2011年10月2日 (日) 掲載

◎太古の神秘 発信拠点に…縄文文化交流センターオープン

 函館市南茅部地区から出土した道内唯一の国宝「中空土偶」を常設展示する函館市縄文文化交流センターが1日、同市臼尻町にオープンした。周辺の遺跡から発掘された土器や石器など約1200点を展示。初日は市民ら1057人が来館してにぎわい、縄文の暮らしや文化、精神を伝える新たな情報発信拠点の誕生を祝った。

 センターは2009年10月に着工し、総事業費は6億7600万円。鉄筋コンクリート造2階建てで、延べ床面積は1733平方b。地元・南茅部地区に91カ所ある縄文時代の遺跡から出土した品々を4つの展示室に陳列している。センターには国内初の国宝がある道の駅「縄文ロマン南かやべ」も併設された。

 オープンに先立ち、センター前で開かれた記念式典には、高橋はるみ知事や中空土偶を発見した小板アエさん(79)=同市尾札部町=ら約130人が出席。工藤寿樹函館市長は「縄文文化を国内外に発信する拠点として多くの観光客を招き入れ、世界遺産登録に向け、茅空(かっくう、中空土偶の愛称)を大きく育て、世界に羽ばたかせたい」とあいさつ。

 このほか、式典では道の駅の登録証が函館開発建設部の高橋敏彦部長から工藤市長に授与された。テープカットに続いて午前11時半すぎにオープン。目玉の中空土偶は真っ暗な展示室で月の光をイメージした明かりに浮かび、来館者はカメラを向けて見入っていた。

 正午から、南茅部公民館(川汲町)に場所を移して行われた記念祝賀会で、高橋知事は「素晴らしい環境の中で国際観光都市・函館の新たな情報発信源に」と祝辞を述べ、「北東北3県と心を一つにして北海道新幹線開業と時期を合わせた世界遺産登録を目指したい」と語った。

 入館料は一般300円、小学生から大学生まで150円、幼児は無料。開館時間は午前9時〜午後5時(11〜3月は午後4時半まで)。月曜休館。(森健太郎)



◎北大「おしょろ丸」乗船実習に活用…岩手・宮古水産高に無償貸与

 北大水産学部(函館市港町)は、東日本大震災の影響で実習船が解体され、乗船実習ができず困っていた岩手県立宮古水産高校(宮古市)に対し、同学部の練習船「おしょろ丸」(1396トン)を無償貸与し、3〜6日の乗船実習に活用してもらう。乗組員が生徒に海上実習の指導もする。同校は「漁業実習が継続できる」と、大学側の最大限の支援に感謝している。

 北大が震災後、おしょろ丸で乗船実習を支援するのは今回が初めて。同校によると、宮古水産、久慈東(久慈市)、高田(大船渡市)の3高校が使用していた県所有の共同実習船「翔洋(しょうよう)」(135トン)が、宮城県石巻市の造船所で係留中、津波により陸に打ち上げられたため、7月にやむなく解体。宮古水産高では翔洋に替わる実習船を探していたところ、北大のおしょろ丸の情報を得て人数も多く乗れることなどから、北大側に働き掛け、受け入れが決まった。

 実習するのは、海洋技術科の1年生38人と2年生11人の計49人。教諭2人と翔洋の船長1人の計3人が引率する。生徒たちは漁業者や船舶職員として必要な技術を身に付けるため、岩手沖でのイカ釣りなどの漁業実習や海洋観測、操船、船橋(せんきょう)・機関室当直、魚肉ソーセージ作りなどに取り組む。おしょろ丸の乗組員30人のうち、教員免許を持つ5人が生徒を指導。大学院生3人も乗船してサポートする。

 燃料代や飲料水代などの実習経費も負担する北大水産学部は「代船のめども立っていないと聞いており、最低3年間は支援したい」とする。同校の熊谷正樹副校長は「水産高校の教育の柱の一つである乗船実習に、震災で大きな支障をきたしていたが、北大の温かい支援で実習が継続でき、大変ありがたい」と話している。

 おしょろ丸は2日に函館を出港、3日に宮古港入り。7日に帰港予定。(山崎大和)



◎運動の秋 市民満喫…五稜郭公園でカヤックなど

 五稜郭公園を主会場に多彩なスポーツを楽しむ「HAKODADIスポーツおもしろ広場」(実行委主催、函館新聞社など後援)が1日、始まった。秋晴れの下、大勢の老若男女が野外スポーツや伝統的な遊びに歓声を上げた。2日まで。

 実行委(奥野秀雄会長)は函館東部地区ふれあいスポーツクラブなど、市内の総合型スポーツクラブ3団体で構成。同公園のフィールドを生かし、市民や観光客に気軽に参加してもらおうと初めて開催した。

 カヤック体験では、親子連れやカップルらが専用のパドルを手に15〜20分間、水上での悠々とした時間を満喫。風に流され操作のバランスが取れなかった人も、徐々にこつをつかんでいた。箱館奉行所裏では、竹馬やフラフープ、紙飛行機といった昔遊びを実施。子どもたちは、実行委メンバーである道教育大函館校の学生27人とともに楽しんだ。

 このほか、五稜郭タワーアトリウムでは、脳や神経を刺激することで運動能力などが身に付く「コーディネーショントレーニング」についての講座が行われ、拍手や足踏みによるリズム遊びで骨盤や肩の筋肉をほぐした。

 カヤックを初体験した函館北日吉小5年の北村龍聖君(10)は「20分くらい体験した。ちょっと難しかったけど、またやってみたい」と笑顔で話した。2日は午前10時〜午後1時15分(同アトリウム内でのトークショーなどは午前10時半〜午後3時半)。受付は同アトリウムで午前9時15分〜午後1時。参加料200円。(長内 健)


◎手芸品買って アフリカ支援…NPO法人と函大生が販売

 函館市高丘町のデイサービスセンター「函館百楽園」の利用者が作った手芸品の販売が1日、WAKOビル2階のレンタルボックスショップ「たまて箱」で始まった。NPO法人函館アフリカ支援協会(中川俊男理事長)と、函館大の2年生4人による奉仕活動で、収益は全額アフリカの子どもたちの教育支援に充てる考え。

 同協会理事を務める、同大の大橋美幸准教授の講義「商学実習2」の一環。色とりどりの毛糸で編んだ「フクロウリース」(1個200円)や、「バラ柄ポーチ」(同600円)、靴下やサンタクロースの形に刺しゅうした「Xマス小物」など約30点を並べており、売り場を運営する学生たちが感謝を込めて命名した。

 初日はフクロウリースが2個売れた。宮永真太郎さん(20)は「7月から『たまて箱』の店員にも相談して準備を進めてきた。お年寄りの皆さんも、自身で作ったものが売れたら喜んでくれるだろう。いろんなものがあるのでぜひ来場を」と呼び掛けている。

 販売は11月末までの2カ月間。午前10時〜午後7時(第3水曜定休)。問い合わせは同協会TEL0138・54・0644。(長内 健)


◎祈りささげ伝統に触れる…元町・教会めぐり

 函館市元町に点在する4つの教会が連携し、それぞれの宗派や聖歌を体験する「元町・教会めぐり〜そのルーツと音楽に触れる」が1日、各教会で開かれた。参加者は各教会を巡り、それぞれの教会の伝統に触れながら、祈りをささげた。

 東日本大震災の被災者の追悼とともに、異なる宗派の教会が並ぶ函館の立地や歴史を再確認してもらおうと企画した。カトリック元町教会、日本基督教団函館教会、日本聖公会函館聖ヨハネ教会、函館ハリストス正教会が主催し、約300人が参加した。

 午後1時半から、日本基督教団函館教会を皮切りにスタートし、日本聖公会函館聖ヨハネ教会では会場に人があふれ、バルコニーを開けて礼拝を行った。全員で讃美歌を歌い、教派を超えて交流を深め合っていた。

 函館ハリストス正教会では聖歌隊の歌声が響き渡り、ろうそくの炎が荘厳な雰囲気を漂わせていた。礼拝後に、ニコライ・ドミートリエフ司祭は「宗派が異なり祈りの形は違っていても、心は一つです」と話し、イベントの最後を締めくくった。

 参加した市内在住の60代の女性は「外観しか見たことがなかったので、各教会の歴史などに触れることができてよかった」と話し、孫と2人で参加した80代の女性は「昔は鐘の音を聞きながら学校に通っていた。礼拝をしながら、なんだか懐かしい気持ちになった」と笑顔で話していた。(平尾美陽子)