2011年12月31日 (土) 掲載

◎「ひかりの電車」に萌えキャラお目見え

 函館市交通部は、函館市電オリジナルの女性アニメキャラクター「松風かれん」を車体にあしらった路面電車を運行している。これまでより美少女風にデフォルメされた萌えキャラ≠熄奄゚てお目見えし、乗客らの目を引いている。

 同部の運転士をイメージした松風かれんは、日本人とロシア人とのハーフとの設定で、東京の玩具メーカーが販売する人気フィギュアシリーズ「鉄道むすめ」の一人。キャラのラッピング車両は昨年5月の超低床電車「らっくる号」に続いて2回目となる。

 今回は冬季限定のイルミネーション車両「ひかりの電車」を使い、乗車口脇の窓に縦90a、横70aのキャラを大きく掲載。ロシア語で「こんにちは」を意味する「ズドラーストヴイチェ。函館の街を路面電車でご案内いたしましょう」とのメッセージも添えられた。

 今回は通常よりも幼くアレンジした同種のキャラも登場。車内には手作りのシールも10枚以上張られ、携帯電話のカメラで物珍しげに写真を撮る乗客の姿も見られた。同部事業課は「冬休みに全国の鉄道ファンが函館を訪れるきっかけになれば」と期待する。

 来年2月下旬まで運行する。運行時間や運行経路などの問い合わせは同課電話0138-52-1273。(森健太郎)



◎道南の市町で仕事納め

 30日、道南のほとんどの市町で仕事納めを迎えた。市役所や役場では清掃、書類整理に追われる職員や、年末のあいさつに訪れる人々の姿が目立った。各首長は職員を前にあいさつし、1年間の労をねぎらった。

  函館市役所では例年、市長が課長職以上の職員を前に訓示することが恒例となっていたが、工藤寿樹市長はこれを取りやめ、午後3時ごろから中林重雄、片岡格の両副市長とともに本庁舎の全部局を回り、職員に直接声をかけた。

 工藤市長は「就任から8カ月、皆さんのおかげで走り回ることができた」と述べるとともに、教育委員会では「来年はまちづくりを具体的に進めていく前向きな年にしたい」、財務部財政課では「来年度に向けて、いい予算をつくってほしい」などと、各部局の業務内容に合わせて話す内容を変えた。その上で「年が明けたら、私もパワーアップして帰ってきます」と自ら気を引き締めていた。

 北斗市では、高谷寿峰市長が職員約100人を前に訓示。未曽有の災害となった東日本大震災の犠牲者、被災者を気遣うとともに、「来年以降も災害被害がないとは断言できず、より一層の危機管理、防災体制の充実を図らなくてはならない」と述べた。

 就任2年目の高谷市長は、延べ1000人が宿泊したスポーツ合宿誘致の初年度の成果や、法亀寺のシダレザクラのライトアップに大勢の見物客が訪れたことなど、市政全般を振り返り、「職員の努力で順調に進展している」と評価。

 喜ばしい出来事として、ご当地アイドルの活躍や、文月町内会の市民有志が造り上げた小公園などを挙げた。この中で、職員がオリジナルのポロシャツを作り、北海道新幹線開業をPRした活動に触れ、「これからも良いアイデアをどんどんと出して、市役所を活性化してほしい」と述べた。

  国や道の出先機関は1月4日から、道南の自治体は同6日から業務を開始する。(千葉卓陽、今井正一)



◎正月準備万端

 今年も残り少なくなった30日、函館市内の公共機関やデパートなどの前には門松が飾り付けられ、一足早く正月ムードを漂わせている。

 市内若松町のJR函館駅の出入り口前には、大きな門松が置かれた。また、改札口付近の太い柱には、福島町の有志が寄贈したコンブの縁起物が飾られ、これらを背景に観光客らが記念撮影する姿も見られた。

 30日正午すぎに函館経由で知人宅がある青森県へ向かった旭川市の主婦小山ユミさん(40)は「門松は正月の雰囲気を感じさせる」、長男の康佑君(10)と長女の真緒さん(5)も「早くお正月が来てほしい」と笑顔で話していた。

 函館山山麓に教会や寺院、神社が密集する西部地区は、この日も観光客でにぎわった。幻想的な冬の教会群を楽しむ一方で、民家の軒先につるされた日本ならではのしめ飾りに興味を示す海外旅行客もいた。

 静岡県裾野市の会社員、吉田ダリオさん(25)と小川文子さん(25)は恋人同士で、「雪を見ながら新年のカウントダウンをしたいと初めて函館に来た」と同地区の散策を楽しんでいた。(田中陽介)


◎11年渡島管内概数、漁獲量15%減18万4000トン

 1月1日から市職員給与の独自削減を行う函館市で、11〜12月の2カ月間の退職者が42人に上ることが、市のまとめでわかった。このうち29人が本年度末の定年退職予定者。市総務部によると「例年だと、この時期の退職は数人程度」といい、給与カットを目前に控えての、駆け込み退職とみられる。

 渡島総合振興局はこのほど、2011年の渡島管内(八雲町熊石地区を除く)の漁業生産高(概数)を発表した。東日本大震災による津波の影響で大減産となったホタテや全道的な不漁に終わった秋サケの水揚げが減ったことが影響し、数量は過去10年で2005年に次ぐ低水準に落ち込んだ。数量は前年比15.2%減の18万4000トン、金額は同6%増の426億円だった。

 主要魚種別では、津波により養殖施設や養殖物が甚大な被害を受けたホタテの漁獲量が同30%減の5万7200トン。噴火湾や青森県陸奥湾など道内外の産地で水揚げが減り、1キロ当たりの価格は前年より76円高い228円で、金額は同5.2%増の130億5000万円。同振興局水産課は「震災などの影響で産地減産により単価高となった」という。

 スルメイカは、数量は同23%増の3万1000トン。水揚げ増加に伴い、金額も同22.2%増の82億2000万円となった。1キロ当たりの価格は前年に比べほぼ横ばいの268円。「生鮮イカを扱う小型イカ釣り漁業は振るわなかったが、冷凍イカを扱う中型船が良かった」と同課。

 記録的不漁の見通しとなった道産コンブだが、管内では数量が同3%減の6100トンと前年並みを維持。品薄から高値で取り引きされ、金額は17.8%増の86億6000万円。  国が定める漁獲可能量(TAC)で漁の調整をしているスケトウダラは、数量が同5%減の4万7200トン、金額が同11.7%減の25億7000万円。

 秋サケの漁獲量は過去10年で最低となった。数量が同27%減の3800トン、金額が17.3%減の15億8000万円。品薄から単価は上昇したが、水揚げの落ち込みをカバーするまでは至らなかった。

 マグロは数量が同13%減の260トン、金額が同10.5%減の7億7000万円。松前、福島の漁は比較的良かったが、戸井が振るわなかった。ナマコは数量が前年並みの285トン、金額が8.3%増の13億円。1キロ当たりの価格は前年より336円高い4561円だった。改行 同課は「数量、金額ともにいい年ではなかった。悪い中でも魚価はやや持ち直した」としている。

 概数は、同課が各漁協からの報告(予想値を含む)をまとめたもの。 (山崎大和)


◎企画回顧・工藤市政を追いかけて/「改革と挑戦」記者自身も

 「今まで通りの仕事をしようとするなら、市役所を去ってほしい」。工藤寿樹函館市長が前市長との激闘を制し、4月27日の初登庁時に職員に投げかけたせりふだ。わずか8カ月前の出来事が何年も昔のように感じるほど、何もかもがめまぐるしく動いた1年間だった。

 工藤市長は「改革と挑戦」のスローガン通り、市役所に次々と変化をもたらした。それは自身の給与50%カットに始まり、大間原発の視察や外部委員による事業仕分け、職員給与の独自削減など枚挙にいとまがない。そんな光景が新鮮に映った一方で、どう読者に伝えようかと骨を折る日々が続いた。冒頭に記した市長の言葉は、市政キャップ3年目の自分にとっても、ほぼ同じ意味を持っていた。

 暮れには北海道新幹線の札幌延伸に伴う、並行在来線の経営分離問題が急展開をみせる。JR北海道が函館—新函館(仮称)間を経営分離する方針を示した昨年3月から何ら状況が変わらない中で、あいまいな表現で結論を急がせる道のやり方には、一市民としていらだちを覚えた。

 函館の将来を左右する大問題。電化や3セク時の委託運行などJRから好条件を引き出し、同意に向かわんとする市に対し、商工会議所や町会などは経営継続の主張を崩さない。意見が真っ二つに割れる問題に対し、地元紙としての目線を大切にしながら連日記事にしたが、他地域の事例や国の動向まで取材がなかなか及ばず、反省点は多い。

 「熟慮に熟慮を重ねて判断した」—。工藤市長は今月21日、神妙な面持ちで経営分離への同意を表明した。20年以上先の方向性を決めるにはあまりに時間がなく、関係者の苦悩は容易に想像がつく。そして取材に当たった記者として、後世の人々には新聞に目を通してもらい、決定に至る経過はもとより、まちに流れていた空気を感じ取ってもらえれば幸いだ。

 明日から新たな1年が幕を開ける。人口減、経済低迷など多くの課題に直面する中、函館が向かう先は果たしてどこか—。来年も市政運営を時に熱く、時に冷静に追いかけたい。(千葉卓陽)