2011年4月30日 (土) 掲載

◎サクラの花 心に安らぎ 松前祭り開幕

 【松前】「第64回松前さくらまつり」(実行委主催)が29日、開会式とオープンニングセレモニーを行い、開幕した。観光客らは前日に開花が宣言されたソメイヨシノに見入り、春の松前を満喫していた。祭りは15日まで。

 松前神社での開会式には関係者約100人が参加。玉ぐしをささげ、祭り期間中の無事故を祈願。テープカットと鏡開きをして祭りの開幕を祝った。

 町観光協会の疋田清美会長は「募金や物産販売で東日本大震災の被災地を応援していく。松前でひとときの安らぎを感じてほしい」とあいさつ。前田一男町長も「全国の人が悲しみに包まれているが、サクラの花で心に潤いと癒やしを与えたい」と話した。

 また、甲冑(かっちゅう)を身に付けた武者軍団が公園内をパレード。同神社前で大将が開会宣言を読み上げ、来場者に振る舞いもちが配られた。 札幌市からツアーで訪れた工藤慧二さん(65)と妻のみちえさん(63)は「サクラと歴史のある町の雰囲気が見事だった」と笑顔で話していた。ソメイヨシノの見ごろは1日から8日ごろまで。遅咲きのサクラは5月下旬ごろまで楽しめる。  (松宮一郎)



◎GW初日 行楽地に笑顔咲く

 ゴールデンウイーク(GW)初日の29日、函館市内の行楽地は観光客や市民らでにぎわった。東日本大震災の影響で自粛ムードが漂う中、五稜郭公園は客足が好調で、早くもサクラの木の下で花見を楽しむグループも。JR函館駅や函館空港では、期間中を古里で過ごす帰省者らが、親せきや家族との久々の再会を喜ぶ光景が見られた。

 この日は終日どんよりとした天候となったが、気温は高めで、4月中旬並みの暖かさに。サクラのつぼみが膨らみ始めた五稜郭公園では、道内を中心に観光客の姿が戻った。周辺の観光駐車場は満車となり、五稜郭タワーや箱館奉行所、園内のボートなどがにぎわうなど、例年と同様の連休風景となった。旭川から2泊3日の予定で恋人と訪れた男性公務員(25)は「震災はあったけれど10年ぶりの函館を堪能したい。海産物をたくさん食べます」と話した。

 サクラのスポットでも多くの来場者がジンギスカンを囲み、ビールなどで「乾杯」する声を響かせた。北大水産学部交響楽団のメンバーで、仲間と訪れた丸山奏子さん(20)は「桜は咲いてなかったけどワイワイと楽しんでいる」と笑顔だった。

 五稜郭タワーは昨年の初日より25%多い約3500人が来場。「これまでは大震災の影響を受けていたが、この連休をきっかけに好転すれば」と期待を込める。

 金森赤レンガ倉庫群などがある西部地区のベイエリアでは、家族連れなどが記念写真を撮るなどの光景が見られ、栃木県から夫婦で旅行にやってきた吉田武人さん(56)と幸枝さん(53)は「思い切って来てよかった。天気も良くて最高」と満喫。また、函館山ロープウエイの利用者は、昨年の連休初日の約2倍に当たる6155人に上った。「昨年より連休が取りやすくなったせいもあるのでは」としている。

 この日は震災の影響で一部不通となっていた東北新幹線が全線復旧し、JR函館駅では本州方面からの乗客が目立った。東京から新幹線を利用し道内観光に訪れた神奈川県川崎市の会社員相川真一さん(26)は「首都圏は節電で暗く、気持ちも参っていたので、函館では夜景の輝きを楽しみたい」と話した。

 函館空港の到着ロビーでは東京や関西方面からの便でにぎわい、函館市内の友人を訪れた千葉県市川市の間瀬充規さん(38)は「函館は初めて。友人に市内の観光地を案内してもらう予定です」と笑顔を見せていた。 (鈴木潤、小杉貴洋、山崎純一、小泉まや)



◎函館の魅力 観光客に 案内所開設

 函館観光を楽しんで―。春の大型連休に合わせ、函館市内の五稜郭公園内に29日、「函館市移動観光案内所」が設けられた。一方、湯の川電停前には「市電沿線見どころ案内所」も開設。初日から目当ての名所までのマップや乗車券を求める大勢の観光客でにぎわった。

 五稜郭の移動観光案内所は、1997年から毎年5月と8月に設置。今年は設置期間を5月8日までの10日間に倍増し、市職員や観光ボランティア団体のガイドのほか、市主催の「まちあるきガイドセミナー」を修了した市民もボランティアで初参加した。

 案内所は公園南西側の一の橋付近にあり、この日は1100人以上が訪れた。5人の常駐スタッフが観光パンフレットや地図を配り、観光客からの「西部地区にはどう行けばいいのか」「塩ラーメンがおいしい店は」などの質問に手際良く応対していた。

 一方、湯の川電停前では、市企業局交通部がのぼりを立て、移動式のワゴンを設置。非番の職員が街頭で「おはようございます」「3回乗るなら一日乗車券がお得です」などと笑顔で声を掛け、市電の乗車券を販売したり、沿線の観光名所を案内したりした。

 山本真也同交通部長は「昨年より観光客の流れは少ないが、せっかく函館に来ていただいた大切なお客さま。市内観光に便利な市電をを使ってもらい、楽しい旅の思い出をつくってほしい」と話していた。同案内所は5日まで、午前9時〜同10時まで設置される。(森健太郎)


◎巨大マグロのぼり 被災地にエール

 東日本大震災の被災者を励ますメッセージが書かれた「巨大マグロのぼり」が29日、函館市内の五稜郭タワーアトリウム(五稜郭町43)でお披露目された。ねぶた絵ののぼりとともに同タワーで揺らめきながら、東北に向けてエールを送った。

 津軽海峡を挟んだ青函の人々で被災者を元気付けようと、青森県大間町のまちおこしグループ「あおぞら組」(島康子組長)が企画。のぼりは2つとも長さ10bで、メッセージ入りののぼりにはこれまで大間町、外ケ浜町、松前町、函館市旧戸井町の児童、漁師ら約450人が寄せ書きをしてきた。

 この日、島組長らは青森市の物産館でのお披露目を終えてから来函。セレモニーで島組長は「大勢の人の尽力で事業を達成することができた。被災地は津軽海峡圏と同じ海のまち。青函両地域から元気と希望を東北、世界に発信していければ」と感慨深げにあいさつ。来賓の工藤寿樹函館市長、前田一男松前町長、金澤満春大間町長も復興を願ってあいさつした。

 メッセージ入りののぼりに加え、青森のねぶた絵師、竹浪比呂央さんが絵付けした勇壮なのぼりがねぶた囃子(ばやし)に乗せて披露されると、100人以上が来場した会場から盛んな拍手が送られた。この後、同タワーで春の空を元気に泳ぎながら、花見客らを喜ばせていた。

 札幌から家族で観光に来ていた佐藤史康さん(48)は「皆さんの願いが東北まで届くといいですね」と笑顔で話した。

 30日から5月5日まで、メッセージ入りののぼりはアトリウム天井に展示、ねぶた絵ののぼりはタワーに掲げる。(長内 健)


◎SL大沼号 今年も出発

 タンク蒸気機関車C11形がレトロな客車をけん引する「SL函館大沼号」が29日、今季の運行を開始した。今年で10周年の節目を迎えたことから、JR函館駅(鈴木克彦駅長)が記念のセレモニーを開き、列車の出発を祝った。

 同列車は2001年、道南の活性化を願う地元の要請を受けるなどし、JR北海道が運行を開始。セレモニーで鈴木駅長は「SLは戦後復興の立役者でもあり、函館大沼号の走行が東日本大震災の被災者の皆さまを元気づけることにつながってほしい」とあいさつ。10年前、初代機関士を務めた嶋田泰雄さん(67)は「皆さんの力でまだまだ走らせてほしい」と話した。

 このほか函館共愛会中央保育園の園児が元気良く「汽車ぽっぽ」を合唱。くす玉割りを行った後、SLが高らかに汽笛を鳴らし出発した。4両編成の客車はほぼ満席となり、乗客は大沼など道南の車窓風景を楽しんだほか、記念の弁当やグッズを買い求めていた。

 3年ぶりに乗車したという秋田県横手市の自営業広幡敬二さん(36)は「函館も津波の被害を受けたと聞いているので、SLが道南の皆さんを元気づけてほしい」、両親と一緒に乗った函館市本町の黒田玲緒奈ちゃん(5)は「発車する時の音が大きく驚いたけど、楽しい」と喜んでいた。

 運転は5月8日までの毎日、函館〜森間を1日1往復する。全席指定。 (山崎純一)