2011年12月13日 (火) 掲載

◎大平さん17日に事務所開設 障害関係なく楽しい旅行を

 函館市内在住の全盲のアマチュアカメラマン、大平啓朗さん(32)が17日、函館市中島町25の「中島れんばいふれあいセンター」内に、障害の有無や年齢にかかわらず誰もが旅行や観光を楽しむ「ユニバーサルツアー」の企画・ガイドを行う事務所を開設する。今後、組織をNPO法人化し事業を進めていく方針で、大平さんは「障害、年齢に関係なく誰もが行きたいと思う所に行けるよう個々のニーズに対応していきたい」と話している。

 事務所の名称は「ふらっとほ〜む」。バリア(障壁)のないフラット(平ら)な場所になるよう、誰もがふらっと気軽に立ち寄れ、人が行き交う駅のプラットホームのような存在になるよう願いを込めた。

 事業の柱となるユニバーサルツアーの企画・ガイドは市内の旅行代理店と協力しながら行う。市外や道外からの観光客を迎え入れ、地元住民ならではの視点で案内する「着地型観光」の実践を目指していて、車いす利用者や聴覚、視覚、その他の障害者に対応したツアーの企画立案やガイドも行う。

 ただ、観光スポットを案内するだけでなく、例えば、視覚以外の感覚で景色を楽しむ体験型プログラムを取り入れるなど大平さんならではの企画を立案していくつもりだ。

 この他、観光施設や宿泊施設のバリアフリー情報を発信する取り組みも行う。車いすや人工肛門保有者に対応したトイレあるのかなど、市内観光を楽しみたいという障害者、高齢者の相談にも応じる。

 事務所内では、大平さんが撮影した写真を常設で展示し、写真作品をポストカードにして販売もする。職員2人を採用し、当面3人体制で運営していく。他団体と連携してユニバーサル型のイベントの企画、運営もしていく考えだ。

 大平さんは2009年6月から沖縄を皮切りに1年間、民泊しながら47都道府県を巡る1人旅を行った。旅先で撮影活動をしながら地元の人たちと交流を深め、その経験を糧に起業を目指し、準備を進めてきた。

 大平さんは「いろいろな人の協力を得て事務所を開くことができた。これまで培った体験やネットワークを生かしていきたい」と意欲を見せる。

 17日は午後1時から中島廉売内で開催するコミュニティービジネス起業支援ワークショップで大平さんが活動の内容を発表するほか、午後2時半から開所式を行い、事業を始める。 (鈴木 潤)



◎聖ニコライのイコン常設 函館ハリストス正教会

 日本の正教会発祥地である函館ハリストス正教会(元町)にこのほど、函館や東京で正教の伝道に努めたロシア人宣教師、聖ニコライ(1836〜1912年)の渡来150周年を祝し、モザイク様式イコン(聖像画)が設置された。市民や観光客らにより愛される正教会を目指し、イコン周辺も環境整備する予定だ。

 信徒の祈りの対象であるイコンは、節目を記念し日本ハリストス正教会教団東日本主教々区(仙台市)が昨冬に設置計画を本格化。ハバロフスク(ロシア)在住の美術家、ゲンナジイ・パブリーシンさんが無償で制作し、仙台ハリストス正教会を経て今年9月、北海道へ移送された。同教団によると、国内に66カ所あるハリストス正教会で屋外にイコンを設けたのは今回初めてという。

 イコンは縦80センチ、横60センチ、重さ約70キロで、光沢のあるタイルに聖ニコライが描かれている。外枠には穏やかな海を表すマリンブルー、内側には不安を和らげる黄色の波も。北斗市の上磯ハリストス正教会関係者が手掛けた高さ約2bの石に収め、11月に函館の聖堂敷地内に設置された。周辺には今後、人々が休憩できるようベンチを置くほか、夜間ライトアップも考えているという。

 函館ハリストス正教会のニコライ・ドミートリエフ司祭(51)は「重いものをハバロフスクから日本に運んでくれた関係者には本当に感謝している」と笑顔を見せ「ここは元々何もなかった空間だが、貴重な宝物ができた。市民にとっては憩いの場に、観光客にとっては思い出づくりの一つになれば」と期待している。(長内 健)



◎美味! エゾシカ肉の燻製

 道総研林業試験場道南支場(函館市桔梗町、佐藤創支場長)主催の公開講座「エゾシカを学んで食べる」が11日、同支場で開かれた。函館や北斗市内から参加した9人がエゾシカ肉の薫製作りに挑戦、試食したところ「肉の臭みがない」などと好評だった。

 道南でも生息数が増加傾向にあり、肉を使ったメニューを提供する飲食店も増えるなど、身近な存在になってきたエゾシカについて理解を深めてもらおうと、初めてエゾシカをテーマにした。

 薫製作りは、函館市小安町で捕獲されたシカ肉約5`を使用。雄ジカのモモ肉、心臓、肝臓のほか、子ジカのモモ肉を地元産ブナ、ミズナラ、エゾヤマザクラの3種類のチップを使い、約80度の温度で3時間いぶした。濃い茶色で香ばしい薫製が出来上がり、参加者は大喜び。早速、薫製機から取り出し、包丁で切り分けて試食。函館市石川町の無職、高島康雄さん(68)は「おいしい。木によって味が違う」と食べ比べを楽しんでいた。

 薫製が出来るまでの間、同支場の南野一博研究主任が、エゾシカの生態や農林業被害の実態について説明。道南での被害額は約4000万円で、そのうち函館市が約2700万円で4年前に比べ4倍に。被害を減らすには個体数の調整が必要で、肉を有効利用することが望ましいとした。(山崎大和)


◎全道高等学校英語弁論大会 道南2人堂々入賞

 全道高等学校英語弁論大会(道高文連国際交流専門部主催)が6日に札幌市で開かれ、道南地区の個人部門代表として出場した白百合学園高校2年の稲野辺海さんが3位、函館中部高校2年の上沢森さんが4位に入賞した。惜しくも全国出場は逃したが、2人は「悔しい思いはあるが自分の力は精一杯出せたのでよかった。英語文章の組み立てや表現方法などを学べ、いい経験になった」と笑顔を覗かせる。

 同大会には道内各地から17人が出場。制限時間5分を目安に、それぞれが自由にテーマを選んで考えたスピーチをジェスチャーを交えるなどしながら、表現力を競った。

 稲野辺さんはのタイトルは「Let,s Get on the Korean Bandwagon(韓流ブームにのろう)」。ブームを音楽やドラマだけで終わらせるのではなく、両国の歴史や文化の違いを受け止めて日韓交流を築いていこうと主張した。

 10月ごろから練習をはじめたが、「勉強や部活、生徒会の活動と全部両立するのは大変だった。当日は身ぶりにも工夫し、楽しい場面では笑ったりして話すことができ、自分の力を出し切った」と振り返る。現在は韓国語も勉強中。「今回の大会で大勢の前で話をする自信もつき、いろいろなことを学べた。いい体験ができた」と話す。

 上沢さんは「Efficient working in order to have a happy life(効率的な働き方でもっと幸せな生活を送ろう)」をテーマに、日本とドイツの雇用の違いを発表。「ドイツでは労働基準時間以外に働くと雇用者に厳しい罰則が科せられるが、日本はあまり厳しくないので、罰金などの制度を作りしっかり守るべき」と強調した。  昨年は全道に行けず、悔しさをバネに練習を重ねてきた。以前から雇用問題などの社会問題に関心があったといい、「緊張したが自分のスピーチはしっかりできたのでよかった。入賞できてうれしい」と話していた。(平尾美陽子)


◎震災避難者の入居期限延長

 東日本大震災の避難者に対する市営住宅の無償提供で、市は入居期限を従来より1年延長する考えを示した。これにより入居日に関わらず、最長で2013年3月31日まで期限が伸びる予定。

 12日の定例市議会の一般質問で、小山直子氏(民主・市民ネット)への答弁。  市によると、1日現在の市への避難者は89世帯、220人以上。そのうち33世帯、82人が市営住宅に入居している。

 入居は地方自治法に基づく行政財産の目的外使用として扱い、入居期限は入居日から最長で1年とし、家賃を無償とするほか、家財道具も無料で提供。避難者を受け入れする住居は60戸用意しており、現在申し込みは落ち着いているという。

 上戸慶一総務部長は「被災地の復興状態や原発問題の収束状況を考慮し、避難生活の長期化は避けられない」と説明。その上で、13年度までの延長検討を示した。

 また、そのほかの支援について「家族の介護や就職に関わる生活費などの相談も寄せられているため、民間団体との協力体制の強化を図るとともに、関係機関と連携しながら個々の状況に応じた支援をしていきたい」と述べた。 (後藤 真)