2011年11月26日 (土) 掲載

◎復元ストーブで155年前の温もり

 1856(安政3)年、国内で初めて西洋式ストーブが函館で生産され、11月25日に火が入れられたことにちなみ、函館の有志による「第24回ストーブの日」の催しが市内末広町13の箱館高田屋嘉兵衛資料館で開かれた。1988年に復元された国産第1号ストーブに点火し、先人の遺徳をしのんでいた。

 日本初のストーブは、厳しい冬の北方警備を強化するため、箱館奉行・村垣範正が武田斐三郎に製作指導を命じ、英国船のストーブを手本に大町の鋳物師・目黒源吉が製造。155年前のこの日に試したきを行ったとされる。

 復元ストーブは、ストーブの日実行委員会(石塚與喜雄委員長)が、外国の技術を取り入れ、道民の生活を守った先人の労苦を語り継ぎ、ストーブのように完全燃焼に挑戦する気持ちを大切にしようと製作を決め、当時の資料を基に約5年を掛けて1988年に完成。高さ90センチ、胴回り48センチ、重さ約90センチ。日ごろは同館で展示されているだけだが、同会が毎年、火入れを行っている。

 外が吹雪に見舞われる中、石塚さんが「函館には梵鐘を作る技術があり、円筒型のストーブができた。今日はストーブの温かみを感じる日になった」とあいさつ。続いて約30人の参加者がストーブの前で、昔ながらに火打ち石で火花を出し、最後に着火具を使って点火。参加者は中の木材が燃えるぱちぱちという音に聞き入りながら、暖を取っていた。

 石塚さんは「北方では火鉢だけで冬は越せず、ストーブの誕生は国を守る兵器の誕生のようなもの」と話していた。(山崎純一)



◎落部—森ICきょう開通

 道央道の落部インターチェンジ(IC、八雲町)—森IC(森町)間20・2キロが、26日午後3時に開通する。札幌—函館の移動時間は、すべて一般道を利用(約5時間40分)に比べ、森ICを利用すると約80分短縮でき、道央圏が一段と近づく。災害にも強い。救急搬送のスピードアップや、周辺観光施設への入り込み客数の増加も期待される。

 目玉は、ストーンサークルで知られる森町鷲ノ木遺跡の真下をトンネル(95・9メートル)が通ることだ。遺跡の下をトンネルで抜き、遺跡を現状保存する道内でも珍しい工法を採用。同遺跡を含む北海道、青森、岩手、秋田各県にある15遺跡は「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」としてユネスコ世界遺産暫定リストに掲載された。

 大津波警報発令時の緊急交通路確保は、地元住民にとって重要だ。高速道は最も標高が低い場所でも26・4メートルあり、並行する国道5号が通行止めとなった場合の代替路として利用できる。LED照明の採用や、噴火湾産ホタテ貝殻の粉末をアスファルト舗装材に使うなど、環境に優しい技術を随所に取り入れた。

 ネクスコ東日本北海道支社(札幌)によると、工事は2000年2月から始まり、事業費は約492億円。12年度開通予定の森IC—大沼公園IC間9・7キロも順調に工事が進んでいる。(山崎大和)



◎JRに継続求める方針 経営分離問題

 北海道新幹線の札幌延伸時にJR北海道が函館駅—新函館駅(仮称)間を経営分離する方針に関し、函館市がこれを容認したとする一部報道を受け、函館商工会議所は25日、緊急の正副会頭会議を開いた。函館市の工藤寿樹市長に発言の真意をただすとともに、同会議所として従来通り、JRの経営継続を求める方針を再確認した。

 工藤市長は24日に行った定例会見で在来線問題に触れ「あれだけ大騒ぎになった問題を、わたしが無条件で判を押すことにはならない。道として代替案を示したり、将来を担保するものが必要」と発言。これらが一部報道では「函館市が経営分離を容認」とされた。

 同会議所は昨年、市や市町会連合会と合同で、JRの経営継続を求める約11万筆の署名を提出している。松本栄一会頭は「JRに対し、一貫して再考を求めてきた。今は重大な局面にあり、非常に驚いた」という。

 会議で工藤市長は、この報道が真意と異なることや、地元合意を優先する意識を変えていないことなどを説明。同会議所はこれを踏まえ、改めて従来通りJRに経営継続を求める決意を示し、市に協力を求めた。

 会議ではこのほか、同区間のJRによる経営継続は困難とする道の見解が市に通知されたことも取り上げた。松本会頭は「かなりあいまいな内容で、沿線自治体の合意に触れていないことに落胆した。函館の経済を守るためにも、第3セクターによる運営はすべきでない」と話している。(小泉まや、千葉卓陽)


◎辰 輝きつややか

 函館市内のガラス工房は、来年のえと「辰(たつ)」にちなんだ置き物づくりに追われている。つややかな輝きの縁起物が並び、早くも新春の雰囲気を漂わせている。

 末広町14の「ザ グラススタジオ イン 函館」では、1984年から毎年、えとの縁起物を手掛ける。金箔(きんぱく)と銀箔(ぎんぱく)がまぶされ、豪華な仕上がりで人気だ。辰の作品づくりは今年で3回目。やや上を見据えた表情に加え、胴体の曲線美は和みや優しさ、立派なひげと角は力強さを表現している。

 1200度の炉がある工房では、半袖姿の水口議(はかる)代表と長男の竜弥さんが息を合わせ、12分ほどで1体を仕上げる。1日をかけて冷やし、年内に500体生産する。

 辰年生まれの水口代表は「気持ちを込めて作っている」、えと作品づくり2年目の竜弥さんは「一つ一つ丁寧に、毎日が勉強」と話していた。

 長さ約15センチのLサイズは3990円、同10センチのSサイズ2625円。同工房は午前10時〜午後6時、無休。置き物づくりの様子は店内から見学できる(水曜は制作休み)。(田中陽介)


◎市中心市街地活性化協が設立

 中心市街地活性化法に基づき、函館市が策定する基本計画について話し合う「市中心市街地活性化協議会」の設立総会が25日、ロワジールホテル函館(若松町)で開かれた。会長には函館商工会議所の永井英夫副会頭を選任。市は来年6月の計画決定や同10月の国への申請に向けたスケジュールを報告した。

 同協議会は市や函館商工会議所、はこだてティーエムオーのほか、商店街や観光、金融機関、大学など約20の産学官で構成。国から重点的な補助金を受けるためには、市が策定する中心市街地活性化基本計画を協議する法定協議会の設立が条件となっている。

 総会で永井会長は「4年後の北海道新幹線新函館開業を一つの転換期として、今こそ力を結集して中心市街地活性化対策を講じなければならない。魅力あるまちづくりを推進するため、行政と民間、地域の意見を基本計画に反映させたい」とあいさつ。

 協議会では工藤寿樹市長が最優先課題に掲げる「大門再生」に向け、WAKOビルの建て替えや駅前市有地の民間事業による再開発などが盛り込まれる見通しで、新たに中心市街地の対象に加えた本町・五稜郭地区では旧グルメシティ五稜郭店の活用策も議論の焦点となりそうだ。

 市は年内にも素案を取りまとめ、同10月にも国に認定を申請する予定。その間、複数回にわたり協議会の委員から意見を聴取するほか、市内の準工業地域に1万平方メートル以上の大規模集客施設の立地を認めないための都市計画を変更する条例を制定するなどしてコンパクトなまちづくりを本格化させる。(森健太郎)