2011年4月22日 (金) 掲載

◎生きる価値伝えたい 佐藤さん講談社から出版

 IT事業や不動産業、経営コンサルティングなど幅広く事業を手掛けるオーバルライズジャパン(函館市西桔梗町)の佐藤文昭代表(30)が、小説「吃音(きつおん)センセイ―桜舞う校庭で」を講談社から出版した。21日に全国発売開始。佐藤さんは「本を通じて生きることの素晴らしさに気付いてもらえれば」と話している。

 同小説は吃音というハンディを抱えながら高校の国語教師になった実在の女性をモデルにしたストーリー。吃音に苦悩しながらも人との出会いをきっかけに成長していく姿を描く。

 その女性との出会いは4年ほど前。佐藤さんが講師を務めたネットマーケティングセミナーだった。女性は幼いころに発症した吃音で苦労した経験から、吃音改善プログラムの教材を広めたいとセミナーに参加。佐藤さんのプロデュースで教材を販売することになった。やり取りを進めるうちに、女性の歩んできた人生や苦労、乗り越えるきっかけとなった人々との出会いについて話を聞き、佐藤さんは書籍化を決意。「女性の半生を通じて人間の生きる価値とは何か考えさせられた。多くの人が価値ある人生を生きなくては、と思い悩む。しかし本当は、生き抜くことこそに価値があるのではと思うようになった。それを多くの人々に伝えたい。いまのままの自分でいいんだ、そう思って救われる読者が1人でもいればうれしい」と語る。

 現在はドラマ化に向け準備が進められており、また、今後も仕事で出会ったさまざまな人たちを文章化して紹介する予定という。佐藤さんは「本当にあった話だからこそ、説得力がある。素晴らしい人生を世の中に発信していきたい」と決意を新たにした。  (堀内法子)



◎投票率 前回下回る? 函館市長・市議選

 函館市長・市議選は24日に投開票を迎える。統一地方選前半戦の知事・道議選と同様、東日本大震災の影響で運動を自粛する陣営が大半を占める中、各陣営は投票率の行方を注視。市長選の投票率は2007年の前回(60.74%)を下回るとの予測がある。また、24日は雨が予想されており、天候を気にする陣営も多い。

 函館市長選の前回投票率は、前々回(03年)の56.76%を3.98ポイント上回った。平成に入ってからは99年(64.34%)に続く高さで、現職とその側近だった前助役との一騎打ちとなり、有権者の関心を呼んだ。

 しかし、直前の知事・道議選は震災の影響で低調な選挙戦に終始、道議選函館市区では過去最低の54.58%(前回比3.86ポイント減)にとどまった。市選管によると、16日現在の選挙人名簿登録者は23万7791人。仮に市長選も道議選並みの投票率とみた場合、総投票数は13万票弱。一騎打ちの勝敗ラインは6万5000票前後となる。

 市長選に立候補している無所属現職の西尾正範氏(62)陣営は、投票率を道議選と同じ程度の54〜55%台と予測している。陣営幹部は「前回と同じ図式で、盛り上がりを欠いている。有権者の関心が薄い中では基礎票をしっかりと固めていくことが必要」と気を引き締める。

 一方、無所属新人の工藤寿樹氏(61)陣営は「地元の市長選への関心は高く、知事・道議選に比べて2〜3ポイント増の57〜58%前後」とみる。「首長選は政党色が出にくい。一騎打ちでは相手の票を取った方が勝つ」と強気で、投票率の上昇で浮動票も取り込みたい考え。

 また、市議選は定数が38から30に減ったことでボーダーラインが上昇。前回の30位当選者は2984票で、当選するには最低でも3000票以上の獲得が必至な情勢だ。ある市議選陣営は「投票率は道議選並みかそれ以下。政策は有権者に届いていると思うが、反応が薄い」と話す。

 市民の反応もさまざまで、市内釜谷町の男性漁師(76)は「将来も大事だが、目先の漁も大変。少しでも浜に活気が戻るよう期待が持てる候補を選びたい」と真剣。一方、別の女性(86)は「正直、(市長は)どっちでもいいが、ちゃんと景気が良くなったと実感できるようにしてほしい」と切に願う。

 気がかりなのは空模様。気象庁によると、24日の渡島・桧山地方は雨のち曇りの予報で、降水確率は70%と予想している。 (統一地方選取材班)



◎消費者大設立に本腰 函館協会準備調査開始へ

 函館消費者協会(岩船寛会長)は本年度、消費者向け講座などを行う「函館消費者大学(仮称)」の設立に向けた準備調査を開始する。2012年度の開校に向け他都市の状況を調査し、形式や講座の内容など手法を検討。同時に同協会のホームページ(HP)を開設し、組織のNPO法人化についても検討する。

 21日に実施した同協会の本年度の総会で事業計画案を公表し、認められた。

 同事業は消費者教育推進事業の一環として、賢い消費者についての知識を継続的に習得する機会を設けようと検討する。これまで出前講座や出張相談などを行ってきたが、より多くの人に継続的にと考えた。

 同協会によると、同様の組織は全国的には15カ所ほどあるが、道内には未設置。開講場所など具体的なことは未定だが、年間10回程度のカリキュラムを組み、消費者としての知識や技能を身につけることを目的とする。岩船会長は「協会のすそ野を広げる事業」として期待する。

 HPの開設は昨年度の計画で予定していたが未実施。消費者大学のPRなども効果的に行えるよう、情報発信の媒体として早期の実現を目指す。NPO法人化は、社会的な信用など地位確立の視点で推進したい考え。

 総会では、昨年度の事業や決算、本年度の事業計画、予算などを承認。改選時期に当たった役員は、会長や副会長をはじめ理事ら全員を再任した。     (小泉まや)


◎啄木の故郷・岩手を応援 来月復興チャリティー

 函館ゆかりの歌人、石川啄木の故郷である岩手県の復興応援チャリティーナイト「3・11 災害をこえて希望へ〜2011〜」が5月18日、函館市芸術ホール(五稜郭町37)で開かれる。東日本大震災を受けて、七飯町在住の作家、新井満さん(64)が関係者に呼び掛けて実現。座談会や音楽会、高校生による書道パフォーマンスなど多彩な催しを行う。

 新潟出身の新井さんは1964年に新潟地震に遭い、津波や火災に見舞われた。「恐怖心でトラウマになり、大学も1年間休学した」(新井さん)。そんな状況を救ったのが、中学時代から座右の書としていた「一握の砂」など啄木の歌集だ。今回は、まず岩手との絆を深めようと、函館市文学館の森武館長に呼び掛け、市文化・スポーツ振興財団の主催で開く。

 第1部は、新井さんが新潟地震の体験を語る講演や詩の朗読などで、第2部は石川啄木記念館(盛岡市)学芸員の山本玲子さん、啄木研究家の桜井健治さんを交えた座談会。「高校生の書道パフォーマンス」との第3部では、函館西、市函高など3校の生徒が被災者を元気付けるメッセージを大きな書にしたためる。第4部は、NPO法人市民創作「函館野外劇の会」会員による西洋の国旗のフラッグダンス、さらに新井さん作曲の「星のまちHAKODATE」の合唱も予定している。

 新井さんは「啄木の歌集に出会わなければ作家にもならなかったし七飯にも来なかった。啄木と岩手は深い縁がある。市民とともに岩手を応援したい」と語り、森館長も「啄木の遺品も遺骨もある函館で、こうした機会を大切にしていきたい」と話している。

 当日は午後6時から約2時間半。入場無料で、会場には義援金の募金箱も設ける。参加希望者は直接会場へ。問い合わせは市文学館TEL0138-22-9014。(長内 健)