2011年4月18日 (月) 掲載

◎函館観光 避難者心安らぐ 北の星バスなど市内名所案内

 東日本大震災で被災し、函館市内に避難した住民の心の痛みを和らげてもらおうと、函館市西桔梗町のケーエス北の星観光バスとカネス杉澤事業所は17日、市内・近郊の観光名所を回る日帰りバス旅行に被災者を招待した。

 「震災を忘れることはできないまでも、心にゆとりをもってほしい」と企画。福島や宮城、岩手出身で、市内の公営住宅に身を寄せている15世帯38人が参加した。

 参加者は「がんばろう日本、ガンバレ東北」の旗を振るバスガイドに案内され、五稜郭公園や箱館奉行所、トラピスチヌ修道院、大沼、函館山などを散策。ホテル・旅館で2食が出たほか、各施設も入館無料などで協力した。

 このうち五稜郭公園では、奉行所やタワーを見学しながら「こりゃあ立派だ」と観光客気分を楽しんだ。福島県いわき市の伊藤さおりさん(40)は5歳、3歳の息子2人と参加し「函館の人々に親切にしてもらってうれしい。奉行所は立派な造りで驚きました」。岩手県大槌町出身の田中珠里さん(14)は「楽しみにしていた。函館には4年ほどいることになると思うので早く慣れたい」と話した。

 北の星バスのオーナーで、杉澤事業所社長の杉澤光雄さん(63)は「最初はみんな下を向いていたが、徐々に表情が和んできてほっとした」と話していた。同社が運営する北の星タクシーでは、今後1年間、1回の利用ごとに10円を義援金として、日本赤十字社に寄付する。(千葉卓陽)



◎函館市長選 現職と新人の一騎打ち 統一地方選告示

 統一地方選後半戦の函館市長選、函館、北斗両市議会議員選が17日、告示された。函館市役所では午前8時半から立候補受け付けが行われ、市長選には届け出順に、無所属現職で2選を目指す西尾正範氏(62)、無所属新人で前函館市副市長の工藤寿樹氏(61)が立候補した。函館市議選(定数30)にも予想された通り37人が出馬、北斗市議選(定数22)にも27人が顔をそろえた。各候補は早速、24日の投開票日に向け、7日間の舌戦に突入した。(13面に両市議選候補者一覧、15面に関連記事)

 函館市長選は前回に続き現職に前副市長が挑む構図で、市政の継続か刷新かが焦点となる。経済・雇用対策や財政再建、市民生活の安定、災害に強いまちづくりなど、掲げる争点や課題は多い。

 西尾氏は午前9時から、中島町32の選挙事務所前で出陣式を行った。初出馬時と同様に、政党の推薦や支持を求めずに2選に臨む。

 齊藤裕志後援会長は「市長には人を裏切らない、悪いことをしないといった資質が要る。今の函館には最も必要だ」とクリーンな市政の継続を訴えた。第一声で西尾氏は、東日本大震災被災者への支援策に重点的に取り組むとした上で「市民力を高めて市民自治のまちをつくり、未来への投資に力を合わせよう」と力説。教育や人材育成を重視する姿勢を示した。

 工藤氏は午前9時から、富岡町3の選挙事務所で出陣式に臨んだ。妹の磯谷誼子さん(58)にたすきをかけてもらい、だるまに目を入れて必勝を誓った。

 室田晴康後援会長は「政策をしっかりと訴え、子どもや孫の代まで素晴らしい函館が『工藤丸』に託されるよう頑張り抜こう」とげき。工藤氏は経済活性化や行財政改革を最優先課題に挙げ「函館の閉塞感は一過性のものではない。今までの延長線上のまちづくりでは変えられない」と述べ、西尾氏との政策の違いを強調して支持を求めた。

 一方、市議選の定数は函館で8、北斗で4削減され、合併に伴う地域別の選挙区もなくなって全市域での選挙戦となった。函館市議選には現職24人、元職4人、新人9人の計37人が顔をそろえ、北斗市議選には現職21人、元職2人、新人4人の計27人が立候補。市街地や住宅地で選挙カーの声がこだまし、両市は知事、道議選に続いて選挙ムード一色に包まれている。(統一地方選取材班)



◎函館市長選告示 有権者の声「人口減対策、経済の活性化を」

 統一地方選の後半戦が始まった17日、函館市長選には現職の西尾正範氏と前副市長で新人の工藤寿樹氏=届け出順=が立候補し、多くの市民が両候補の訴えを聞いた。多くの市民からは、先行きの見えない経済、雇用情勢や人口減による地域の衰退など市が抱える課題の解決を望む声が聞かれた。

 函館市の人口は旧4町村と合併した2004年12月には約30万人いたが、減少の一途をたどり、10年の国勢調査の速報で28万人を割った。人口減による地域の衰退は深刻さを増し、特に過疎化が進む旧4町村は切実な問題。椴法華地区の新八幡町、無職、瀧滋子さん(66)は「除雪など行政サービスが合併前に比べ年々落ちている。同じ自治体ならこちらにも必ず目を向けた施策を」と訴える。

 不動産会社経営、國本直弘さん(36)も人口減に危機感を抱く1人。「福祉の充実化や学校誘致に力を入れる人に投票したい」と語り、「福祉現場を充実させることによって雇用拡大や定住促進にもつながるのでは」と提起する。

 東日本大震災の影響を受けた観光産業の浮揚など新たな問題も加わり、新市長が背負う課題は山積みだが、悪化が進む市内の経済情勢の打開を望む声は根強い。

 本通の会社員、須藤道生さん(37)は「経済の悪さに歯止めをかける具体策を訴える人を選びたい」。柏木町の団体職員、福島孝子さん(36)も「市民の活動が停滞し、市の文化も衰退している悪循環がある。このままでは市民の中で格差が生じる。雇用、基幹産業の底力が上がるよう力を入れてほしい」と願う。

 両候補が市役所出身同士で、市長、前副市長の争いとあって「違いが見えない」と指摘する声も少なくない。若松町で生鮮食品販売業を営む國分晋吾さん(28)もその1人で「投票日ぎりぎりまで候補者の声を聞き、しっかり見極めて投票したい」と話す。美原の主婦、寺島真寿美さん(51)は「震災があって両候補の政策を見比べる余裕はなかった」とし「子供の健全育成に力を入れてくれるのかどうかで決めたい」、市内の生涯学習コーディネーターの武部祐子さん(54)は「市民活動を応援する人、地域活動に力を入れているかを判断して投票したい」と話した。


◎バル仲間の気仙沼・石巻2市を応援 元町で支援イベント

 東日本大震災の復興支援イベント「バルまち応援会〜気仙沼・石巻のバル仲間に向けて」が17日、函館市元町のカフェ・ペルラを主会場に開かれ、市民ら大勢の来場者でにぎわった。

 東日本大震災の影響で中止とした飲食イベント「第15回函館西部地区バル街」に代わるチャリティーイベントで、同バル街実行委員会(深谷宏治委員長)が、バル街を参考にして同様のイベントを行っている宮城県気仙沼市と石巻市の被災2市を応援しようと企画した。収益金や募金を2市のイベント関係者に寄付する。

 午後2時にスタートしたイベントは、函館西高吹奏楽局がオープニングのステージを飾り、その後も地元で活動するバンドや演奏家が応援ライブを展開。来場者は用意されたワンコイン(500円)ピンチョス(つまみ)や飲み物を味わいながら舞台上の演奏を楽しんだ。

 バル街で恒例となっている生ハムやワインなどの「ふるまいサービス」も行われたほか、被災地の福島県産と地元産の野菜などを販売するマルシェが開かれ、こちらも客足を誘っていた。

 会場以外の周辺の飲食店などが協賛店として特別メニューを用意したり、募金箱を置くなどして協力し、来場者は主会場以外の店への“はしご”も楽しんだ。

 市内見晴町から来場した中川尚子さん(38)は「自分自身も楽しんで復興の後押しにつながればと思い参加しました」と話していた。(鈴木 潤)