2011年12月15日 (木) 掲載

◎アブラザメ大漁もマダラは例年の半分

 函館市恵山地区のマダラ漁のはえ縄にアブラザメが多くかかっている。サメが好む高い水温の影響とみられ「サメがタラを追い払っているようだ。サメは安くて、皮をはいで出荷しなければならないから大変」と漁師は困惑ぎみだ。

 アブラザメは、カマボコの原料として出荷されるが、今年は東日本大震災の影響で東北の加工場が少なく、取扱量の減少などで値が張らないという。

 JFえさん山背泊支所によるとサメの相場は1キロ当たり200〜300円。マダラは同500円前後で、脂の乗った身に濃厚な卵と白子もあり、冬を代表する高級魚だ。

 14日午前3時に出漁した斉藤栄治さん(66)は、マダラ300キロ、サメ250キロを水揚げ。「タラはいつもの半分以下。タラ自体が少ない上にこのサメだから参った。水温が下がればサメが消えてタラがいっぱいかかる。これからの大漁に期待して、いい正月を迎えたい」と話していた。(田中陽介)



◎函館—新函館の経営分離問題、各派代表者会議で集約へ

 北海道新幹線の札幌延伸に伴う函館駅—新函館駅(仮称)間の経営分離問題に関し、函館市議会の対応が大詰めを迎えた。14日開かれた総務常任委員会(工藤恵美委員長)では判断を見送り、15日以降に開く各派代表者会議で意見を集約することになった。市は16日に道に回答する考えのため、能登谷公議長は16日午前に工藤寿樹市長に回答する方針だが、各会派には意見にばらつきがあり、意思の一本化は困難な情勢だ。

 工藤市長は13日、道が主体となって第3セクターを設立し、JR北海道が3セク設立後に運行委託を受けるなどとする道とJRからの回答を各派代表者会議に示し、議会として意見を取りまとめるよう求めている。

 総務常任委では渡辺宏身企画部長が文書の内容を説明。各委員は内容確認の質問にとどまった中、阿部善一氏(民主・市民ネット)は「文書には負担割合の数字が出ておらず、年次も入っていない」と指摘。紺谷克孝氏(共産党)も「回答から2、3日で結論を出せというのは非常識」などと、道の対応を批判した。

 また金沢浩幸氏(市政クラブ)は「函館はキャスチングボートを握っており、市から条件を訴えるべき」と主張。一方、日角邦夫氏(民主・市民ネット)「かなり踏み込んだ提案」と評価した。

 工藤委員長は15日も会議を開き、議論を深めたいとの見解を示したが、工藤市長が意見集約を求めていることから各委員の対応は分かれ、能登谷議長のもとで意見をまとめることで一致した。

 各派代表者会議は非公開で、意思決定は全会派一致とすることが慣例となっている。能登谷議長は取材に対し、15日午後か16日午前に各会派を招集する考えを示すとともに「全部の意見をまとめるのは難しいが、議長としては全会一致の意見を出してほしい」と話した。(千葉卓陽)



◎道産苗木100%でブナ林再生へ

 道内では渡島半島でしか見られないブナ林を、道産苗木100%で再生しようという試みが進んでいる。道総研林業試験場道南支場、渡島総合振興局、道山林種苗協同組合渡島地区種苗協議会が、植裁用苗木を生産するためにブナの道産種子を大量に集める態勢をつくり、今年1年目の採種をした。広葉樹で種子産地を地元に限る例は全国でも珍しく、成功すれば都府県の広葉樹林再生のモデルとなりそうだ。

 九州から北海道まで広域に分布するブナ林は後志管内黒松内町が北限とされ、道南全域に自生している。まきや枕木、フローリング材などに使われ、1950年以降伐採が進み、山は衰退の一途。ブナ植裁による自然再生が課題となっている。

 ブナには地域間変異が存在し、生態特性が大きく違う特徴がある。例えば、北海道では本州産はうまく育たなかったり、遺伝的な不適合を起こしたりする恐れがある。このため、苗木はもともと地域にあった母樹集団から生産することが望ましいが、道産種子は2002年以降まとまった量が取れず、足りない分は他県産の流入が続いていた。広葉樹はそもそも種子の持ち込み、持ち出しの規制がないことも背景にある。

 道産種子による苗木生産の機運が高まったことを受け、苗木生産者が容易に十分な量の道産種子を入手できるよう環境整備をすることになった。

 問題はブナが豊凶の振れ幅が大きい上、豊作の間隔が5年以上と長いこと。また、地域間で作柄が必ずしも同調しないことだ。これらに対応するため、いつどこで種子がなるかの情報を3者共同で収集・共有し、確実な種子採取につなげることにした。

 その大きな役割を果たすのが道南支場が97年から始めた豊凶予測だ。せたな町北桧山区、黒松内町、乙部町、上ノ国町、函館市恵山、同市赤川の計6カ所で実施するブナの開花結実状況のモニタリングと枝の芽むき調査に基づくもので、前年の冬(12月〜翌年2月)までに翌年の各地点の豊作、平年作、凶作を予測する。3者はこれを利用し、種子を取れる可能性があれば、8月ごろ着果確認。その結果、可能性が高いと判断した場合、網を設置し10月いっぱい採種をする。

 今年の採種量は約20キロで、この種子から苗木5万〜6万本(1年分に相当)を生産。種子が大量に取れれば、生産者の所得増にもつながる。

 同支場の阿部友幸研究主任は「種子を道産に限るのは、苗木生産者の大きな負担となる。その代わりに生産者が容易に種子を採取できるようなインセンティブ(公的機関による情報提供)を作り出すことで対応するようにした」と話す。

 阿部さんによると、種子が多くできる条件は、花がたくさん咲くことと、前年に花が咲いていないこと。また、花が咲かない年があると、その年は花だけを食べる虫は増えることができないので、翌年は虫害が少なく種子ができやすくなるという。(山崎大和)


◎「函館野外劇」の会が道地域文化選奨特別賞を受賞

 国の特別史跡・五稜郭跡を舞台に函館の歴史絵巻を演じる「函館野外劇『星の城、明日に輝け』」を主催するNPO法人市民創作「函館野外劇」の会(フィリップ・グロード理事長)が、本年度の道地域文化選奨の特別賞を受賞した。同会関係者は「25年の節目を迎える来年に弾みがついた」と喜んでいる。

 道が14日発表した。同賞は1993年から、道内で地域に誇りと愛着を持ち、文化活動や文化支援に取り組む個人や団体・民間企業を顕彰している。19回目の本年度は自薦、他薦で申請のあった約60団体が「地域性」「創造性」「波及性」「継続性」「発展性」で審査され、受賞が決まった。本賞は「旧岡崎家能舞台を生かす会」(小樽)で、札幌建築鑑賞会も特別賞を受賞。

 道南からはこれまで「繁次郎劇団」(江差、07年)、「七飯町民劇場」(01年)など4団体が本賞を、八雲山車行列実行委(04年)など5個人・団体が特別賞を受賞しており、本年度で計10となった。

 「函館野外劇」の会は1988年から毎年夏に野外劇を開催。五稜郭の堀に浮かべた船から高田屋嘉兵衛が来函したり、各国の旗を持ったフラッグダンスで開港シーンを表現するなど、地域の歴史を市民の創作により披露し、道内外から訪れた20万人以上の観客を魅了している。これまで、1991年に地域づくり表彰(国土長官賞)、2006年に国土交通省「手づくり郷土(ふるさと)賞」、昨年は大手旅行代理店のJTB(東京)が主催する「第6回JTB交流文化賞 交流文化賞・選考委員特別賞」などを受けている。

 2年連続で多方面から評価された受賞に、同会の中村由紀夫副理事長は「大変名誉なこと。道民に対し知名度が上がるので、私たちは魅力ある内容を知らせるように頑張りたい」、里見泰彦事務局長は「地域性、創造性で評価されたことは励みになる。受賞したことを活用し、25年目の来年の公演が大盛況となるようにしていきたい」と話している。

 贈呈式の日時、場所は未定。(山崎純一)