2011年5月13日 (金) 掲載

◎市内5漁協が岩手・久慈市に漁船を無償提供

 函館市内5漁協(函館市、銭亀沢、戸井、えさん、南かやべ)が、東日本大震災で被災した岩手県久慈市漁協(皀=さいかち=健一郎組合長、組合員1040人)に小型漁船(磯舟)225隻を無償提供することになった。函館市が使っていない漁船の提供を各組合を通じて呼び掛けたところ、目標(100隻)の2倍以上に達した。6月上旬に現地へ海上輸送する。

 市が被災地支援で漁船提供を呼び掛けたのは初めて。久慈市漁協では、津波によりウニやワカメ漁に使う磯舟を含め漁船のほとんどが流出。磯舟の新造船を100隻程度発注したが、あと300隻が足りないという。

 函館市には1934年(昭和9年)の函館大火の際、久慈市から義援金などの支援を受けた記録が残っていて、今回の大震災発生後の3月末には函館から久慈へ支援物資を届けた。その際、久慈市側から「漁船が流出し、漁師が仕事ができなくなった」との相談があった。4月中旬には皀組合長ら5人が函館を訪れ、久慈で使える船のイメージ合わせをした。漁業者の減少などで呼び掛けから10日間ほどで225隻の磯舟が集まることに。1トン前後の磯舟を新品で購入すると、本体だけで約100万円する。

 船は今後、志海苔漁港(銭亀分港)、戸井釜谷漁港、椴法華港に集約、函館の作業船で輸送する。船の積み込みから輸送、下ろす作業まで約4日かかる見通し。市水産課は「できることは喜んで協力したい。何とか支援をしたいという漁業者の思いをうまく届けたい」としている。改行 久慈市漁協の嵯峨松男参事は「6月からウニ漁が始まるが、船がなくて困っていた。協力してもらった函館市、漁協に大変感謝している。命の次に大切な船が確保でき、漁業者も安心していると思う」と話している。(山崎大和)



◎「スイーツフェスタ」今年は10月28〜30日に開催

 函館市内を中心に道南のスイーツを一堂に集めた「はこだてスイーツフェスタ」の本年度第1回実行委員会が12日、はこだてティーエムオー(若松町)で開かれた。昨年に続き2回目の今年は、10月28〜30日の3日間、棒二森屋(同)で開催することを決め、青函連携や限定スイーツの販売など新機軸も打ち出した。

 同フェスは地元スイーツの消費拡大やブランド化を目的に昨年9月3〜5日に初開催し、3日間で約1万5000人が来場。昨年10月の実行委の総括会議で今年の開催も決め、実行委員長には引き続き道菓子工業組合函館支部の若山直支部長(五島軒社長)を選任していた。

 今年は函館地区洋菓子協会の創立50周年を記念して青森県内の洋菓子店を招き、北海道新幹線開業を見据えた青函連携を強化する。参加店も昨年より多い最低でも30店を想定。販売する商品も開催時期の収穫の秋にちなんだ期間限定スイーツの販売などで、さらなる来場者の増加を目指す。

 会合には実行委を構成する市や渡島総合振興局、函館商工会議所をはじめ、道南の各菓子団体の役員ら約20人が出席。参加者からは「イベントはイベントとして『はこだてスイーツ』を今後どう売り込むかが重要」とし、札幌や首都圏へのPRの強化を求める声も上がった。

 若山実行委員長は「震災の影響で函館観光が冷え込む中、函館を核にしたスイーツで盛り上げたい。4年後の新幹線開業に向けて道南の菓子が一体となってさらなる知名度アップを図らなければ」と話した。今後、5月下旬から出店者を募集し、PR活動に乗り出す。 (森健太郎)



◎函館市副市長に中林、片岡氏で最終調整

 函館市の特別職人事をめぐり、辞表を提出した2人の副市長の後継に中林重雄企業局長(62)と、片岡格(いたる)財務部長(56)を充てる方向で最終調整に入ったことが12日、明らかになった。副市長の選任は議会の承認事項で、市は23日開会予定の臨時市議会で選任同意を求める考え。

 また、中林氏の後任の企業局長には秋田孝土木部長(59)、空席となっていた市教委の多賀谷智教育長(63)の後任には山本真也企業局交通部長(56)の起用が有力。教育長はこれまで校長経験者など学校現場からの登用が慣例だったが、行政経験を重視し、刷新を図る狙いがあったとみられる。

 林氏は北大水産学部を卒業後、1972年に函館市役所入り。消防長や議会事務局長、財務部長を経て、2008年から水道局長、組織再編に伴い今年4月から現職。片岡氏は明治学院大経済学部を卒業後、1977年に函館市役所入り。財務部次長、商工観光部次長を歴任し、2008年から現職。ともに工藤市長と同じく財務畑が長く、広く行財政に精通している点を評価したとみられる。

 工藤市長の就任に伴い4月下旬、西尾正範前市長の市政運営を支えた前任の谷沢広副市長(62)と小柏忠久副市長(64)が任期を残して辞職願を提出し、同30日で辞職している。(森健太郎)


◎3月の道南金融経済動向、震災の影響色濃く

 日銀函館支店が発表した3月の道南地方の金融経済動向によると、観光や新車販売、電子部品製造の現場などに東日本大震災の悪影響が色濃く表れる一方、一部の水産加工業には代替需要による操業度引き上げなどの効果があった。景気判断は、震災の影響から観光・生産面を中心に下押し圧力がみられ、「先行き不透明感が強い状況となっている」として据え置いた。

 観光は、震災直後の自粛ムードは薄れつつあるが、道内・外国人観光客を中心に厳しい状況だ。主要ホテル(20社)の宿泊客数は前年同月比34.6%減の79万人で、記録がある中では過去最大の減少幅。3月10日までは前年比増だったが、震災以降の中・下旬に大きく落ち込んだ。

 函館空港乗降客数は同30.4%減と4カ月連続で前年同月を下回り、国内線では同約30%、国際線では同約60%減少した。このほか函館山ロープウェイと五稜郭タワーもともに前年を下回った。山田正弘支店長は「ゴールデンウイークは良かったが、完全に持ち直したという判断はできない。今後の5、6月の動きが重要」とした。

 個人消費では、新車登録台数が普通・小型車が同38・7%減の817台と7カ月連続で前年同月を下回った。大きな下落は震災による供給制約が原因で、4月は同63.9%減とさらに減少幅が広がった。軽乗用車も3月は同19.3%減、4月は同22.0%減と減少に転じた。

 主要小売店(10社)の売り上げは、食料品が堅調に推移したため同0・2%増で3カ月連続で前年を上回った。高単価の衣料品や身の回り品などは、震災による先行き不透明感を背景に低調だが、薄型テレビは地デジ完全移行を控えることや販売価格の下落などで堅調な売れ行きだった。

 公共投資は、引き続き道新幹線関連工事が下支え。ただ発注が前年に比べて減少したため同13.3%減と5カ月ぶりに前年を下回った。(小泉まや)