2011年11月12日 (土) 掲載

◎ササラ電車冬支度OK 駒場車庫で準備作業

 本格的な冬の訪れを前に、函館市内を走る路面電車の軌道を除雪する「ササラ電車」の準備作業が11日、市交通部駒場車庫(駒場町)で行われた。職員がササラと呼ばれる竹ブラシの回転具合やボルト、チェーンの緩みなどを点検し、同車庫前—五稜郭公園前を試運転した。

 ササラは長さ約30aの竹をひご状に細かく割き、ブラシのように束ねた除雪装置。車両の前後に取り付けた計900束を高速回転させ、竹の反発力を利用しながら雪を掃き飛ばす。道内では札幌市電にもあり、冬の風物詩として知られる。

 市交通部にはササラ電車が2両あり、明治時代に東京市電気局(現在の東京都交通局)で客車として製造され、1937年に除雪用に改造された。国内で稼働している現役最古の都電車両で、今年7月には都営交通100周年の記念事業の目玉として、76年ぶりに東京への里帰りを果たした。

 この日は2両のうち1両を整備点検した後、五稜郭公園前まで往復した。同部によると、近年は道路も軌道上も走れる民間業者の除雪用トラック「軌陸車」が主流だが、大雪の場合にササラ車の出番となる。雪が多かった昨シーズンは過去5年で最多の計6日間、13回出動した。(森健太郎)



◎野田首相のTPP交渉参加方針表明 道南一次産業 猛反発

 野田佳彦首相は11日に行った記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加方針を正式表明した。関税の原則撤廃を目指す協定内容のため、道南の反応は立場によりさまざま。農林水産業界は一様に猛反発し、十分な説明がないままの判断を疑問視する声も挙がった。一方で商工業者は「国益になる」として賛成の姿勢を示している。

 菅政権時代に浮上したTPPへの「参加検討」の段階から断固反対を訴えてきたJAグループ。8日に東京で開かれた6000人規模の「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守る国民集会」にも参加したJA新はこだての畠山良一組合長は「大変遺憾だ。引き続き反対運動をしていく。関税品目を作る産地がみんな野菜を作るようになったら供給過剰となり、道南の産地も打撃を受ける」と危惧(きぐ)する。

 漁業関係でも、道漁連の一員として交渉参加しないことを政府に求めてきた南かやべ漁協の鎌田光夫組合長が「プラス面とマイナス面を分かりやすく説明する責任があり、マイナス面については国がどうカバーするのかを目に見える形で示さなければ。農林水産業は国民の命、生活を守るもの。こんな世論を無視するような政治はあり得ない」とした。

 函館市の工藤寿樹市長は「拙速にアメリカの顔色をうかがって交渉に参加するのはいかがなものか。アメリカの経済が今もグローバル・スタンダードと言えるのか疑問」と指摘。「農業や水産業、医療などの対策をきちんと考え示し、反対している人々の理解を得た上で参加すべき」と政府に明確な説明や対策を求める。

 参加となると医療や公的サービスが自由化され、全額自己負担となる混合診療や医療の外国資本参入が進む可能性がある。医療サービスに要する費用の高騰や貧富による医療格差が生まれるとして、日本医師会をはじめ各地の医師会は反対を表明。函館市医師会の伊藤丈雄会長は「日本が国民皆保険制度に基づいて格差なく平等に提供してきた安全な医療が崩壊する恐れがある。国民的な合意が得られない中での参加表明にはとうてい賛成できない」と語気を強める。

 この一方で商工業者からは「より自由な競争ができる」と参加を支持する声が相次いでいる。函館商工会議所の松本栄一会頭は「貿易の障壁がなくなれば利益を受けるのは消費者、ひいては国益になる」として参加に賛成の姿勢を明確にする。さらに「関税がなくなると公正な競争が起きるためメリットが大きい」とみる。

 桧山町村会は、関税撤廃で影響が予想される、農漁業を中心とする一次産業への対策が明示されないままでの交渉参加表明には反対の立場。国、道、道内選出国会議員などへの要請活動の際にも、十分に配慮するよう求めてきた。農業が基幹産業の厚沢部町や今金町では反発が大きいが、漁業分野ではナマコやスケトウダラなど管内産水産物の積極的な輸出が漁業経営の向上に貢献している事情もあり、交渉の行方を見守る。同町村会の寺島光一郎会長(乙部町長)は「国は十分な情報を国民に開示しながら議論を進め、何が国民の利益に合致するかという視点で議論することが必要だ」とした。



◎ふっくりんこの焼きドーナツ販売 深川のまるみ食品

 深川産の農産物を加工から卸売り、販売を手掛ける合同会社「まるみ食品」(深川市)は10日から、函館市港町1のスーパーアークス港町店内の飲食店「箱館手づくり工房港町店」で、深川産の「ふっくりんこ」の米粉を使った焼きドーナツ「ふっくリング」(1個190円)を販売している。13日まで。

 ふっくリングは、生地を油で揚げずに鉄板でそのまま焼き上げたドーナツで、生地は小麦アレルギーの人でも安心して食べられるよう小麦粉を一切使わないで米粉を主原料とした。

 精米、粉作りから手掛け、加工の工程はすべて手作りで、深川市内の直営店ではプレーン、ラムレーズンなど9種類を販売している。

 今回、箱館手作り工房を経営する竹内敏明さん(53)の誘いを受け、期間限定で販売した。店頭では牛乳、カボチャ、あんこなど6種類を用意。

 同食品の右代和弘さん(46)は「米の産地は深川ですが、道南のブランド米、ふっくりんこを使ったドーナツなので函館や道南の人たちにも知ってもらい、ぜひ食べに来てほしい」と呼び掛ける。

 営業時間は午前10時から午後8時。問い合わせは同港店電話0138-45-6678。


◎縁担ぎ「11年11月11日」に結婚届け提出増える

 “1”から育む2人の愛—。1が並んだ2011年11月11日、函館市内では婚姻届を出すカップルが相次いだ。いい夫婦の日(11月22日)やクリスマスなどの記念日に匹敵する人気という。

 市戸籍住民課によると、函館市役所本庁舎と各支所では同日、窓口での受理が終了する午後5時半までに26件の婚姻届を受理。昨年度の1日の平均届け出数(約4件)の6倍以上にもなる。

 婚姻届は大安やクリスマスなどの記念日、ぞろ目の日に多く出される傾向にある。1999(平成11)年11月11日には97件、2010(同22)年2月22日には46件が寄せられている。

 この日、市役所本庁舎では午前11時11分の届け出を狙おうと、同11時前にカップルが集中。一時は順番待ちの状態となった。

 埼玉在住の会社員、高橋克也さん(33)と専門職の歩美さん(29)はこの日のために仕事を休み、歩美さんの実家がある函館で婚姻届を提出。ちょうど同11時11分に受理された。

 4年間の交際期間を経て、5月に結婚式を挙げる予定の2人は「縁起が良く、世界平和の日でもあるからこの日にした。いつもと変わらず笑いの絶えない平和な家庭を築きたい」と笑顔を浮かべていた。

 同課の桂井美智子課長は「皆さん幸せそうで心温まる。もう少しでいい夫婦の日を迎えるので、また幸せなカップルが増えるでしょう」と話していた。(後藤 真)


◎まるでお餅 恵山で白いナマコ

 函館市恵山地区で11日、白いナマコが見つかった。この日は今季の漁初日とあり、「大漁と安全操業を見守る幸運のナマコであってほしい」と漁業者の表情は明るい。

 御崎町の漁師加茂博紀さん(31)が、山背泊(やませどまり)漁港沖合で水揚げした。体長10センチ、太さ5センチで「茶色いナマコのかたまりの中ですぐ分かった。珍しいものもいるんだな」と加茂さん。弟の透さん(27)も「初めて見た。吸盤の色は少し黄色っぽい」と目を丸くする。

 ナマコ研究に取り組む道総研栽培水産試験場(室蘭市)の酒井勇一主査は「白いナマコは各地で数えるほどの水揚げが報告されている。珍しいことに変わりなく、変容は一部やモザイクなど色々なタイプがあり原因は不明だが、何らかの色素異常では」とみる。

 加茂さん兄弟は「このナマコは観賞用にしたい」。市内の水産物業者もその純白の姿を見て、「まあ驚いた。正月の縁起物のお餅みたいだね」と笑顔だった。

 JFえさん山背泊支所によると、初日のナマコ水揚げ量は恵山・御崎地区で692`、古武井地区670`でともに例年並み。漁は年明けまで続く。(田中陽介)