2011年10月30日 (日) 掲載

◎縄文国際シンポ開幕、各国の研究者講演

 縄文文化をテーマにした国際シンポジウム「縄文文化とユーラシアの様相」(実行委主催、函館新聞社など後援)が29日、函館山山頂のクレモナホールで開幕した。初日は開会セレモニーや基調講演が行われ、参加した約180人の一般市民が世界的視点から縄文文化を学んだ。30日まで。

 道内唯一の国宝「中空土偶」を展示する市縄文文化交流センター(臼尻町)のオープン記念や、日独交流150周年記念事業の一環として開かれた。「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の2015年度の世界遺産登録に向け、機運を高めるのを狙いとする。

 シンポジウムには日本、ドイツ、米国、英国、カナダの5カ国から研究者ら約20人が出席。開会セレモニーで工藤寿樹函館市長が「東日本大震災を経験した今、自然と人との関わり方が問われている。その中で自然と共生してきた縄文文化の価値は高まってきており、函館の縄文を世界に発信していきたい」とあいさつした。

 基調講演は海外における縄文期研究の第一人者で、イギリス・イーストアングリア大学日本研究センター長のサイモン・ケナー氏が「日本の新石器時代—縄文文化の歴史的意義—」と題して行った。

 「イギリスは遺跡全体を国宝にするが、日本は個々の出土品を国宝にするのが面白い。また縄文期の村は何世紀もその土地に住み、中でも三内丸山遺跡(青森)は約2000年も定着していた。これはロンドンの歴史に匹敵するほどで驚くべきことだ」と話した。最後に「この地域が世界遺産となれば普遍的な価値となり、人類の宝となるだろう」と締めくくった。

 そのほか8人が事例報告をした。ベルリン自由大学のパベル・タラソフ教授は「函館の縄文文化はとても貴重。日本の考古学の柱となれる可能性がある」と話していた。

 30日も午前9時半から午後5時まで、事例発表や講演を行う。(後藤 真)



◎コーヒーの魅力再発見、初の市民フォーラム

 函館のコーヒー文化を知る市民フォーラム「珈琲(コーヒー)の薫る街はこだて」(同実行委主催)が29日、カフェペルラで開催された。講演をはじめ飲み比べ、ディスカッションなど知識を深める盛りだくさんの内容で、約90人の参加者がコーヒーづくしの時を過ごした。

 同実行委は2009年にスタートした函館商工会議所の事業を受け継いで2月に発足。国内でも早くにコーヒー文化があった函館のことを調査し、市民に知ってもらおうと活動しており、フォーラムは初の開催となった。

 特別講演では美鈴商事(函館市上湯川町)社長の鈴木修平氏が「函館で生まれ育って80年 奥深い珈琲の魅力」と題して話題を提供。鈴木商事としてスタートした同社の歴史や、函館の喫茶店事情、コーヒーの味の違いについてを説明した。

 同社が設立された1932年当時について、「昭和10年ころの函館には50件の喫茶店があり、人口に対する比率は全国でも高く喫茶文化の先進地だった」とし、これらに豆を卸す会社として設立した経緯を伝えた。社名の美鈴は、初の直営店を置くときに市民から公募した名が元となっており、「市民に付けてもらった名前」として、株式会社化したときに採用したという。

 コーヒーの味については、産地ではなく焙煎やひき方、ブレンド、入れ方など多様な要素が複雑に絡み合うため、「組み合わせは無限に広がる」とし、飲み比べでは異なる処理方法をした7種類を提供。参加者は自分好みの味を求めて味わっていた。

 ディスカッションは「珈琲の薫る街はこだて」をテーマに4氏が意見交換。喫茶店経営者では、菅原和博氏が「若者の足が遠のいているが、一杯のコーヒーを飲む時間はぜいたくな時を過ごせる」と位置付け、木村良子氏は「客の好みに合わせてひき方などを変えられるところがコーヒーの魅力」などとした。

 また常連客代表の島田良子氏(東京)は「コーヒーの命は香り。喫煙する人としない人の双方が同じように味わえる環境になれば」と意見。函館短大付設調理師専門学校の吉田徹教頭は、アルコール入りコーヒーの可能性を提案した。(小泉まや)



◎ドクター中松氏講演に市民ら190人

 ドクター・中松の愛称で知られる発明家、中松義郎博士の講演会(函館発明協会、函館地域産業振興財団主催)が29日、函館国際ホテル(大手町5)で開かれた。市民ら約190人が参加し、発明哲学に耳を傾けた。

 中松氏は14歳で発明した灯油ポンプをはじめ、これまで3000以上の発明品を生み出してきた。83歳となった今なお、年間全国80カ所で講演を行っており、今回は58年ぶりに来函した。

 講演では「創造学講義〜発明のこころは愛〜」と題し、自身の発明哲学を披露。「発明は一獲千金と言われているが、金もうけに利用するのは最低なこと。世の中の役に立ちたいという愛こそが発明の心で、灯油ポンプも苦労している母親を楽にさせたいという思いから作った」と語った。

 また「発明は特別な才能が必要ではなく、理論的にやれば誰でもできる。皆さんも発明をして、世の中を良い方向に導いてほしい」と投げかけるとともに、「58年前、ヘリコプターで真っ暗な津軽海峡を越えて函館の夜景を見たときの美しさが忘れられない。また函館に来られてよかった」と話していた。

 市内松陰町の50代男性は「一度、中松さんの講演を聞きたかった。発明哲学が深く、情熱を感じられた。純粋に発明に注いでいたからたくさんの発明品が生まれたのだと思う」とうれしそうに話していた。(後藤 真)


◎「大間原発いらない」1500人が集会

 さようなら原発1000万人アクション連鎖集会「やめるべ、大間原発!10.29北海道集会」が29日、函館市千代台町の千代台公園で開かれた。同原発に特化した集会では、過去最大規模となる約1500人(主催者発表)が結集。世界で初めてMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を全炉心で使い、函館から最短で23キロにある同原発を「最も危険な原発」とし、直ちに建設中止を求める集会アピールを採択した。

 道平和運動フォーラム、道南地域平和運動フォーラム、「脱原発・クリーンエネルギー」市民の会の主催。渡島・桧山管内をはじめ、札幌や青森県からも参加した。

 道平和運動フォーラムの山田剛代表は「広くなった原発防災エリア(函館)の人間の話も聞かず、原発を動かすことは断じて許されない」とあいさつ。道南地域平和運動フォーラムの相沢弘司代表は「事故が起きれば、風速2メートルの風が吹くと、わずか4時間で函館の街に放射性物質が降りかかる。4時間で全市民が避難できるのか。函館が蚊帳の外なのを認めるわけにはいかない。声を広げてすべての原発をなくそう」と訴えた。

 福島県平和運動フォーラムの中路良一代表が放射能汚染が広がる福島の現状を説明したほか、道南地域平和運動フォーラムの扇谷和明副代表、大間原発訴訟の会の竹田とし子代表、元大間町議の佐藤亮一さんが活動を報告。逢坂誠二衆院議員(道8区)もあいさつで「どんなに安全策を講じても、100%の安全はあり得ない。人間の身の丈に合わない原発をなくしていくことが大事だ。ただ、働いている人や交付金で成り立っている地域のことも避けて通れない。簡単な道のりではないが、粘り強く取り組みを進めるべきだ」と脱原発を訴えた。

 集会後、同公園から本町、高砂通を通り同公園に戻る約1・5`のコースを、「大間原発はいらない!」「福島の事故を繰り返すな!」などとシュプレヒコールを上げながら行進した。(山崎大和)