2011年12月17日 (土) 掲載

◎函館—新駅の経営分離 函館市、判断見送り

 北海道新幹線の札幌延伸に伴う函館駅—新函館駅(仮称)間の経営分離問題で、函館市の工藤寿樹市長は16日、同日が期限となっていた道への回答を見送ることを決めた。意見集約を求めた各団体との議論を深めた上で、週明けの19日以降に判断する方針。一方、北斗市の高谷寿峰市長は同日、同区間の経営分離に同意することを道に伝えた。これにより、回答を保留している沿線自治体は函館市のみとなった。

 道とJR北海道は13日、道主体で第3セクター会社を設立し、JR北海道が運行受託、さらに同区間を新函館開業時に電化する案を提示。工藤市長は市議会と市内民間15団体に回答を求めていた。

 同市長は取材に対し、「わたし自身の中で整理がつかず、結論を出せる段階に至っていない。道にはもう少し時間がほしいと伝えた」と述べた。

 これに対し、道の新幹線・交通企画局は回答期限について「国の予算編成を踏まえて設定したが、特段の期限はない。なるべく早い方がいいが、それぞれの事情があるのでやむを得ない。16日を過ぎても待つ」としている。

 工藤市長は道、JRからの回答が来た13日の段階で市議会や函館商工会議所など5団体に説明。14日にはさらに建設、観光、商業関連の11団体に範囲を広げた。市議会は各会派の見解を示すにとどまり、商工会議所など4団体が反対。11団体に対しては16日午前を回答期限としたが、本紙取材や関係者の話を総合すると、賛成は3団体にとどまり、7団体が保留、1団体が反対している。

 工藤市長は「市民の間には不安や、道への不信がある。全面的に賛成という団体もいたが、今の状況では判断に至らない」と話している。(千葉卓陽、今井



◎忘年会ピーク 市内各店にぎわう

 今年も残りわずかとなり、函館市内でも忘年会がピークを迎えた。1年の仕事の疲れを吹き飛ばそうと、市内各店でにぎわいを見せている。店の形態によって多少違いはあるものの、今週末から22日が最盛期とみられ、「乾杯」の声があちこちで聞かれそうだ。

 「今年1年お疲れさまでした」「来年もまた頑張りましょう」。函館市本町32の「炉 たちか屋」(大渕暁店長)では16日、午後6時過ぎから1年の労を互いにねぎらおうと、にぎやかに杯を交わす来店客の姿が見られた。同店ではよせ鍋やもつ鍋、キムチ鍋が選べる3000円からのコースを用意。大渕店長は「例年に比べ少人数で忘年会を開く客が多い」と話す。

 同市本町34の「天ぷら天八本店」(北越幸子店長)では宴会用のコース「3500円のコースに飲み放題(2時間)1500円を付けるケースが多い」とし、よせ鍋やすき焼きなどが選べるコースが人気。北越店長は「さまざまなことがあった1年だが、揚げたての天ぷらを食べてわいわい楽しんでもらいたい」と話す。

 ただ、今年の忘年会には東日本大震災や不況の影響もちらついている。市内の飲食店では「忘年会の予約状況が鈍い」との声も。

 16日に忘年会を開いた男性会社員(40歳)は「震災や原発事故などいろいろあった。家族や職場の仲間の絆の大切さを感じる」、女性会社員(23)は「こういうときこそ前向きな気持ちが大切だと思う。来年も一致団結して仕事を頑張りたい」と話していた。(平尾美陽子)



◎とろろ昆布製造最盛

 函館産のガゴメコンブを使ったとろろ昆布作りが、函館市の加工場でピークを迎えている。同市川汲町の製造加工業「かまだ商店」(鎌田博之社長)の工場では連日、スタッフが袋詰め作業などに追われている。

 1975年創業の同社は一貫して地元のガゴメコンブにこだわり、きざみ昆布やおぼろ昆布も手掛ける。とろろ昆布は同社主力商品の中でも特に需要が多く、年間を通して受注先である関東や関西を中心に出荷している。

 原料のガゴメコンブは水を混ぜた醸造酢に漬け、じっくり寝かせてうま味を引き出す。昆布の表面の汚れを除去した後、約60`の塊に圧縮。これを機械4台で薄くスライスし、スタッフが約2cに仕上げたものを束ねて計量する。1日に約400キロ分を袋詰めしているという。

 同社の営業担当、田渕亜樹さんは「余計な調味料は使わず、素材と製法にこだわった自慢の一品をぜひ食べてほしい」と話している。

 函館市内では、土産屋や一部スーパーで取り扱っている。(長内 健)


◎目指せ縄文博士!…2月に函館、森で初検定

 縄文時代の遺跡や文化について幅広い知識を問う「Theじょうもん検定」が来年2月19日、函館市縄文文化交流センター(同市臼尻町)や森町公民館(同町御幸町)で初めて行われる。「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の2015年度世界遺産登録実現に向け、民間レベルで機運を盛り上げようと、今回で2回目の開催。

 同検定は、遺跡の価値や魅力を世界に向けて発信できる人材を養おうと、青森県青森市の「NPO法人三内丸山縄文発信の会」(藤川直迪理事長)が主催。第1回は今年3月に初級のみ実施。今回は会場数を増やし、本道、青森、秋田、岩手など5?道県9会場で行い、初級合格者を対象とした中級も設ける。

 出題はいずれも選択式の100問。試験時間は90分で、100点満点中7割以上で合格となる。問題は「生活と道具」「交流・交易」など当時の暮らしや文化を分かりやすく解説している同会発刊の「公式テキストBOOK」で勉強することができる。

 同会によると、1回目の検定には92人が受験、このうち89人が合格している。同会は「初級は老若男女が幅広く受講できる優しい問題。知識を深めることで新たな発見もあると思う。気軽に受講を」と呼び掛けている。

 市縄文文化交流センターを管理・運営する市埋蔵文化財事業団の時田太一郎さんも「検定受講は自分たちの地域にある素晴らしい財産の再発見につながる。一人でも多くの市民に受けてもらいたい」と期待している。

 試験は午前10時半から。受験料は初級3000円、中級4000円(高校生まではいずれも2000円)。申し込み締め切りは来年2月10日(必着)で、各地の会場に置く予定の申し込み用紙に必要事項を記入して直接提出する。公式テキストBOOK(税込1500円)も一部の会場で販売中または販売予定。問い合わせは同会電話0177・73・3477または同センター電話0138・25・2030。(長内 健)


◎青函圏3市連携 台湾で観光PR…初の合同プロモーション

 台湾からの観光客誘致に向け、函館市は、青森、弘前両市と合同で台湾での観光プロモーションに乗り出した。3都市が連携して海外で観光PRするのは初めてで、訪問時には台湾の復興航空が函館—台北線の定期便の就航計画も明らかになった。東日本大震災後も訪日観光需要が安定している台湾で青函圏の3市がそれぞれの魅力を発信し、新たな周遊ルートの開拓につなげる狙いだ。

 函館市によると、台湾からの観光客には函館から道央、道東を巡る周遊ツアーの人気があるが、青森をセットにしたツアーはなかった。市ブランド推進課の池田敏春課長は「台湾でも旅行形態が団体型から個人型に移行し、常に新たな魅力を打ち出していかなければ」と広域連携の意義を強調する。

 今回は函館市のツインシティーとして20年来連携してきた青森市に加え、函館と弘前の商工会議所が4月に「津軽海峡観光クラスター会議」を発足し、観光を軸とした連携を始めたことや、弘前市が9月に行政間でも連携を図ろうと、函館市に共同プロモーションを提案したことを受け、弘前も初参加した。

 一行は3市の観光協会や商工会議所、市役所の計11人。今月1日に2班に分かれ、現地の航空会社3社と主要旅行会社7社を回った。北海道新幹線開業後に新函館—新青森間が約40分で結ばれる距離感などを説明。航空会社との懇親会では復興航空の担当者が函館—台北間の定期便の運航計画があることも明かした。

 同課によると、函館市は台湾での定期セールスを1998年から続けている実績があり、知名度が高い一方、青森、弘前両市の認知度はいまひとつ。その分、現地の関係者は広域観光の新たな選択肢として高い関心を示し、「函館が両市と組むことで、青函観光の新たな展望が開ける」と潜在的な需要に期待する。

 函館、青森両市によると、台湾からのチャーター便の利用客は函館空港が昨年約3万7000人。一方、青森空港はゼロ。震災に伴い一時運休していたものの、函館では約2カ月後の5月下旬に台湾・復興航空のチャーター便の運航が再開し、東アジアの主要な訪日客の中では夏以降も比較的堅調に推移している。(森健太郎)