2011年4月1日(金) 掲載

◎函館朝市に「いかのぼり」 市場のシンボルと東北の応援に

 函館朝市に「いかのぼり」がスイスイ―。函館駅二商業協同組合(藤田公人理事長)はこのほど、函館市若松町内の駅二市場屋上にいかのぼりを設置した。海風に乗って空中を“泳ぐ”3匹のイカが道行く観光客や市民の目を引いている。

 同市場では、活イカ釣り体験やイカモニュメントを設置するなどイカにちなんだ取り組みを実施している。今年が現市場の建設30周年の節目に当たり、同組合が市場のシンボルにしようといかのぼりの設置を計画。3月10日にのぼりを注文した。

 翌日の11日、東北地方を中心に甚大な被害に見舞われた東日本大震災が発生し、函館朝市も津波の被害を受けた。当初、大型連休に合わせて披露するつもりでいたが、被災地復興の応援を込め、前倒しして揚げた。

 のぼりは3本あり、大、中、小それぞれ5b、4b、3bの長さ。黄色を基調としたイカで、足の部分は吹き流しとなっている。

 近日中には復興支援の一環としてミニいかのぼりのチャリティー販売を行う予定。藤田理事長は「市場のシンボルとしてこれからも掲げていくが、今年は東北の応援と朝市の元気なところを発信していきたい。雪が降る季節まで揚げます」と話している。(鈴木 潤)



◎コンビニ納付 初年度利用18万件 函館市「一定の効果」

 函館市が2010年度から開始した、市税などのコンビニエンスストア納付サービスの利用状況がまとまった。初年度は市税、国民健康保険料、保育料を合わせて延べ18万242件が利用、各種市税の納期限に合わせて利用された実態もうかがえる。市税収入におけるコンビニ納付の割合が判明するのは5月末の出納閉鎖を待ってからとなるが、市財務部は「一定の成果はあった」と話している。

 納付率と市民の利便性向上を目的に開始。コンビニで納付できるのは市・道民税、固定資産税・都市計画税、軽自動車税と国保料、保育料の計6種類。

 同部税務室によると、3種類の税金は11万4202件の利用があった。内訳は市・道民税が5万6352件、固定資産税で4万5331件、軽自動車税1万2519件。

 市・道民税は6、8、10、1月と年4回の納期限がある中で、6月の利用が唯一1万件を超えており、同室は「1年分を一気に納める人が多かったのでは」と分析する。

 このほかの税でも同様の傾向がみられ、4、7、9、12月が納期の固定資産税は4月の納付が1万件以上で最多。軽自動車税は納期の5月に7713件と集中し、6月も2700件と多かった。また、納期が年10回の国保料は6月以降、5000〜7000件がコンビニから納められ、12月が最多だった。改行 金融機関が休日となる土・日曜日の利用も一定量あり、計15社、23チェーンで納められることから、本州方面からの納付も多かったという。

 同室は「納める側にとっては便利になったはず。今後はクレジットカードによる納付も検討課題に上がる」と話している。(千葉卓陽)



◎企画「試練の春―大震災・函館観光のいま@」被災施設 新たな取り組み 朝市に活気

 午前8時45分、人気のない西部地区に大声が響く。「いらっしゃいませ!」「今日のおすすめは活ヤリイカ!!」―。東日本大震災で津波の直接被害を受けた同地区。土産店などを展開するマルカツ興産(函館市豊川町)は、店内に海水が入り込むなどして約1億円の被害があった。

 営業再開にこぎつけたものの、福島第一原発事故の動向や自粛ムードで観光客は戻らない。しかし「このような時だからこそ逆に、来てくれた観光客を大切にしよう」との思いで、本社前での朝礼を始めた。

 営業開始前に社員がずらりと並んで気合を入れる。先導役の掛け声に続き、30人が力の限り発声するさまは壮観だ。同社の佐々聖さんは「来てくれた人に沈んだ姿を見せられない。『函館は元気です』とアピールしたい」。

 閑古鳥の鳴く観光地を前に雇用調整という選択肢もあったが、24人の新入社員は予定通り雇用した。グループのホテルでは、売り上げの一部を義援金とする「マグロナイト」を企画。連休中の売り上げは例年比2〜3割減を見込むが、財務経理部長の吉見征美さんは「いつも通りに店を開け、丁寧な接客で少しでも上げたい」と前向きだ。

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 JR函館駅に隣接する函館朝市では、約270あるほとんどの店が津波被害を受けた。いまだ営業を再開できない店舗もあるが「観光客は必ず戻る」(函館朝市協同組合連合会の井上敏廣理事長)と信じて、まだ廃業店はない。

 しかし前年の同時期に4割ほどを占めていた外国人観光客の姿は皆無。売り上げは良くて前年の3割にとどまる現状で、立ちあがりまでが長引けば「運転資金が底をつくのは目に見えている」(同)とため息も。

 状況を打開しようと函館バス(函館市高盛町)は町会に働きかけ、市民の貸し切りバスを朝市に乗りつける取り組みを始めた。4月下旬に初便を迎えた朝市関係者は「久しぶりに客が戻ってきた」と活気に勇気付けられた。

 1000万円近い被害を受けた朝市内の「鮨処はこだて」。新装開店した店内で石井正人代表は、津波の水位を記録した壁紙の境目を示した。「あえて跡を残しました。お客さんに伝えたい」とたくましさをのぞかせた。

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 東日本大震災は、函館をはじめとする道南圏にも大きな被害を与えた。基幹産業である観光は、震災の直接的被害に加え、自粛ムードなどの間接的な影響により停滞している。観光本番を告げるゴールデンウイークに向けて、函館で観光にかかわる人々がどう感じ、動いたかを追った。(小泉まや)


◎全国大会出場予定だった旭岡中リコーダー部がコンサート

 旭岡中学校(西旭岡町3)のリコーダー部が30日、同校体育館でスプリングコンサートを行った。保護者や近隣の住民など約80人が訪れ、生徒らが奏でる音色を楽しんだ。

 同部は、昨年度の全日本リコーダーコンテストの全国大会出場が決まり、3月開催の同大会に向けて練習を積み重ねていた。しかし、東日本大震災の影響で大会が中止になり、発表の場が失われたことから、改めて練習の成果を披露しようと同コンサートを企画した。

 生徒らは、きらびやかな高音が出るソプラニーノから、深みのある低音で合奏を支えるコントラバスまで、7種類のリコーダーを使い分けて演奏。厚みのある音色を館内に響かせた。

 この日は2、3年生の合奏やアンサンブルのほか、函館市在住のリコーダー奏者宍戸良子さんによるゲストステージも。宍戸さんは技巧的なパッセージで鳥がさえずる様子を表現し、観客を魅了した。

 ラストは昨年度全国大会で演奏する予定だったアルベニス作曲の「セビーリャ」。スペイン音楽の持ち味である情熱と哀愁の二面性を巧みに表現し、観客から大きな拍手が寄せられた。

 演奏を終え、3年生の寺崎春香部長は「今日の演奏は、音楽を通じてみんなと気持ちがひとつになったように感じた。うれしさでいっぱい」と笑顔を浮かべた。(堀内法子)