2011年11月29日 (火) 掲載

◎市民ツリー 函館らしさいっぱい 元町ホテルで1日から点灯

 函館市大町4の函館元町ホテル(遠藤浩司社長)で28日、スギの古損木(こそんぼく)を使ったクリスマスツリーの設置が行われた。同所は153年前、初代駐日ロシア領事ヨシフ・ゴシケビッチが地域住民と友好を深めようと、国内で初めてツリーを立てたと思われる場所で、今年のクリスマスイベントの目玉となりそうだ。

 このツリ—は、函館の森林の再生と活用を考える会(木村マサ子代表)が、毎年12月の「はこだてクリスマスファンタジー」期間中に同ファンタジー会場付近に設置する「市民ツリー」の一つとして手掛けた。木村さんは昨年、ゴシケビッチが1859(安政6)年12月22日に箱館奉行所へ送った祭礼の招待状や、当時の古地図などから、58年に同ホテル周辺にツリーを立てていたことを突き止めた。これまでは60年の横浜とされているが、函館の方が早いと推測している。スギの古損木は、許可を得て函館山から運んだ。高さは最大で5メートル。1〜2メートルものと計10本を束ねた。

 この日は駒止保育園(天野洋子園長)と谷地頭保育園(小川美保子園長)の園児計23人が訪れ、同会が用意した、タコ漁で使っていた直径約5センチの赤いボール状の漁具をアクセサリーにして、園児がスギに取り付けた。同会員らが旧桂久蔵邸の蔵を改修した建物に立てかけると、園児からは「きれい」と声が上がった。

 木村さんは「ゴシケビッチが日本人と仲良くなりたいとして、ツリーを立てた気持ちを大切にしたい」と話していた。ツリーは12月25日まで設置、同1日からは日没から午後11時まで電飾も点灯する。



◎函館市職員93人削減へ

 函館市は28日、企業会計分を除く職員を2012年度に68人削減し、福祉・保健部局の組織機構を大幅に再編する計画案を明らかにした。消防組織の再編や保育園民営化に伴う提案済みの14人と、今後別途提案する企業局分を含めて、計93人の削減を目指す。

 25日に市役所職員労働組合(長谷川義樹執行委員長)に提案し、28日から団体交渉を開始した。市職労は回答時期を未定としている。

 市が示した案では保健所と福祉部のうち、保健福祉の分野を統合して新たに「保健福祉部(仮称)」と「子ども未来部(仮称)」に再編。保健所は保健福祉部内に置き、保健予防、食肉検査などに機能を特化させながら、独立性のある機関として位置付ける。保健福祉部は福祉事務所と合わせて319人、子ども未来部は104人体制とする。

 主な人員削減は、教育委員会で生涯学習課と文化振興課を統合するほか学校給食調理の委託化などで23人減。市民部は地上デジタルテレビ対策終了などで16人減、環境部はごみ収集の委託化拡大などで10人減、総務部は派遣研修の引き揚げなどにより9人減とする。

 また、機構改革では、西尾正範前市長が作った経済部労働政策室、保健所健康づくり推進室、環境部環境保全対策室を廃止。市民部くらし支援室は市民相談にかかわるワンストップ窓口として、くらし安心課に再編する。企画部は広報課にホームページ管理業務などを移管して広報広聴課に改めるほか、公共交通施策推進に向けた政策推進課を設置する。

 既に提案済みの案件では、赤川保育園の民営化などで10人減。消防再編計画に基づく見直しで4人減となっている。

 人員削減は08年度から5カ年で計650人を削減する「行財政改革新5カ年計画」の一環。12年度が計画最終年となり、妥結されれば5年間で642人を削減する。市行政改革課は同計画について「生活保護世帯増加に伴うケースワーカーの増員など、計画にない増加要素があった中ではおおむね達成できた」と話す。市職労は「給与削減の交渉とは切り離し、市民サービス維持に向けて何が求められているか、考えていきたい」と話している。(千葉卓陽)



◎道新幹線札幌延伸 江差線解決が先決

 【北斗】北斗市の高谷寿峰市長は28日、定例記者会見を開いた。北海道新幹線札幌延伸の着工条件のひとつである並行在来線(函館本線)のJR北海道からの経営分離に関し、高谷市長は「札幌延伸を要望してきており、着工決定時には経営分離に同意しなくてはならない立場だが、北斗市は、江差線の問題がまだ解決していない」と述べ、JR江差線の鉄路維持に向けた道からの具体的方針が示されなければ、同意しないこともあり得るとの考えを示した。

 高谷市長は、29日の道議会で、高橋はるみ知事が江差線問題について答弁する予定であることから、「道も努力していると聞いている。道から我々が望む提案が出るかどうかで、納得ができれば同意しなくてはならない」とした。

 江差線の経営分離問題は、改めて鉄路維持の方針を強調。道が道新幹線着工前に示した第3セクターでの鉄道運営と「85対15」とする道と沿線自治体の負担割合からの協議スタートを求めた。「負担割合は協議の中で詰めていけばいい。議論の最初の出発点が(バス転換では)おかしい。道の財政状況では85%が厳しいのは理解しているが、近いものであればいいと思っている」と述べた。

 さらに、他県の先行事例では、3セク設立時に金融機関など、民間からの出資を求めていることから、「いろんな形で苦労してお金を集めてやっている。民間の負担の議論が抜け落ちているのも遺憾。場合によっては、並行在来線の問題もなく、札幌延伸で一番潤う札幌市にも出資してもらいたい」とした。

 また、函館−新函館間の経営分離は「函館市の言い分にも理はあるが、並行在来線ではないとする主張が正しいかはコメントできない。仮に経営分離され、3セク鉄道としてやっていくのであれば、沿線自治体として、協力しなくてはならない」と述べた。(今井正一) 


◎地元合意へ年内に結論 経営分離問題で函館市

 北海道新幹線の札幌延伸時に、JR北海道による函館駅—新函館駅(仮称)間の経営継続は困難とする見解を道が市に通知したことに関し、函館市議会の総務常任委員会(工藤恵美委員長)で28日、質疑が行われた。市は通知を受け、地元合意に向けて経済界などと協議し、年内に結論を出す考えを示した。

 道が市に通知した文書では「第3セクター設立など、鉄道運行の確保を図るため最大限の努力をする」と示しているものの、具体策はなく、あいまいな表現にとどまる。委員会では市企画部が文書の内容を説明し、渡辺宏身企画部長は「今後、議会や経済界や住民団体と協議して対応を固めたい」と述べた。

 市はこれまで、函館—新函館間について「並行在来線には当たらない」との見解を示してきた。ただ、工藤寿樹市長は24日の定例会見で「JRによる経営は99%難しいと思う」と述べたほか、「無条件で判を押すことにはならない。道として代替案を示したり、将来を担保するものが必要」などと発言しており、判断に変化がみられる。

 一方で、民主党は年内に整備新幹線着工の是非を判断する考えを示しており、市に残された時間は少ない。

 これらを受け、阿部善一氏(民主・市民ネット)は「市は方針を堅持すべきでは」と質問。渡辺部長は「道を経由してJRの意向が示されたので、対応を諮りたい」と述べ、28日に各派代表者会議を開いて各会派と相談するとした。

 また、金沢浩幸氏(市政クラブ)は「鉄路存続に向け、道から将来の担保を取ってほしい」と要望。茂木修氏(公明党)はJRの運行が望ましいと前置きしたうえで「現実路線を選択せざるを得ない。市民理解を得られる形で進めてほしい」と述べた。(千葉卓陽)


◎「寒中みそぎ」新行修者に消防士の宮下さん

 【木古内】木古内町の佐女川神社で来年1月13日から15日まで行われる「寒中みそぎ」の新しい行修者が町出身の消防士、宮下知哉さん(20)に決まった。来年から4年間、行修者を務め、祭典の期間中は昼夜を問わず水ごりの荒行を行い、祈りをささげる。

 1831(天保2)年に始まった寒中みそぎは、毎年1月に行修者4人がご神体を抱え、厳寒の海に飛び込む伝統の神事として同町の若者に受け継がれてきた。

 宮下さんは地元の渡島西部広域事務組合木古内消防署に勤務。「町民の安全と安心を祈りながら、全力で4年間、行修者の役目を務めたい」と話し、消防士としての願いも込めながら水ごりを行う決意だ。

 小学校から高校まで野球を続けたスポーツマン。消防士として日々厳しい訓練をこなすだけに体力には自信があるという。「寒さに負けず、みそぎ祭りを通して、自分自身を成長させたい」と意気込む。

 宮下さんは同神社で28日に開かれた祭典委員会の会議で行修者となることが正式に発表され、氏子や同委員会のメンバーらに大きな拍手で迎えられた。同神社の野村広章宮司(55)は「気力と体力を備えており、まさに適任。地域の伝統を受け継ぐためにも最後まで頑張って鍛錬に臨んでもらいたい」と期待を寄せている。

 宮下さん以外の行修者は。会社員の竹田俊輔さん(22)、専門学校生の久保田翔さん(19)、大学生の藤原哲朗さん(20)の4人。祭典は13日午後6時からの参籠(さんろう)報告祭で開幕。その後、同神社の境内で水ごりを開始する。(松宮一郎)


◎企画「命を見つめて」認知症(5) 若年性の支援 あり方課題

 「認知症になって不便なことは増えたが、決して不幸ではない」—。今年2月、七飯町内で開かれた介護職向けの研修会で、若年性認知症の佐藤雅彦さん(57)=埼玉県川口市在住=はこう語る。

 佐藤さんは2005年にアルツハイマー病と診断され、翌年勤め先の会社を退職した。その後、病気を公にし、講演会活動を通して若年性認知症に対する啓発を行っている。病気の影響で記憶や認知にかかわる機能は低下したが、パソコンを使ってメールやスケジュール管理ができ、親しい人に手紙を出すこともできる。佐藤さんは「本人のできることに目を向けて支援をしてほしい」と訴える。

 市立函館保健所によると、昨年度の市内の若年性認知症患者数は21人で、ここ数年、目立った増減はないという。ただ、この患者数は、指定医療機関を受診し、医療費負担が少なくなる自立支援医療を申請した場合の数値で、同保健所保健予防課は「中には症状がありながら指定医療機関以外の病院を受診しているケースも考えられる」とし、実際の数値よりも疾患者は多いとみる。

 若年性認知症は、一家を支える働き盛りの中高年に発症することが多い。病気が原因で退職を余儀なくされ、家計は経済的に厳しい状況に追い込まれる。身体機能に支障はなく、ある程度自活できるため、高齢者や障害者向けのサービスが適応しにくいなどの課題がある。高齢者の場合と比べ、支援体制や制度がまだまだ整っていない。

 七飯町で若年性認知症専用ハウスなどの複合施設「はっぴー共生型ほーむ」を営むケアサービスドウナンの中村久子社長は、「同じ認知症でも、若年と高齢者とでは抱える問題や支援の在り方が全く違う。別個の対策が求められる」と話す。特に就労にかかわる支援は大きな課題だ。

 中村社長は6月、当事者の就労を後押しする取り組みを試験的に行った。町内の農家の協力を得て、50代の入居男性に農作業体験をさせた。

 段階的に作業量を増やしながら就労へとつなげる試みだったが、中村社長は「周囲のお膳立てに当事者を当てはめるのは、支援する側のエゴではないか。本当に本人が望む支援なのか」と、思案する。

 「認知症になっても退職せずに可能な限り仕事を続けさせる支援、リタイアしても自分の技能を生かした仕事に就ける支援がその人らしい生き方につながるはず」。当事者の思いに寄り添う真の支援の在り方を模索している。(医療問題取材班)

 ◆若年性認知症 64歳以下で発症する認知症の総称。厚生労働省の2009年の調査によると、全国の若年性認知症患者数は推計で3万8000人。18歳から64歳までの人口10万人あたりに換算すると患者数は約50人とされている。