2011年12月19日 (月) 掲載

◎経営分離問題、知事と市長会談も決着つかず

 北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道が函館—新函館(仮称)間を並行在来線として経営分離する問題で、高橋はるみ知事は18日、函館市内のホテルで工藤寿樹市長と会談した。函館—小樽間の沿線自治体で唯一同意を表明していない同市に対し、知事自らが理解を求めたが、この日で決着はつかず、工藤市長は「もう少し時間をいただきたい」として回答がずれ込む可能性も示唆した。

 分離同意をめぐり、知事と市長が会談するのは初めて。政府が週内にも札幌延伸の着工認可を決定する見通しの中、道は着工条件の一つとなっている沿線自治体15市町すべての同意を取り付けたい考えで、知事自らが出向くトップ会談で事態の打開を狙ったものとみられる。

 会談は非公開。知事は会談後に報道陣の取材に応じ、「今が札幌延伸に向けてのラストチャンス。道南全体の発展に向けてご判断いただきたい」と理解を求めた。道が13日付で示した文書を踏まえ「道が(3セクの)設立や負担割合について主体的な役割を果たしていく」と繰り返し強調したが、新たな提案には言及しなかった。

 一方、工藤市長は知事に対して▽拙速な判断を迫られている時間の無さ▽過去の約束がほごにされた不信感▽負担割合が明示されていない不安感—の3点を主張。「知事の決意は重く受け止めるが、市民の不安や不信、懸念を解消する努力をもう少しさせていただきたい」と述べ、関係団体などにあらためて説明する考えを示した。

 また、1994年に当時の横路孝弘知事と木戸浦隆一市長が交わした道新幹線の現駅乗り入れの覚書がほごにされたことへの市の不信感について、知事は「現職としてあらためておわび申し上げた」と説明。工藤市長も今回の会談について「今までのような表に出ない覚書とか事務レベルでの口約束とは意味が違う」と述べた。

 工藤市長は会談後の記者会見で、これまで道新幹線の函館の要請運動について「道の協力が得られない中で孤独な戦いをした」と道の連携不足に苦言を呈した一方、「札幌延伸はやむを得ないと市民は覚悟している。障害になることは避けたい。市民の大半がそのはざまにある」とし、決断の難しさをにじませた。(森健太郎)



◎知事一問一答「市民に不信感 心からおわび」「札幌延伸ラストチャンス」

 工藤市長と会談後の高橋知事と報道陣との一問一答は次の通り。

 ——市長にどのような形で理解を求めたのか。

 新幹線の札幌延伸の議論がこの秋ぐらいから急速に中央の方で動きが活発になってきた。限られた時間の中で、市長に市内での意見の集約について尽力いただき、その努力に敬意を表すると同時に感謝を申し上げた。前々任の知事の時代に、当時の市長と交わした新幹線にかかる文書に関連し、市民の間に不信感がある。そのことについて現職知事として心から改めておわびを申し上げた。

 今月13日付で、道から市に示した文書に沿う形で、新函館—函館間の3セクについて、道が設立に向けての手続きを主体的に行うと同時に、負担割合についても主体的な役割を果たす、私も責任を持ってやるということを改めて話した。そして今が札幌延伸に向けてのラストチャンスであり、道南地域の人口の比較的少ない各町も新幹線延伸を強く切望している中で、函館・道南全体の発展に向けての判断をぜひお願いしたいと申し上げた。  ——直接会うことで知事の熱意は伝わったか。

 私の熱意、決意は十分に伝えられたと思う。

 ——3セクの設立・運営に関し道が具体的な財政負担割合を示さないことに不安があるが。

 13日付で示した第3セクターの設立に向けての協議会の設置、負担割合について主体的な役割を担うということを、知事として責任を持ってやると市長に改めて申し上げた。

 ——きょう市長以外に会う人はいるか。

 市長が市内の調整に尽力している。私の今回の訪問の中では市長に会うことのみだ。

 ——市長に対し同意を得るための新たな提案はなかったのか。

 13日付で示した3セク設立に向けて道が主体的な役割を果たしながら負担割合を含め、しっかりやっていくことを知事の決意として申し上げた。加えて、JRと連携しながら示していることを、改めて市長に申し上げた。

 ——負担割合について具体的な数字の提示はあったのか。

 道が主体的な役割を果たすということだ。

 ——市民の不信感の払拭(ふっしょく)にどう努めるのか。

 私が要請に参上し、過去のことについてしっかりと申し訳ないということを申し上げ、これからの函館市の観光振興も含め、いろいろな分野で市と道が連携しながら、道南の地域づくりや道全体の発展に期していくパートナーの立場であるから、これからの連携の中で、さまざまな協力をしていきたい。

 ——道としてはもっと早く理解を得る努力ができたのでは。

 昨年、当時の西尾正範市長や高野洋蔵会頭、町会会長がそろって、多くの市民あるいは観光客も含め、署名を持ってJR存続という要請に私のところに来た。JR本社にも行ったと報告を受けた。そののち、市民の思いを踏まえ、改めてJRに対し「再考を」と私自身の口からも求めた経緯がある。その後、JRは石勝線の大事故や、当時の社長の逝去などがあり、道からJRに投げ掛けていたことへの回答が遅れていた。向こうも大変だった。それが戻ってきたのが今年秋だった。もう一つは、政府サイドで鉄道・運輸機構の剰余金活用に向けての法改正の議論の中で、衆参両院で北海道新幹線の延伸も含め整備新幹線3線について議論を加速化しようということが決議された。与野党でこの秋以降、動きが活発になってきたという中で、限られた時間となった。道も努力不足の部分もある。市長に苦労をかけたことには感謝申し上げた。

 ——時間がない中で、市民の間でも困惑する声があるが。

 限られた時間の中で、市長が中心となり市民の意見の吸い上げをやっていただいているということに心から敬意を表する。

 ——改めてJRに対しアクセス区間の直営を求める考えはあるか。

 JRから「改めて検討したけれど、難しい」との回答があり、道としてもそう判断せざるを得ない。

 ——経営分離の同意について、いつまでに返事がほしいのか。

 期限をつけることは、市長との会談中でもしていない。ただ、今週末とも言われる来年度予算の政府案の閣議決定に向け、民主党の中でも整備新幹線の議論の山場が近づいてきているという認識を持っている。そういうことも勘案しながら、ぜひ調整をやっていただければと申し上げた。

 ——九州新幹線で、経営分離の同意が整わないまま予算がついたケースがあった。北海道についてもそうなる期待はないのか。

 全国いろいろな形があり得ると思う。私としては市長に対し決意と思いを直接伝えた。それを踏まえ、市長として動いていただけると期待している。

 ——同意を得られるという手応えはあったか。

 市長がこれから動かれる、あるいは発言する、そのことに道としても期待をする。市長が動かれ、そして市民に理解をいただける環境づくりに道としては最大限努力したい。



◎「短期」就活、函館の大学でも

 企業の大卒採用説明会が1日に解禁され、大学3年生の就職活動が始まった。函館市内の4大学でも業界研究会や説明会が相次いでスタート。大学側の対応に大きな変化はなく、各大学は「学生には企業の情報をこまめに伝えるなど、これまで通りの支援をしっかりしていきたい」と話している。

 就職活動の早期化が学業に与える影響を考慮し、経団連は倫理憲章を見直し。従来は10月だった採用広報の解禁が2カ月遅れとなって初めての年で、採用活動が本格化するのは年明け以降とされる。

 道教育大学函館校では例年11月に開催する業界研究会の時期を12月に実施するなど、ややスケジュールに変更はあるものの、例年と同じ回数の説明会などを開く予定。17日の業界研究会には例年より多い42社が参加し、採用企業と学生が顔を合わせる場として情報確保の充実を図る。

 現在はインターネット交流サイト・フェイスブックなどの活用を視野に考えていきたいとし、「学生にきめ細かい就職情報を提供していきたい」と担当者。

 公立はこだて未来大学でも例年通りの日程で学内合同企業説明会を実施。12日から16日までの5日間で115社が参加した説明会では、学生は採用担当者や同大OG・OBの話も熱心に聴き情報収集。同大の担当者は「学生には業界研究など事前の準備をしっかりして就活に望んでもらいたい」と話す。

 北大水産学部は4月末から3年生向けのガイダンスを開き、例年通りの日程でセミナーや説明会を実施している。同大の担当者は「セミナーや説明会での内容の充実を図っていきたい」と話す。

 函館大学の担当者は「企業の4月選考スタートが変わるわけではないので、試験や説明会のスケジュールが過密になっていく。大学ではしっかりとした指導をしていきたい」とする。

 函館大学3年生の亀川璃久さん(20)はドラックストアを希望しているといい、「2、3月に説明会が密集し、スケジュールが大変そうだが、日程を確認しながら業界を絞って就職活動をしていきたい」、公立はこだて未来大学の松浦亮太さん(21)は「就活経験がないので就活しているという実感がまだわかない。就活本を買うなどして業界研究をしっかりしたい」と話す。(平尾美陽子)


◎クリスマスファンタジー、ゴルペルライブ楽しむ

 2011はこだてクリスマスファンタジー(実行委主催)のサッポロビール点灯式が18日夜、主会場の函館市西部地区の赤レンガ倉庫群で開かれ、大勢の来場者がゴスペルライブなどを楽しんだ。

 この日は「サッポロビールプレゼンツ ここにしかない音楽スペシャルライブ」として、1日から連日繰り広げられている巨大クリスマスツリーの点灯式が行われた。ツリー点灯後、札幌のボーカルスクールの講師を務めるAYA(アヤ)さん、ATSUKO(アツコ)さんの女性デュオ「ボイス・オブ・ブライツ」のライブがスタート。

 そろいの純白の衣装で登場した2人は、色鮮やかに電飾が輝くツリーをバックに「サンタクロース・イズ・カミング・トゥ・タウン」などクリスマスソングを中心に5曲を熱唱。伸びのある歌声が会場に響き渡り、来場者も一足早いクリスマス気分を楽しんだ。

 2人は「こんなきれいなクリスマスツリーの前で歌えて感激」と笑顔を見せていた。(鈴木 潤)