2011年5月11日 (水) 掲載

◎ツアー再開へ震災後初 北京から視察団

 東日本大震災の影響で激減した中国からの観光客を呼び戻そうと、北京の大手旅行会社の担当者が10日、函館入りし、函館市内の観光名所を視察した。一行は13日まで4泊5日の日程で道南を中心に巡り、観光地としての安全性を確認。早ければ6月以降のツアー企画に盛り込みたい考え。

 中国から道内への観光視察団の訪問は震災発生後初めて。2月に北京で行った函館の官民の観光トップセールスがきっかけで、北京を拠点に日本向けツアーを扱う北京国際旅行社や中国青年旅行社などから10人が参加し、全日空や函館市が協力した。

 もともと中国本土での北海道人気は根強いが、震災や原発事故の発生で状況は一変。今回は津波被害から復興した函館の観光スポットを見学してもらい、中国からの道内向けツアーの再開につなげる狙いだ。一行はこの日、市内の五稜郭公園やトラピスチヌ修道院などを回り、函館のホテル・観光施設の関係者と商談も行った。

 北京国際旅行社のル・ジエンさんは「本土では地震よりも原発被害が心配。この目で確認できた安全性を中国でPRしたい」とし、6月にも函館を組み込んだツアーを企画する考えを示した。中国青年旅行社のチャン・ディさんは「函館は夜景、温泉、食べ物と中国人が旅先で求めるものがそろっている。知名度は低いが、日本のようで日本ではない雰囲気が今後好まれていくはず」と話した。

 一行は11日に朝市や西部地区を巡り、大沼で宿泊。12日に札幌に移動し、13日に新千歳から成田経由で帰国する。(森健太郎)



◎国の支援拡充で赤字圧縮…江差線 五稜郭—木古内間 3セク鉄道運行

 北海道新幹線開業に伴い、JR北海道から経営分離される江差線の五稜郭—木古内間(37・8キロ)の事業形態を検討する、道南地域並行在来線対策協議会が10日、渡島総合振興局で開かれた。事務局の道は、国が昨年末に貨物調整金制度の拡充を決めたことを踏まえ、全区間を第3セクター鉄道で運行した場合、赤字額が単年度で1億7000〜1億5000万円、30年間の累積額が当初の105億円から69億5000万円へと、大幅に圧縮されるとの見通しを示した。道は今秋をめどに、方策を絞り込んだ案を示す考えで、本年度末の方向性決定を目指す。

 協議会には道の高井修副知事、寺山朗渡島総合振興局長、函館市の工藤寿樹市長、北斗市の高谷寿峰市長と木古内町の大森伊佐緒町長が出席した。

 五稜郭—木古内間の扱いをめぐっては、上磯駅を境として利用状況が異なるとし、同協議会は昨年、選択肢を@全区間3セク鉄道で運行A五稜郭—上磯間は3セク会社が運行し、上磯—木古内間は減便して減った分をバス会社が運行BAと同じ形態で、減便分を3セク会社が運行C五稜郭—上磯間は鉄道とし、上磯−木古内間はバス転換D全区間バス転換—の5案に絞った。

 昨年の段階では全区間鉄道運行とした場合、30年間の累積赤字額を105億3000万円と試算したが、国の制度が拡充され、かつ30年間継続すると仮定して同69億5000万円と算出。鉄道・バスの併用方式では、新規のバス車両購入などを考慮し、同76〜73億円とみている。全区間バス転換時の同15億9000万円は昨年と変わらない。

 道は、今後のスケジュールについて国の動向や先行地域の取り組みを見ながら選択肢をさらに絞り込み、今秋をめどに事務局案を示すとした。

 協議会では、鉄路維持の姿勢を示す高谷市長が「大きな前進」と評価した上で、「単年度で1億5000万円の赤字なら、十分負担に耐えられる」と述べた。また貨物調整金について「予算は通ったが、法案成立のめどは立っていない。協議会の決定を延ばしても大丈夫か検討してほしい」と求めた。

 大森町長も「住民との協議が必要で、早い時期にスタンスを示してほしい」と要望したが、高井副知事は「できるだけ経費のかからない方法を選ぶべきではないか。赤字が出るものへの行政負担は相当の道民の理解が必要」と述べるにとどまった。

 また、工藤市長は地域の交通体系全般を考えた中で江差線のあり方を考えるべきとした上で「北斗の姿勢が重要。一定の制約はあるが協力したい」と述べたほか、「人口や利用客の減少を考えると、赤字か黒字かだけでは整理できない」と話した。

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 貨物調整金 JR貨物が並行在来線の運営会社に支払う線路使用料に上乗せする金額のこと。並行在来線や貨物鉄道の維持・存続を図るため、国が昨年末に制度の拡充を決定。鉄道・運輸機構の利益余剰金を活用し、国が本年度から10年間で総額1000億円を負担するが、詳細の内容はまだ決定していない。(千葉卓陽)



◎南相馬から移住の加藤さん 函館で塾開業

 福島県南相馬市から函館市に移住した加藤健さん(34)が近く、同市赤川町1に小中学生を対象にした学習塾「RANKUP(ランクアップ)」を開業する。新たな船出を控え、心機一転頑張りたいと意気込んでいる。

 加藤さんは南相馬市で学習塾を経営していた。震災によって家族にけが人は出ず、家の倒壊も免れたが、福島第一原発事故の放射能漏れが幼い子どもたちに与える影響を懸念。住み慣れた故郷を後に、妻の実家がある函館市へ向かった。

 現在は市内の道営住宅で家族4人と母信子さん、弟高樹さんと生活する。加藤さんは移住翌日からテナント探しを開始。「自分には働き手としての責任がある。落ち込んでいる時間はない」と開業に向けて走り続けた。

 塾は進学塾ではなく、勉強の遅れている子どもらを対象に、復習を重視して学ぶ楽しさを教える。また、経営が軌道に乗り次第、地元の大学生講師を雇う予定だ。加藤さんは「学生の多くが自分の能力を知りたいと思っている。社会に出る前に世の中を知るのは大切なこと」とし「職業体験の場を与え、社会人経験を積ませることで、函館に恩返しができたらうれしい」と決意を込める。

 5月の連休も休まず設営に臨んだ。作業は急ピッチで進められ、日に日に増えるテキスト類や、弟高樹さんが手づくりした机が並ぶ教室にやる気がみなぎる。「今春小学校に上がる娘のランドセルを持ってこられなかったが、それを知った函館市がランドセルを提供してくれた。娘はそれを背負い、元気に学校に通う。この姿がなにより励み。たくさんの応援に感謝を忘れず、この地で頑張りたい」—。

 震災で多くを失った。しかし、加藤さんはまっすぐと前を向き、新たな人生を歩み始めている。問い合わせはTEL0138・83・2405。(堀内法子)


◎議長に坂田氏再選、副議長は前田氏…七飯町議会

 【七飯】改選後初となる第2回町議会臨時会が10日、開かれ、正副議長選挙が行われた。欠席議員1人を除く17人による投票の結果、議長に坂田邦彦氏(67)、副議長に前田宗勝氏(72)を選出した。

 坂田氏は1943年生まれ、95年に町議初当選し、現在5期目。2007年から議長を務め、再選された。坂田氏は「議会と町民の距離感があり、今回の低い投票率にもつながっている。議員定数の問題や若者が立候補しやすい環境など、4年間の中で議論を進めていく」と議会改革に意欲を見せた。副議長の前田氏は38年生まれ。91年に町議初当選し、6期目。前田氏は「町民の負託に精いっぱい応えていく」と述べた。

 このほか、歳入歳出に1731万円を追加し、総額94億1805万円とする本年度の一般会計補正予算案など議案2件を原案通り可決。東日本大震災の見舞金として1000万円を拠出した一般会計補正予算の専決処分など3件を承認し、閉会した。

 各常任委員会、議会運営委員会の正副委員長は次の通り(敬称略、◎は委員長、○は副委員長)

 ▽総務財政常任委員会=◎平松俊一○坂本繁▽民生文教常任委員会=◎牧野喜代志○神崎和枝▽経済産業常任委員会=◎長谷川生人○上野武彦▽議会運営委員会=◎木下敏○平松俊一(今井正一)