2011年3月15日 (火) 掲載

◎函館市水産物地方卸売市場 競り再開で関係者ら安ど

 東日本巨大地震の津波被害を受け休場していた、函館市水産物地方卸売市場(豊川町27)は14日早朝、3日ぶりに競りを再開した。震災の影響で競りにかけられたのは道南近郊産を中心に約3トンと、通常の1割に程度にとどまったが、市場関係者は「再開できたことで、漁業関係者や消費者に安心感を与えられた」と、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 競りは午前6時から開始。競り人の威勢のいい掛け声とともに市場に並んだ鮮魚類が、地元の買い受け人約150人に次々と落札されていった。市場には13、14の両日に鹿部で水揚げされたカジカや石崎で上がったババガレイ、噴火湾で採れたズワイガニなど道南近郊の鮮魚類が並べられた。道外産は冷凍保存されていたタイなどごくわずかで、市場に出回った魚の種類も普段と比べ大幅に少なく、市場の広いスペースが目立った。

 函館市宝来町の鮮魚店の和田実さん(60)は「噴火湾産のヒラメやソウハチなどを仕入れた。魚の種類も少ないし、値段も高い」と淡々と語った。

 函館魚市場の山上慎太郎部長は「通常40〜80トンで競りが行われるが、しけや漁の控えなどで数が少なかった。市場休場中に在庫で対応していた地元スーパーや鮮魚店への供給には役立てたのでは」と話す。12日の競りのために市場に保管し、津波で場外へと流出した20トンの鮮魚類については、「金銭的な面も含め、補償する方向で考えている」とする

 同社によると、今後の懸念は加工原料となるイカやタラ。加工業が盛んな宮城や岩手の水産加工業者が津波で被害を受けており、東北の流通経路に復活のめどが立たないことから、価格に影響が出る見込み。山上部長は「物流の混乱で、加工原料の価格がどうなるか不透明」と話している。(黒田 寛)



◎高橋知事が朝市など視察

 高橋はるみ知事は14日午後、空路で函館入りし、東日本大震災の津波被害を受けた市内の函館朝市や市水産物地方卸売市場を視察した。西尾正範市長らが同行して現地で被害状況を説明。会談した朝市関係者らは今後の経済的な支援を要望した。

 高橋知事の視察には西尾市長のほか、函館朝市協同組合連合会の井上敏広理事長や函館商工会議所の松本栄一会頭、地元選出の道議らが同行。函館朝市では井上理事長らから店舗の浸水状況などの説明を受けながら、復旧作業に当たる店舗関係者をねぎらった。

 高橋知事と朝市関係者の会談で、井上理事長は「使えなくなった商品や冷蔵庫などが相当量あり、今後、品物がスムーズに入ってくるかも心配だ。各店とも金銭的な負担が大きく、商売をやめる人も結構多いかもしれない」とし、財政的な支援を強く要請した。

 卸売市場では、山田潤一市農林水産部長や函館魚市場の松山征史社長が施設の津波被害や、同日朝に再開した競りの状況を報告。船から荷揚げする際に使うベルトコンベアが約100基ほど、市場内の大型冷蔵庫が7〜8台が壊れるなど「資材倉庫はほとんど壊滅的」と訴えた。

 会談後、報道陣の取材に対し高橋知事は「大きな被害を実感し、市や経済界と連携して復旧に向けた対策を急がなければならない。住民の安定的な生活環境を確保し、経済的な対策と並行して対応しなければ」と述べた。高橋知事の市内滞在は1時間余りで、千歳経由で次の視察地の胆振管内むかわ町に向かった。(森健太郎)



◎朝市に支援の輪…若者が清掃ボランティア

 東日本巨大地震で冠水被害に遭った函館朝市(若松町)の復旧作業に、地元の若者がボランティアで清掃に協力している。「一日でも早い復旧を」と、札幌有朋高校の通信教育を受ける市内栄町在住の宮本真人さん(24)を中心に、13日から大学生も参加。宮本さんは「自分にできることはたくさんあるはず。お役に立ちたい」と力を込める。

 函館で震度4を観測した11日、宮本さんは母や付近住民らと市役所で一夜を明かした。市職員が市民一人一人に声を掛け、徹夜で付き添ってくれた姿が印象に残り、「以前から地域や誰かのために何かをしたいと思っていた。行動を起こそうと決めた」(宮本さん)。12日に帰宅すると友人らに活動参加を呼び掛け、地元の高校・大学生らが10人ほど集まった。

 14日は午前9時から作業開始。鮮魚店や飲食店の商材、什器(じゅうき)、段ボール箱などを手際良く運び出した。同11時半ごろには市職員から「沖の潮位が上がった。海岸に近付かないで」との一報があり、周辺が一時混乱したため休止。15日午前から再開するという。

 支援の輪に加わる道教育大函館校2年の嵐田里海さん(20)は「困っている人の助けになりたい」と意気込む。宮本さんは「朝市は函館の顔。協力できる人はぜひ参加を」と呼び掛けている。参加申し込みは宮本さんTEL090・6216・5105。(長内 健)


◎噴火湾で漁業被害深刻化

 東日本巨大地震による津波の漁業被害が、噴火湾で深刻化している。渡島総合振興局による13日正午現在のまとめでは、八雲、長万部の両町のホタテ養殖施設の被害が際立っている。同局では「被害額の把握まではできていないが、億単位になる見通し」とする。

 八雲町漁協によると、沖合のホタテ養殖施設の被害が甚大で、養殖ロープが切れ、浮き玉やロープもろもろが絡まっているという。幹部は「いま答えられるのは相当な被害だということだけ」と話す。同漁協は15日午後3時から対策会議を開き、具体的な対応に入る。

 コンブ養殖が盛んな函館市南茅部地区でも漁業施設が被害を受けた。南かやべ漁協は大船支所で被害が目立ち、養殖コンブのロープが切れるなどし、14日は早朝から応急処置が行われた。

 同支所内の114軒のうち100軒以上、計1200本(1本100〜120メートル)に何らかの異常があり、支所全体の1割で、被害額は少なくとも1億円と見ている。

 同漁協によると、漁場の養殖ロープは複雑に入り込み、ロープ切断など少しの異常が連鎖となり、全体へ被害を拡大させるという。14日は砂袋の重しを入れるなどしたが、正午前から海が荒れたため、作業を中止した。応急処置作業は相当の手間がかかり、危険も伴うため、慎重に行われる。

 えさん、戸井、渡島西部の各養殖施設の被害は確認されていない。

 噴火湾に詳しい漁業者は「八雲や長万部にかけての海底は、すり鉢状になっていて、津波が入ると底から盛り上がるように沿岸に押し寄せる。八雲のホタテ養殖は、この強烈な波に持ちこたえられなかったと思う」としている。

 函館開発建設部は14日、所管施設の被害状況を発表した。被害があったのは、函館港で、津波浸水で軽微な損傷があったが、近日中に修復する見込み。そのほかの河川や国道、港湾、函館空港周辺施設に被害はなかった。上磯ダム、知内ダム、大野平野地区、知内地区などの農業においても異常はなかった。


◎寺島氏8選出馬表明

 【乙部】寺島光一郎乙部町長(66)は、14日の第1回定例町議会で、任期満了に伴う町長選(4月19日告示、同24日投開票)に出馬する意向を表明した。町内では、現職の寺島氏以外には出馬の動きはなく、道内の市町村長で、現在最長となる8期目を迎えることが確実な情勢となった。

 林義秀氏の一般質問に答えた。寺島氏は「町民の賛意がいただければ、今後とも誇りを持てるふるさと・乙部町の発展のため、全力を挙げていきたい」と述べ、8選出馬を表明した。寺島氏は「誰もが安心安全に暮らせる社会を作らなければいけない。町の人口減少で、10年後には限界町村になる可能性がある。地域を支える若者の雇用創出のため、予算を重点的に投入する必要がある」とし、農林水産業の振興、町内にある既存の産業関連設備の活用、IT産業など新産業の育成に向けて、町として積極的な投資や支援に取り組む考えを示した。

 寺島氏は乙部町出身。北大農学部卒。1967年に兵庫県入庁(農水省派遣)。68年農水省入省。農水省大臣官房企画官、岡山県・津山営林署長、林野庁職員部企画官などを経て、83年4月に町長初当選。2期目以降は無投票。現在7期目。01年に桧山町村会長、05年に道町村会長に選出された。07年には全国町村会副会長に就任し、現在は常任理事。09年12月から、中央教育審議会の委員を務めているほか、09年10月から昨年10月まで総務省顧問も務めた。(松浦 純)