2011年10月10日 (月) 掲載

◎魚つかみ取り夢中 とことん祭り盛況

 函館市南茅部地域で捕れた海産物を堪能する「第11回南かやべとことん浜味祭り」(実行委主催)が9日、尾札部黒鷲漁港で開かれた。旬のサケが安価で販売され、魚のつかみ取りも行われるなど、多くの来場者でにぎわった。

 地元の海の幸を多くの人に味わってもらおうと、毎年この時期に開催。鮮魚即売会を行う南かやべ定置漁業協会など、すべて地元の団体で運営されている。

 当日に水揚げされた魚を並べる即売会では来場者が行列をつくった。中でも旬のサケは雄1500円、雌2500円と通常の2〜3割引きで販売されるなど大盛況だった。

 また小学生を対象にした魚のつかみ取りもにぎやかに行われた。子どもたちは直前に水揚げし、プールに放流されたイナダとブリを元気良く追いかけ、暴れる魚に悪戦苦闘しながらも無邪気に捕まえていた。

 そのほか会場では、特産品やサケの浜鍋などが安価で販売された。ブリなどを50匹近く購入していた地元の中村石男さん(72)は「安く手に入るし、とても新鮮。親戚に送りたい」と満足そうに話していた。(後藤 真)



◎水産技術2年連続表彰

 函館地域産業振興財団(函館市桔梗町)の吉岡武也主任研究員(48)が「スルメイカ(マイカ)の高鮮度保持と流通技術の開発」とする研究で、日本水産学会(東京)の2010年度水産学技術賞を受賞した。函館名物のイカを首都圏に鮮度を保ちながら出荷できる技術で、水産業の振興に貢献したと評価された。09年度にも、吉野博之企画事業部長(53)が同賞を受けており、同財団は2年連続の快挙を喜んでいる。

 吉岡さんは、イカの活じめ技術を開発。生きているイカの外套(がいとう)神経(脳と胴体をつなぐ)2本を切断すると、脳からの刺激が伝わらなくなるため動けなくなる。イカが暴れて死ぬと鮮度が落ちるため、この方法により暴れずに動けなくすることが可能に。活じめ後も組織として身は生きており、組織が生きていくためには呼吸が必要。呼吸は酸素を吸収し炭酸ガスを出す。そこで、酸素を封入したパックに入れる方法を考案。輸送時は、従来の発泡下氷だとイカの表面温度は0度になるが、5度の方が鮮度が保たれることを見いだした。組織は呼吸しながら生き続けるため、0度に下げると代謝が落ちる。それより高い温度(5度)の方が組織が生きている状態が持続し、活魚に近い品質を保つことに成功した。

 鮮魚を扱う古清商店(同市豊川町、古伏脇隆二社長)が2005年に「函館活〆するめいか」として商品化、東京・築地市場へ出荷している。市場価格は、発泡下氷が1匹あたり80〜90円なのに対し、活〆が同450〜500円。鮮度にこだわるすし店や料理店から引き合いが強いという。吉岡さんは「函館にとってイカは大事な水産物。新鮮さを売りにしたイカが多く出回れば、函館の水産業がもっと潤うのでは」と話す。

 吉野さんは「鉛フリー船釣り用オモリの開発」と題し、山本勝太郎北大名誉教授、フジワラ(北斗市)の藤原鉄弥社長と共同研究した。従来の釣り用重りは鉛が原料だが、人体には有害。そこで、鉛を使わず、環境に優しい釣り用重りを開発した。フジワラが05年に商品化した「ワンダーΙ」で、4枚の羽根が付くのが特徴。素材は鋳鉄(ちゅうてつ)。鉛製重りは水中で100メートル着底するのに38・4秒かかるのに対し、ワンダーは27秒。比重(水に比べ何倍重いかを示す)は鉛が11なのに対し、鋳鉄は7・2。比重のハンディも乗り越え、落下ポイントに速く、真っすぐに沈む理想≠フ重りを実用化した。

 同社はイカ釣り用重り「鉄矢」も商品化しており、ワンダーと合わせてこれまでに30万本以上売ったという。

 同賞は、水産学が直面する課題に真摯(しんし)に取り組んだ研究成果として優れた業績を上げたものを表彰。吉岡さんは当初、3月の同学会春季大会で受賞する予定だったが、東日本大震災の影響で中止となり、9月30日に長崎市で開催された秋季大会で授与された。(山崎大和)



◎客に支えられ13年 今月末で閉店「食陶楽 郷」

 函館市松陰町の喫茶店「食陶楽 郷」が、10月末で閉店する。店主の阿部静枝さん(61)が体調面の理由から決意し、13年の歴史に幕を閉じる。一枚板で作った大きなテーブルと手作りの陶芸作品、ほの暗い照明とジャズが静かに流れる店内。常連客からは閉店を惜しむ声が上がっている。

 10代の頃から、陶器と一枚の板を使ったテーブルを置いた喫茶店を開くのが夢だったという阿部さん。全国各地の窯元を訪ね、皿やティーカップなどの陶芸作品をコツコツ集め続け、その数3000点以上。「食器は料理を引き立てる大事なもの。一つ一つに愛着や思い入れがある」と話す。

 カフェなどで食べ歩くことも好きといい、独学で調理法など、レシピを研究。看護師、専業主婦を経て、長年の夢だった喫茶店を1998年にオープンさせた。バターの風味漂うヘルシーな豆腐ハンバーグをメーンにした「郷食膳」は、四季折々の野菜を踏まえた煮物や和え物など創作料理が並び、その品数の多さや盛り付け、味の深さが人気。そのほか、和風オムライス「ミモザ」や、たっぷりのホイップクリームがつくウインナーコーヒーなど、幅広い世代がその味を求めてきた。

 また、客の年代に合わせ、茶碗の大きさやカップを変えて提供する心遣いや、客の要望に応えた料理提供などのもてなしが、口コミで広がっていった。13年間通う常連客は「本当に残念」と閉店を惜しむ。

 阿部さんは「13年間支えてきてくれたお客さんに、感謝の気持ちでいっぱいです」と話し、「閉店最後まで、心を込めて料理やコーヒーを提供していきたい」と笑顔を見せる。

 閉店に合わせ、同店の食器を格安で販売。「数に限りがあるので、お早めに」と話している。営業時間は午前11時半〜午後10時。水曜定休。TEL0138・56・7112。(平尾美陽子)


◎毒キノコに注意を 採取シーズンピーク

 秋真っ盛り。キノコ採りがピークを迎えているこの時期、全国的に毒キノコを誤って食べ、中毒を起こすケースが例年発生している。函館市でも過去、誤食による中毒事案が起きているだけに、市立函館保健所は「今年は昨年ほど豊作ではないが、少しでも怪しいと思ったら保健所に持参してほしい」と注意喚起に余念がない。

 市衛生試験所によると、間違えやすいケースは、広葉樹林の地上に群生する毒キノコの「クサウラベニタケ」と庭地や畑、林道の縁などに群生する食用キノコの「ハタケシメジ」。クサウラベニタケは誤食すると下痢やおう吐、腹痛などを起こす。どちらも形状は似ているが、クサウラベニタケはひだがピンク色で、ハタケシメジはひだが白い。

 また、毒キノコの「ツキヨタケ」と、食用キノコの「ムキタケ」も同じ倒木などに発生するため、誤食する可能性が高いという。ツキヨタケは根元を切ると黒いシミがあるのが特徴だ。最も死亡例の多い「ドクツルタケ」は市内にも群生。表面が真っ白で、根元に袋状の白いつぼがある。

 函館市では1999年、クサウラベニタケを食べた5人がおう吐や下痢を起こす中毒事例が発生している。それ以降、市での中毒事例は発生していないが、油断は禁物だ。

 またキノコ狩りに出掛ける際は、クマやスズメバチにも注意が必要。同保健所は「クマは鈴やラジオなどで自分の存在を知らせ、スズメバチは黒い服を着用せず香水をつけないことが大切」と話す。さらに「最初は必ず知識のある人と一緒に行ってほしい。そして、色が派手じゃないから食べられるといった迷信は当てにしないで」と注意を促している。(後藤 真)


◎秋の味覚味わう

 第8回函館市熱帯植物園収穫祭が9日、湯川町3の同園で開かれた。親子連れら約1100人が来場。晴天の下、秋の味覚やステージ発表を楽しみながら憩いのひとときを過ごした。

 同園を管理・運営するNPO法人函館エコロジークラブ(福西秀和理事長)が、この時期の収穫物に親しんでもらおうと毎年開催している。

 飲食コーナーでは、今年初めて「カボチャ団子のお汁粉」を用意し、森町産のカボチャとあんこが溶け合う独特の甘みが大人気。「ポン菓子電動器」で米に圧力をかけて作る「米どん」の実演販売では、「ドーン」とごう音が会場に響きわたり、子どもたちが「食べてみたい」と興味津々の様子だった。

 このほか、1袋100円で詰め放題できるジャガイモは、開場から40分間で450キロ分が売れる盛況ぶり。温室内では、バトントワリングや絵本の読み聞かせも行われた。

 湯浜町の松下敏子さん(55)は孫の桜空ちゃん(2)と来場。ポン菓子を食べながら「サル山のお猿さんもゆっくり見学したいです」と笑顔を見せていた。(長内 健)