2011年3月26日 (土) 掲載

◎函館市、救援物資の受け付け開始

 函館市は25日、東日本大震災の被災者に対する市民からの救援物資の受け付けを、大森町33の市慰霊堂で開始した。初日は102人が訪れ、現地で不足している介護用品や日用品を持ち寄った。

 この日は市職員14人態勢で、慰霊堂内に4カ所の受け付けを設置。午前10時の受け付け開始から続々と市民が訪れた。市民の案内や物資運搬などで手伝いをしたいと、ボランティアも10人が詰めかけて対応に当たった。市総務課によると、この日集まった主な物資は紙おむつ95袋、ボックスティッシュ515個、ペットボトル飲料192本などに上った。

 一番乗りで駆けつけた富岡町の男性(67)は、ペットボトルのお茶とレトルト食品、衛生用品を持参し、「こういう時はみんなお互い様。気持ちだけでも」。トイレットペーパーなどを持ち込んだ市内山の手の主婦、伊勢亜紀さん(38)は「募金や節電をしているが、直接物資になるわけではない。少しでも役立てて、困っている方々に使ってほしい」と話していた。

 受け付けは4月1日まで、午前10時—午後3時。救援物資はすべて新品、未開封で、使用期限や賞味期限は2カ月以内に限る。集められた物資は自衛隊を通じて宮城県などに輸送する。

 また、市役所本庁舎1階の被災者相談窓口は26、27日も午前8時45分から午後5時半まで開設する。問い合わせは電話0138・21・3197。

 慰霊堂で受け付けている物資は次の通り。▽紙おむつ▽おしり拭き▽歯ブラシ▽せっけん▽生理用ナプキン▽粉ミルク▽ボックスティッシュ▽トイレットペーパー▽使い捨てカイロ▽使い捨てマスク▽米▽レトルト食品▽カップ麺▽ペットボトル飲料(千葉卓陽)



◎市環境部、ごみ収集車など4台を被災地に派遣へ

 函館市環境部は国からの要請を受け、東日本大震災の被災地支援に、ごみ収集車3台、バキュームカー1台を派遣する。避難所の清掃や仮設トイレのし尿処理に利用される見込み。日時、場所は未定だが、市環境部は「正式な日程が決まり次第、要請に応じたい」としている。

 函館市が加盟する社団法人全国都市清掃会議に12日、人員、機材の派遣を環境省の担当課が要請。13日に同会議から市に人員機材について派遣の要請がきた。これを受け、同部は14日に会議を開き、車両4台の派遣を決定。同部は「市の業務の大半を外部委託しているため人員を派遣する予定はないが、車両の予備があり余裕があるので被災地で活用してもらえれば」と派遣を決めた経緯を話す。

 被災地に派遣されるごみ収集車は、積載容積が8立方b、積載重量が2・5トンの車両が2台と4立方メートル、2トンの車両が1台。バキュームカーは3・3トンまでし尿を回収できる。同部によると、いずれも年式は新しくないものの、常に整備をしている現役の車両。

 派遣の時期や場所について同部は「道路事情が回復しておらず、現地のどこに派遣するかはまだ分からない」とし、「正式に決定次第、速やかに派遣したい」としている。(黒田 寛)



◎雇用情勢に震災の影

 東日本大震災の影響が、函館の雇用情勢にも影を落とし始めた。函館公共職業安定所には15〜24日に休業相談が20件、解雇についての相談が9件、雇用調整助成金に対する相談が32件寄せられた。同職安は「雇用環境の悪化につながることも予想され、動向を注視したい」とする。

 休業相談は、噴火湾沿いの水産加工会社などから寄せられており、原料確保が困難なことなどが理由。このほか福島県の業者から部品納入を受けている製造業では、製品の組み立てができない事態もある。同助成金は、労働者の一時的な休業などに伴い国が賃金の一部を助成する制度で、相当数の相談があった。

 道労働局のまとめによると、全道の震災にかかわる相談は、倒産・休業・雇用関係が46件、同助成金関連が96件、被災地から道内に移動した求職者からの仕事については33件、雇用保険関係は20件寄せられた。

 同職安は「各方面に影響が波及すると求職者は増えるが、求人は減るという現象が予想される」として状況の悪化を懸念する。(小泉まや)


◎西尾、工藤氏が市長選公開討論、函館の将来像で論戦

 4月17日告示の函館市長選立候補予定者による公開討論会「函館市の未来を選択する」(函館青年会議所主催)が25日夜、湯川町1の函館市民会館大ホールで開かれた。現職で2選を目指す西尾正範氏(62)と、新人で前副市長の工藤寿樹氏(61)が出席し、テーマに沿って政策を語った。会場には有権者ら約400人が詰めかけ、議論を見守った。

 同会議所による討論会の開催は初めて。道内選挙に伴う公開討論会を支援するNPO法人リンカーン・フォーラム北海道(札幌)の笹村一代表がコーディネーターを務めた。開会前には東日本大震災の犠牲者に対し、黙とうをささげた。

 冒頭、両氏が所信表明をスピーチ。西尾氏は「緊急経済対策や雇用対策をしながら、新しい施策に取り組めた」と振り返り、大震災について「観光業などで大きな影響が出ている。新幹線時代を前に、東北抜きに函館振興は考えられない」と、復興対策を最優先する考えを示した。

 一方、工藤氏は「自分の考えているまちづくりが、今のままではできない」と、副市長を辞職して立候補に至った経緯を説明。「立て直しを考える時。明確な理念と将来ビジョンを持ち、魅力がはっきりとみえるまちづくりを進めることで、函館を大きく変えていきたい」と訴えた。

 施策の優先順位として、西尾氏は@大震災被害への対策と地域経済維持A市民力や若者の力を育てるB未来大への医学部設置—とし、医学部の設置に関しては「地域が変わる大きな意義を持つ事業」とした。工藤氏は@経済と財政の再建A福祉と教育の充実B美しいまちづくり—を挙げ、「経済の再生なくして函館復活はない。赤字穴埋めのための無駄な借金をなくすことが第一だ」と述べた。

 討論は観光振興、活性化、財政改革、教育・福祉、10〜20年先の将来ビジョンをテーマに両氏が政策を主張。新幹線の開業に対し、工藤氏は駅前・大門地区の再生に取り組むとし、西尾氏は青森とのさらなる連携の必要性を訴えた。

 また、約2700億円の借金を抱える市財政の改革をめぐっては、工藤氏が「赤字穴埋めのための借金を繰り返している」と批判したのに対し、西尾氏は市債残高を4年間で118億円削減したことを強調。工藤氏の「小泉改革以降財政は厳しく、もっと行革をやらなければならない。一般会計の借金は何も減っていない」との指摘に、西尾氏が「一般会計の人件費は280億円から220億円に削減したのは事実だ」などと反論するなど、双方の論議が過熱する場面もみられた。討論の最後には互いの健闘を誓い、両氏ががっちりと握手した。(千葉卓陽)


◎養殖コンブ間引き真っ盛り

 函館市沿岸で養殖コンブ漁の間引きがたけなわだ。品質を高めるため、漁師はコンブの成長を見極めながら、手作業で間引きに励んでいる。

 高級コンブ生産地として全国に知られる南茅部地区でも、作業は終盤に。東日本大震災の津波で養殖施設の一部に損傷があったが、漁協関係者が対応し、「深刻な被害は避けることができた」(地元漁師)。

 南茅部の養殖コンブ研究に力を注いだ元水産庁北海道区水産研究所長の長谷川由雄さんが、4日に91歳で逝去した。南かやべ漁協の鎌田光夫組合長ら関係者は「長谷川先生が築いてくれたこの養殖コンブ漁を古里の財産として守っていこう」と結束を誓った。

 養殖コンブ漁は4月ごろから水揚げが始まり、夏の天然コンブ漁まで続く。(田中陽介)