2011年5月20日 (金) 掲載

◎元総務庁長官・佐藤孝行氏が死去、漁業整備など尽力

 北海道旧3区(現8区)選出の自民党元衆院議員で、総務庁長官を務めた佐藤孝行氏が18日午後、東京都内の病院で胆管がんのため死去した。83歳。道南の漁港整備や水産振興、農業基盤整備などに尽力する一方、ロッキード事件で受託収賄罪に問われ有罪判決を受けた。通夜は20日、告別式は21日に都内で、親族のみで行われる。

 1928年、桧山管内北桧山町(現せたな町)生まれ。明治大学政治経済学部卒。日魯漁業の創業者の一人、平塚常次郎衆院議員の秘書を経て、63年に旧衆院道3区から立候補して初当選。通算で11回当選を果たした。

 運輸政務次官だった72年にロッキード社からの大型機導入に絡みわいろを受け取ったとして、76年に起訴。86年に有罪判決が確定した。76年の衆院選で落選、79年に返り咲いた。97年の第二次橋本改造内閣で総務庁長官として悲願の初入閣を果たしたが、党内外からの批判を受けて就任から12日で辞任した。

 中選挙区時代は、北海道開発庁長官を務めた故阿部文男氏、厚生大臣を務めた故田中正巳氏とともに道南の保守王国を築いた。しかし、佐藤派、阿部派の対立は、のちの保守分裂を招いた。

 小選挙区に移行した96年の衆院選で民主党の鉢呂吉雄氏に敗れたが、比例代表で復活。木戸浦隆一氏の病気辞任に伴う99年の函館市長選では、自民党道議だった畠山博氏の擁立に回り、木戸浦氏が後継に立てた井上博司氏、民主系候補ら5人が激戦を展開、井上氏が勝利した。

 2000年の衆院選で再び鉢呂氏に敗れ、政界を引退。次男の佐藤健治氏が後継となり衆院選を3回戦ったが、当選はならなかった。党内からも「健治氏初出馬時の擁立劇が不透明」との批判を浴びた。

 北桧山の寒村出身で、党内きっての漁業通を自任していた。日韓漁業協定など国際的な漁業交渉の舞台に立ち、函館道南でも数々の漁港整備や水産振興に努めた。直系の道議や函館市議を束ねたが、保守分裂の影響などで権勢は徐々に失われていった。

 函館の政界関係者は「『名もない寒村へき地で生まれ育ったことが政治家の原点』というのが口癖だった」「政治家として一時代を築いたが、晩年は不遇だった」と語る。

 



◎大間原発差し止め訴訟、原告側「活断層想定せず建設」

 青森県大間町に建設中の大間原子力発電所の建設反対を訴える市民団体「大間原発訴訟の会」(竹田とし子代表)が、建設差し止めと、慰謝料など総額510万円の損害賠償を国や事業者の電源開発(東京)に求めた、民事訴訟の第2回口頭弁論が19日、函館地裁(蓮井俊治裁判長)で開かれた。原告側は大間原発の建設には巨大活断層を想定していないと指摘。これに対し電源開発は「基本設計や基本的設計方針は、許可処分に係る安全審査において妥当と判断されている」と安全性を強調した。

 弁論で原告側は、大間町の奥本征雄さん(65)と七飯町の酪農業、山田あゆみさん(38)の2人が意見陳述した。奥本さんは「(原発は)住民を賛成・反対に分けさせ、村社会を崩壊させた」と語気を強め、「住民の命と暮らしに対する国の安全審査基準がなっていない。今なら(建設中止は)まだ間に合う」と訴えた。山田さんは2人の子を持ち、現在妊娠中という母親の目線から「放射能によって生の育む営みができなくなるのは“死”を意味する。未来を奪うのはやめてほしい」とし、酪農業にも被害が及ぶことなどを指摘した。

 続いて、原告側の弁護士3人がプロジェクターを使用し、福島第一原発事故の被害状況、その範囲を道南に当てはめるとどのような被害が起きるかなどを説明。その上で「(大間原発)は地震や火山、活断層などをほとんど想定しておらず、直下型地震が起きれば、原子炉・改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)はMOX燃料のため、より制御が困難になる」とした。

 これに対し、事業者は「安全確保対策と線量評価の結果は、許可に係る安全審査を経ており、いずれも妥当と確認されている。また、基本設計などで、放射性物質の環境への異常な放出を防止し、公衆の安全を確保し得ると確認されている。地震、地質・地盤、火山における安全性は調査し、確保されている」とした。

 同原発は、電源開発が函館市と津軽海峡を挟んだ大間町に建設中(現在は一時中断)。商業用原子炉(改良型沸騰水型原子炉)の全炉心に世界で初めて、使用済み核燃料を再処理して回収するプルトニウムと濃縮ウランを混ぜて作るMOX燃料を使用。次回の口頭弁論期日は9月8日。



◎富良野から善意1000冊/函館の市民有志、被災地に絵本送るプロジェクト

 東日本大震災の被災地に絵本を送る函館の市民有志プロジェクトは発足から1カ月が過ぎ、19日現在、函館を中心に道内各地からの寄付は約1万5000冊に達した。18日には富良野市民2人が車に約1000冊を積んで来函。受け取った函館の関係者は「強力な味方。支援の輪がもっと広がれば」と話している。

 このプロジェクトは、被災地の子どもに絵本や児童図書を読んでもらい、心を癒やしてほしいと、函館の児童文学作家森越智子さんと絵本読み聞かせ活動をしている岸本和子さんを共同代表に4月から活動。市地域交流まちづくりセンター(末広町)など市内・近郊12カ所やホームページ(HP)などで寄付を呼び掛けてきた。

 富良野市から来たのは、同市でブックカフェ「チュプカ」を営む青木崇さん(34)と店員の藤原花梨さん(32)。函館での寄付活動をブログで知り「自分たちにも何かできるはず」と店頭やHPで地元住民に寄付を呼び掛けたところ絵本は次々集まり、4月中旬から1カ間で約1000冊に達したという。

 移動は約8時間掛かったと振り返る青木さんは「函館の関係者に会って直接届けたかった。富良野の善意を大切に、今後も寄付を募りたい」、藤原さんは「最終目標は子どもたちの手に届くこと。子どもの笑顔を思い浮かべながら頑張りたい」と意気込む。

 森越さんは「言葉にできないほどうれしい。本を通じた人と人とのつながりの可能性に喜びを覚える。協力者の思いは必ず被災地にも届くはず」と期待している。

 プロジェクトは、現地の知り合いや被災者からの声を受け、4月14日から絵本を被災地へ送っている。福島第一原発事故の影響で、別の学校の敷地を借りる小学校関係者からも配送依頼があるという。今後もボランティア40人と仕分けをしながら、引き続き寄付を募るほか、輸送費の募金も協力を呼び掛ける。問い合わせは森越さんTEL0138-32-6224。(長内 健)


◎大韓航空の函館-ソウル便、6月12日まで運休延長

 大韓航空は19日、東日本大震災の影響で運休している函館―ソウル(仁川)間の定期便の運休期間を、6月12日まで延長することを決めた。福島第一原発事故の現状から利用を見込めないため。これにより6月1日の就航5周年に合わせて、函館市や商工会議所で構成する「函館空港定期航空路線活性化事業実行委員会」が企画していた100人規模の記念ツアーは中止に追い込まれた。

 同路線は週3回(火・木・日曜日)の定期便だが、震災後3月22日から運休している。5月5、8、10日の3日間に限っては一時的に再開したが、原発の状況により韓国側の需要に高まりがみられないことから、運休期間の延長を決めた。ただ、これまでは1カ月単位で延長していたのに比べ今回は短期間。同社函館支店は「早い再開に向けて調整している」とする。

 記念ツアーを企画していた同実行委員会は落胆している。同社との協議の中で6月からは運航再開する前提でツアー商品を組み、広告を出す寸前に運休延長の知らせを受けた。市は「函館からのニーズは高いと思う」とし、今後は市長参加も視野に入れ韓国でのセールス活動を計画するという。(小泉まや)