2011年3月19日 (土) 掲載

◎被災者支援の輪広がる…東日本大震災1週間

 「東日本大震災で被災した人々に何かしたい」—。地震発生から1週間、全国で募金活動が活発化するなか、函館市内の飲食店などでもチャリティーを実施する動きが出ている。

 そば店「五稜郭ふでむら」(五稜郭町36、筆村晃社長)では通常500円で販売している幕の内弁当を、19日から「チャリティー弁当」として390円で売り出す。この金額は仕入れ業者などに協力してもらいながら、なんとか提供できるラインという。筆村社長は「安く提供するぶん、それぞれの気持ちでいいので募金をして」と呼びかける。

 実施のきっかけは、地震発生から連日報道される被災地の惨状に「自分ができることは何か」考えたことだった。5年前に自宅を兼ねた同店舗で火災が起こり、周囲からの支援で救われたことも今回行動に移した理由のひとつ。「こんな時だからこそ、自分が動かないと」と筆村社長は意気込む。当日の午前10時までに予約が必要で、函館市・北斗市一部で配達可能。

 「ワインショップ・ワダ」(本町7、和田一明代表)では「ワイン募金」を企画。4月に入荷予定の「奥尻ワイン」1本の購入につき、100円を募金に回す。

 同店で奥尻ワインが入荷するのは2年ぶり。今年の出来がよかったことから、数カ月前から入荷を決めており、すでに予約も始まっている。シニアワインアドバイザーの和田代表によると「奥尻ワインは、かつて大震災に見舞われた奥尻の復興の証し。今の状況でワインの購入を呼びかけることにためらいもあったが、応援につながれば」と話す。

 一方、雑貨店「ハニーアップル&ストロベリーダーリン」(弁天町15、鈴木典子店主)では、手作りのポストカードを50円で販売。ポストカードの売り上げ全額を寄付に回す。

 鈴木店主は地震発生時、店が古い建物を利用していることや海に近いことから自主避難するなど、地震の恐怖を体験した。その後、甚大な被害を知り、夫でイラストレーターのとんぷくさんと「支援のために何かしたい」と話し、ポストカード募金を思いついた。それまで100円〜150円で販売していたカードも一律50円で販売している。同店に品物を委託している雑貨作家のなかには、鈴木店主に賛同して一部商品の売り上げを全額寄付したいという声も上がり、助け合いの心は今後もつながっていきそうだ。

 問い合わせは「五稜郭ふでむら」TEL0138・32・5014、「ワインショップ・ワダ」TEL0138・32・6545、「ハニーアップル&ストロベリーダーリン」TEL0138・84・5114。(堀内法子)



◎津波避難わずか…危機管理に課題

 東日本大震災の発生で、津波による浸水や冠水など大きな被害を受けた函館市。市場や商業施設の再開など復旧に向けて動き出す一方、避難対象エリアの避難率は6・2%にとどまり、市民の防災意識に課題も残した。未曽有の災害を今後にどう生かすのか。今回の対応から命にかかわる避難の実態を探った。

 函館市は津波警報が発令された11日午後3時14分、市内31町の8315世帯、1万5633人を対象に避難勧告を出した。同3時半に大津波警報に切り替わり、同3時40分には勧告より度合いの強い避難指示を初めて発令。対象は市内75町の1万4830世帯、3万713人に上った。

 避難所は市内の小中学校や公共施設、ホテルなど市内約30カ所に開設。同7時半のピーク時には全体で1910人が駆け付けたが、避難率は6・2%にとどまる。あくまで避難所に逃げた人が対象で、自主避難した住民は含まれていないが、「時間帯が勤め中の人も多く、すべてには行き届かなかった」(市総務部)。

 避難指示は翌日の12日午後8時20分に警報から注意報に引き下げられるまで継続されたが、11日午後8時すぎから、避難所から帰宅する人が増加。同11時の避難者は1369人と、ピーク時に比べ約540人が帰ったことになるが、市内の最大波はその後の同11時35分に2・4メートルを観測している。

 市は津波被害を想定したハザードマップ(災害予測図)に従い、市の広報車や消防、警察車両を使って避難指示を出したが、避難対象地区の住民からは「広報車のスピードが速くて呼びかけが聞こえなかった」(弁天町、60代女性)、「どのタイミングで、どこに避難すればいいのか分からない」(大町、70代男性)との声も聞かれた。  避難率の低さは昨年2月のチリ沖地震の際、予報より実際の波が大幅に低かった前例も背景にある。被害を受けた函館朝市の海産物店主(49)は「津波の経験がなく、甘く見ていた」と打ち明ける。市総務部も「第1波が最も高いとも限らず、余波の危険を説明してもなかなか理解してもらえない」と話す。

 また、避難「勧告」「指示」とも強制力がなく、その違いもあいまいだ。避難対象エリアの市内若松町では自宅にいた60代の男性が浸水被害で亡くなる事態も発生した。同部は「津波が収まったとか、避難しなくても大丈夫とか、個人の思い込みによる過小判断は避けてほしい」と呼びかけるが、危機意識の共有には難しさもある。

 市は津波発生時の避難場所や予想浸水区域を記した「津波ハザードマップ」を1万部増刷することを決めたが、マップで示す前提条件は道が想定した「3メートル程度の津波」だ。気象庁が発表した市内で予想される津波の高さが一時4メートル、最大で6メートルにも達した。

 結果的に市内の浸水はマップで示す範囲にとどまったが、予報通りの津波が押し寄せた場合、被害がさらに拡大することは必至だ。市は国や道レベルの抜本的な見直しを受けて対策を練り直す形だが、市が定める地域防災計画は2007年の一部改定から4年が経過していて、独自の対応も急がれる。(森健太郎)



◎被災者の医療面サポート…函館でも受け入れ準備着々

 東日本大震災の被災者を一時的に受け入れる準備が、函館市内でも着々と進められている。

 市が被災者の受け入れ態勢を整えているのを受けて、同市川原町にある国立病院機構函館病院(石坂昌則院長)は18日、空き家となっている職員住宅2戸の提供を市に申し出た。市と調整しながら入居した被災者の医療面のサポートも行う考え。

 住宅は2戸とも平屋建てで、2LDK。長期間、空き家の状態にあったことから、同日午後から職員が清掃や暖房機器の取り付けなどの作業に当たった。冷蔵庫やふとん、生活用品なども同病院で用意し、19日にも運び入れる予定。

 石坂院長は「持病のある人、病院での治療が必要な人の受け入れを想定している。安心して暮らせるよう健康面、日常生活の双方でバックアップしていきたい」と話している。空き家の市営住宅を確保して被災者を受け入れている市は「これからもっと住居が必要になることが予想されるので、協力はありがたい」としている(鈴木 潤)


◎事業者にも見舞金支給…函館市

 函館市は18日、東日本大震災で被災した市内の事業者に対し、見舞金を支給することを決めた。22日から市役所本庁舎1階、函館商工会議所2階の相談窓口で申請を受け付ける。

 見舞金はこれまで一般住居を対象に実施してきたが、津波被害の重大性を考慮して事業者にも拡大。床上浸水した事務所や事業所を持つ個人、法人に2万円を支給する。

 22日からは、東北地方で被災し、函館に来た被災者を対象に市立函館保健所で健康相談を実施。感染症や難病、予防接種などに加え、福島第一原発事故の対象地域からの避難者を対象に、被ばくの有無を確認するスクリーニング検査を実施する。市立函館病院が保有する機器を使って調べる。問い合わせは同保健所電話0138・32・1500へ。

 市営住宅への入居相談は18日までに16件が寄せられ、市住宅課によると、新たに福島県の1世帯5人が市営住宅に、同県いわき市、南相馬市の計2世帯計10人が市内の道営住宅に入居した。連休明けには宮城県仙台市の1世帯6人が市営住宅に、同県名取市と福島県大熊町の計2世帯11人が道営住宅に入居する予定。いずれも函館市内に親族が住んでいるという。

 各相談窓口は19〜21日の3連休中も開設する。市役所本庁舎1階では、隣接する青森県内の放射線量モニタリング調査の情報をパソコンで表示している。各種問い合わせは市総務部防災担当電話0138・21・3648。(千葉卓陽)


◎道南の公立小で卒業式

 道南の公立小学校で18日、卒業式が行われた。各校の校長が卒業生一人一人に卒業証書を手渡し、6年間の成長をたたえ、春から新たな生活が始まる中学校へ送り出した。

 本年度40周年を迎えた函館本通小学校では、57人が卒業を迎えた。証書を受け取る前に、現在の思いを一言ずつ発表。「仲間を大切にすることを学んだ。中学でも大切にしていきたい」「将来の夢に向かって頑張る」「お父さんお母さん、6年間ありがとう」などと元気いっぱいに語った。

 式辞で同校の小松一保校長は「東日本大震災で多くの人々が被害を受けた。復興を願い、何ができるか考えよう」と呼びかけ、「日本にとって大変な時期ではあるが、皆さんさんにとって卒業は大きな節目。今日手にした証書は6年間やり遂げた証しです。皆さんの成長は、家族や地域の人々みんなの支えがあったから。感謝の気持ちや思いやりの心を忘れず、これから頑張ってほしい」と激励した。

 「お別れの言葉」では卒業生が6年間の学校生活を振り返り、最後に「ありがとう」を合唱。両親への感謝の思いを込めた歌詞に、保護者らは目頭を押さえていた。(堀内法子)