月、町立大磯保育所が民営化され、同学園に運営が移管された。園舎は築30年を超えており、老朽化が進んだことと、朝日保育所を統合した場合、園児数が100人程度になると予想、園舎が手狭になることから移転新築を決めた。

 移転場所は町立松前病院前の南側、道路を挟んで町役場に向かって約150メートルの町有地。敷地面積は約2625平方メートル。鉄筋コンクリート造り平屋で一部が中2階。床面積は995平方メートル。総工費は概算で2億853万円。

 新園舎に完成に伴い、幼保連携型認定こども園に移行する計画で、幼稚園と保育園の機能を併せ持った施設にする。そのほか、子育て支援室を設け、子育て中の母親をサポートするなどサービスの充実を図る。同学園は今後、道に認定こども園設置の認可を申請するとしている。

 町が関連事業費として計上するのは、基本設計費219万円、地質調査費21万5000円の計240万5000円。本年度中に実施する予定。認可が得られれば、園舎建設にかかる町と同学園の負担と国からの補助金が決まる見通し。

 福島理事長は「子育て支援室のほか、園児が地域住民と触れあえる場所を多く持ち、開かれたこども園を目指す。地域と一緒に幼児教育を推進していきたい」と話している。(松宮一郎)