2011年2月5日 (土) 掲載

◎幻想的な光包む 五稜郭公園「光の小径」

 市民らの手作りキャンドルによる光の回廊で市内を彩る「光の小径(こみち)」が4日、函館市の五稜郭公園と五稜郭タワー周辺で開かれた。五稜郭は外周1.8キロに1200個、同タワーの周辺には約60個のキャンドルが置かれ、訪れた観光客や市民の心を癒した。

 1日に市内で始まった「2011はこだて冬フェスティバル」(実行委主催)の一つで、五稜郭タワー内では牛乳パックの中に溶かしたワックスを流して作るワックスキャンドルの製作体験や、明かりに包まれる五稜郭をタワーから眺望するイベントも開かれた。改行 キャンドルは午後3時半ごろから同実行委メンバー35人が配置を開始。好天に恵まれ作業は順調に進み、同4時半に点灯開始。毎年楽しみにしている近隣住民が早速足を運んだほか、冬の道南観光に訪れた観光客も幻想的な雰囲気の中で散策を楽しんでいた。

 神奈川県横須賀市から来たという会社員の千葉恵一さん(52)は「これだけのキャンドルが手作りとはすごい。まちを挙げて観光客を歓迎してくれているようでうれしい」と話していた。(山崎純一)



◎微収6年連続1億円超え…渡島・桧山地方税滞納整理機構

 函館市を除く渡島・桧山管内の1市16町でつくり、市町税の滞納整理を引き受ける「渡島・桧山地方税滞納整理機構」の2010年度徴収額が1月末現在で、1億210万円となり、6年連続で1億円の大台を超えた。04年4月設立以来、1月末での1億円突破は初めて。同機構は「徹底した財産調査と早期滞納処分が、徴収額の確保につながった」としている。

 徴収額1億210万円の内訳は、差し押さえが3868万円、納税誓約納付分が2177万円、任意(自主)納付が4165万円。徴収率は36.36%で、前年度末に比べ1.64ポイント上回った。徴収額は前年比4100万円減だったため、約518万円下回った。

 各市町から280人(法人含む)、2億6788万円(前年300人、3億897万円)の処理困難な事案を引き受けた。同機構は滞納者の財産調査や早期滞納処分を行い、財産の差し押さえや納税契約を通じて徴収を進めてきた。

 差し押さえは174人からの428件(前年最終実績171人、371件)。内訳は預貯金258件、給与28件、生命保険112件、年金15件、還付金8件、現金3件、動産3件、不動産1件。換価額は3868万円(同2940万円)だった。

 納税誓約は69件で、計3795万円。8件完了し、未納は56件で、不履行5件となっている。

 自治体が滞納者に「これからは機構が徴収業務を行います。徹底した徴収が行われます」と通知した後に納税があった事前予告効果額は1億464万円。実際に同機構が処理した分は1億1828万円で、効果額合計は2億2292万円。負担金3991万円に対し、対効果割合は5.58倍となっている。また、本年度は、初めて不動産のインターネット公売を実施している。

 同機構事務局は「引き受け事案で財産が不明なもの、差し押さえ可能財産の少ないものが増えている。個人収入と雇用環境、経済情勢の悪化などから、今後は一層の取り組み強化が必要になってくる」としている。

 同機構は、自治体単独では徴収が難しい滞納事例を処理する機関として「渡島地方税滞納整理機構」として発足。07年4月からは桧山管内の自治体も加わっている。(田中陽介)


◎衛生管理徹底を…鳥インフル対策

 全国で相次ぐ高病原性鳥インフルエンザ問題を受け、函館市西桔梗町の渡島家畜保健衛生所(加藤一典所長)は、管内の主要農場で衛生管理の立ち入り検査を行っている。4日現在、道南では鳥インフルは発生していないが、加藤所長は「地域一丸での予防策に力を入れたい」と協力を呼び掛けている。

 道の対策として1日から各地で実施。渡島管内には、100羽以上の採卵養鶏場が18戸あり、全体で26万羽が飼育されている。同衛生所には職員10人が在籍し、一日5、6人が18日まで各地を回って検査に当たる。

 検査内容は、防鳥ネット設置や鶏舎出入り口の消毒状況、敷地への部外者立ち入り制限など。同衛生所の職員とともに、自治体担当者らも随行している。

 4日は八雲と森の両町にある各2戸で確認調査が行われた。同衛生所の担当者は防護服や消毒薬などを車両に積み込み、午前9時前に出発。現地での検査は夕方まで続いた。  加藤所長は「農家には衛生管理の徹底と異常確認時の早期通報を、一般住民には野鳥への餌づけ自粛の協力をお願いしたい」と話していた。

 鳥インフルは感染した鳥との濃密な接触など特殊な場合以外は人間に感染しないとされ、道は「鳥の排泄物などに触れた際はうがいや手洗いを。死んだり、衰弱している鳥を見つけた時には素手で触らないように」と注意を呼び掛けている。渡島の相談窓口は電話0138-47-9439。桧山は電話0139-52-6494。(田中陽介)


◎【命を見つめて・第1部がん編D】適切な治療体制 道半ば

 「どこで治療を受けたらいいのか」―。函館市内の男性は苦悩の表情を浮かべる。男性は市内の医療機関で大腸がんと診断され、別の医療機関を紹介されたが、開腹手術のみを勧める医師の治療方針に納得がいかず、受診をやめた。「命がかかっている問題。ほかの治療法も含め十分説明してほしい」と唇をかむ。

 市内のがん患者でつくるグループ「元気会」は毎月1回、交流会を開催する。会員以外の当事者や家族も参加、悩みや苦労を語り合い、互いに助言し合う。同会によると、治療生活や治療費に対する不安の声が多く、「家族に迷惑をかけたくない」と治療を断念する患者もいるという。

 国が2007年4月に施行したがん対策基本法が、この4月で5年目を迎える。同年、「基本法の理念を具体的に実行するがん対策推進基本計画を策定し、がん医療体制の整備を進めてきた。新年度は計画期間の最終年度に当たるが、地域住民が格差なく安心して治療が受けられる体制を享受するには道半ばの状態だ。

 厚生労働省によると、生涯のうちにがんになる可能性は男性で2人に1人、女性で3人に1人とされ、がんの治療を適切に受けられない「がん難民」が増加傾向にある。

 市民のためのがん治療の会(本部・東京都国立市)の會田昭一郎会長は「基本法はあくまで理念法。目的を持った実体法をこれからつくる必要がある」と指摘。がん治療者の数や状況を把握する「がん登録」の法制化を提起しており、「個人情報の問題もあるが、推計ではない実態を把握することで実情に合った対策や研究に生かすことができる」と語る。

 また、就労中の患者に対する療養中の保障など闘病中QOL(生活の質)の維持、サポートの整備も課題として挙がっている。NPO法人がん患者団体支援機構の理事で、患者の集い・モミの木(横浜市)の吉田道雄副代表は「患者の声を十分反映したきめ細かな仕組みが必要」と、患者主体の医療や支援体制の実現を訴える。

 一方で、成果もある。同基本法ができたことで地域連携拠点病院を中心とした啓発や情報発信が活発化した。函館市内でもがんをテーマにした市民公開講座がひんぱんに開かれ、がん患者向けのサロンも広がりを見せている。市立函館高校では昨年、がんにかかわる講義が数回開かれ、市立函館病院の木村純院長は「予防の観点から中高生をはじめとする次世代に対する啓発もこれからやっていくべき」と提起する。(医療問題取材班)