2011年11月3日 (木) 掲載

◎民謡民舞全国大会で古川さん内閣総理大臣賞受賞

 函館市神山3の民謡教室「函館悦山会」(小林基悦主宰)の古川亜美さん(22)がこのほど、両国国技館(東京)で行われた民謡民舞全国大会・内閣総理大臣賞争奪戦民謡の部(日本民謡協会主催)で初優勝した。20代での受賞は快挙で、古川さんは「これを励みに自分の表現をどんどん磨いていきたい」と目を輝かせている。

 同争奪戦には全国で開かれた地区大会の優勝者が出場。さまざまな部門がある同全国大会の中では最もレベルが高く、今回は道内4人を含む、若者から高齢者まで57人が表現力や歌唱力を競った。

 小学2年から祖母の小林さん(73)に師事している古川さん。2008年の道南口説節全国大会一般部門で初優勝し、同争奪戦を意識したという。昨年12月の道南地区大会で優勝し、出場権を初めて獲得。「本番でも普段通りの表現ができるよう、モチベーションを保ちながら練習を重ねた」(古川さん)。

 古川さんは別の部門への出場もあり、国技館は今回で4回目。最初は緊張していたが、会場に函館悦山会応援団の声援が響き、「本当に励みになった」という。

 曲は子どものころから最も思い入れがあるという道南口説節。1万数千人の聴衆が見守る中、持ち前の美声を伸びやかに響かせ、実力を発揮した。尺八や三味線、太鼓の伴奏者としてステージに立った父の賞治さん(53)、母みどりさん(52)、姉の麻衣さん(27)も、古川さんの歌を引き立てた。

 同協会は全国の民謡団体から約3万人が加入。小林さんによると、会員数としては全国一の規模。1983年に45歳で内閣総理大臣賞を受賞した小林さんは「孫がこの若さで優勝できるとはびっくり。とてもうれしい」と祝福する。

 古川さんは「納得できた演奏だったけど、振り返れば反省点は多い。まだまだ勉強を積み重ねていく」と気を引き締め、「今は江差追分の勉強もしている。ゆくゆくは、江差追分全国大会でも一番を取りたい」と夢を語る。(長内 健)



◎江差線バス転換 清川口駅で売店営む桶谷さん「お客さんがいる限り営業」

 【北斗】北海道新幹線の開業に伴い、JR北海道から経営分離される江差線五稜郭—木古内間(37・8キロ)に関し、道がバス転換する方針を示したことについて、沿線住民から不安の声が上がっている。北斗市内のJR清川口駅で、沿線唯一の売店を営む桶谷フミさん(86)もその一人。「函館との行き来が不便になってしまう。できれば残してほしい」と存続を願いながら、「今まで1日も休まずに営業を続けてきた。お客さんがいる限り、シャッターを開け続けたい」と話す。

 「お買い物に行ってきたのかい。ご苦労さまです」。小さな駅に列車が到着すると、桶谷さんは降りてきた顔なじみの客に優しく声をかけた。待合室の中にある売店はオレンジ色の外観が目を引き、菓子やたばこが置いてある。店の横にはピンク色の公衆電話。「タクシーを呼ぶ人が多いのよ」と笑う。

 桶谷さんが店で働きだしたのは10年以上前のこと。以前は5、6人が交代で働いていたが、最後に残り、以前の経営者から営業許可を引き継いだ。

 自身も江差線の利用客だ。起床は毎朝5時。函館市昭和の自宅から五稜郭駅まで40分ほど歩き、午前6時28分に清川口駅に到着する一番列車に乗ってくる。店では函館方面への切符も売っており、通勤、通学、通院客で混雑する朝が最も忙しい。1日いっぱい店に立ち、夕方の列車で帰宅する毎日だ。

 道のバス転換の方針が分かってから、自身も乗客も、この話題で持ちきりだという。「たまたま帰りの汽車に遅れてバスに乗ったこともあるけれど、時間かかるし運賃も高い。汽車ならあっという間に着いちゃうし、残してほしい」。しかし、年々利用客が減っていく様子は、店の中からつぶさに感じ取っていた。「昔は朝の列車に学生がワーッと乗ってきた。今は教室が空いてるって聞くしね」

 86歳になった今も、一人で休むことなく店に立ち続ける。後継者はいない。「盆も正月もあったもんでない。だけど、お客さんはいつも開いてると思って来てくれる。どんなことがあっても休みません」。そんな姿に、常連客の女性(54)は「お母さんのような存在。休んでいるのを見たことがないし、尊敬している」と慕う。

 2015年度には北海道新幹線が開業するが、江差線の旅客輸送がなくなれば、店をたたまなくてはならない。「そのころまで生きているかはわからないけど、列車がなくなったときにお客さんがどうなるかが心配だよ」。自身のことよりも、利用客のこれからを気にかけている。(千葉卓陽)



◎函館市、事業レビューで3118万円削減

 函館市はこのほど、昨年度実施した「事業レビュー」で指摘を受けた事業に対する、見直しの状況をまとめた。審議した20事業で見直しをかけ、本年度予算で3118万円を削減している。

 事業レビューは、08年度に行った内部仕分けで「外部委託が可能」「改善が必要」と判断された中から市が20事業を抽出。外部委員8人が審査し、過去5年間利用実績がなかった「いきいき住まい建設改修資金貸付金」を昨年度限りで廃止としたほか、全面委託化を求められた除雪事業では、2017年度までの全面委託化を目指すとしている。

 20事業のうち、最も削減額が大きかったのは移動図書室運営費の1159万円。本年度から地域図書室4カ所を民間委託しており、人件費だけで約3000万円減らした。

 いきいき住まい建設改修資金貸付金は本年度の新規貸付を廃止し、205万円を削減。レビューでは新たな貸付制度を設ける場合の見直しを求めており、来年度からはバリアフリー化や省エネルギー化に向けた改修工事に対し、国の交付金を活用して工事費の一部を助成する方法に変更する見通しだ。

 また、除雪費は290万円の減少。直営業務の一部を民間委託しており、不要となった重機の売却、処分などで維持費軽減を図る考え。

 市は本年度から行っている「事業仕分け」に関し、判定内容を来年度予算に反映させる方針。市行政改革課は「庁内協議が整えば、過去2回行った仕分けに対する考え方を早めに示したい。新たな行財政改革プランにも、判定を反映させていく」としている。(千葉卓陽)


◎人気歌劇曲で聴衆魅了 市民オペラの会がコンサート

 函館市民オペラの会(金山正智会長)主催のオペラコンサート(函館新聞社など後援)が2日、市芸術ホール(五稜郭町37)で開かれた。歌い手11人が人気歌劇の抜粋曲を高らかに響かせ、来場者330人を楽しませた。

 同会は1990年の発足以降、毎年本格的なオペラを上演してきたが、公演の収入減に伴い、2009年同様、今年も上演を中止。代わりに、より音楽に集中し、質の高いアンサンブルを楽しんでもらおうと同コンサートを開催。9月から、今回初めて指揮を務めるフルート奏者の松石隆さんのタクトで本格的な練習を積み重ねてきた。

 今回は、モーツァルトの「フィガロの結婚」やベルディの「椿姫」など全8曲を取り上げた。次藤正代さん、井上治さん、堀川智美さんらが朗々とした独唱や掛け合いを披露した。伴奏した市民オペラ管弦楽団の40人も、歌劇「こうもり」の有名な「序曲」など3曲を単独演奏。親しみやすく伸び伸びとしたハーモニーに、会場から盛んな拍手が送られていた。

 後半はプッチーニ作曲の「蝶々夫人」のほか、ベルディの「アイーダ」などの抜粋曲を演奏した。(長内 健)


◎乙部町、82カ所に海抜高度の表示板

 【乙部】乙部町は、日本海での大津波発生に備えて、警報発令時に避難が必要となる地域を日常から意識してもらおうと、町内82カ所に海抜高度の表示板を設置した。

 3月に発生した東日本大震災でも、東北地方の太平洋岸では、当初は安全と思われていた避難場所で、想定を超える巨大な津波に襲われて被災した住民も少なくない。

 大震災を教訓に町は、日本海沿いで大津波が発生する事態に備えて、ただちに避難が必要だったり、避難場所として当面の安全が確保できるエリアを、住民に日ごろから意識してもらおうと、町内82カ所で測量の結果を基に海抜高度の表示板を設置した。表示板は、交通量が多い国道229号沿いのほか、海沿いの住宅地などにも設置した。乙部漁港近くに設置された表示板が示す海抜高度は3メートル。沿岸で強い揺れを感じた場合は、ただちに避難が必要になる。

 表示板の高さは2メートル程度とし、高齢者を中心に、徒歩で行動する住民の目に付きやすい高さとする工夫も。町総務課は「日ごろから自分たちが住む土地の高さを意識することで、災害時の迅速な避難につなげることができれば」としている。同様の海抜高度の表示板は、江差町でも避難経路の表示と合わせて設置を計画している。(松浦 純)