2011年1月12日 (水) 掲載

◎ササラ電車77年ぶりに東京へ里帰り

 函館市交通局の除雪車「ササラ電車」が今夏、77年ぶりに東京に里帰りすることが決まった。昭和初期に東京市電気局(現東京都交通局)の車両を購入し、除雪用に改造されたササラ電車は、国内で稼働している現役最古の都電車両。今年の都交通局100周年記念事業の目玉として展示する予定で、函館市交通局は「全国に函館のPRやイメージアップができれば」と期待している。

 都交通局などによると、車両は1903—04(明治36—37)年ごろに製造された木造の四輪単車「ヨヘロ型」。東京市電気局の前身、東京鉄道KKが03年から旅客用として運行していた。車両は全長8・7メートル、幅2・3メートル、重さ10・4トンで、乗車定員は40人。

 13(大正2)年から路面電車を運行する函館市交通局は、34(昭和9)年3月の函館大火で所有していた路面電車をほぼ焼失。同年4月に、レールの軌間が国内で唯一同じだった東京市電気局から15両を購入した。37年からこれらの6両を除雪用に車両の前後に竹ブラシを装着した「ササラ電車」に改造し、現在も2両が年に数回活躍している。

 東京の古い路面電車も多くが戦争や震災で失われ、国内で稼働するのはこの2両のみ。車内の天井や制御装置の一部には当時の趣が残っているという。都交通局は8月に開局100周年を迎え、6月21日—8月28日に江戸東京博物館(墨田区)で開かれる記念行事で目玉として、1両を借り受けることになった。

 都交通局は「いろいろな偶然が重なって今に残る大変貴重な車両。都電100年の歴史を伝える目玉展示として多くの人に喜んでもらいたい」と話し、函館市交通局も「東京生まれ、函館育ちの車両。函館と東京の友好のかけ橋となって函館全体のPRにつなげたい」としている。(森健太郎)



◎現職、新人2氏 三つどもえ…福島町長選告示

 【福島】任期満了に伴う福島町長選が11日、告示された。新人で前議長の溝部幸基氏(63)、新人で前町議の佐藤卓也氏(49)、現職の村田駿氏(65)=いずれも無所属、届け出順=の3氏が立候補を届け出た。1991年以来20年ぶりの選挙戦は、三つどもえの戦いとなった。また、同日告示された町議補選(欠員2)には2人が立候補し、無投票で初当選を決めた。町長選の投票は16日で即日開票される。

 現職と新人2氏の戦いとなった今回の選挙では、町政の継続か、刷新かが大きな争点。各候補とも人口減少が進む同町の産業振興をはじめとした町の活性化策や雇用創出、高齢化対策などを訴えている。

 溝部氏は、議長として議会改革を推し進めた実行力をアピールする。特別職の退職金廃止と報酬の引き下げ、高校生までの段階的な医療費無料化、漁業などの振興策を掲げている。「国や道の補助に頼る考えを改め、自律するまちづくりを行う」と訴えた。

 佐藤氏は新たな雇用の場の創出と少子化対策を重点政策に挙げている。企業の誘致や農漁業、林業への支援、教育の充実を公約に盛り込んだ。「若い力とアイデアで新しい福島町を作っていきたい。今こそ町を変えるチャンス」と力を込めた。

 3選を目指す村田氏は財政再建を柱とした町自立プランを策定し、行財政改革などを進めた2期8年の実績を強調。「浜のこと、福祉のことは私に任せてほしい」と語り、公約に漁業や水産加工業を中心とした産業の振興をと少子高齢化対策などを掲げた。

 この日は、各陣営とも選挙事務所で出陣式を行い、第一声を上げた後、選挙カーで遊説に出発。町内をくまなく回り支持を呼び掛けた。

 一方、佐藤氏と溝部氏の議員辞職に伴う町議補選に立候補したのは会社役員の熊野茂夫氏(61)と無職の花田勇氏(69)の2氏だけだったため、無投票でそれぞれ初当選を果たした。任期は今年8月31日まで。

 投票は16日午前7時から午後6時までで、一部の投票所では終了時間を繰り上げる。同7時に開票し、同8時半ごろには大勢が判明する見通し。11日現在の選挙人名簿登録者数は4583人(男2138人、女2445人)。(松宮一郎)



◎函工3年・惣蔵君「応用情報技術者試験」合格

 函館工業高校の惣蔵勇亮君(情報技術科3年)が、昨年10月に行われた国家試験の「応用情報技術者試験」に合格した。全体の合格率は23%、高校生の合格者は全国で36人のみの難関。惣蔵君は「1年の時からがんばってきたことが結果につながった」と喜んでいる。

 同試験は、高度なIT(情報技術)人材に必要な応用的知識や技能を持ち、システム開発をはじめ、企業内での情報化を企画する能力があるかを検査する。試験は年2回行われるが、合格者は社会人が多くを占め、特にコンピューター関係の仕事に就いている人が約半数となっている。

 今回の試験では、全受験者(4万3226人)のうち高校生は167人。合格者36人の中に惣蔵君がいる。惣蔵君は、入学案内にあった同校が勧める資格取得を参考に、入学後すぐに情報技術者試験の合格を目指して勉強に取り組んだ。1年時から学校が行う講習を受講。2年時には応用の基礎となる「基本情報技術者試験」に合格していた。

 応用試験への挑戦は今回が2回目。初めて受験した昨年4月には、自己採点で不合格を悟り、悔しさをかみしめた。一度落ちてからはさらに勉強に熱が入り、試験直前の休日には半日を試験対策に費やした。「合格と分かった時は心の底からうれしくて、思わず叫んでしまいました」と振り返る。

 同校生徒の在学中の合格は初めて。惣蔵君を指導し、二人三脚で試験対策に取り組んできた菜原恵一教諭は「時間のかけ方と集中力がすごかった。結果を聞いた時は本当にうれしかった」とし、共に合格を喜んでいる。(小泉まや)


◎救急出動 過去最高1万4075件…市消防本部 昨年の概況

 函館市消防本部は、昨年1年間の火災、救助、救急の概況を発表した。救急出動件数は1万4075件で、統計が残る1964年以降で過去最高を記録。一方、火災件数は大幅に減少し、建物火災、焼損床面積ともに過去最少となった。

 ■救急 救急出動件数は前年比1018件増加した。搬送人員は1万3160人で同1019人増となった。特に急病は、昨夏の異常気象の影響で熱中症や体調不良を訴える人が多くなったことが一因となり、9277件で同832件増だった。次いで、一般負傷が1675件(同151件増)、転院搬送が1638件(同16件増)だった。

 ■火災 火災件数は、同51件減の71件。1948年以降の統計では、過去2番目に少なかった。また、火災種別において建物火災が46件(同29件減)、焼損床面積が772平方メートル(同2204平方メートル減)で、ともに過去最少を記録した。

 火災のおもな原因としては1位が昨年に続き、放火(疑いも含む)が15件、2位がコンロ9件、ガスボンベなどによる、ごみ収集車など衝撃火花が3位だった。

 火災が減少した要因として、同本部は「住宅用火災警報器」の普及を挙げ、焼損床面積の減少については、「大きな火災の発生がなかった」としている。損害額は同約6241万円減の3453万円だった。

 同本部によると昨年の11月現在、市内の住宅用火災警報器の普及率は51%。「ついうっかり型の出火が多いので、住警器の早期設置(6月1日から既存住宅などでも義務化)をしてほしい」と話している。(小杉貴洋)


◎声楽家・徳永ふさ子さんら4人が縄文時代の「楽器」で活動

 函館市内在住の声楽家・徳永ふさ子さんら市民有志4人が、縄文時代に使われていたとされる「土笛」の複製を用い、音に対する先人の価値観を考えてもらう活動に取り組んでいる。音楽という概念のない悠久の大地に響いた音。徳永さんは「自然への祈りや感謝という精神性に満ちていたのでは。どうしたら幸せに生きられるか、今の私たちに学ぶものは多いはず」と力を込める。

 以前から「音楽とは何のためにするのか」を自問してきた徳永さん。昨年8月から、縄文期の文化や知恵を現代に生かすフォーラムや講演を市内で開催。南茅部地区の垣ノ島遺跡から発掘された土笛をモデルにした複製品や、縄文土器の複製に革を張った「縄文太鼓」などを使い、試演もしている。

 具体的には、動物の鳴き声や風といった自然の音を仮想で再現したり、歌を加えたりするなどし、縄文人の心をイメージしてもらうというもの。徳永さんは「当時どんな音が響いていたかは分からないが」と前置きした上で、「生物などすべてのものに魂が宿る考え方『アニミズム』は仮想体感できると思う。私たちの根源的な何かに触れ、心揺さぶるものがある」と指摘する。

 また、小樽市の忍路(おしょろ)環状列石から出土された木片をベースに、活動の趣旨に賛同する函館の調律師・小川進さんが「縄文琴」を制作。こうしたものが存在したかどうかは不明だが、「当時の音を探る手掛かりの一つになる」(徳永さん)という。

 「大勢の市民や子どもたちが目を輝かせ、当時響いたであろう音、意味を真剣に考えてくれた」と活動を振り返る徳永さん。「世界中で紛争が絶えない現代にあって、『心豊かに生きる』ことは人間が大切にしなければならないもの。日常的に自然の恵みに感謝していた縄文人の精神に思いをはせ、人間の健全育成につながるよう活動を続けたい」と語る。(長内 健)