2011年11月4日 (金) 掲載

◎七飯のリンゴ 新ブランド「ななみつき」お披露目

 【七飯】町産のブランドリンゴとして今年から販売を開始する「ななみつき」のお披露目式が3日、町文化センターで開かれた。駒ケ岳の形にななみつきを並べたステージで、七飯町果樹組合の成田悌一組合長は「8年ほど前に試食してほれ込んだ品種。リンゴ発祥の地、七飯町をアピールし、大事に育てていきたい」とあいさつ。多くの町民とともに、次世代エースの誕生を祝った。

 ななみつきは、品種は「ぐんま名月」といい、黄色で少し赤みが差し、強い甘みと果汁が多いのが特徴。七飯の「なな」、「みつ」入りの良さ、名月の「つき」を組み合わせたブランド名は、公募で選ばれ、9月に商標登録を済ませた。

 式は、町功労者表彰式に引き続き行われ、中宮安一町長は「大変すばらしいリンゴができた。世界中でななみつきがリンゴの代名詞となるように期待したい」と述べた。名付け親の伊藤絵里さん(41)=大沼町=には、リンゴのワインなどが記念品として贈られ、「七飯のリンゴとして一人でも多くの人に食べてもらいたい」と話していた。

 ななみつきは、今年は生産量が少ないため、町内の直売所で取り扱われるほか、5〜7日の3日間、イトーヨーカドー函館店(函館市美原1)で開かれる物産展「美味しい!ななえマーケット」で限定販売される。(今井正一)



◎函館福島県人会、避難者招き懇談会 同郷集い心和らぐ

 函館福島県人会(熊坂成剛会長、会員52人)は3日、東日本大震災や福島第一原発事故の影響で福島から函館に避難し、生活している家族を市内の料理店に招き、懇談会を開いた。参加した人たちは「懐かしい雰囲気になり、気持ちが和らいだ」などと笑顔を見せる一方、同会員らに、先が見えない古里の暮らしについて話した。

 避難している人にとって、厳しい北海道の冬を初めて迎えることで気掛かりなことが多いのではと同会が考え、企画。同県からの避難者約40世帯へ案内状を送ったところ、10世帯の28人が参加した。同会によると、欠席者のほとんどは「このような企画は励みになり、大変うれしい」「次回の催しには絶対参加したい」などと感謝のメッセージを書き添えていたという。福島県北海道事務所の川島俊和次長によると、札幌などでNPO法人が避難者を招いた催しを開くことはあったが、道内に10ある福島県人会による催しは初めてという。

 函館福島県人会からも12人が参加。熊坂会長が「福島といえど多くの地域から函館に集まっているが、今日を機に、多くの知り合いができ、生活の励みになれば」とあいさつ。参加者はイカの刺し身などに舌鼓を打ち、歓談。

 南相馬市原町のタクシー運転手で、妻とともに親族のいる函館に来て、現在は恵山地区の柏野町に住んでいるという前田弘市(ひろし)さん(68)は「近隣の人から魚をもらったこともあり、函館は温かい人が多く、本当に助かっている。今日は隣の席の人が福島でも隣の地区に住んでいると分かり驚いた。皆、初めての人だが、懐かしい気分になれて良かった」と笑顔を見せる。

 しかし、前田さんの会社は、地域に戻る人は少なく、利用客も減少しており、戻っても仕事にはならないという。「働くことができないので帰れないが、ここでも仕事を見つけないと」と話していた。また、別の参加者からは「今、福島に戻っても健康面に不安があるが、ここでも冬の寒さで小さな子供が心配。私の車の運転も心配」との声があった。

 会場には民主党の逢坂誠二衆院議員が訪れ、参加者からは原発事故に伴う放射性物質の除染などで、東京電力や県の見解や今後の見通しがあいまいなため、政府として対応を望む声が聞かれた。(山崎純一)



◎「海炭市叙景」講演 映画見て父と寄り添えた 佐藤泰志長男が来函

 函館出身の作家、佐藤泰志(1949—90年)の小説「海炭市叙景」の映画ソフト発売記念の講演会とパネル討論が3日、函館市大森町のサン・リフレ函館で開かれた。泰志の長男、綱男さん(31)も静岡市から来函し「父が亡くなってから、ずっともやもやした思いだったが、試写会後から、きょうだいともに心が晴れやかになった。映画に携わってくれた多くの人にお礼を述べたい」と笑みを浮かべた。

 映画「海炭市叙景」製作実行委の主催で、約100人が来場した。会場は、泰志が卒業した旭中学校跡で目の前に広がる津軽海峡の潮騒を聞きながら、関係者が作品に思いを寄せた。

 綱男さんは自身が小学5年の時に父親が自殺し、「21年前からずっと恨みや憎みの気持ちでいたが、昨年東京で映画を見て以来、作家という父の姿に寄り添えるようになった」と打ち明け、実行委メンバーから粘土細工の泰志像を寄贈されると「仏壇に置きたい」と笑顔を見せた。

 映画監督の福間健二さんが講演し、「泰志はお金や賞を取るために作品を手掛けたのではなく、純粋な思いで文学に臨んだ。純粋さを貫いた41年だったと思う」と振り返った。

 パネル討論では、実行委の菅原和博委員長や映画プロデューサーの星野秀樹さん、書評家の岡崎武志さんらが、泰志作品が若者を中心に評価されていることに触れ、「当時のバブル期に踊り狂わず、端正な言葉で表現し、今現在の若者が抱える苦しみに似たものが共感を得ているはず。新しい青春文学として読み直されている」とした。

 映画の話題では、市民協力が大きな支えになったとし「個人的には第2弾を」と星野さん。また小説と映画の内容に、違和感やずれを感じるという声もあった。(田中陽介)


◎茂辺地まつり サケと格闘 捕獲し笑顔

 【北斗】「第30回北斗市茂辺地さけまつり」(実行委主催)が3日、茂辺地川下流特設会場で開かれた。小春日和の中、恒例のサケのつかみ取りや魚介類販売に大勢の市民が詰め掛けた。

 「文化の日」に合わせて毎年開いている恒例行事。メーンイベントのサケのつかみ取りは午前と午後の2度行われ、特設プールに計360匹を放し、抽選で当たった360人が挑戦。プールに直接入って所狭しと泳ぎ回るサケを捕獲する人もいれば、プールの外から手を伸ばして取る人もいて、それぞれ暴れ出すサケと格闘。しっぽを上手につかまえると、歓声を上げて笑顔を見せていた。

 函館市桔梗町から訪れた渡辺悠月さん(9)は「小さいサケを狙った。初めは怖かったけど、つかまえられてうれしかった」とにっこり。母親のリエさん(37)も「ちゃんちゃん焼きにして食べます」と話していた。

 会場ではサケ鍋が無料で振る舞われたほか、茂辺地地区名産のフノリやワカメ、メスのサケなどが当たる抽選会も行われ、にぎわいを見せていた。実行委の山本昭宣委員長は「ここ3年は天候に恵まれなかった。今年は今までにないくらい、多くのお客さんが来てくれた」と安堵の表情を見せていた。(千葉卓陽)


◎七飯のチョウ「アサギマダラ」1230キロ飛ぶ 下関で再捕獲

 昆虫愛好家でつくる「道南虫の会」(会員45人)が七飯町で捕獲し、今年8月に印を付けて放した「海を渡る蝶」アサギマダラが10月下旬、直線距離で約1230キロ離れた山口県下関市で発見された。同会の対馬誠さん(54)は「チョウが発見された時は驚いた。今後のチョウの飛行ルートとして、沖縄や台湾方面を目指すと思う。これが日本新記録につながれば」と声を弾ませる。

 アサギマダラが津軽海峡を渡り、本州で発見されたのは、2008年に愛知県で発見されたのに続き2度目(14日間で約780キロ移動)。今回の発見は、66日間かけ1200キロ余りを移動し、これまでで最長事例となる。関係者は「本州最西端の日本海側で再捕獲されたのは極めて貴重」と話す。

 アサギマダラは大型のチョウで、関東以南の暖かい地域で多く見られるが、北海道では珍しい。春に北上し、秋に南下する。道南では5月から10月にかけて観察することができるという。

 今回見つかったのは、会員の山口誉範さん(34)が、函館に帰省中の8月19日、七飯町の横津岳から雄と雌を放したうちの1匹。羽に「ハコダテ」「8/19」などと書き込み、放蝶した。

 その後、10月24日に下関市の公園で、公園の指定管理者を務める杉村孝志さん(62)が捕まえた。

 山口さんは「最初連絡をもらった時は、なんのことかわからなかった。驚いた」と話し、「放蝶した場所は、自分が昔、スキーをしていた思い出の場所でもあるので、うれしい限りですね」と笑顔で話ていた。(平尾美陽子)