2011年12月29日 (木) 掲載

◎正月用もちづくりピーク

 正月用のもちづくりがピークを迎えている。今年で創業111年の老舗もち屋「丸井栄餅」(函館市栄町5、佐藤秀昭社長)では、最も忙しい時期を従業員ら10人で対応。つきたてのもちを素早くお供えの形に整える作業に追われている。

 同店では縁起物のお供えは、大きいもので一斗五升、小さいもので1合までの10種類を用意。定番ののしもち、豆もちに加え、この時期限定の黒糖を使った砂糖もちなどを販売している。

 作業は午前1時ごろから連日昼過ぎまで続けられ、31日まで慌ただしくなるという。もち米は岩手県産の減農薬減肥料で作られた「ひめのもち」を使用。もち米はよく水を切ってつくと、ふっくらつややかになるため、特注の竹ざるを使うこだわりぶりだ。

 ふかしたてのもち米はすぐにつかれ、4代目の佐藤社長らが熟練の技で整えていく。作業は26日から始められ、ピークは28日と30日。期間中は約2100キロ分のもち米を使用するという。

 佐藤社長は「こんがりきつね色に焼いて、もち本来のうまみを味わってほしい」と話している。同店では31日の午前中まで予約を受け付ける。問い合わせは同店TEL0138-22-5482。(小杉貴洋)



◎市電・バス乗車料金助成制度見直し案に市民ら賛否

 9月の事業仕分けで廃止判定され、来年度から一部で助成上限を設定するなどの見直し案が示された市電やバスの乗車料金助成制度。対象が旧4町村にも適用され利用範囲が広がった一方、市民からは高齢者に対して年度6000円の助成上限額を設けることに対し、否定や困惑の声も上がっている。

 市は1973年から交通機関の利用助成を開始。現在は70歳以上の高齢者と障害者に市電・バスの半額または無料利用書を交付している。見直し案では対象が市内全域になり、高齢者は上限を定め半額利用証方式から専用プリペイドカード方式へ移行する。

 市は上限を設けた理由について、「高齢者の増加に伴い、厳しい財政状況の中で持続可能な制度とするため」と説明。新制度移行に伴う助成額は市電約9000万円、バスは約2億円となり、合計で現行制度と比べ約1億3000万円の経費縮減となる見通しだ。これにより生じる財源の一部は既存の子育て支援事業や高齢者事業に活用するとしているが、高齢者の声は深刻だ。

 週3回ほど、市電とバスを利用しているという本通の82歳女性は「消費税がまた上がると言われているし、昔より高齢者に多く負担がかかっている。これ以上、年寄りをいじめないでほしい」と訴える。通院にバスを利用している湯川町の73歳男性は「市は地域内の生きがい活動に利用してほしいと言っているが、病院に通わなければ病気が悪化して生きがいどころではなくなる」と声をとがらせる。

 一方、大川町の76歳男性は「できれば現行のままがいいが、市の事情もある。心苦しい気持ちもあるが、やむを得ないと思う」と渋々、是認する意見も。

 また見直し案について、周知不足の感も否めない。今月上旬に現行制度の維持を求める陳情書を提出した新日本婦人の会函館支部の工藤時子支部長(72)は「市民の声がまったく反映されていなく、説明の機会も設けられていない。会員の中では知らない人が多く、怒りの声もある。拙速に進めないでほしい」と話す。

 新たに対象に加わった南茅部地域の安浦町に住む70歳男性は「車がなくバスを利用する人は山ほどいる。適用されれば私たちにとってはうれしい」と喜ぶ。一方で「新制度の話は老人クラブの仲間を含め、耳に入っていなかった」と困惑を隠せない。(後藤 真)



◎企画回顧・被災児童ら来函/笑顔が教えた「取材の原点」

 「僕たち新聞に出るの?」。今年の夏、東日本大震災の被災地支援に取り組む団体「函館・むすびば」(丸藤競代表)のイベントを何度か取材した際、夏休みを利用し福島など3県からやって来た子どもたちが屈託のない笑顔で話し掛けてきた。

 記者になって3年目。現在は昨年8月から警察・司法担当として事件や事故、裁判などを担当している。今年は家族間の殺人事件や高齢者の事故などが多く、現場は目を覆いたくなるような光景もしばしばで、取材を進めると気が滅入ることが少なくなかった。

 そんな中で担当したイベント取材だったが、被災地から来函した家族の取材とあり、「デリケートな部分に触れてはいけない。でも何か話は聞かないといけないし…」という思いに駆られて正直、憂うつな気分のまま会場に到着した。

 その日は、被災者を迎えて「流しそうめん」が振る舞われた。竹の中を勢いよく流れるそうめんにカラフルなゼリーもあって、子どもたちは大はしゃぎ。その光景をカメラに収めようと、シャッターを切った。「明日の新聞に僕たち出るの?」と問われ、「うん」と答えると「やったー」と元気な声が返ってきた。

 その時、「自分は取材する前からいろいろ考え過ぎていた」と思い知らされた。子どもたちの保護者も、こう語った。「函館の人たちは皆さん、普通に接してくれてとてもうれしい。短い期間だけど子どもたちに笑顔が戻った。それが一番うれしい」—。

 函館で日常を取り戻した家族の姿がそこにあった。そして、自分の考えだけで取材を進めようとしていたことに、子どもたちの笑顔から気付かされた気がする。本来、「取材は対象者があってこそ」という記者の基本を思い返すことができた。改行 お別れの日、子どもたちにカメラを向けると、相変わらずとびきりの笑顔を見せてくれた。

 記者の仕事は毎日が新しい出会いと発見の連続だ。その経験を糧にして、今後も多くの現場に足を運んで、地元に住む人たちの喜びや悲しみを伝えていきたい。(小杉貴


◎高橋病院、IT活用した高齢者見守り事業の実証実験

 高橋病院(函館市元町32、高橋肇理事長)は本年度、スマートフォン(多機能型携帯電話)やデジタルペンといったIT(情報技術)を生かし、在宅高齢者の日常生活動作(ADL)を管理、支援する「地域見守りサービス事業」の実証実験を行っている。生活不活発病(廃用症候群)の兆候をいち早く察知し、適切なケアやリハビリにつなげて心身機能の低下を予防するのが狙い。来年4月にも本格実施をしたい考えだ。 (鈴木 潤)

 経済産業省の「ITを活用した医療・介護周辺サービス産業創出調査事業」を、病院単独で採択を受け、実施した。同事業では高齢者宅と院内設置の「見守りセンター」をインターネットで結んで情報のやりとりをする。

 ITに不慣れな高齢者でも簡単に操作できるよう、端末のデジタルペンと住宅のコンセントに差し込める「超小型ホームサーバー」、専用の記入用紙を利用者に支給する。

 記入用紙には「きょうの体調はいかがですか」「食事は食べましたか」などの質問事項があり、利用者がデジタルペンで記入するとサーバーを通じてセンターに送信される仕組みとなっている。また、スマートフォンの所有者は、利用開始の際に専用のアプリケーションソフトをインストールするだけで利用が可能となっている。糖尿病患者に対しては血糖値や血圧などを記入するとグラフ表示される機能もある。

 情報を受信した見守りセンターは、利用者の状態に異変が見られる場合、病院の主治医や看護師、在宅サービス事業所のケアマネージャーら関係職種に連絡する体制をとっている。

 将来、センターは全国展開を踏まえ関西地区にも設置する予定。今のところ、要支援・要介護者や、急性期病院を退院し在宅生活に移行した患者を対象に行う考えだ。

 実証実験では現在までに、50人が利用していて、市内宝来町の80代男性は「難しい操作が必要ないので便利。見守られているという安心感がある」と話す。

 同病院は今後、効果や課題を検証しながら市内のNPO法人などとも共同で買い物支援も含めたサービスを展開していく予定。利用料金の設定も検討していく。

 同病院は転院や施設入所、在宅移行などがスムーズに進むよう、地域医療連携システム「ID—LINK」を活用しながら患者の情報を一元化し、共有する体制もとる。こうしたシステムとも連動しながら地域全体でも連携構築や情報の共有化をさらに進めていく方針だ。

 在宅の療養者は、訪問看護やホームヘルパーなど医療や介護双方のサービスを受けているケースが多い。だが、医療・介護の関係者は患者の情報を十分に共有せずに動いていると指摘されている。高橋理事長は「ITの活用で情報共有が容易になり、患者、家族を中心としたより有効な関わりが可能になるはず。コーディネートする役割も果たしながら、ビジネスモデルとして構築していければ」と話している。


◎帰省ラッシュ本格化

 年末年始を古里で過ごす人たちの帰省ラッシュが28日、本格化した。函館空港(高松町)やJR函館駅(若松町)には荷物や土産を抱えた帰省客が大勢降り立ち、家族らとの再会を喜び合った。

 この日の空の便は、全日空の東京発函館行き853便など本州方面からの6便が満席に。荷物を抱えた人たちで混雑した同空港到着ロビーでは、「久しぶりだね」「元気だったかい」などと家族同士で会話を弾ませていた。

 東京の会社員、三野哲也さん(33)は妻子を連れて半年ぶりの帰郷。「1月4日までゆっくり実家で過ごせる。子どもと雪遊びもしたいですね」と笑みを見せた。

 航空各社によると、本州方面からの便は28〜31日がほぼ満席状態で、Uターンラッシュは2日から始まるという。

 JR北海道函館支社によると、帰省客で混み合うのは29日をピークに31日まで続く。Uターンラッシュは2日に始まり3日がピークという。