2011年10月20日 (木) 掲載

◎タウン誌「街」廃刊へ、50年の歴史に幕

 函館の老舗タウン誌「街」が、創刊50年を迎える来年秋に廃刊する。函館の作家、木下順一さん(1929〜2005年)らが創刊し、木下さん亡き後も有志が引き継いで発行を続けたが、来年10月発行予定の536号でピリオドを打つ。

 「街」は62年に「函館百点」として月刊誌で創刊した。78年から「街」に誌名を変え、04年には500号を達成。翌年の05年、木下さんの決断で、通算510号で休刊した。

 その年、木下さんは亡くなったが、雑誌に寄稿していた西野鷹志さんや、表紙の撮影に協力してきた吉岡直道編集長、休刊前の編集メンバー2人の計4人が遺志を継ぎ、季刊誌として再出発した。

 復刊後、年4回発行し、約60ページ、定価350円で販売。木下さんが執筆していた人気コラムは無くなったものの「函館開港150年」などをテーマにした座談会や市民エッセー、人物紹介などを通して函館の今の姿を伝えてきた。今月、532号を発行した。

 だが、編集スタッフのほとんどが60歳以上で、他の仕事を掛け持ちしながら編集作業を続けている。体制の課題に加え、近年は広告、販売収入の落ち込みも響いていた。

 吉岡編集長は「信念と好奇心を持って続けてきたが、そろそろ限界を感じていた。けじめを考えた時、創刊50年の節目が引き際と思い決断した」と話す。

 最終号に合わせて50年史を出すことを検討しており、吉岡編集長は「最後まで街らしいスタンスを守っていきたい」と話している。(鈴木 潤)



◎函館市、被災地への義援金1億円突破

 東日本大震災を受け、函館市に寄せられた義援金が、19日で1億円を突破した。市福祉部は「被災地を思う気持ちが結果に表れ、大変感謝している。まだ復興には時間が掛かると思うが、気持ちを持ち続けることが大事」と謝意を示している。

 義援金は震災発生直後に日本赤十字社北海道支部函館市地区事務局が受け付けを開始した。その1週間後には市が口座を開設し、東北被災地向け分は市を通じて同事務局に送られることとなった。

 寄付は19日現在、東北被災地向け、市内被災者向けを合わせ967件、1億17万3934円が寄せられた。そのうち、東北被災地向けは927件、9119万5043円、市内被災者向けは40件、897万8891円。現在はややペースが落ちてきているものの、地道な寄付が続いている。

 寄付主は市内企業のほか、市民団体や町会、学校などさまざま。飲食店では復興支援キャンペーンとして特別メニューを考案したり、市民団体はチャリティーパーティーを開催するなど、知恵を絞りながら寄付を募っている。

 個人単位でも幅広い世代から寄せられている。市福祉部は「東北の惨状を知り、居ても立ってもいられず寄付に来たという方や、自営業で売り上げの一部を寄付された方も多くいた。小銭の中にはすごく汚れたものもあって、1円でも多く届けたいという気持ちが伝わった」と話す。

 義援金は3月末まで受け付けており、受け付けは市内各支所の窓口でも対応している。寄付は現金のみで、物品の受け付けはしていない。問い合わせは日本赤十字社北海道支部函館市地区事務局(福祉部社会課内)TEL0138・21・3255。また函館新聞社でも義援金を受け付けている。(後藤 真)



◎大間原発建設、同意なしに再開なら工藤市長「司法手段も」

 函館市の工藤寿樹市長は19日、電源開発(東京)が青森県大間町に建設中の大間原発に反対する市民団体との懇談で、「周辺市町村の同意を得ずに進めるなら、場合によっては市が原告になってまで司法手段もあり得る」と述べ、このまま建設が再開されれば市として法的措置も辞さない考えを明らかにした。

 この日は大間原発訴訟の会(竹田とし子代表)、ストップ大間原発道南の会(大巻忠一代表)、函館・「下北」から核を考える会(矢尾板和子、大場一雄共同代表)の3団体のメンバー10人が、工藤市長と能登谷公市議会議長をそれぞれ訪問した。

 懇談で竹田代表らは21日に国に提出する大間原発の建設許可の取り消しを求める署名が16日現在、函館市内外から計4万7494人分集まったことを報告し、「函館市民で1万人が目標だったが、その倍の方々に署名いただいた。国や道にも働きかけて無期限凍結を実現してほしい」と訴えた。

 これに対し、工藤市長は被害が広範囲に及んだ福島第一原発事故を踏まえ、原子力について「事故が起きてしまえば人間には制御できない悪魔のエネルギー」と批判。大間原発の建設再開については「憲法で保障された市民の生存権を脅かすことになりかねず、(立地自治体だけでなく)30キロ圏、50キロ圏の周辺市町村の同意が必要だ」との見解を示した。

 3団体のメンバーは21日、経済産業省を訪れ、これまでに集まった署名を提出するほか、電源開発でも建設中止を求める考え。(森健太郎)


◎人口減少面など指摘相次ぐ、財政見直しで質疑

 函館市議会の総務常任委員会(工藤恵美委員長)が19日開かれた。市がまとめた「財政の中期的な見通し」について質疑を行い、各委員からは今後の人口減少や新規事業の見通しなどに対する厳しい指摘が相次いだ。

 財政の中期的な見通しは、来年度の一般会計が52億6700万円の赤字になると予測。今年12月1日から職員給与の一律10%削減と退職手当の削減、基金の取り崩しなどで財源を生み出し、18年度までに計331億円の財源確保を目指す。ただ、15年に行われる次回国勢調査での人口減少や、函館アリーナ(総事業費63億円)と旧北高校のスポーツ公園整備(同15億円)以外の新規事業は盛り込んでいない。大竹教雄財務部長は「工藤寿樹市長の政策を精査し、新たな行財政改革プランに盛り込む」とした。

 これに対し、金沢浩幸氏(市政クラブ)は「人口減少や国の流れを見込んで数字を作るべきだ」と指摘。大竹部長は「現時点では何人減るか分からない」と述べるにとどまった。

 小野沢猛史氏(市民クラブ)は「職員削減は職種で差がつくのか」と質問。上戸慶一総務部長は、医師や看護師など医療従事者を除外する考えを示し、「市立函館病院の医師確保を考慮したい」と述べた。

 また、退職手当債を10億円借りる点について、小野沢氏は「工藤市長は借りないと言っていたのに納得がいかない。前政権を口実にするべきではない」と批判。大竹部長は「地方交付税の減収などがあり、どうしても発行しなければ収支が合わない。基金取り崩しの状況を考え、やむなく借りることにした」と答えた。(千葉卓陽)


◎桧山管内のヒグマ駆除数更新の可能性

 桧山管内で今年、有害駆除されたヒグマは14日現在で58頭に上り、過去最高を記録した2005年の87頭に迫る勢いだ。桧山振興局などはヒグマの餌不足が原因で、11月以降も人里近くでの出没が続く恐れがあるとして、厳重な警戒を呼び掛けている。

 ヒグマが生息していない奥尻町を除く駆除数は、江差町2頭、上ノ国町5頭、厚沢部町11頭、乙部町14頭、今金町10頭、せたな町16頭に上る。昨年は年間で41頭だったが、今年は14日時点で既に17頭上回った。例年は1〜3頭程度の乙部町では、市街地や農地周辺での出没が増加したため捕獲数が突出した。

 ヒグマが好む木の実などが記録的な凶作だった05年は、過去最高となる87頭を捕獲。このうち79頭は10月末までに駆除された。

 06〜08年は、大量捕獲の反動もあり20頭台で推移。09年は冷夏の影響による餌不足から47頭と増え、昨年も41頭だった。同振興局は「05年に似たペースで駆除数が増えている。ドングリなどの餌が少ない地域もあり、ヒグマが人里に下りてくる傾向が強まる可能性がある」とする。

 道環境生活部の集計によると18日現在、全道では狩猟を含めて559頭を捕獲。4〜10月の記録としては、1年間で587頭を捕獲した05年10月末の494頭を上回っており、このままの傾向が続けば、年間捕獲数が過去最高となる可能性が高いという。

 このため道は、例年は10月末までの「ヒグマ注意特別期間」を11月末まで延長。ヒグマが人家や農地に出没する可能性が高く、餌となる農作物の早期収穫や生ごみなどの適正な処理を進めるなど、厳重な警戒が必要としている。(松浦 純)