2011年5月19日 (木) 掲載

◎岩手復興応援イベント、新井満さん講演

 函館ゆかりの歌人、石川啄木の復興応援チャリティーナイト「3・11 災害をこえて希望へ〜2011〜」が18日、函館市芸術ホール(五稜郭町)で開かれた。イベント開催を呼び掛けた作家の新井満さんが講演で「死者の分まで元気に生きるのが最高の供養」と語ったほか、世界の旗に復興への夢を託したフラッグダンスも披露され、来場者500人と思いを共有した。

 東日本大震災を受け、被災した岩手との絆を深めようと市文化・スポーツ振興財団の主催で開いた。

 第一部は講演。高校3年生だった1964年6月14日、新潟地震に遭った新井さんは地割れや津波、火災といった惨状を目の前にし「ショックで一生消えない心の傷を負った」と告白。大学を1年間休学したが、「それを救ったのが啄木の歌集『一握の砂』だった」。また、自身が作曲した「千の風になって」を熱唱。「死んでも風に生まれ変わる希望の歌。被災地を応援しよう」と語った。

 東日本大震災については、「あれから2カ月過ぎた今、被災地で一番必要なものは皆さんの思いが詰まった義援金」とし、募金箱への善意を呼び掛け。35万5249円が寄せられた。

 第三部では、市立函館、白百合、函館西の3高校生徒計29人が被災者への思いを大きな書でしたためるパフォーマンス。一筆一筆に力を込めた生徒に拍手が送られた。各校の書は、6月に盛岡市で開かれる「2011年啄木祭」でお披露目されるという。

 第四部では、NPO法人函館市民創作「函館野外劇の会」会員20人が音楽に乗せてフラッグダンスを披露。函館男声合唱団員20人も出演し、新井さん作曲の「星のまちHAKODATE」を高らかに歌い上げると、最後は来場者も合わせての大合唱で締めくくった。

 また、石川啄木記念館(岩手県盛岡市)学芸員の山本玲子さんと啄木研究家の桜井健治さんを交え「石川啄木と災害」と題した座談会も行われた。(長内 健)

 



◎道新幹線、現函館駅—新駅間のアクセス体験事業実施へ

 函館商工会議所や市などの関係団体でつくる北海道新幹線新函館開業対策推進機構(永井英夫会長)は本年度、道新幹線の新函館(仮称)と現函館駅間のアクセスを体験する市民向け事業を実施する。観光客の利便性向上に向け市電内を公衆無線LAN拠点として整備する計画もあり、4年後の開業に向けさらに環境整備に取り組む考え。

 ロワジールホテル函館で18日に開催した本年度の総会で決定した。永井会長は「工事の着工から7年が経過し、建設予算も順調についている。開業波及効果を高める取り組みを着実に行うことが必要で、今後もご協力を」と呼びかけた。

 アクセス体験事業は地元住民向け。JR函館駅と新幹線駅となるJR渡島大野駅の間を列車やバス、タクシーなど異なる乗り物で往復し、距離感覚を比較する。開催時期や詳細などは未定。出席者からは「同区間は引き続きJRが運営するよう要望を」との声が上がり、永井会長は同意した。

 無線LAN整備は、地域情報を受信する機会を拡大させようと、特に海外からの観光客向けとして計画した。現在市電で行うことを調整中。このほか、新たにホスピタリティー(もてなしの心)向上を目指した市民向けプランやPR事業など、啓発活動を予定する。

 会議ではこのほか、本年度の事業計画や予算案を決定した。報告では、東北新幹線新青森駅の開業3カ月間の函館市内宿泊施設への波及効果を報告。函館駅前と五稜郭、湯の川温泉の3エリアにある客室数40以上の10施設への聞き取りで、2010年12月から11年2月の間の宿泊人数は前年同期比16%増となり、「開業効果により堅調に増加した」とみている。月別では、12月が前年同月比15%増、1月は同19%増、2月は同16%増だった。(小泉まや)



◎北斗で水稲直播作業始まる

 【北斗】水田に直接種籾(もみ)をまく「水田直播栽培」に取り組む北斗市水稲直播推進協議会(白戸昭司会長、23人、事務局・JA新はこだて大野基幹支店)の播種(はしゅ)作業が18日、北斗市開発の白戸会長(52)の水田で始まった。播種時期は平年並み。白戸さんは、豊作を祈りながら「ななつぼし」の種籾と肥料を同時にまく播種機を操作していた。

 直播は従来の移植栽培に比べ、苗作りなどの春作業が軽減されるため、省力化、低コストが期待される。同協議会はことし、新たに2人が加わり、作付面積は3ヘクタール増の計43ヘクタール。同協議会独自の生産出荷基準を設け、タンパク値7・9%まで販売する。

 白戸さんも昨年の3・5ヘクタールから3・7ヘクタール(水稲全体の作付面積は16ヘクタール)に拡大。「収量は移植栽培と変わらないが、品質はタンパク値が低くなるので味がいい。ななつぼしの直播は道南だけなので、有利販売したい」と話していた。同作業は協議会メンバーの各農家で順次行う。出穂は8月上旬、収穫は9月下旬の予定で、移植栽培よりやや遅れる。

 同JAによると、大野、七飯、知内、若松、森、厚沢部の6基幹支店管内で直播面積は計100ヘクタール(昨年80ヘクタール)。また、ことしは東日本大震災の影響で東北の米産地で生産ができないことから、同JAは当初予定していた生産数量よりも食用米を87トン増やす。(山崎大和)


◎10月に函館初の全国産業観光フォーラム

 歴史的な建造物や産業遺産を活用した新しい観光形態の「産業観光」の推進を目指す「全国産業観光フォーラムinはこだて」が10月13、14日に函館市内で開かれることが決まった。11回目にして函館初開催で、過去最大の1000人規模の参加を予定。これまでの観光より一歩踏み込んだ産業的な魅力で観光客の知的好奇心をくすぐり、函館観光の新たな切り口を全国に発信する。

 同フォーラムは2001年に名古屋市で初開催し、道内では第4回(05年)の札幌に次いで2都市目。全国から観光関係者らが集まり、有識者の記念講演や分科会、体験型の見学会などを通じて、現代に受け継がれる産業的な施設や技術を観光振興に生かすための方策を探る。

 函館開催は全国産業観光推進協議会、日本観光振興協会、市、函館商工会議所など10団体で構成する実行委の主催で、「豊かな海に育まれた函館の産業と観光=vがテーマ。函館市民会館をメーン会場に、1日目は作家の荒俣宏氏の基調講演のほか、歴史的建造物や食、文化財のデジタル保存などの観点で3つの分科会を開く。

 2日目は道南の産業観光を体験しながら視察する5コースを用意。函館どつくや函館山の要塞(ようさい)など西部地区の産業遺産を巡る街歩きをはじめ、市内南茅部地区のコンブ加工技術や縄文文化を学ぶルート、函館近郊まで足を伸ばして一次産業に触れたり、新幹線工事現場を見学したりする1泊2日のコースもある。

 18日には実行委が発足し、実行委員長の工藤寿樹市長は「函館を全国にPRする絶好の機会。関係機関で協力してフォーラムを成功させよう」と述べた。市観光振興課は「産業観光はまちづくりの過程でもある。函館に現存する多くの産業資源を観光と組み合わせ、市民にもまちの魅力を再発見してもらうきっかけにしたい」としている。(森健太郎)