2011年11月30日 (水) 掲載

◎函館八幡宮で縁起物づくり始まる

 函館市谷地頭町の函館八幡宮(中島敏幸宮司)で29日、正月用の破魔矢(はまや)や、おみくじなどの縁起物づくりが始まった。函館八幡宮敬神婦人会(勝又チカ会長)の約40人が、破魔矢に来年の干支(えと)の「辰(たつ)」の絵馬を取り付けるなど、年の瀬の作業奉仕をしていた。

 同婦人会による作業は、1957年の同会結成以来行われている。例年、新嘗(にいなめ)祭(23日)が終わったころから始まり、今年は30日までに破魔矢4000本、鏑矢(かぶらや)1000本、おみくじ2万5000本、お札8000枚などを準備する。お払いを受け、初詣の参拝客の前に並べられる。このほか今年は、皇居の新年一般参賀で使われる国旗づくり(約1000本)も数年ぶりに担当している。

 かっぽう着姿の会員たちは、おみくじを丸めたり、完成した破魔矢をビニールに包んだりした。勝又会長は「今年は東日本大震災があったが、函館で無事、この日を迎えたことに深く感謝し、世界平和を祈りながら奉仕しています」と話していた。(山崎純一)



◎ホームレス支援でNPO法人設立へ

 函館・近郊の路上生活者らを支援し、経済的自立を促すNPO法人「函館せいかつコミュニティ」(坪内達雄代表)の設立総会が29日、函館市の亀田福祉センター(美原1)で開かれた。年度内にも道の認証が得られる見通しで、住居提供などの生活支援をしながら職能技術も習得してもらう。関係者によると函館では初めての試み。

 同コミュニティによると、昨年1月現在の路上生活者は全国で約1万6000人。こうした人たちの多くは、失業を契機に住まいも経済基盤も失っているという。函館・近郊でも今年10月下旬〜11月上旬に約15人が駅の周囲で寝泊まりする姿が報告されている。

 坪内さん(69)は今年夏、市内東山町のホテルのオーナーから建物の活用について相談を受けた。9月まで約1年間、家族が所有する施設で高齢男性を1人受け入れた経験があることから、活動の本格化を思い立った。11月には同施設に計4人の路上生活者が入居、このうち3人が住民登録を済ませ、2人が職に就いた。

 まだ3人分の居住スペースがあることから、函館、北斗、七飯の路上生活者を対象に必要に応じて受け入れるほか、13室の個室を備える東山町のホテルも来春の利用開始を目指す。事業は寄付金や入居者の負担金などで運営し、刑務所の出所者も支援の対象に、1年間で自立してもらえるよう努める考え。

 設立総会には趣旨に賛同する入会予定の人たちが十数人参加。坪内さんは「住まいが決まれば住民登録も就労もできる。支援を受ける側から与える側として社会復帰してもらえるよう頑張ろう」とあいさつ。来賓で訪れたホームレス支援北海道(札幌)の島田省治事務局次長(47)は「地域支援が果たす役割はとても大きい。路上生活者が一人もいなくなる社会を目指して」と期待していた。(長内 健)



◎企画「命を見つめて」認知症E、「理解の輪」どう生かす

 脳血管性認知症の姉(77)の介護を15年続ける函館市内の60代の女性は偶然、認知症患者の家族会、函館認知症の人を支える会を知り、入会した。同じ境遇にある他の会員との交流は励みになり、気心の知れた仲間もできた。「いろいろな情報やアドバイスを得ることができ、気持ちにも余裕が生まれた」と話す。

 同会は毎週木曜、函館市総合福祉センターに集まり活動する。会員同士の交流のほか、一般市民からの電話相談にも対応する。これまで夫ら家族6人の介護を経験した佐藤悠子会長は「相談に対しては体験者の生の声を伝えるよう心掛けています。同じ悩みを持つ人同士が共感し、愚痴や不満を発散することは前へ進む大きな力になる」と家族会の存在意義を語る。

 しかし、多くの会員は介護につきっきりで、活動に参加できないという。佐藤会長は家族の負担軽減に光を当てた対策を求める。

 認知症患者の介護は精神的にも身体的にも負担が大きく、徘徊や妄想など周辺症状が現れると同居する家族も振り回される。共愛会病院(函館市中島町)の石井敏明医師は「家族にゆとりがなければ患者もそれを見てますます不安になる」と、家族のサポートの重要性を語る。

 一方、佐藤会長は2年ほど前から認知症当事者の仲間づくりを目的とした「本人交流会」を毎月開催する。家族も含めひきこもりを防ぐ狙いもあるが、参加者は毎回、数人程度の現状が続く。「本人の家族が他人に知られたくないという意識が根強くあると感じる。病気に対する誤解、偏見もなくしていかないと」と語る。

 ただ、近年、啓発の効果で認知症を理解しようとする動きは広がっている。函館市内でも接客業を中心に認知症サポーター養成講座を受講する企業が増えている。函館信用金庫(大手町)は昨年7月、職員96人が養成講座を受け、本店窓口で接客業務を担う金沢絵理さんは「受講するのとしないのとでは大違い。患者さんがいれば話をしっかり聞くよう努めたい」と語る。

 同講座で養成されたサポーターは全国で250万人を超えている。認知症を理解した人をどう支援の輪に巻きこんでいくかが、これからの課題となっている。

 来年4月に施行される改正介護保険法では認知症を含めた要介護者の新たな支援システムの構築が進められる。医療や介護、福祉の現場でも垣根を超えた多職種のネットワークが図られようとしており、認知症の対策、支援は新たな局面を迎えようとしている。(おわり)

 第4部は鈴木潤、長内健、後藤真、平尾美陽子が担当しました。

 ◆改正介護保険法 主な改正ポイントは医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスの視点で包括的に要介護者を支援する「地域包括ケアシステム」の構築を推進するほか、24時間対応の定期巡回・随時対応サービス、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の複合型サービスなどを創設。介護福祉士や、一定の研修を受けた介護職にたんの吸引など医療行為の一部実施を認めた。


◎新ご当地グルメ開発で「江差にしん丼」試食会

 【江差】江差の歴史にゆかりが深い、ニシンを使った新しいご当地グルメ≠フ開発に向けて、町地域雇用創造協議会は29日、町内の飲食店が考案した「江差にしん丼(仮称)」の試食会を開いた。

 協議会のグルメ開発小委員会に参加する、町役場、桧山振興局、飲食店、消費者代表など約20人が出席。町内のレストラン、中華料理店、そば店が考案した3種類の「にしん丼」を食べ比べて、分量や味付けなどを評価した。いずれも、ニシンの甘露煮やカズノコを中心に仕上げた。

 小委員会は「にしん丼」の共通条件として@ニシンと地場産のコメを使うA農村部に伝わる米菓のこうれんと、町内に工場があるマイタケを使った汁物をサイドメニューとする—を掲げ、味付けや盛り付けの方法は、各店舗の創意工夫によるとしている。

 参加者からは「丼と汁物のマッチングに工夫を」「ニシンの味付けはとてもよい」などの意見が出た。小委員会では、他の飲食店などにも参加を呼び掛け、複数の店舗で多彩な「にしん丼」を楽しむことができる体制づくりを目指すほか、江差名物の「にしんそば」などとタイアップしながら、新たなご当地グルメとして売り込みを進める。江差の歴史や文化とかかわりが深いニシンを前面に押し出すことで、観光振興にもつなげる狙いもある。

 年度内にも提供可能な店舗を固め、観光事業者などを対象にした試食会を通じて、町内外へのPRを図る方針だ。(松浦 純)


◎研究者2人講演、新しい漁業の在り方探る

 本年度の函館市南茅部沿岸漁業大学(田名部洋学長)専修課程講座「安全・安心で持続的な南かやべ地域をめざして!」が29日、南茅部公民館で開かれた。漁業者や市民ら約50人が研究者2人の講演に耳を傾け、新しい漁業の在り方を探った。

 講師は、北大大学院水産科学研究院の古屋温美特任准教授と、公立はこだて未来大の和田雅昭准教授が務めた。

 古屋特任准教授は、東日本大震災で被害を受けた道南の水産業に必要な対策について研究。自治体や漁協などへのアンケートから、養殖用のロープやかごなどの資材の納入遅れ、外国での輸入規制、風評被害などを課題に挙げた。

 早い復旧には、放射能検査の継続や正確な情報発信のほか、減災計画の策定、資材調達先の多様化などが必要とした。震災を教訓に「地域を超えた漁業者間のつながり、水産加工業者同士のつながり、直売で築いた生産者と消費者のつながりが、水産業の持続に大きな力となる」と強調した。

 和田准教授は、多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」が、留萌市でのナマコの適切な資源管理や操業効率の向上に役立っている事例を紹介。「勘と経験に、情報≠加えた漁業が重要。リアルタイム情報の活用が、安全・安心な操業環境の提供につながる」と話した。(山崎大和)