2011年2月8日 (火) 掲載

◎「函館育ちふっくりんこ蔵部」が日本農業で賞特別賞

 道南の「ふっくりんこ」生産者でつくる「函館育ちふっくりんこ蔵部(くらぶ)」が、第40回日本農業賞・集団組織の部で特別賞を受賞した。生産者が品質維持に高いハードルを設定し、道南生まれのブランド米として成長させたことが高く評価された。同蔵部の木本勉部会長(50)=知内町重内=は「農業をやっているものにとって大変名誉ある賞。各生産農家や関係機関の関係者をはじめ、何よりお客様に感謝を申し上げたい」と喜んでいる。

 日本農業賞は、全国農業協同組合中央会などが主催し、地域社会の発展に貢献する意欲的な農業経営や技術改革に取り組む個人、団体に贈られる。特別賞は大賞に次ぐ高い評価で、集団組織の部には全国96件の応募があった。

 道南農業試験場(北斗市)生まれのふっくりんこは、道南の土壌に適した品種として、2003年にわずか20fの作付けで始まった。翌年、同蔵部が設立し、現在、渡島、桧山管内の14市町の生産農家837戸が加盟。昨年は2655fで9133dのコメを出荷した。

 蔵部には独自の認定基準があり、低いほどおいしいとされるタンパク値6・8%以下を維持するため、生産者が土壌改良や的確な生産管理を行っている。基準に従い、精算価格にも差をつけて、生産意欲を高めた。生産者自らが店頭で販売するなど、消費者の声を聞きながら、販路も道南圏から道内全体、全国へと拡大し、道南を代表するブランド米として成長した。

 木本部会長は「ふっくりんこは食味がよく、炊きたてはもちろん、時間がたってもおいしいお米」とする。新函館農協米穀課は「タンパク値が徹底して守られていることがおいしさを維持している。生産者のたゆまぬ努力と道南圏の消費者の応援があってこそ」と話す。

 今後の目標について木本部会長は「地味なことだが、今年も品質向上を目指して基準をしっかり守り、大事に育てていくことだけです。まだ食べたことのない人たちにもぜひ味わってもらえればうれしい」と話していた。(今井正一)



◎太平洋側に客船呼び込め…函館、室蘭、苫小牧、釧路4港連携

 函館、室蘭、苫小牧、釧路の太平洋側の4港が、クルーズ客船の誘致に向けて連携に乗り出した。1月下旬に函館側の呼びかけで4港の港湾関係者を集めた初会合を開催。道内の周遊で定番人気の小樽発着の日本海回りのツアーに対抗できるルート開発を目指し、連携したセールスや受け入れ体制の充実を図る。

 函館港への客船誘致は、函館市などでつくる函館地区クルーズ振興協議会の設立に伴い、2006年度から本格化。客船の出入港時のセレモニーや船舶・旅行代理店などへの積極的なセールスで、近年は年間10隻前後の客船が入り、寄港地として一定の定着を見せている。

 ただ、道内の太平洋側の港に寄港する客船は、1港だけに立ち寄るケースが多い上、函館と比べて苫小牧や室蘭は観光よりも商・工業港としてのイメージが強く、客船誘致への取り組みに遅れを取っているのが実情だ。

 一方、日本海側では近年、小樽港発着で利尻・礼文、網走などを周遊するツアー「飛んでクルーズ」が人気を集めている。主に乗船客は新千歳から空路で小樽入りし、客船「にっぽん丸」で4泊5日で巡り、「15万円前後の料金の手軽さも受け入れられている」(同運輸支局)という。

 4港が目指すのは「飛んでクルーズ」の太平洋版だ。1月21日には札幌で4港の実務者が集まり、連携して首都圏の船会社や旅行代理店に寄港をPRするほか、各地の観光資源などを情報共有して4港をセットにしたツアーを企画することで一致した。  会合では「函館からの呼びかけは『渡りに船』。単独のセールスでは限界があった」(釧路地区)との声もあり、今後は函館が幹事港となって取り組むことを決めた。同運輸支局の北條誠一首席運輸企画専門官は「各地の売りを共有し、それぞれの点を線で結び、太平洋エリアで客船誘致につなげたい」としている。 (森健太郎)



◎福島での巡業中止…大相撲

 【福島】大相撲の八百長問題の影響で、九重親方(元横綱千代の富士)の故郷、福島町で今年夏に開催が予定されていた地方巡業が中止となったことが7日までに分かった。日本相撲協会が3月の春場所と年内の地方巡業の取りやめを決定したことを受けたもので、町では「久しぶりの巡業開催だっただけに残念」と話している。

 町によると、同協会から地方巡業開催の打診があり、8月9日に開催することで調整、準備を進めてきた。しかし6日に同協会から「福島での巡業は中止になった」と連絡が入ったという。

 町の担当者は「会場となる町総合体育館の日程を押さえる以外、詳細は決まっていなかった」と話す。同町では2007年8月に、1992年以来、15年ぶりの地方巡業「福島松前場所」が行われ、約1500人の観客が訪れるなど大盛況だった。

 同町の竹下泰弘副町長は「八百長問題には驚いており、非常に残念。九重親方の愛弟子も名前が上がっており、親方の心境を思うと、察するに余りある」とし、「早く問題を解決し、頑張って相撲界を立て直してもらいたい」と話す。

 また、九重部屋は同町で毎年夏に2週間ほど、夏合宿を行っており、多くの町民や観光客が朝げいこの見学に訪れるなど夏の恒例行事として定着している。竹下副町長は「今のところ地方巡業の話しかきておらず、合宿をするかどうかの決定は、八百長問題が落ち着いてからになると思う」としている。(松宮一郎)


◎万感 最後の航海へ…実習船「若竹丸」の吉野船長、古川三等航海士

 教育庁の実習船「若竹丸」(666トン)が8日、函館港から本州南東岸海域へ、本年度最後の漁業実習に向かう。今年3月末で定年退職を迎える船長の吉野威(たけし)さん(60)と三等航海士、古川敏広さん(60)にとっても、最後の航海。40年近く、水産高校の実習生を指導してきた思いを振り返り、「教え子は家族も同然。この漁業実習も安全に努めて、未来の海で活躍する若者の育成に全力を注いできたい」と2人は語る。

 吉野さんは岩見沢出身で、1976年から実習船に携わり、「海のないまちで育ち、船への憧れがあった。実習船で多くの生徒と出会い、時には親として、時には兄弟のように心を通わしてきたことが財産になっている」と語る。

 古川さんは小樽の生まれで、68年から小樽水産高校所属船の指導にあたり、「幼少から漁業を身近に感じ、船乗りになるのは自然な流れだった。生徒と年齢が近いころから実習船に乗っていたので、思い出話は尽きない」という。

 長年にわたり、一年の大半を実習船で過ごしてきた。大海原は常に危険と隣り合わせだ。漁網が引きちぎられるような大しけを幾度となく乗り越えてきたことも。

 吉野さんは「遠洋に出るとなると大人でも怖気づく。その中で、実習生は不安に打ち勝ち、共同生活の中から一生の糧を得ることができる」。古川さんも「自分が不安なそぶりを見せたら、生徒に示しがつかない。いつでも手本として、何事にも真剣に取り組んできた」という。

 若竹丸は、中部北太平洋とベーリング海の日付変更線付近で、サケ・マス流し網の資源調査実習も行っている。その実績は、国内外で高く評価され、各国の研究者らが「ワカタケライン」と称賛を込めて呼び、2008年には「北太平洋遡河性魚類委員会」(NPAFC)から感謝状が届いた。

 2人は「若竹丸は、日本の漁業実習船をリードしてきた存在」と声をそろえ、「これから実習する生徒やそれを支える関係者には、この伝統を守り、一層の漁業発展に貢献できるよう頑張ってもらいたい」と願う。(田中陽介)


◎札苅トンネル貫通

 【木古内】北海道新幹線の新青森―新函館駅間の「札苅トンネル」が貫通し、町札苅のトンネル坑内で7日、貫通式が行われた。地元自治体関係者や工事関係者らが出席し、工事の節目を祝い、2015年度の新幹線開業に向けて期待を膨らませていた。

 新函館までの道内の新設トンネル6本のうち、「渡島当別」「幸連」に次いで3番目のトンネル貫通で、総延長1.2キロ。09年3月に着工、10年1月に掘削を開始した。月平均88メートルのペースで掘り進め、今年1月21日に貫通した。総工費はトンネル部分が約22億円。橋りょうなどを含めると約33億円。今後、コンクリート吹き付け工事などを行い13年3月までの完成を予定している。

 式典には発注元の鉄道・運輸機構北海道新幹線建設局や渡島総合振興局、木古内町、工事関係者ら約180人が出席。同局の名越次郎局長や大森伊佐緒町長らによる貫通点での握手の儀などに続き、みこしで酒だるが運び込まれ、鏡開きが行われると、坑内は祝福ムードに包まれた。

 名越局長はあいさつで「わずか1年で貫通の日を迎えることができた。道内のトンネル全体の掘削率は約9割に達するなど工事は順調に進んでいる」と述べた。

 同局木古内鉄道建設所の湯澤謙一郎所長は「新年度からはトンネル以外工区にも精力を注いでいく。事故防止に努める」と話した。また、大森町長は「町が行う駅周辺整備が新年度から本格的に動き出す。木古内駅を中心に近隣町も一緒に活性化するようにしっかりと進めていく」と話していた。(松宮一郎)