2011年11月27日 (日) 掲載

◎道央道「落部—森」開通 物流の効率化、観光振興に期待

 道央自動車道(道央道)の落部インターチェンジ(IC、八雲町)—森IC(森町)間20.2キロが26日午後3時、開通した。道央と道南を結ぶ大動脈が南へ延伸したことで、物流の効率化や観光振興、交流人口の拡大など多くの効果が期待される。森町鷲ノ木町の本線上で約250人が出席して通り初め式が行われ、テープカット、くす玉割りの後、車両164台でパレードして開通を祝った。

 道央道は道南・道央・道北を結ぶ道縦貫自動車道で、既に落部IC—士別剣淵IC間の413.6キロが開通。事業者のネクスコ東日本(佐藤龍雄社長)によると、当初計画では落部IC—大沼公園IC間は2012年度に開通予定だったが、森ICまでを1年前倒しで開通させた。開通区間は2000年2月から492億円を投じて完成。一部を除き片側1車線で、橋梁(きょうりょう)13カ所、トンネル3カ所があり、このうち1カ所は国指定史跡である森町鷲ノ木遺跡の真下を95.9bのトンネルが貫く。

 普通車の通常料金は、札幌南IC—森ICが5650円。10月末の道東道(夕張IC—占冠IC間)開通と合わせ、道央、道南、道東のアクセスが一段と向上した。

 通り初め式は、開通記念行事実行委(委員長・佐藤克男森町長)の主催。民主党の逢坂誠二衆院議員、道開発局の佐藤謙二建設部長、高井修道副知事、佐藤社長ら21人がはさみを入れ、くす玉が割られると大きな拍手が沸き起こった。

 この後、森町本町のプラザ武蔵で約200人が出席して開通を祝う会が開かれ、佐藤町長は「豊富な食の資源、観光資源を大いに活用し、森町の発展を築いていかなければ。来年度開通予定の大沼公園ICも含め、道南地区の交通拠点として地域づくりをし、ストローではなく、逆ストロー現象を巻き起こしていきたい」と力を込めた。

 乾杯の音頭をとった道縦貫自動車道建設促進道南地方期成会(会長・工藤寿樹函館市長)の中宮安一副会長(七飯町長)は「高速道は患者を救急車で運ぶときは無料だが、帰りは料金がかかる。救急車の台数は限られており、次の患者のために速く帰る必要がある。帰りも無料にしてほしい」と要望した上で、「開通区間が安全・安心な高速道となることを期待したい」と述べた。(山崎大和)



◎函館市事業仕分け 住宅公社への補助金「廃止」判定

 本年度3回目の函館市の「事業仕分け」が26日、市役所で始まった。この日は2班で13事業を審査し、緑化事業などに充てられる「函館市住宅都市施設公社補助金」など2事業を制度の再構築を含む「廃止」と判定。このほか2事業を「見直しが必要」(廃止を含む)、9事業を「改善を図る」とした。27日も11事業を審議する。

 本年度計5回開催予定のうち、10月に続く3回目。市の財源不足解消に向け、企業経営者や学識経験者ら公募の委員13人が2班に分かれ、事業の@廃止(事業を廃止のうえ制度を再構築を含む)A民営化を検討B委託化を検討C改善を図るD現行通り—の5つの選択肢から多数決で判定する。判定が割れた場合は「見直しが必要」とする。

 函館市住宅都市施設公社は、市営住宅の維持管理や住宅などについての相談業務、公園などの施設管理、緑化の普及啓発などを行っている。本年度の市からの補助金は2041万円で、市は「公社運営のための必要な経費で、公益性と継続性が求められるが財源の捻出が困難」なため支援しているとした。

 委員からは「補助金の査定がきちんとされていないのでは」との意見や、「代表者である理事長の人件費を補助金で賄うのはおかしい」とする指摘があった。さらに事業を開始した1988年度から年月が経過していることから「補助金が問題ではなく、公社そのものが必要かという段階に来ている」とする意見もあった。

 12月の開幕を控えた函館港イルミナシオン映画祭開催補助金(同400万円)については、グランプリに当たる函館市長賞2作品の賞金300万円の金額に批判が集中。「異常な金額で考え直すべき」「お金で人を釣っているよう」などとし、再考を求めた。

 また函館市社会福祉協議会補助金(本年度予算1億3733万円)については、書類精査のため次回の2月に審議を持ち越し保留とした。

 27日の事業仕分けも午前9時から市役所8階の会議室で公開で行われる。(小泉まや)



◎市経済再生会議 函館観光への提言次々

 首都圏など外部の有識者を招いて函館の経済振興策について検討する「函館市経済再生会議」の第2回会合が26日、花びしホテル(湯川町1)で開かれた。観光や新産業、デザインなどの各分野に精通した外部委員5人が出席し、函館の強みや弱み、まちづくりの方向性について提言し合った。

 工藤寿樹市長と函館商工会議所の松本栄一会頭も出席。内田俊宏・三菱UFJリサーチ&コンサルティングエコノミストは函館の強みとして豊富な観光資源を挙げる一方、「土産品店に函館ならではの商品が少ない」とし、新たなスイーツ開発を推奨。また、消費額の多い中国人観光客の開拓に言及し「函館はショッピングが弱み」と述べ、物産館の必要性を訴えた。

 清水慎一・立教大観光学部特任教授は「観光を基幹産業に」と強調。そのうえで「宿泊は1泊が多く、他の温泉地に比べて単価も安い」と指摘し、滞在時間を長く、単価を上げるために「顧客満足度」の指標の重要性を説いた。  また、観光案内所や観光紹介のホームページが分散、乱立していることに触れ「利用客の視点から窓口を一元化するべき」と指摘。これに対し、工藤市長は「現在、市の観光コンベンション部と函館国際観光コンベンション協会を同じ場所で仕事をさせることを検討している」と述べた。

 このほかの委員からはバイオ産業分野の企業誘致や医療と観光の連携など新たな産業面からの活性化策をはじめ、市電の再整備による都心型のまちづくり、自然エネルギーを活用した夜景、函館の決定的なスローガンを考えるべき—など多彩な意見が出された。(森健太郎)


◎世界遺産登録の可能性探る 縄文遺跡群フォーラム

 函館市南茅部地域の大船遺跡など、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の世界遺産登録を推進するフォーラム「縄文遺跡群世界遺産登録の意味」が26日、函館市民会館(湯川町1)で開かれた。関係者ら約100人を前に、同遺跡群の保存・活用に携わる有識者が講演などを行い、方向性を探った。

 同遺跡群が所在する北海道、青森、秋田、岩手の4道県で構成し、2009年に設立した縄文遺跡群世界遺産登録推進本部の主催。同年1月に世界遺産暫定一覧表に記載され、15年度の登録を目指す同遺跡群の情報発信を目的に、今年は同3県で同フォーラムを開催してきた。

 基調講演は、函館出身で日本考古学協会会長の菊池徹夫さんが「北日本の歴史と縄文世界遺産」と題して行った。  菊池さんは「この遺跡群の地域は縄文文化の中核。代表的な遺跡が多く、津軽海峡を挟んで一つの文化圏として成り立っている」と遺跡群の価値を説明。その上で「登録を実現させるためにはほかの優れた文化遺産と張り合わなければならないが、普遍的な価値を示すことで可能性は見えてくる。そのためには行政、研究者、市民が一体となって国内外に情報発信していくことが必要で、我々の努力にかかってくる」と力説した。

 パネルディスカッションでは、今年6月の平泉(岩手)世界遺産登録に尽力した岩手県教委の中村英俊さんが講話。「登録実現にはボランティアガイドなど、市民の協力が不可欠。観光客と直接接しなくても環境整備をするなどし、地域が一体となって進めていくことが大切」と話していた。(後藤 真)


◎日米協会が感謝祭 食事・手品で交流

 函館日米協会(野田義成会長、会員約110人)は26日夜、函館国際ホテル(大手町5)で「サンクスギビングパーティー(感謝祭)」を開いた。会員約80人が参加し、食事のほか抽選会などで交流を深めた。

 同会で10年以上続く恒例行事。初めに野田会長が、英語であいさつ。東日本大震災被災地の復興を祈り、パーティーを楽しんでほしいと話した。ゲストの在札幌米国総領事館のジョン・リース総領事が日本語で「美しい街、函館で感謝祭を祝えるのは幸せ」と話した。

 祝杯をあげ、料理に舌鼓を打つ中、子供たちにはクリスマスプレゼントが贈られ、スプーンやカードを使った手品の披露や音楽演奏、たくさんの商品が用意された抽選会が行われた。最後に小説「大草原の小さな家」の一部が紹介された。

 同会の中野晋専務理事は「感謝祭はアメリカで大切にされる家族の集まり。当会では各国が行うクリスマスパーティーよりも、米国文化に触れる機会として大切にしていきたい」、野田会長は「家族が集まる機会だが、今年は震災のため、まさに絆を感じる一日となった」と話していた。(山崎純一)