2011年12月3日 (土) 掲載

◎イルミナシオン映画祭開幕

 「第17回函館港イルミナシオン映画祭」(実行委主催)が2日、函館市末広町の金森ホールなどで開幕した。駆け付けた大勢の市民らが映画の魅力を満喫した。

 オープニングに先立ち函館山山頂・クレモナホールでは、昨年末亡くなった函館出身の女優、高峰秀子さんの出演作品「二十四の瞳」を追悼上映。会場には100人以上の映画ファンが訪れ、上映後には映画評論家の川本三郎さんが同作品の見どころなどを解説した。

 今年のオープニング作品は森田芳光監督が10数年前から温め続けてきた企画を実現した「僕達急行A列車で行こう」。大企業と下町の鉄工所という対照的な環境で働く2人が鉄道を通して友情を深めていく物語。森田監督が急病のため欠席となり、杉山泰一助監督と白倉伸一郎プロデューサーが登場。出演俳優のエピソードや撮影秘話などを話し会場は盛り上がりをみせた。

 また、上映後には開会式とシナリオ大賞の表彰式が行われた。グランプリの函館市長賞には山崎佐保子さん(東京都)と園田新さん(神奈川県)の2人、準グランプリは石原理恵子さん(東京都)、審査員奨励賞には水村節香さん(大阪市)の計4人が表彰を受けた。山崎さんと園田さんに賞金の150万円がそれぞれ贈呈されたほか、水村さんにはより素晴らしい作品を作って来年以降函館に帰って来られるようにと箱入りのサケが贈られた。

 その後、同映画祭のあがた森魚ディレクターのミニコンサートとオープニングパーティーが行われ、参加者は開幕の喜びを分かち合った。

 同映画祭は3、4日に市内の3カ所で開催する。(柏渕祐二)

 



◎陣川あさひ町会が「コミュニティーバス」独自運行へ

 函館市陣川町の陣川あさひ町会(西川孝一会長)は来年4月から1年間、地域住民が買い物や通院などに利用できる「コミュニティーバス」を試験運行する方針を固めた。函館バスと協力し、一定の住民に定期券を購入してもらうことで、バスの運行に必要な経費を自助する。行政の補助に頼らず、地域が主体となって住民の「足」を確保する全国でも珍しい試みだ。

 市内北東部にある陣川地区。温泉や国の史跡四稜郭などが有名だが、周辺の美原、神山の市街地からは2キロ以上離れた場所にある。途中、民家のない道が続く「離れ小島」(同町会)だが、新興住宅地として約1000世帯、3000人以上が暮らす。

 学校が遠い児童・生徒のため、校区の神山小、赤川中に通わせる保護者が1996年から自主的に通学バスも運行している。迫る少子高齢化に伴い、地域から「このままでは高齢者が『買い物難民』になってしまう」との声が高まり、同町会は市や函バスと協議を重ね、コミュニティーバスの独自運営に活路を見いだした。

 「いつまでも行政頼みでは立ち行かない。自力でできることをしなければ」。コミュニティーバスを発案した同町会青少年育成部長の上野山隆一さん(46)は力を込める。函バスに運行業務を委託し、燃料や人件費など運営経費を定期券の売り上げで賄う仕組みだ。

 専用の定期券は月2000〜4000円で販売。運行には毎月約60万円の経費がかかるため、販売価格に応じた購入者がいなければ運行計画は白紙となる。仮に定期券を月2500円で販売した場合、最低でも240枚以上の売り上げが必要だ。

 路線バスの車両で1日8往復を想定し、現行路線にはない美原、昭和地区の公共施設や商業施設、病院などを約40分かけて回る。同町会は11月下旬から、住民アンケートを全戸配布し、定期券の購入意向や希望販売額や購入枚数などを記名式で調査している。

 早ければ年明けにも運行の可否を判断し、同2月から定期券を同地区内のコンビニで販売する予定。上野山さんは「自分たちの地域を自分たちで暮らしやすくするという住民の意識が重要。今回がモデルケースとなって他の地域にも参考になれば」と話している。(森健太郎)



◎並行在来線問題、道商連・高向会頭が経営分離の合意を商工会議所に要請

 北海道新幹線の札幌延伸に伴うJR北海道の並行在来線経営分離問題で、道商工会議所連合会の高向巌会頭は2日、函館商工会議所を訪れて松本栄一会頭と会談し、札幌延伸に伴う函館駅—新函館駅(仮称)間の経営分離受け入れを要請した。高向会頭は「第3セクター会社が、JRの直営と同じ機能を持つことを条件に同意を求めた」としたが、松本会頭は「在来線の維持は地域の総意。決意は微動だにしない」とし、反対する考えをあらためて示した。

 高向会頭はこの日午前に函館入りし、松本会頭と会談。続いて函館市役所を訪問し、工藤寿樹市長と会談した。

 高向会頭は市役所訪問後、「商工会議所には、3セク会社がJRと同じような機能を発揮することを条件に、同意できないかと申し上げた」と述べたが、具体的な機能に関しては明確な言及を避けた。

 松本会頭は取材に対し、「重大な局面であることは認めるが、延伸のために函館が犠牲になってはいけない。路線はJRが維持すべき」と話している。

 工藤市長には会議所での会談内容を報告。同会頭は「市長からは、柔軟に考えているが、(函館—新函館間の)将来見通しが道からはっきり示されないと困るとの言葉があった」と述べた。同市長は取材に対し、「札幌延伸に協力してほしいという話だった。高向会頭に要請したことは何もなく、ただ話を聞いただけ」としている。

 新函館—札幌間をはじめとする整備新幹線未着工3区間の扱いをめぐり、前田武志国土交通相は2日の閣議終了後の会見で「整備新幹線は最終的な詰めの段階にきている」と発言するなど、着工の是非をめぐる検討が大詰めに差し掛かっている。市は年内の結論を目指しているが、内部では「年内は難しいのでは」との声もある。(千葉卓陽、小泉まや)


◎渡島総合振興局の食堂でシカ肉料理試食会

 新しい道産食材として脚光を浴びるエゾシカ肉を広めようと、渡島総合振興局は「シカの日」の27日、食堂で初めてエゾシカ肉を使ったメニューを提供する。これに先立ち、2日に食堂で職員やシカ肉提供者による試食会が開かれた。

 エゾシカ駆除を強化している道が資源としての有効活用を目的に実施する。昨年10月からはPRの一環として毎月第4火曜日を「シカの日」に設定。趣旨に賛同する全道の211店舗(11月末現在)が加盟し、このうち渡島管内には函館市と七飯町に13店舗ある。振興局の食堂も、今回のメニュー化を機に登録申請する。

 試食会には、振興局の柳谷龍彦副局長や鎌田慶一保健環境部参事、道猟友会函館支部ハンターで北の国ファーム(函館市米原町)の渋田喜徳代表、北海道産ファーム(同市亀田本町)の渋田孝代表らが参加。

 メニューは、シカ肉の猟師風、ピーマンとシカ肉の細切り炒め、カレー風味の3種類。この中から、ご飯のおかずに合う猟師風、細切り炒めのどちらかを定食(480円)として出す。

 柳谷副局長は「シカ肉かどうか分からないおいしさ。女性に受けるのでは」とPR。鎌田参事も「生臭さもなく、抵抗なく食べられる」と太鼓判を押していた。(山崎大和)


◎大農高に学徒勤労動員慰霊碑を建立

 「国のために同年代で死んだ先輩を忘れず、平和を守ってほしい」|。大野農業高(広海拓校長)で2日、1945(昭和20)年の学徒勤労動員から帰郷後、約1カ月の過酷な労働による疲労や栄養不足などで亡くなった3人を追悼する慰霊碑の建立とサクラの植樹が行われた。同校関係者や動員に参加した卒業生、遺族ら20人が参加し、若くして亡くなった3人に哀悼の意を捧げた。

 学徒勤労動員は、東条内閣が43(同18年)に閣議決定した「学徒戦時動員体制確立要綱」などに基き、少年少女を軍需産業や食糧増産の現場に送り、労働を課した政策。同校卒業生で、函館市湯川町3の無職・表信一郎さん(84)によると、表さんらは45年2月、琵琶湖干拓事業への動員令が下り、2〜3年生の約70人が本道の農業高校の生徒とともに滋賀県彦根市に向かった。起床時のシラミ退治、重労働の干拓作業、戦局悪化で食事は粗末で、生徒は劣悪な生活環境で病魔に侵された。

 作業が終了した3月中旬、1日以上かかった帰郷の列車の中で、当時2年だった表さんは同級生の川井芳三さんの様子について「一点を見つめ、言葉に反応しなかったことが脳裏に焼き付いている」と振り返る。川井さんは帰宅後の4月3日、高熱に脳炎症状を併発し他界。2年生だった伊藤市清さん、3年生の久保精一さんも結核などで、同年中に亡くなった。

 同校では41(同16年)創立から70周年の記念事業の一環として慰霊碑を建立した。碑はカラマツ材で、高さ150a、幅25a。表さんと、同校卒業生で植樹したサクラ「九条誓願桜」を作出した桜研究家・浅利政俊さん(80)らが寄付。建立式で広海校長は「生徒は本校黎明期に動員され、亡くなった3人のことを忘れず、平和の尊さを伝えてほしい」、浅利さんは「この碑やサクラが平和を訴える一助となれば」と話していた。

 表さんは「私も死んでいたかもしれないと思うと、感無量の思い」、川井さんの妹で函館在往の敏子さん(79)は「立派な碑に感謝します。大農の生徒たちは先輩のことを忘れないでほしい」と語った。(山崎純一)