2011年12月10日 (土) 掲載

◎クジラ食べて! 市場などで特売

 「鯨(くじら)の日」の9日、函館水産物商業協同組合(佐藤止昭理事長)は函館市内の市場やスーパーで、クジラベーコンと塩クジラを2割引きで販売。「年に一度の特売! 正月料理にどうぞ」と売り込んだ。

 道南では、クジラが縁起物として正月に味わう食文化がある。同組合は、地域の食文化を守り、クジラのPRに努めようと5年ほど前から特売を続ける。

 今年は約100店舗が参加し、調査捕鯨のクジラをトナミ食品工業(北斗市)が製造。スライスしたクジラベーコン120グラム計8400袋、塩クジラ250グラム計1500袋を各1袋1000円で並べた。

 はこだて自由市場(新川町1)では「今日はクジラが安い。冷凍してもおいしいからたくさん買って」と売り手の威勢の良い掛け声が響き、市民や観光客が品定めを楽しんだ。

 友人の勧めで自由市場を訪れた埼玉県川越市の高橋真知子さん(69)は「高校まで函館で過ごしていたのでクジラベーコンの味を覚えている。子どものころはすごく高いイメージがあったけど、あの味が大好きで今日は特売と聞いてうれしい」と声を弾ませていた。

 佐藤理事長(60)は「特売は日ごろの感謝。クジラは函館の正月料理に欠かせないもので、この特売を通じて地元の食文化を見直してもらえる機会になれば」と話していた。(田中陽介)



◎「高龍寺」国登録有形文化財に

 函館市船見町21にある市内最古の曹洞宗寺院「高龍寺」所有の建造物10件が9日、国の文化審議会で文部科学大臣に答申され、登録有形文化財への登録が決まった。函館では6年ぶりの登録で、市内の登録件数は合わせて17件に。永井正人住職は「登録は昨年4月に亡くなった先代(永井康人前住職)の思いでもあった。先代も喜んでいると思う」と話している。

 登録は建設後50年が経過し、@国土の歴史的景観に寄与しているA造形の規範となっているB再現することが容易でない—ことが基準。市は7月に登録へ向けた書類を文化庁に提出し、その後文化庁から文化審議会に諮問し、同日答申された。

 高龍寺は1899年ごろに建築された本堂や、1907年の火災後に新しく建てられた山門、金毘羅堂などで構成。道有形文化財の「釈迦涅槃図(しゃかねはんず)」を所蔵しているほか、毎年10月に開催する「金毘羅尊天例大祭」など、年間を通して多彩な行事が行われている。見学は無料。

 登録されたうち、「本堂」は良質なケヤキを使用した太い柱と梁(はり)で支え、力強い内部空間をつくる。周囲に下屋と縁をめぐらせ、東西に回廊を付属させる。堂内は9室あり、正面の向拝などには立体的で精巧な彫刻を飾るなど、大規模かつ装飾豊かな点が評価された。

 「山門及び袖塀」は境内正面に建つ木造八脚門で、門の左右には桟瓦葺の袖塀を延ばしている。東北以北最大の山門で、雲龍や獅子、花鳥などの彫刻が施されるなど、意匠をこらした外観が特徴だ。

 また、市内に現存する煉瓦造建築として代表的な「開山堂」や、延焼を防止するために設けられ、大火が頻発していた近代函館を象徴する「防火塀」、境内で最も装飾豊かな「金毘羅堂」などのほか、「水盤舎」「鐘楼」「宝蔵」「位牌堂」「土塀」が登録となった。

 正式登録は数カ月後の登録原簿登載を経て決まる。市教委文化財課は「函館の歴史を物語るお寺が国に認められてうれしい。これからも後世に引き継がれてほしい」と祝福。永井住職は「これまでと同じように地域に密着したお寺であり続けたい」と話している。



◎TPPで漁業生産66億円減 函館市議会

 函館市議会第4回定例会は9日も一般質問を継続し、6氏が質問に立った。関税の原則撤廃を目指すTPP(環太平洋連携協定)の影響について、山田潤一農林水産部長は漁業生産額が約66億円減少すると試算していることを明らかにした。

 佐々木信夫氏(市民クラブ)の質問に答えた。

 山田部長は、TPP交渉への参加が市に及ぼす影響について「農林水産業や医療、食など多方面に及ぶ」と説明。道の試算に基づいて市への影響を試算したところ、農業産出額は全体の約59%に相当する約15億6000万円、漁業生産額は全体の約31%となる約66億3000万円、それぞれ減少するとした。

 さらに、佐々木氏は「各業界はTPPの影響をどのように受け止めているか」と質問。山田部長は「製造業は輸出入の活発化や原材料価格の低下などを理由に交渉参加を肯定する意見と、一次産業の動向によっては安定した原材料が確保できないといった否定的な意見も聞かれた」と説明した。

 加えて、TPPの参加により国民皆保険制度の崩壊などにつながる懸念があることから、同部長は「函館市医師会はこれまで平等に提供してきた医療が崩壊する恐れがあるため、国民の合意が得られない中での参加表明はとても賛成できないと意見を述べている」と報告した。

 また、工藤寿樹市長は政府のTPP参加表明について、「今後も動向を注視し、仮に市民生活などに大きな影響が及ぶ状況が生じた場合は、関係団体と協力しながら国に適切な措置を講じるよう強く要請していきたい」と述べた。(後藤 真)


◎冬休み乗り放題定期券 10日発売

 函館バス(函館市高盛町)は、冬休み限定で利用できる小中学生乗り放題定期券「バス冒険キング」を10日に発売する。夏に続き函館と北斗、七飯の2市1町が安価で乗り放題となる。夏は576人の利用があり、同社は「日常的に利用する人は確実にお得」と勧める。

 同定期券は子どものころからバスに親しむことで利用を推進しようと商品化し、今年で6年目。前回の発売から北斗、七飯を範囲に加えた。しかし、料金が1・5倍となったことから利用は逆に減少し、購入者は小学生302人、中学生274人の計576人にとどまった。購入地域別では、拡充した北斗と七飯の学校を介した紹介での購入者が伸び悩んだ。

 ただ、同社は「降雪のある冬は自転車の利用が控えられることから、周知次第でまだまだ可能性はある」と考え、冬も夏と同じ条件の定期券とした。範囲は3市町の全域。バス停名では、北斗は「西三ツ石」「中山随道」まで、七飯は「西大沼小学校」「駒見」まで、函館は南茅部地区の「岩戸」まで乗ることができる。

 料金は小学生が1500円、中学生が3000円。定期券には、同伴する保護者1人の運賃が半額となる「親子券」、エリア内の公共施設一覧や特典を用意した施設などを掲載した「研究手帳」が付く。販売場所は同社各営業所など。問い合わせは函館営業所電話0138・51・3137。(小泉まや)


◎プロのペンキ画家 壁面に富士山描く 永寿湯温泉と桐の湯

 銭湯の永寿湯温泉(函館市湯川町1)と桐の湯(同市松陰町)の浴場壁面に8、9の両日、全国でも数少ないプロのペンキ画家の手で、富士山を題材としたペンキ画が描かれた。永寿湯温泉は初の試みで、13日に新装オープンする。両銭湯を経営する長南武次さんは「絵の迫力に感動する。喜んでもらえそう」と入湯客を迎える日を心待ちにしている。

 長南さんは「銭湯にはペンキ画が一番似合う」との思いで、これまであった桐の湯の塗り替えに加え、無地の壁だった永寿湯にも描くことを決意。10月からの大型改装に合わせて行った。

 絵は、東京を中心に活躍するペンキ画家の丸山清人さんが描いた。丸山さんは約20年前に桐の湯で仕事をしたペンキ画家の弟子に当たり、当時は師匠とともに制作に当たった。今回は2日間かけ、4枚の絵を完成させた。

 永寿湯では8日に2枚を描いた。男湯は富士五湖の本栖湖から眺めた風景で、すそ野の滑らかな曲線や明るく透き通る湖面の色合い、岩や植物の陰影が安らぎを誘う。横4・5メートル、縦2・1メートルの巨大な絵で、長南さんは「雄大で味わい深い。ぜひ入浴しながら眺めてほしい」と話していた。 永寿湯の営業時間は午前6時から午後10時。桐の湯はすでに営業を再開した。(小泉まや)