2011年11月1日 (火) 掲載

◎花園温泉番頭ネコ「グレ」天国へ

 函館市花園町40の「花園温泉」で番頭を務め、人気だったネコのグレ(オス)が10月19日早朝、老衰で亡くなった。いつも寝そべっていたお気に入りの玄関ストーブ横には張り紙が継いだされ、「グレちゃんは天国へ旅立ちました。たくさんのお客様にお世話になりかわいがっていただいて、グレちゃんは幸せでした。今まで本当にありがとうございました」と来客に感謝を伝えている。

 グレは元野良猫で、2006年の夏に温泉近くで捨てられているところを笠井トキ専務(75)に助けてもらった。始めは温泉玄関口を出入りするだけで、野良猫と勘違いされて客にスリッパで叩かれることもあった。見かねた笠井専務が「グレは番頭です」と言うと、同温泉の住人として認知されるようになった。

 人気に火を付けたのは09年に張り出した紹介ポスター。「職業は花園温泉番頭。勤務時間は朝5時〜夜12時。好きなタイプは、ご飯をくれる人。年齢ヒミツ、自分でも分からない」。テレビや全国紙でも報じられ、今夏には専門雑誌にも登場し、遠方から会いに来る観光客もいた。

 昨年10月に体調を崩すと、心配してカニ風味のカマボコを朝に届ける女性や、治療代にとお金を持ち寄る男性、入浴前にエサと水を取り替えてくれる客も増えた。

 笠井専務の長女、畑中くみさん(51)は「あんな幸せネコはいない。捨てられて一度は死にかける辛い経験もあったが、最後はみんなに愛されて幸せを招いてくれた。抱っこしたときの鳴き声が忘れられない」という。

 花園温泉では、駐車場付近から出る湯気で暖を取ろうと近所のネコが身を寄せることが少なくない。これを見て、段ボールにネコを入れて置き去りにする人もいるという。笠井専務と畑中さんは「命あるものを粗末にせず、すべてのものに愛情を持ってほしい。天国のグレもきっと同じ思いだと思う」と話している。 (田中陽介)



◎道「バス転換」正式提案 江差線五稜郭—木古内間

 北海道新幹線の2015年度開業に伴い、JR北海道から経営分離される江差線五稜郭—木古内間(37.8キロ)について、道は10月31日に渡島総合振興局で開かれた道南地域並行在来線対策協議会で、同区間のバス転換を正式に提案した。財政負担額が鉄道に比べ、大幅に少ないことなどを理由としている。併せて、道と沿線3市町(函館市、北斗市、木古内町)との負担割合を1対1とすることも提案したが、鉄路維持を主張する北斗市は反発。函館市と木古内町も、負担割合に対する難色を示した。

 協議会には道の高井修副知事、永井正博渡島総合振興局長、函館市の工藤寿樹市長、北斗市の高谷寿峰市長と木古内町の大森伊佐緒町長が出席。高井副知事は「方策を絞り込むための議論を進め、きょうをスタート台に検討を進めたい」とあいさつした。

 協議会で道は、鉄道とバスの収支予測をあらためて説明。鉄道では@将来的に通勤・通学者が減少し、開業以来赤字経営が続くA3セク鉄道に対する国の今後の財政支援策が不透明—とした一方、バスでは通勤・通学に便利なルート設定が可能なことや、開業後17年間は黒字経営が見込まれる点から「バス転換が望ましい」とした。

 負担割合については、ふるさと銀河線」(池田—網走間140キロ、2006年4月廃止)の3セク会社設立時に1対1とした前例を考慮。また、五稜郭—木古内間の貨物輸送ルートとしての維持に向け、国や関係機関と協議を進めるとした。

 バス転換案に対し、高谷市長は「大変残念な提案で納得できない。バスは冬場の定時性、安定性に欠け、通勤、通学者に不便を強いる。ただちに撤回して新しい提案を」と反対。大森町長は「道は責任を持って対応すると言うが、1対1は極めて残念」と述べ、さらなる道の負担を求めた。

 工藤市長も「北斗の思いを大切にしたいが、道財政は厳しい」と一定の理解を示しながらも「道が過半を負担すべきだ」と主張した。

 協議会は今後、12月と年明けにそれぞれ開き、年度内に方向性を決定する。 (千葉卓陽)



◎出足好調 市縄文文化交流センター開設1カ月

 函館市縄文文化交流センター(臼尻町)がオープンして、1日で1カ月を迎えた。これまでの入館者数は1万6186人(10月31日現在)と地元内外の多くの観光客でにぎわっている。阿部千春館長は「一過性の盛り上がりに終わらせないように、絶えず新しいものを発信していきたい」と意気込んでいる。

 函郷土芸能「安浦駒踊り」の披露や高橋はるみ知事らが出席した記念祝賀会など、盛大なセレモニーの中、10月1日に開館した同センター。初日から1057人が入場するなど、幸先の良いスタートを切った。

 函その後も土日には1日1000人以上が訪れるなどし、2週間後には入館者1万人を達成。青森県八戸市に7月10日開館した国宝「合掌土偶」を展示する是川縄文館と比べ、約2週間早いペースでの大台突破となった。

 函“縄文ブーム”は周辺地域にも波及している。2001年に国史跡に指定された、大船遺跡に隣接する大船遺跡埋蔵文化財展示館の見学者数は、本年度9月末までの月平均1620人に対して、10月単独では4243人(30日現在)に膨れ上がった。また近隣のホテル函館ひろめ荘(大船町)の日帰り温泉客も通常の2割前後増えているという。

 函同センターに隣接する道の駅「縄文ロマン南かやべ」の物販営業も受け持つ同ホテルの西村晴美総支配人は「縄文関連商品が急に売れ出し、人の流れも明らかに変わってきている」と手応えを示す。

 函同センターでは本年度の目標入館者数を2万人としている。阿部館長は「スコーレ・ツーリズム(学び観光)推進の核となる施設として、道内、道外からの観光客がさらに増えるように周知を続けたい。地元住民にも縄文文化を理解してもらい、地域全体でさらに盛り上げていきたい」と意気込んでいる。 (後藤 真)


◎PRに一定の効果 はこだてスイーツフェスタ

 函館市若松町の棒二森屋で10月28〜30日に開かれた「はこだてスイーツフェスタ2011」(実行委主催)は、3日間で計1万3600人が来場した。初開催の前年実績(1万5000人)には届かなかったものの、実行委では「各日とも完売した商品も多く、函館のスイーツのPRには一定の効果があった」としている。

 同フェスタは道南の菓子店を一堂に集め、地元スイーツの消費拡大やブランド化に向け、市や道南の菓子業界団体でつくる実行委が昨年に続いて企画。今年は出店数が昨年より5店増えたほか、初企画として青森からアップルパイの有名店などが参加した。

 実行委によると、28日に3500人、29日に5000人、30日に5100人と来場者は漸増。だが、目標としていた前年実績より約1割減少し、市商業振興課は「今年は他の百貨店の物産展と重なったほか、昨年が朝市の市民感謝祭との相乗効果による集客が大きかったため」と要因を分析する。

 一方、来場客の8割近くを女性が占め、特に会場内で3種類のケーキが味わえる「カフェ」は毎回予想を上回る盛況ぶり。まとめ買いする人も多く、参加店では各日午後4時ぐらいに完売商品も相次いだ。現在集計中の総売り上げはほぼ前年並みの約600万円に上る見通し。

 来場客からは「(9月開催だった)昨年よりも商品に季節感があった」「知らなかった店を知ることができた」と好意的な反応の一方、「イベントの目玉がない」「駐車場が足りない」との声も。実行委は会場で行った来場者アンケートも参考に年内にも会合を開いて次回の開催を検討する。同課は「2回目ということもあり、一定の定着を見せてきた。来年は市制施行90周年にちなんだ記念イベントとして開催できれば」と話している。(森健太郎)


◎取材成果や魅力を報告

 函館の街並みの魅力を子どもの視点で考える「こども町並み観察隊」の活動報告会が10月31日、函館桔梗小(伊藤克美校長、児童555人)で開かれた。児童らは市内西部地区で取材した地域の魅力を模造紙にまとめ、寸劇やクイズ形式で発表し合った。

 市が子どもたちの景観教育の一環で1997年度から毎年行っていて、今年で15回目。本年度は同小を指定校に未来大の学生も協力し、5年生68人が7月の宿泊研修で12班に分かれて西部地区などを回り、現場で見聞きして感じた施設や人、エリアの魅力をまとめた。

 各班は西部地区の教会群や坂、朝市などで話を聞き、縦105a、横75aの紙2枚にまとめた内容を他班の児童の前で報告。旧函館区公会堂の建設費用に関する3択クイズでは当時の金額で5万8000円と発表されると、児童からは「えー」「安すぎ」と驚きの声が漏れた。

 このほか、観光客にインタビューしたグループは、お土産に「カニめし」を買った人や、客層では60代が最も多かったことを紹介。各班の総括では「歴史的な価値」「朝市の水産物」「観光スポットが増えたらいい」とそれぞれの感性で魅力を導いた。

 西部地区の歴史的建造物について発表した守村健介君(11)は「函館にたくさん和洋が混じった変わった建物が多いことに気づいた。知らない地元の歴史がたくさんあって面白かった」と話した。発表内容は12月下旬、市役所1階の市民ホールで展示される。     (森健太郎)