2011年1月21日 (金) 掲載

◎函館中央病院が脊椎圧迫骨折 新治療始める

 函館中央病院(函館市本町33、橋本友幸院長)は、脊椎圧迫骨折に対する新しい治療法「バルーンカイフォプラスティ(BKP)」の保険適用を受け、今月から患者への治療を始めた。同治療法ができるのは、道南では現在のところ同病院のみ。同病院せぼね骨折センターの戸川大輔センター長(43)は「手術上の約束事をしっかり守れば安全に骨折を治せる技術。どの病院でも適切、安全な手術を行えるよう普及を進めたい」としている。

 脊椎圧迫骨折は、骨粗しょう症などが原因で、背骨が押しつぶされるように折れ、背中が丸くなってしまう。高齢者に多く、骨が神経とぶつかることで痛みが出て、寝たきりのきっかけになるとされている。

 BKPはつぶれた錐体(すいたい)を骨折前の状態に近づけ、安定させて痛みをやわらげる治療法。脊椎内で風船(バルーン)状に膨らむ手術器具や医療用の骨セメントを使用し、背中から針を刺し入れ経路を作った後、錐体に手術器具を入れ、風船を膨らませながらつぶれた骨を持ち上げ、空間に骨セメントを詰めていく。手術は30分程度で済み、背中の切開も1センチほどで、2、3日程度で退院可能という。

 BKPは1990年代に米国で開発された手術法。国内では、臨床試験の段階が続いていたが、昨年2月にようやく厚生労働省の薬事承認を受けた。

 戸川センター長は1999年から約5年間の米国留学で技術を習得。2005年に中央病院に赴任し、技術の普及と指導医の育成に努めてきた。同病院は全国の専門医でつくる「BKP研究会」の要請を受けて昨年4月、せぼね骨折センターを開設し、体制を整えてきた。

 同病院では戸川センター長のほか、5人の外科医が技術を習得。今月7日、80代の女性に対し病院として初の手術を実施した。コルセットなしで動けるようになり、痛みもなく順調な経過という。20日現在、すでに4例を行った。

 圧迫骨折の治療法は、コルセットやギブスを装着し安静を保つ「保存的療法」、金属製のねじや棒で骨を固定する「外科的療法」が一般的。戸川センター長は「患者の痛みの状況や骨折の原因、保存療法の期間など総合的に判断してBKPを行いたい」としている。 (鈴木 潤)



◎全員合格祈り願書提出 公立高で受け付け開始

 道内の公立高校の2011年度入試の願書受け付けが20日、各校で始まった。中学校の進路指導担当教諭らが、各学校に持参したり、遠隔地では郵送するなどの方法をとる。函館市内近郊の10校は、函館中部高校での一括受領方式のため、同校には各中学校の代表が続々と訪れていた。

 函館、近郊での一括受領は、中学校の利便性などに配慮して2008年度から行っている。対象の高校は函館中部のほか、市立函館、函館西、函館工業、函館商業、函館水産、函館稜北、大野農業、上磯、七飯の10校。

 中学校側は、同市内の公立校や北斗市、七飯町、知内町などの合わせて38校が参加した。各校の担当者は、混乱を避けるため事前に割り当てられた時間帯に来校。学校ごとに封筒に入れた願書を、それぞれの事務担当者に「お願いします」と手渡した。

 高校側は、目立った不備がないか願書全体をチェックし、市立函館高校では検定料が人数分あるかなどを確認。受付表や領収証を発行した。同校を訪れた函館亀田中学校の浅井善夫教諭は「生徒や担任の気持ちを感じながら持参しました。全員合格を祈っています」と話していた。

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 2012年度限りで募集停止が決定した戸井高校では、同校のみで受け付けている。20日は戸井・恵山地区や旧函館市内の中学校5校の教諭が来校した。同校の佐藤敏行校長は「本年度の地元中卒者は例年より少ない。このためか、現在の出願数は例年より若干少ないようだ」とみている。道教育委員会は、11年度の同校への地元進学率が50%を超えた場合、「募集停止見直しもありうる」としているため、出願者数が注目されている。

 各校とも願書の受け付けは25日正午まで。出願状況は27日に発表し、出願変更は28日から2月3日まで受け付ける。出願変更の中間発表は同1日で、最終の出願変更状況が分かるのは同15日。試験は推薦入試を同14日、一般入試を3月3日に行う。(小泉まや)



◎道南ドカ雪 函館除雪費ピンチ

 連日の降雪で、今冬の函館市の除雪予算が底をつく可能性が高まってきた。年明け以降のまとまった雪で、市内の累計降雪量も大雪だった昨年並みに。市内3カ所ある市民向けの雪捨て場では許容量の7割近くに達した。除排雪の作業が本格化する中、市は昨年に続き2月の定例市議会に除雪費の補正予算案を提出する方針だ。

 市土木部維持課によると、今シーズンの市内の累計降雪量は19日現在で219aで、大雪だった前年同期(231a)とほぼ同水準に達した。特に今冬は1月以降に降雪が多く、市内新川町にある市民向けの雪捨て場の新川公園三角グラウンドは高さ8bほどの雪山で全体の約7割が埋まっている。

 除雪に関する苦情も18日以降は一日150件以上と一気に増え、1月以降だけで19日現在で計620件に上る。今冬は昨シーズンに比べて気温が低い日が続くため圧雪状態の路面が多く、「雪が解けてわだちができやすい『ザク雪』が少なく、苦情件数は昨年よりは落ち着いている」(同課)という。

 市は17日から道路脇の雪山の排雪作業にも着手し、18日からは市内全域で生活道路の除雪作業も本格化させた。一般向けではない市道の排雪用の雪捨て場も一部が満杯となり、市は市内の函館ドック跡地(弁天町)や西桔梗緑地(西桔梗町)などを新たに確保した。

 市は本年度当初予算に昨年度と同額の3億2000万円を除雪費に計上しているが、「このペースでは当初予算で乗り切るのは難しい」(同課)状況で、2月の定例市議会に除雪予算の追加補正を求める考え。17日現在で除雪費の業者委託料2億2300万円のうち、65%に当たる1億4300万円を消化しているという。

 函館海洋気象台によると、道南では1月下旬に年間で気温が最も下がる寒のピークを迎え、1月中は雪の降りやすい冬型の気圧配置が続く見込み。同課は「幹線道路が最優先のため、生活道路の除雪は遅れがちになる。生活道路に路上駐車があると除雪車が入れないケースも多い」として市民に理解を求めている。(森健太郎)


◎「陸の国境」標石の複製展示…市中央図書館で樺太展

 函館市中央図書館(五稜郭町26)で20日から「樺太国境標石と樺太絵葉書展」(北大スラブ研究センター、同館など共催)が始まった。樺太(サハリン)で旧日露間に引かれた国境を示した第3号標石の複製などを展示している。かつて存在した「陸の国境」は、著名な文人らが足を運んだ。複製された標石は現在足を踏み入れることのできない土地の貴重な資料として注目を集めそうだ。

 北大総合博物館の木山克彦研究員によると、標石は昨年2月、日本に陸の国境があったことを示す文化的価値が高いものと判断し、北大スラブ研究センターで複製を作った。函館では初の展示となる。木山研究員は「実際に複製に触れられるこの機会に、日露の歴史や樺太について知ってもらえれば」と話す。

 国境標石は1906年、北緯50度線に沿って樺太のほぼ中央に4基設置され、国境線以南が日本領土となった。四方を海に囲まれた日本には陸地の国境線がなかったことから、児童文学者の宮沢賢治や詩人の北原白秋なども足を運ぶ名所として名をはせた。当時の日露国境線では観光客が国境をまたぐこともしばしばあり、両政府も特に関心を示さなかった。

 しかし、38年に女優岡田嘉子と演出家杉本良吉が第3号標石付近から越境し亡命。翌年の39年、日本政府は国境取締法を制定して規制した。現在では明確な占有国のない「空白地帯」となっている。

 展示会場を訪れた函館市内の男性(63)は「日露の国境を示す標石があったことを初めて知った。樺太が身近に感じられる」と話していた。展示は2月15日まで行われる。(黒田 寛)