2011年4月28日 (木) 掲載

◎工藤市長が就任会見、経済優先「函館に変化を」

 24日投開票の函館市長選で当選した工藤寿樹市長が27日、市役所に初登庁した。就任後初の記者会見で工藤市長は「(6月の定例市議会で)函館が変わっていく方向性が見えるような取っ掛かりの補正予算を組みたい」と述べ、経済対策に最優先に取り組む意向を示した。また、「聖域なき大行革をやらなければ財源が出ず、赤字も埋められない」とし、既存事業の見直しや人件費の削減にも着手する方針を示した。

 政策の優先順位として、工藤氏は「経済第一」を強調。「今のうちに景気が上向いた時に伸びていける基礎体力をつけていくことが必要」とし、地場の中小・零細企業の首都圏や海外への販路拡大、天下りの廃止による若者の雇用創出のほか、「商店街支援交付金制度」を創設し、4年後の北海道新幹線開業までに大門再生に取り組む考えを示した。

 行財政改革については、前市長が導入した校長の「知恵の予算」や、国・各種団体への職員派遣を廃止。組織機構や人事ポストを整理して役所のスリム化を図る考え。焦点の一つだった職員の給与削減は「本年度の退職手当債や行革推進債など赤字債26億円を何としても生じさせない工夫が必要。そのためには職員給与にも手をつけざるを得ない」とした。

 前市長が推進した公立はこだて未来大への医学部設置構想については「未来大に特定してやるのは無理。基本的には見直す」と言明。道新幹線札幌延伸時の新函館(仮称)—函館間の並行在来線問題は「事業主体は別にして鉄路は残すべき」とのスタンスだ。江差線の五稜郭—木古内間の経営分離問題は「北斗市の決意次第」として一定の協力姿勢も見せた。

 このほか、延期されていた韓国・高陽市との姉妹都市提携については「経済交流も生まれるため賛成。きちんと進めたい」と前向き。建設が一時中断している青森県の大間原発については「無条件で無期限凍結すべき。国の動向を見てからだが、もし建設再開となれば中央にはっきり申し上げなければならない」と述べた。(森健太郎)



◎特別職5人、辞職の意向

 函館市の谷沢広副市長(62)、小柏忠久副市長(63)ら特別職5人が27日、今月末で辞職する意向を工藤寿樹市長に伝えた。工藤市長はまだ対応を決めていないが、副市長2氏は慰留しない方向とみられている。

 辞職の意向を示したのは両副市長のほか、中林重雄企業局長(62)、近江茂樹常勤監査委員(62)、市教委の多賀谷智教育長(63)。多賀谷氏以外は辞職願を提出している。

 任期は小柏氏が13年12月末、谷沢氏が今年7月3日。中林氏は15年3月末、近江氏は12年3月末、多賀谷氏は13年10月14日。

 工藤市長は取材に対し「28日中に対応を決めたい」と話しているが、西尾正範前市長の市政運営を支えた両副市長の辞意は固く、27日午前にあった同市長の就任あいさつには姿を見せなかった。(千葉卓陽)



◎3月の道南、有効求人倍率0.47倍、震災で解雇も

 函館公共職業安定所が発表した3月の渡島・桧山管内の雇用失業情勢によると、有効求人倍率は0・47倍と前年同月より0・11ポイント高く、10カ月連続で前年を上回った。また東日本大震災の影響で3、4月(26日まで)に従業員を5人以上解雇した管内の企業は4社に上った。新規求人にも被災者対応があるなど、随所に震災の影響が表れている。

 有効求人数は前年同月比25・5%増の5435人。有効求職者は同4・8%減の1万1482人と、12カ月連続で前年同月を下回った。管内の情勢について同職安は「持ち直しの動きが続いているものの、厳しさが残る」と7カ月連続で基調判断を据え置いた。

 震災による従業員解雇(5人以上)は、3月は貸し切りバス事業者で5人、飲食業で8人、4月はバス会社で9人、水産加工会社で14人の計36人。解雇の理由は、バス事業者と飲食業は観光客の減少、水産加工会社は原材料調達困難だった。4人以下を含めると相当数の雇用調整が行われているとみられる。

 雇用の先行指標となる新規求人倍率は同0・19ポイント上昇し0・79倍と、11カ月連続で前年同月を上回った。新規求職者は3288人で同4・0%減少し、2カ月ぶりに前年同月を下回った。

 新規求人数は同25・3%増の2597人と11カ月連続で前年同月を超えた。持ち帰り配達飲食サービス業や卸・小売行、建設業などで、被災者対応求人や災害復旧求人などが多くあり、全体を押し上げた。一方で宿泊業などは雇用調整の影響か減少している。

 合わせて発表された3月末高校卒業者の3月末現在の求人倍率は、同0・27ポイント高い1・52倍。就職率は87・6%と同9・1ポイント上回った。(小泉まや)


◎「鹿部食とうまいもの館」あすオープン

 【鹿部】町内の水産加工品などの特産品を販売する「鹿部食とうまいもの館」が29日、しかべ間歇泉公園(町鹿部18)駐車場にオープンする。町内の12業者・団体が参加し、タラコやめんたいこ、コンブなどの加工品や水産物を直売価格で販売。鹿部自慢の味を内外にPRする。

 町が国の緊急雇用創出推進事業の一環として予算を計上し、運営は鹿部商工会に委託した。店舗はプレハブで、来年3月まで営業する。町は、今後の売り上げや利用する観光客らのニーズを調査し、常設の施設化が可能かどうかを含めて検討することにしている。町水産経済課は「観光情報を発信する機能を合わせるなど、施設の運営状況から判断していきたい」とする。

 オープン記念として、2000円以上の買い物で、タラコや珍味などが当たるスピードくじを実施。29、30両日は、イベントなどで好評を得ているパンにスケトウダラのフライを挟み、めんたいこをトッピングした特製の「すけそサンド」を数量限定で販売する。

 営業時間は午前8時から午後5時まで。年末年始を除き、年中無休。問い合わせは商工会TEL01372・7・3344。(今井正一)


◎北斗市出身・佐々木明さん、被災地で物資支援活動

 【北斗】北斗市出身のアルペンスキーヤー佐々木明さん(29)が27日、市役所を訪問した。佐々木さんは3月末と今月、宮城県南三陸町など東日本大震災の被災地を回り、支援物資を届ける活動を行い、現地の様子を高谷寿峰市長に伝えた。「大きなことをできるわけではないが、できることはたくさんある。継続して長期間の支援が必要」と話し、現在、進行中の支援活動への理解を求めた。

 佐々木さんは滞在先のオーストリアのニュースで今回の震災発生を知ったといい、帰国後、スキー関係者の協力でスキーウエアなどの支援物資を被災地に届ける活動を行った。その後、アルペンスキーヤーの池田和子さん、岡部哲也さんらと「Skiers Helping Japan(スキーヤーズ・ヘルピン・ジャパン)」を立ち上げた。世界中のスキーヤーの協力、賛同が広がっているといい、5月14日に仙台市内で復興イベントを企画している。

 今回は24日に帰省し、新函館農協で被災地での炊き出し用の食材提供の協力を求めるなど、市内でも精力的に支援の輪を広げている。被災地での炊き出しは6月に実施する予定で、「観光大使として、北斗のおいしい食べ物を提供し、笑顔にしたい。気持ちのある仲間と一緒にやっていきたい」とした。

 高谷市長との懇談では、がれきに埋もれた街の様子や避難所の規模による格差など、継続的な支援が必要であることを伝えた。佐々木さんは「『何もできなくて申し訳ない』と思っている人たちもいると思うが、被災地に行けない人たちの気持ちも持ちながら活動している」と話した。

 また、市内の小中学校で、今回の活動経験を子どもたちに伝えたいとし、さまざまな形で情報発信を続けていく意向を示した。(今井正一)