2011年3月23日 (水) 掲載

◎五稜郭病院の井上さん、医療保育専門士に認定

 函館五稜郭病院(函館市五稜郭町38、老松寛院長)の小児病棟の病棟保育士(医療保育士)、井上美雪さん(50)がこのほど、日本医療保育学会が認定する医療保育専門士に認定された。道内では2人目の認定で、道南では初めて。

 医療保育士は、医療機関に入院する幼児、児童の保育に当たり、医療サイドと連携しながら生活支援や遊びの援助などを行う。

 同専門士は医療保育士の専門性を高め専門職として位置づけようと2007年から始まった資格制度で、資格を取得するには医療保育士として一定以上の職務経験があり、同会が行う研修の受講や論文の提出などをクリアする必要がある。取得には数年かかるといわれる。

 資格の取得で、医療保育士としての資質、技能を高めることができ、習得した技能を生かした質の高い保育が期待される。

 井上さんは1981年から函館五稜郭病院の医療保育士を務めてきたが、自身の技能をさらに向上させたいと一念発起し、07年に取得を目指した。

 同年3月、8月、9月に計5日間の研修会が東京で行われ、子供の発育・発達や小児の疾患、トータルケア・チーム医療など7領域で講義、演習を受講。領域ごとのレポートや論文の提出が義務付けられ、日々の仕事をしながら執筆に取り組んできた。昨年6月に論文を提出した後、9月に面接試験に臨み、今年1月下旬に合格の連絡を受けた。

 井上さんは「資格取得によって医学的な分野の知識がより深まった。学んだことを生かしながら子供たちが元気で退院するサポートをして、保護者の支援にも努めていきたい」と話している。(鈴木 潤)



◎ホウレンソウ出荷制限、風評被害懸念広がる

 福島第一原子力発電所の事故の影響で、福島、茨城、栃木、群馬の4県産のホウレンソウなどが出荷制限となったことで、道南の卸売市場やスーパーなど小売店は道内産への切り替えなどの対応を迫られた。函館市はほかの品目にも4県産の野菜を敬遠する“風評被害”を懸念するが、一部の小売店では消費者の健康を考えて、自主的にほかの葉物野菜も店頭から撤去するなど、捉え方はさまざまだ。

 4県産の野菜で出荷制限されたのは、食品衛生法上の暫定規制値を超える放射能が検出されたホウレンソウとカキナ。ホウレンソウに似た形態のカキナは、道内の消費量がわずかのため現在のところ目立った影響は確認できない。

 道南の対応で、小売店の中でも敏感に反応したのはコープさっぽろだ。同社は検査値が発表された19日、茨城県産のホウレンソウをミズナやパセリなどほかの葉物野菜とともに店頭から撤去した。「お客様の健康を第一に考え、葉物は同じように放射能が出る可能性があり大事を取った」と同社。22日までに4県産に千葉県産も加え、可能性があると考えた野菜類を店頭から回収した。

 4県産のホウレンソウが入荷しなくなったことで、同店も含めたスーパー各社は産地切り替えで対応する。渡島・桧山に16店を展開する道南ラルズでは、この時期のホウレンソウに占める4県産の割合は10%程度。「青森県や埼玉産に切り替えているが、今後は地物が多くなるのでさほど心配はしていない」。

 函館市青果物地方卸売市場(西桔梗町)が3月に扱うホウレンソウのうち、4県産の昨年実績は約15%だった。この割合について市市場課は「さほど多くはない」とみており、「今後は道内産が増えてくるので流通量は心配ないレベル」とする。

 同市場には22日、20日以前出荷の群馬県産ホウレンソウがあったが、この日の取引は見送られた。同課が市立函館保健所に対応を問い合わせた結果、「規制前なので問題ない」との回答を得たことから23日には取引される見通し。

 同保健所は「放射能は微量で、ゆでると減るという。ホウレンソウ以外の野菜についても国が検査結果を受けてその都度適切に対応するので、『流通しているものは大丈夫』と考えてよい」との見解。消費者には「過敏にならず冷静に対応してほしい」と呼びかける。(小泉まや)



◎環境劣悪で被災者の疲労深刻、支援活動した渡島総合振興局の蛯澤さん語る

 東日本大震災の医療支援として、道から宮城県に派遣されていた保健専門家第一陣の4人が22日午後、函館に戻った。14日から7泊8日、保健師として避難所で健康相談などに携わった、渡島総合振興局保健推進係長の蛯澤美保子さん(59)に被災地の様子を聞いた。

 ——どこで支援活動を。

 16日から気仙沼の避難所、鹿折(ししおり)中学校が拠点でした。火災や津波被害の地域で、体育館には高齢者を中心に500人、車や住宅で寝泊まりする300人がいたと思います。水、電気、生活物資が届かない状況で、寒さも加わり、非常に厳しい環境です。ただ、多くの被災者は協力的で、ご飯の用意や消毒の準備など率先して手伝ってくれます。

 ——避難する人の健康状態は。

 避難当初は乾パン1、2個が食事で、栄養面が心配されました。おにぎりなどをうまく飲み込めないお年寄りもいて、離乳食で対応しました。薬の手配が急務で、同姓同名も多く、病名や主治医を一人ずつ確認し、市立病院に情報を持ちよって可能な限りで用意してもらいました。お年寄りの体力が衰え、病院に搬送されても対応できずに避難所へ戻らざるを得ないことがありました。しかし深刻な状態で、医療専門家の協力で、何とか入院までこぎつけました。

 ——避難所の衛生状態は。

 清潔保持が難しいです。水がないトイレでは新聞紙に大便を包みます。その抵抗感から便秘になる人もいました。燃料がなく、寒くて寝られず血圧が上がる人もいました。21日から仮設トイレが使えるようになりました。自衛隊の医療班も入りましたが、被災者の疲労は想像以上です。

 ——避難所付近の様子は。

 ガソリンスタンドに100台以上並んでいるのを見ました。緊急車両も十分に入れられず、がれきや角材のくぎなどでパンクをしてもすぐ直せない状況です。避難所に物資が届き始めましたが、民家で過ごす人も多く、すべてに行き届いていないようです。

 ——避難生活で必要とされていた物資は。

 下着、靴下、女性の生理用品、この3つだと感じました。家族や知人が津波に流されるのを目の前で見ている人が多く、その一瞬を語り合っています。ショックと悲しみ、今後の生活の見通しの不安で涙を流す人が増えています。日を追うごとに感情的になり、心のケアが急がれています。(田中陽介)


◎道知事選あす告示

 統一地方選のトップを切って、道知事選(4月10日投開票)が24日、告示される。立候補を予定しているのは現職の高橋はるみ氏(57)=自民、公明推薦、新人の木村俊昭氏(50)=民主、社民推薦、宮内聡氏(47)=共産推薦、鰹谷忠氏(60)の4氏で、各陣営とも札幌市内で第一声を予定している。道内経済の活性化や道の財政再建などが焦点となりそうだが、未曾有の被害となった東日本大震災が影響し、有権者の関心は高まっていない。

 3選を目指す高橋氏は北海道の自立に向け、海外からの観光客誘致や投資の促進、新卒者、中高年層に向けた緊急雇用対策などを掲げる。北海道新幹線の早期開業や、医師不足地域に向けた医師派遣システムの強化、看護師の再就職支援なども公約に盛り込んでいる。

 木村氏は、道民所得の向上、医師不足などの解消、財政再建を重要課題に挙げており、8年間で11%低下した道民所得を、4年間で元の水準に引き上げることや「時のアセス」の復活に力を注ぐ。札幌医大の機能強化とともに、地域の医育大学の新増設を支援するとしている。

 宮内氏は前回(07年)に続いての出馬。道政の転換を掲げ、中小企業向けの雇用対策や、国保料の引き下げ、住宅リフォームを助成する条例制定、TPP(環太平洋連携条例)参加反対などを訴える。

 前道議会副議長の鰹谷氏は、道政のあり方について@主権は道民A地域主権B参加と公開—の3原則を訴えるとともに、景気・雇用対策や道財政の再建などを公約に掲げている。(統一地方選取材班)


◎定例市議会、議案42件可決し閉会

 函館市議会第1回定例会は22日、本会議を再開し、2011年度一般会計予算案など、予算特別委員会に付託していた議案33件を原案通り可決し、閉会した。市議会委員会条例の一部改正や人事など、追加議案9件も原案通り可決した。

 東日本大震災の犠牲者への黙とうをささげた後、予算特別委員会付託案件について、浜野幸子委員長が審議経過を報告。共産党が国民健康保険事業特別会計予算と職員定数条例の一部改正案について反対討論を、本間新氏(市民クラブ)と竹花郁子氏(無所属)が一般会計予算に対する賛成討論を行った。

 意見書案は取り調べの可視化(取り調べの全過程の録画)の実現を求めるなど4件を4件を原案通り採択した。

 閉会にあたり、西尾正範市長は東日本大震災の犠牲者に哀悼の意を表すとともに「1日も早い復興に向け、できる限りの支援策を講じたい」と述べ、4年間の任期満了について「議員、市民から多くのご協力をいただいた。今期で勇退する議員には長年にわたって市政発展に尽力をいただいた」とあいさつした。(千葉卓陽)