2011年1月6日 (木) 掲載

◎「卯」元気に大空跳ねる、恒例の連凧揚げ

 函館市大町の緑の島で5日、新春恒例の連凧(れんだこ)揚げが行われ、干支(えと)にちなんだ作品が大空に舞った。強い潮風で、凧糸が切れる場面もあったが「このハプニングが面白い。それだけ元気がある証拠だ」と大勢の市民が楽しんだ。

 函館市山の手の創作凧研究所「創作凧治工房」を主宰する梅谷利治さん(81)の「新春たこ揚げ」。新作の「夢月兎(ゆめげっと)」は、36枚組み。24年前と12年前の作品も持ち運び、“ウサギ”が大空で跳ねまわった。

 作品は微風に合わせた設計で、「36作目にして初めて糸が切れた。でも、強い風でやるのはときめくね」と梅谷さん。梅谷さんを慕う仲間が安全の配慮や進行役を手伝った。子どもたちは、手づくりの作品で凧遊びをし、笑い声が響いていた。

 祖父と参加した函館弥生小1年の長谷川暖乃(はるの)さん(7)は「糸がすごい力でびっくりした。空で泳ぐたこはきれいだった」と目を輝かせていた。梅谷さんの作品は、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で15日まで展示されている。(田中陽介)



◎築地の初競り、戸井マグロが史上最高値3249万円

 東京都の築地市場で5日、新春恒例の「初競り」が行われ、函館市戸井産のクロマグロが、1本3249万円の史上最高値で競り落とされた。重量342キロの大物は1キロ当たり9万5000円。これまで青森県大間町の指定席だったトップ産地の座に初めて上り詰め、地元の漁協関係者は「長年にわたり地道にブランド化に取り組んできた成果」と喜びに沸いている。

 築地市場などによると、記録が残る1999年以降では、2001年の初競りで記録した青森県大間町産の1本2020万円を10年ぶりに大幅更新。「競り場の中ではこの日一番の大きさと鮮度で、垂ぜんの的だった」(市場関係者)という。

 落札した仲卸業者から購入したのは、昨年と同じ香港の飲食店チェーンと中央区銀座の高級すし店。仲卸業者の東都水産は「今回は身をさばいてみてもクレームなしと聞いている。戸井産は水揚げ後の処理の良さから鮮度の評価が高い」と話していた。

 最高値を付けたマグロは4日午前、戸井沖で操業していた船団のはえ縄に掛かった。体長はこの日の6本(計900キロ)の中で最も大きい2・4メートル。

 戸井マグロのブランド力を支えるのは釣り上げた直後に血抜きする独自の処理技術。体温の上昇で「身焼け」を防ぐ鮮度保持のための方法で、「戸井のマグロは知名度では大間に劣るが、品質は間違いなく日本一」と関係者は胸を張る。

 戸井漁協の森祐組合長は「漁協として喜ばしい限りで、戸井の漁師や近隣の仲間が一丸となってやってきた成果。これからも気を引き締めてみんなで頑張っていきたい」と話した。(森健太郎、田中陽介)



◎初競り威勢良く、2地方卸売市場

 函館市が開設する水産物地方卸売市場(豊川町27)と青果物地方卸売市場(西桔梗町589)で5日早朝、初競りが行われた。両市場には夜明け前から新鮮な農水産物が運び込まれ、開始を告げるベルの音とともに威勢の良い掛け声が響いた。長引く不況による消費低迷や取扱数量の減少が懸念される中、関係者が今年1年の活況を願った。

 ○…函館市水産物地方卸売市場(豊川町27)では午前7時から、卸売業者や仲買人ら約300人が出席して「初売り式」が行われた。開設者を代表して函館市の谷沢広副市長が「市場を取り巻く状況は厳しいが、新鮮で安心・安全な水産物の安定供給に向けて一緒に取り組みたい」とあいさつ。

 函館魚市場の松山征史社長は「昨年は猛暑の影響で海水温が上昇し、秋サケが数量で前年の60%、額で80%と非常に厳しい状況だった。今年はえとのウサギのように俊敏に立ち回り、地域密着で安全な水産物を安定して提供したい」と抱負を述べた。

 豊漁や商売繁盛を願う手締めに続き、縁起物のタイやブリなどがひとまとめに競りに掛けられ、仲卸人らから恒例の「10万両(円)!」と景気のいいの掛け声が上がった。この日の入荷は例年並みの29トン。近海のタラやスケトウに加え、漁期が終盤を迎えるマイカも水揚げされた。

 ○…青果物地方卸売市場では、午前6時40分から市場中央に紅白幕などを飾り「初せり式」を開催。卸業者や買受人ら約150人が出席した。

 開設者を代表して函館市の西尾正範市長は「景気低迷や消費者の嗜好(しこう)の変化など課題を抱えているが、市としてもできる限り支援し、ともに難局を乗り越えたい」、丸果函館合同青果の勝木俊彰社長は「市場を取り巻く環境は予断を許さないが、ことしも安全安心な青果物の提供にまい進したい」と、それぞれ年頭あいさつした。

 三本締めで今年の商売繁盛を願った後、早速青果物の競りが始まり、場内に威勢のよい掛け声が響き渡った。

 この日は野菜47・2トン、果物は17トンが入荷されたが、ともに昨年を下回った。野菜はダイコンやニンジン、トマト、果物はリンゴやミカンなどが中心で、同市場によると、「タマネギが高かった程度で、値段はほぼ例年並み」としている。


◎全盲アマカメラマンの大平さん、つくば市の双子とイベント開催へ

 函館在住の全盲のアマチュアカメラマン、大平啓朗さん(31)はことし、茨城県つくば市在住でアクションスターを志す黒田朋樹さん(27)昌樹さん(27)の双子の兄弟とタッグを組み、全国各地で写真とアクションを融合させたイベントを始める。障害者への偏見を少しでもなくす活動を続けている大平さんにとって、新たな挑戦。「自分の限界を決めずに一歩踏み出すことで、何にでも取り組めることを多くの人に伝えたい」と、意欲を新たにしている。

 大平さんは2003年秋、山形大学大学院生の時にメタノールを誤って飲み、失明。全盲となっても趣味の写真を続け、音や太陽の光、温度などの五感を駆使して撮影を重ねてきた。

 09年6月からは自らの可能性を広げようと、1人で全国撮影旅行に挑戦。各地で出会いを重ねながら、丸1年かけて47都道府県を制覇した。

 黒田さん兄弟は札幌出身。現在はつくばを拠点にアクションスターとしてユニットを組み、大道芸やスタントなど多彩な活動を行っている。大平さんとは2年前、筑波大に通っていた際に知り合い、ヨサコイソーランチームを立ち上げるなどして意気投合。次第に「3人で全国を回る旅に出かけたら面白い」と、アイデアを膨らませていった。

 「撮影旅行を通じて、障害者への認識がまだまだ薄いことや、自分の知らないことも思った以上にあった。自分たちの活動を伝えながら、物事をより知りたいという気持ちが強まった」と大平さんは話す。

 イベントは今月8日に札幌で開始。大平さんが写真展と福祉に関するトークショー、黒田さん兄弟がヨサコイやアクションを行う。札幌在住の津軽三味線奏者、新田昌弘さんも駆けつけてミニライブも行う。

 函館、つくばとそれぞれの拠点が違うだけに、期限を設けず、個々のスケジュールを調整しながら全都道府県でイベントを続けていく考え。大平さんは「各地の人々を巻き込みながら、多くの人に笑顔を届けたい。いずれは函館でもイベントをやりたい」と話している。(千葉卓陽)