2011年11月15日 (火) 掲載

◎見学者数が大幅増加 大船遺跡埋蔵文化財展示館

 函館市の大船遺跡に隣接する大船遺跡埋蔵文化財展示館(大船町)が12日に本年度の開館を終えた。本年度は、10月1日の函館市縄文文化交流センター(臼尻町)オープン後に見学者数が大幅に増加。10月と11月(12日まで)の見学者数が昨年の2倍に達したことが分かった。年間見学者数(4月20日〜同日)も1万5254人となり、2000年の開館以降で2番目に多かった。

 同館は南茅部地域の縄文遺跡群から発掘された出土品を展示するため、大船C遺跡速報展示室として開館。本年度は縄文早期から晩期までの約200点の土器をはじめ、遺跡紹介パネルなどを展示。壁にも本物の竪穴住居の土層断面をつけるなど、貴重な資料を並べた。

 市教委文化財課によると、10月の見学者数は昨年同月比2067人増の4243人。11月も同月比2倍となる1224人が訪れた。同課は「センターがオープンしたことによる相乗効果が要因」とする。

 同交流センターは常設する道内唯一の国宝「中空土偶」が話題を呼ぶなどして、開館2週間で入館者1万人を達成。さらに近隣の温泉宿泊施設への客が増加するなど、南茅部地域の活性化の一翼を担っている。

 10月以降の展示館の見学者の多くは、交流センターを訪れた観光客らで、通年では修学旅行生や近隣温泉施設の宿泊客、高齢者の団体らの来館が目立った。

 見学者の案内を務める同館管理人は「普段は縄文に知識のある方が多く来館するが、10月以降は一般観光客の姿が目立った」と話す。

 同課は「センターの開館がきっかけで縄文への関心が高まっている証拠。この機会を生かし、より縄文の魅力を伝えていきたい」としている。(後藤 真)



◎現代の名工に「菓子工房花園正家」の佐々木さん

 厚生労働省が卓越した技能者として認め選出する本年度の「現代の名工」に、菓子製造工で、「菓子工房花園正家」(函館市港町1)代表の佐々木征人さん(66)が道内からただ1人選ばれた。佐々木さんは「光栄なこと。技術指導していただいた諸先輩をはじめお世話になった多くの方々のおかげ」と受賞を喜んでいる。表彰式は15日東京で行われる。

 菓子の素材で花鳥風月を芸術的に作る工芸菓子の技能に卓越し、さらに後進技能者の育成、指導にも貢献したことが認められた。

 函館市内で開かれる菓子のイベントやコンクール、学校、団体の記念式典など数々の場で工芸菓子を出品。ツツジやキクなど大輪の花から、函館特産のイカ、白鷹など手掛けた作品は精巧で美しく、見る人の目を楽しませる。

 材料の仕込みから制作まですべて手作業。時には徹夜作業に及ぶ。「頭でイメージしたものをそのまま作る。一つ一つの作業は息が抜けない。。己を律していかないと良い物は作れない」と語る。

 佐々木さんは旧亀田村生まれ。中学卒業後、新潟県柏崎市の菓子業に弟子入りした。4年間の修業後、札幌市内の菓子店で9年間働き、1973年9月に独立し、函館市内のJR五稜郭駅付近に花園正家を開店。96年に現在地に移転した。

 北海道菓子工業組合函館支部の組合長や全国菓子博覧会の審査委員などを歴任し、菓子業の振興や技術力向上に尽力。現在は高校の調理講師も務める。

 今年3月16日、菓子製造を指導してくれた柏崎市の恩師が亡くなった。大震災の影響で葬式には出席できなかったが「生きていたら一番喜んでくれたはず」。今回の表彰式後、墓前に受賞報告をするつもりだ。(鈴木 潤)



◎市営谷地頭温泉 売却先の応募ゼロ

 函館市が来年度から民営化する方針だった市営谷地頭温泉(谷地頭町)の売却先の公募が14日で締め切られ、企業からの応募が1件もなかった。これにより来年度からの民営化を断念し、市営で営業を継続することになった。市企業局は「売却を含めた施設のあり方を白紙状態で再検討したい」としている。

 同温泉は1953年に開設され、長年にわたり市民に親しまれてきたが、近年は利用者の減少で赤字が続き、同局は公衆浴場としての営業継続を条件に民間への売却を決めていた。最低売却価格は土地、建物を含めて約5億1500万円(税抜き)としていた。

 公募は提案した事業計画を競い合うプロポーザル方式で10月18日から開始。同25日に開かれた募集説明会には市内の温泉事業者2社が参加したほか、これまでに数件の問い合わせが寄せられたが、この日までに応募した事業者はいなかった。当初は来年1月に事業者を決定し、3月下旬に引き渡す予定だった。

 同局温泉課によると、公募期間の延長や本年度中の再公募は「考えていない」という。同課は「今後のことを考えると非常に残念。厳しい経済状況も大きく影響しているとみられ、公募の条件面を含めた施設の運営や売却方法をあらためて検討したい」と話している。(森健太郎)


◎江差線五稜郭—木古内間「バス転換」賛否両論

 【木古内】町政懇談会が14日夜、町役場で開かれ、町は北海道新幹線開業に伴い、JR北海道から経営分離される並行在来線の江差線五稜郭—木古内間(37・8キロ)について、道が示したバス転換案とこれまでの協議内容を説明した。住民の関心も高く、「町の負担が大きければ、バス転換もやむを得ない」「鉄路維持に向け努力すべきだ」など賛否両論が上がった。

 懇談会は7日から鶴岡、釜谷、泉沢、札苅の町内4会場で開かれており、最終日の14日は本町地区の住民約20人が出席した。

 町側は、鉄道方式とバス方式の収支の試算を示したほか、鉄路を維持した場合、開業時から赤字経営が続くため、公共負担額が少ないバス方式が望ましいとする道の考え方を説明。また、道と沿線自治体の負担割合が「1対1」となることなども示した。

 質疑では住民から、バス転換案について「バスで地域の住民の足を守ることが現実的」や「鉄路を守るための負担を町民にどう説明するのか」といった賛成の声が上がる一方、「鉄道がなくなると過疎化が進むのではないか」と町の将来を不安視し、鉄路維持を求める声も聞かれた。町の方針を問われた大森町長は「鉄路維持が一番望ましいが、町の負担割合が示されておらず、まだ判断することはできない」と述べた。

 懇談会終了後、大森町長は「賛否両論あって当然の話。これから町民の意見をどうまとめていくか難しい。町の負担割合が決まった後、町民の声を聞く場を設ける必要がある」と話した。(松宮一郎)


◎バリアフリー経路表示 携帯で歩行移動支援

 函館市ユニバーサルツーリズム推進協議会(奥平理会長)は15日から、高齢者や障害者の歩行移動支援の一環として、目的地まで段差などがないバリアフリー経路を携帯電話の画面に表示するナビゲーションシステム「あるくはこだて」のサービスを開始する。

 障害の有無、年齢に関係なく誰もが安心して暮らせる「ユニバーサル社会」に対応した歩行移動支援の推進を目的とした、国土交通省の事業の一環として、期間限定で試験的にサービスを実施する。サービス対象エリアをJR函館駅周辺(若松町)〜西部地区(豊川町、末広町、元町、大町)に定め、来年3月31日まで行う。

 サービスの内容は、現在地から目的地まで段差や坂道などバリアの少ない経路を表示するほか、経路上にある段差や歩道の広さ、勾配の情報を提示する。目的施設のバリア情報や営業案内も提供する。1月中旬以降はバスの運行情報と連動したサービスも行う予定。

 10月にエリア内の歩道や施設を調査し、システムには歩行経路(リンク)1500本、経路の交差・分岐や傾斜、幅が変わる結節点(ノード)800カ所を示せるよう地図上に落とし込んだ。公共施設、病院、飲食店、公共トイレなど施設情報を入力し、スタート初日の15日は30カ所で始動。最終的には94カ所の情報を提示できるようにする。

 サービス利用するには、インターネットに接続でき、衛星利用測位システム(GPS)機能、QRコードの読み取り機能がついた携帯電話を持っていることが条件。専用のウェブサイト(http://www.aruku-hakodate.com)に接続するか、指定のポスターに掲示されているQRコードを読み取ると利用できる。携帯電話のない人のためにJR函館駅内、元町の各観光案内所で携帯電話の貸し出しもしている。

 同協議会は今回の試行で課題などを検証し、来年度以降も継続させていきたい考えで、「高齢者や障害者の移動支援の一助につなげていきたい」としている。

 今月23、29の両日に、同システムのモニター調査を行う予定で、65歳以上と車いす利用者に参加を呼び掛けている。両日とも午前10時半〜午後4時。 システムへの問い合わせ、モニター調査の参加申し込みは同協議会事務局TEL0138・54・3619、ファクス同54・3617。(鈴木 潤)